百足と狐と喫茶店と   作:広秋

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 unravelをドイツ語で歌ってる動画を見て鳥肌して、しばらくさまよってBlessingのWorld Editionを聞いてほろりと来て、「やっぱり平和が一番だな」と思う今日この頃。

 世間では楽しい夏休み真っ最中な中、私の作品の中ではハイパーハードモードに突入している模様。平和とは…うごごごご…(白目)


 …水着回とかやりたいけど東京喰種に海関係のシーン無いから書きづらいし…水着…ガチャ…FGO…うっ(心停止)


~前回までのあらすじ~

 とうとう喰種であることがCCGに露見してしまったリョーコ。
 忍び寄る魔の手に対しあんていくは、そしてリンネはどう動くのか。


6話 少女の祈りは狐へと

――あんていく――

 

 

 日も高く昇り、休日ということもあって客の数も多くなりつつある店内。

 カウンターに入っていた温厚そうな顔をした店員、古間が何かに気づくとカネキに呼びかける。

 

「カネキ君、上からコーヒー豆の補充を持って来てもらえないかな?」

 

「分かりました、古間さん。どれを持ってきますか?」

 

「赤色のラベルのやつをお願いね」

 

「分かりました」

 

 そう言ってカネキは二階に上がっていった。

 

 

 

 

――あんていく・二階従業員用休憩室――

 

 

 カネキが小間にこと付けを受ける少し前、お店に出る準備をしていたリンネが丁度あんていくの二階で食事をしていたヒナミと初めて顔を合わせてた。

 

「ん?お姉ちゃん、だれ?」

 

「おや?君とは初めましてかな?」

 

「うん、私はお姉ちゃんのこと知らないよ」

 

「なら自己紹介しておこうかな。私は六道鈴音、気軽にリンネって呼んで。ちなみに今はあんていくの居候兼ウェイターだよ」

 

「…ちょっと何言ってるか分からない」

 

 そうして割とあっという間に打ち解けた二人はヒナミは食事をしながら、リンネは仕事の準備をしながらお互いの境遇について話していた。

 

「ふーん、ヒナミちゃんはお母さんと二人で暮らしてるんだ」

 

「そうだよ!」

 

「ヒナミちゃんはお母さんが大好きなんだね」

 

 

「うん!お母さんはいろんなことを教えてくれるし、とっても優しいんだよ!」

 

 すると、そこで一度言葉を切ると少し寂しそうに続けた。

 

「でも、友達が少ないのはさみしいかな…」

 

「そうか…」

 

 するとそこであることを思いついたリンネが言った。

 

「なら、私がヒナミちゃんの友達になってあげるよ!」

 

 ヒナミは驚いた顔をすると、嬉しそうに答えた。

 

「いいの?」

 

「もちろん!」

 

「じゃあ、リンネおねえちゃん。」

 

 ヒナミが食事に使っていたフォークを置いて、リンネにおずおずと話しかける。 

 

「ん?どうしたんだい?」

 

 リンネが答えるとヒナミは意を決したように言葉を発した。

 

「わ、私と一緒に遊びに行こう!」

 

 それは今まで特殊な状況に置かれ続けていた少女のなんてことはないただ“友達と遊びたい”という平凡な願いだった。

 

「もちろんいいよ!」

 

 そしてリンネはそれを快諾する。

 

「ほんとにいいの?よ、よかったぁ…」

 

 リンネの了承を受け涙目になっているヒナミだったが、リンネ自身はそれに気づかず見当違いの方向へ気合を入れてしまった。

 

「よーし。ならさっさと仕事終わらせて遊びに行こう!」

 

「へ?」

 

 すると、戸惑うヒナミをよそにリンネはウェイトレス服に着替えだす。

 

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!?何してるの!?」

 

「なにって、着替えてるんだよ?さっさと仕事を終わらせて遊びに行くためにね!」

 

 そう元気よく答えたリンネは、ヒナミの「私、食事中なんだけど…」という抗議や「そもそも喫茶店のお仕事って時間制じゃ…」という指摘すらも聞こえていないのか、服を脱ぎ続けていつの間にか下着だけ(パンツ一丁)の姿になっていた。

 

 

 

 

「補充の豆…倉庫かな?…ん?」

 

 カネキが二階に倉庫の豆を探しに来ると従業員用の休憩室から話し声が聞こえてきた。

 

「誰かいるのかな…?」

 

 そう言って休憩室の扉を開けたカネキの目の前に居たのは、

 

「あ…」

 

「うん?」

 

食事中のヒナミと着替え途中のリンネだった。

 

「あ、あわわ…」

 

「ん?どしたの?カネキ君。」

 

 着替えている途中、つまり下は下着一枚、上半身に至っては何も身に着けていないリンネがそう言いながらカネキに近づいていく。

 

「どうしたのカネキ君。顔が真っ赤だよ?」

 

「あ、いや…あの、その…」

 

 ほぼ裸のリンネに迫られ、思考回路がショートしたカネキがとった行動は、

 

「しっ、失礼しました!!」

 

撤退(逃亡)だった。

 ドアを壊れそうな勢いで閉めたカネキはそのまま倉庫に向かうと()()ラベルのコーヒー豆を取ると下に降りて行った。

 

 

 

 

 カネキが撤退(逃亡)した直後、ヒナミが半目でリンネに言葉をかける。

 

「リンネおねえちゃん…いったい何やってるの…」

 

「え?何が?」

 

 しかし、状況が理解できていないリンネは頭に?マークを浮かべるだけだった。

 

「何が?じゃないよ!カネキお兄ちゃんは男の人だよ!?それなのに、あ、あんな破廉恥なことを!」

 

「ああ、それなら私は気にしないから無問題無問題。」

 

「問題しかないよ!って言うか早く服着てよ!」

 

「はいはい、あれ?スカートのベルトどこやったかな~?」

 

「…そもそも食事中の人の前で着替えるのもどうかと思うな~…」

 

 そう言ってハイライトの消えた目で食事を再開したヒナミがつぶやくが、リンネは全く気づいておらず、ヒナミは心の中で(この人(リンネ)馬鹿だ…)と悟っていた。

 

 

 

 

 上で起きた事件のせいですっかり疲れ切った様子のカネキが下に降りてくると気付いた古間が話しかけてきた。

 

「お、カネキ君。取って来てくれた?」

 

「はい、取って来ました…」

 

「うん、ありが…」

 

 すると、カネキの様子がおかしいことに気が付いた古間が問いかける。

 

「どうしたのカネキ君、顔真っ赤だよ?」

 

「放っておいてください…」

 

「そ、そうか…」

 

 古間があまりにもカネキの様子がおかしいために話題の変更を試みる。

 

「ところで、上でヒナミちゃんが食事中じゃなかった?」

 

「え?は、はい…食事中でしたが、それが何か?」

 

 ここで雰囲気を変えようとした古間が空気を変えようといじりに入るが、

 

「うわっ、デリカシー無いなー…意外に野蛮?」

 

そのいじりの結果、頭の中に先ほどの刺激の強い光景(リンネの下着姿(半裸))がフラッシュバックし落ち着いてに言葉を返すことすらもできなかった。

 

「そんなことないですよ!」

 

「お、おう…」

 

「…それに、もっとインパクトのあるものを見てしまったせいでそれどころじゃなかったんですよ…」

 

 そのカネキのつぶやきがうまく聞き取れなかった古間が問い返すが、

 

「ん?何か言ったかい?」

 

「いえほんとになんでもないんでもうほんとに勘弁してくださいぃぃ…」

 

という懇願に古間も返す言葉が見つからず、「コーヒーの豆が間違っていることとかは言わない方がいいかな?」と思い直し、そのまま通常業務に戻っていった。

 

 

 

 

 それからしばらくしてリンネがフロアに出てきてから明らかに集中を欠いているカネキの様子を見かねた古間がカネキを呼びつけた。

 

「カネキ君、少し息抜きも兼ねてヒナミちゃんのところにコーヒーを持って行ってくれないかな?」

 

「わ、わかりました」

 

 自分でも明らかに集中出来ていないことが分かっていたカネキはその指示を受けて小間からコーヒーを受け取ると二階に上がっていった。

 

 

 

 

「ヒナミちゃん、入るよ?」

 

 そう言って部屋に入ったカネキの前に居たのは本を読んでいたヒナミだった。

 

「さ…さっきはごめんね?これはサービスだから」

 

 そう言ってコーヒーを置くとカネキは退出しようとするが、ヒナミの問いを受けとどまった。

 

「お兄ちゃんは、“どっち”何ですか?」

 

「えっ…と…」

 

 すると答えづらそうなカネキの様子を見てヒナミは申し訳なさそうに首をすくめるが、カネキは「気にしないで」と言うとつづけた。

 

「僕は元々喰種じゃなかったんだ。でもいろいろあってね、喰種の体が混ざっちゃったんだ。だから体は喰種で心は人間って感じかな…」

 

 ここまで聞いていたヒナミが申し訳なさそうに言う。

 

「ご、ごめんなさい…変なこと聞いて。他のみんなと全然匂いが違ったから…」

 

 しかしカネキはヒナミを気遣ってか笑みを浮かべて返す。

 

「いや、いいんだよ。それにしてもヒナミちゃんはすごいね!匂いとかでそういうの分かっちゃうものなの?僕が普通と違う…と言うか特殊な喰種だって」

 

「ううん、なんとなく…なんだけど…」

 

 そう返したヒナミはさらに驚きの事実をカネキに告げる。

 

「確信があったわけじゃないの。だってリンネおねえちゃんも()()()()がしてたから…」

 

「えっ…それって、どういう…?」

 

 カネキは戸惑ってまともに言葉と発することができなかったがそれも当然で、もしヒナミの勘を信じるのならばリンネもまた()人間の喰種であるか、それに近い特殊な喰種であるからだ。

 しかしヒナミは、「私の気のせいだと思う」と言って言葉を濁してしまい、カネキもまたこれ以上の追及をしづらかったためヒナミの手元にあった本へと話題を移していった。

 

 

 

 すでにあんていくも終業時間となり店に残っているのは二階にいるカネキとヒナミ、そして一階で話している芳村とリョーコだけだった。

 ちなみに、リンネは仕事が終わる時間が遅くなり、ヒナミと遊びに行けないことが分かるや否やさっさと着替えてどこかへ言ってしまっている。

 

 

――あんていく・裏口付近――

 

 

 そこではリョーコと芳村が今後について話し合っていた。

 

「すみません、今日一日丸々ヒナミも私もお世話になってしまって」

 

 そう言うリョーコに芳村は柔らかな態度で返す。

 

「いえいえ、リョーコさんもヒナミちゃんもここを気に入っているようですし、構いませんよ」

 

「そう言っていただけると助かります」

 

 そう言いながら軽く頭を下げるリョーコに芳村は先ほどに比べいくらか真剣な口調で問いかけた。

 

「――では、これからはご自分で食事を確保する…ということですか」

 

「はい。いつまでもあんていくのお世話になっているわけにもいきませんし」

 

 リョーコはそこで一度言葉を切ると決意を込めた表情で続けた。

 

「何よりも、私がそうしたいんです。人を傷つけるのは私にはまだ無理ですが、四方さんがしているようなことを真似れば私にでも出来そうですし…」

 

 ここまで聞いた芳村は優しい声音で返した。

 

「そういうことなら協力しますよ。近いうちに四方君からいい場所がないか聞いておきましょう」

 

 芳村の申し出にリョーコは頭を下げるが、芳村は「助け合いですよ」と笑った。

 そして、芳村はブラインドの隙間から外の様子をうかがうと言った。

 

「一雨来そうですな…傘をお貸ししましょう」

 

「何から何までありがとうございます」

 

 話が一段落すると同時に、タイミングよくカネキがヒナミを釣れ、二階から降りてきた。

 

「リョーコさん、ヒナミちゃん連れてきましたよ」

 

「あら、カネキ君ありがとうね。じゃあヒナミ、帰りましょうか」

 

「うん!それじゃあまたね、カネキお兄ちゃん!」

 

 そう言って帰って行った二人を見送った後、カネキが芳村に声をかける。

 

「店長、このあと少しいいですか?」

 

 カネキの真剣な雰囲気に何かを察した芳村は「二階に行こう」と言うと店の鍵を閉めカネキとともに二階に上がった。

 そしてその直後、外では雨が降り出した。

 

 

――あんていく二階・従業員用の休憩室――

 

 

「で、なにかな?カネキ君」

 

 そう言って話を切り出した芳村にカネキは昼間、ヒナミが感じていたというリンネに対する違和感と自分と似た匂いがするらしいということを話した。

 それを聞いた芳村とカネキとの間で出た結論はまとめると次のようなものだった。

 

・元人間の喰種なのではないか

 

・人間の要素を強く持った喰種なのではないか

 

・ただのヒナミの勘違いか

 

 という三点だった。

 

 しかし、芳村はヒナミの勘違いというのはないと踏んでいるらしい。なぜなら、ヒナミの耳と鼻は芳村もだいぶ買っているらしく、もしヒナミが何かを感じているならば何かあると確信しているからだ。

 そして、リンネが元人間の喰種なのではないかという点についてはいまいち疑問は残るが非現実的ということで違うだろうと判断され、結局人間の要素を強く持った喰種ということに落ち着いた。

 

「にしても店長、なんでリンネちゃんが人間の要素を強く持った人間だって思ったんですか?」

 

 というカネキの質問に対し、

 

「それに関しては実に簡単だよ」

 

と言うと説明を始めた。

 

「まず、喰種が人間の要素を強く持つ状況というのは、稀な案件だが確実に存在する。それは人間と喰種のハーフだ」

 

 困惑するカネキに対して芳村は説明を続ける。

 

 曰く、人間も喰種も子孫を残す仕組みは同じのため子孫を残すことは可能であり、実際に幾つかの前例があるということ。

 そして、店長は人間との間に生まれたというハーフの喰種にあったことがあるということだ。

 

 そのため、“リンネが人間と喰種との間に生まれた喰種”ではないかとの結論に至った。

 しかし、このことがリンネの言っていた“言いたくない”ことにかかわっている可能性が高いだろうと判断した芳村は、しかるべき時まではリンネ本人にはもちろん、ここの二人だけの秘密とすることをカネキに求め、またカネキもそれを了承したことによって話がまとまった。

 そして二人が帰ろうとしたとき、

 

「だれか!誰かいませんか!」

 

下の階から声は聞こえてきた。

 

「声?」

 

「…下からだね。様子を見に行こうか」

 

「はい、店長」

 

 

 

 

 そしてカネキと芳村が下に降りていくと目に入ったのは雨に打たれ、あんていくのガラス戸を必死の形相で叩きながら声を張り上げるヒナミの姿だった。

 

「ヒナミちゃん!?」

 

「!カネキ君、とにかくヒナミちゃんを中に。私は拭くものを取って来よう」

 

「はい!」

 

 そして、カネキによって開けられたガラス戸からあんていくの中に飛び込んだヒナミはタオルを持ってきた芳村の姿を見ると叫んだ。

 

「芳村さん!お母さんが、怖い人たちに!」

 

 その言葉を聞いた芳村は苦い顔をしてヒナミに問いかける。

 

「ヒナミちゃん、リョーコさんはいったいどこに?」

 

「場所は帰り道の途中…赤い提灯と三角形の建物の近く…」

 

 それだけ聞くと芳村はコートを着込みカネキに言う。

 

「私が行こう、申し訳ないがカネキ君はヒナミちゃんを見ていてくれないか。お店にあるものは好きにしてくれて構わない」

 

 それだけ言うと芳村は雨の中に飛び出して行った。




 はい、以上6話でした。
 リンネの影響によりカネキ君があんていくからすぐに出なかったためヒナミちゃんには一度あんていくまで戻っていただきました。
 そして、その影響もあり原作よりもかなり早いですが芳村さん出撃です。
 前書きで平和がいいよねとかいいつつこの殺伐ハードモード…ヒナミちゃん、僕を殴ってくれ!(エミール並感)

 現在は週一での投稿ですがこれ以上のペースアップは恐らく無理なので投稿ペースの加速は期待しないでください。すまない…(´・ω・`)

 ついに次回、あの人が初戦闘です。しかし戦闘描写は(恐らく)拙いものになりそうなので過度な期待はご遠慮ください。(真顔)

 それでは次回をお楽しみに。


~次回予告~

 リョーコの危機を知ったカネキと芳村。
 芳村はカネキにヒナミを託し、リョーコの救援へと向かう。
 しかしそこにはすでに何者かの影が…

 次回、百足と狐と喫茶店と 第7話

 彼女の呪いは狐へと

 デュエル、スタンバイ!

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