今回で彼女の名前が明かされます。
…今まで書きづらくしてきた原因がなくなるので筆がスラスラ進む…といいなあ…
夏季休暇に入ったこともありもしかしたら更新速度が上がるかも?
…評価10…だと…!?(驚愕)
ありがとうございますm(__)m
~前回までのあらすじ~
カネキ、トーカ、芳村の三人と無事接触し打ち解け始めた“彼女”。
しかし、カネキの一言で室内は微妙な空気に…
「あの…まだ僕たち君の名前を聞いてないような気がするんだけど…」
「「「あ…」」」
妙な空気が充満する部屋に三人の声が重なった。
すると、この空気に耐えかねたのか芳村が口を開いた。
「そ、そういえばそうだったね。君の名前を聞いてもいいかな?」
芳村の問いにフリーズしかけた彼女は再起動し自己紹介を始めた。
「私の名前は六道鈴音、六つの道に鈴の音って書くの」
「へぇ、六道さんっていうんだ。」
「あ、六道さんなんて呼ばれるのはなんか背中がムズムズするからリンネでいいよ。なんだかんだで私もカネキ君って呼んじゃってるし」
「わかったよ。改めてよろしくね、リンネちゃん。じゃあ僕も改めて、カネキ、金の木に研究の研で金木研。よろしく」
「うん、よろしく。カネキ君」
「霧嶋董香、よろしく」
「漢字は?」
「知らなくても問題ないでしょう?それに口で言うには少しめんどいのよ」
「ふーん、わかった。トーカちゃんもよろしくね」
「はいはい、よろしくリンネ」
「あ、トーカちゃんは呼捨てなんだね」
「何か問題が?」
「いや、無いよ?全然ない。そうだ、マスターの名前も聞いていい?」
「私の名前は芳村だ。草冠に方角の方、そして村と書いて芳村だ。まあ、好きに読んでくれて構わないよ」
「わかりました。じゃあ呼び慣れちゃったからマスターって呼びますね。あ、ちなみに私は一応カネキ君と同じ鱗赫持ちだよ」
ここで、リンネの妙な言い回しに疑問を感じたトーカがリンネに質問を飛ばす。
「一応?なんでそんな奥歯にものが挟まったような言い方をする訳?」
「いや、あの…ほら。私にも色々あるんだよ」
痛いところを突かれたといわんばかりのリンネの態度にトーカが疑いの視線を向けるが、カネキと芳村が助け舟を出す。
「と、トーカちゃん。人が言いたがらないことを無理に聞き出すのはよくないと思うよ?」
「そうだよ、トーカちゃん。リンネちゃんにも人に言いたくないことの一つや二つはあるだろうからね」
そして、芳村が話題をそらすために話題を切り替えた。
「ところでリンネちゃん、その名前は親御さんが?」
「ええ、母がつけてくれた名前らしいです」
「らしい?…という事は…」
「はい、母は私が物心つく前に亡くなったので直接は聞いていないんですよ」
すると、申し訳なさそうに口を開こうとした芳村をけん制するようにリンネが言葉を続けた。
「謝罪なんていりませんよ、マスター。私はこの親からもらった名前が気に入ってる。それだけです」
「…そうか、ありがとう。そう言って貰えているのなら、君のお母さんもきっと喜んでいると思うよ。うん、鈴の音か…親御さんがどう思ってその名前を付けたのかは私にはわからないが、とてもいい名前だと私は思うよ」
「そういっていただければ私もうれしいです」
そういってリンネは無邪気に笑った。
和やかな空気に満たされた部屋で外がすっかり暗くなっていることに気づいた芳村がリンネに問いかける。
「そういえば。リンネちゃん、今日の寝床はどうするんだい?20区に来たばかりだという事だが何か当てや、寝床になる場所の心当たりでもあるのかい?」
芳村が聞いたのはあくまでも、「君はどこで寝泊まりしているのか」という問いだった。
…だったのだが…
「いや、いつも通り適当な路地裏で野宿するつもりだよ」
という回答で和やかな空気は消し飛ぶことになった。
「いつも通り?」
「路地裏で…」
「野宿?」
もちろんその回答が原因でリンネを除く三人が思考停止を起こしたのは言うまでもない。
ちなみに上からトーカ、カネキ、芳村の順である。
「あんた…マジ…?」
トーカは、冗談でしょ?と言いたげな顔で。
「いつも通り…?」
カネキは、意味が分からないという顔で。
「ん?なんか変なこと言った?」
状況を理解できていないリンネも三人がひきつった表情をしているのに気づき、「あれ?何かやらかした?」とおろおろしていた。
せっかくの和やかな空気が台無しになった室内で一番早く再起動を果たしたのは、年の功のおかげかか芳村だった。
「君はつい最近ここ、20区に来たという事で間違いないね」
突然強めの口調で問いかける芳村。
「え?はい」
「で、寝床はないと」
「あ、はい。まあ、路地裏での野宿を除けばですけど…」
「ないんだね?」
「あ、はい」
有無を言わせない芳村の問いに頷いたリンネ。
「よし、ならいいだろう。リンネちゃん。ここは20区でここにはここのルールがある。狩り場や食事の規則やCCGから身を守るための。わかるね?」
「はい、13区にもそのようなルールはありましたからね」
リンネがルールに対する理解を示すと芳村は頷き、爆弾を投下する。
「ならいいだろう。ならリンネちゃん。あんていくに住み込みで働く気はないかい?」
「「「え?」」」
「住み込み!?店長本気ですか!?」
トーカがおどろいて声を上げるが芳村は意に介さず「そうだよ。」と短く告げるとリンネに説明を続ける。
「もしリンネちゃんがここで労働をしてくれるというなら私は君にそれ相応の対価を支払う準備がある」
「…その対価の内容について詳しく」
「なに、簡単なことだよ。君がここで働いてくれるのならその対価として多くはないが給金と寝床、そして食事を提供しようと思う」
リンネは提示された条件に違和感を覚え芳村に問いかける。
「食事も提供してくれるの?でも私は自分で狩りもできるよ?」
この問いに芳村は少々困った顔をしながら事情を話し出した。
「いやね、このあたりでかなり広い狩り場を持っていた喰種がいたんだけどね。その喰種が最近亡くなってしまったんだ。それでその狩り場をあんていくが主導で分配したんだけど、もう空きが無くてね。だからリンネちゃんの食事をここ、あんていくで提供することで、狩り場関係で起こるいざこざをなくそうと思っただけだよ」
芳村はここまで話すと一度言葉を切り、部屋を見回しながらつづけた。
「幸い、この部屋のほかにも空いている部屋はあることだしね。どうかな、ここで私たちと一緒に働く気は無いかい?」
ここまでくるとトーカもカネキもリンネを受け入れることに異議はなかった。
しかし、異議というよりも疑いを持っている者がいた。
「なんで…」
リンネ自身である。
「なんでこんなに良くしてくれるの?今日会ったばかりの得体の知れない奴に…」
そう言ってリンネは顔を伏せる。
しかし、信じきれない様子のリンネに芳村は、笑顔を浮かべて優しく声をかける。
「いいかいリンネちゃん、人は助け合わなくては生きていけない。それは喰種も同じなんだ。リンネちゃんが今までどういう環境で生きてきたのかは私には分からない。だけど私たちの善意に嘘はないという事は信じてくれないかな?」
しばらく黙ったままのリンネだったが泣き笑いのような顔で芳村に問いかける。
「私、コーヒーを入れたりなんて出来ませんよ?」
その問いに芳村は笑顔のままリンネの問いに答える。
「そんなことは些細な問題だよ。私もちゃんと教えてあげられるし、トーカちゃんもカネキ君も助けてくれるよ」
すると、その言葉に続いてトーカ、カネキの二人も笑顔で言葉を続ける。
「あんたはよくわからない奴だけど、ま、悪い奴じゃなさそうだし。暇なときは他しけてあげるわよ」
「リンネちゃん。僕は新人だから頼りないかもしれないけど、教えられることはあると思うから遠慮なく頼ってよ」
二人の言葉を聞いたリンネは目元を少々乱暴に拭うと、顔を上げる。
「…わかりました。六道リンネ、あんていくでお世話になります!」
その言葉を聞いた芳村は満足そうに頷く。
「うむ、それじゃあ私とリンネちゃんはしなくてはいけないことができたね。明日にでもリンネちゃんに必要なものをそろえなくては」
そして芳村は窓の外に目を向けるとまた口を開く。
「もうかなり遅い…というよりそろそろ電車も止まりかねない時間だね。トーカちゃんとカネキ君はもう帰りなさい」
窓の外は完全に真っ暗で時間がほぼ深夜ともいえる時間に差し掛かっているのを示していた。
「あ、ほんとだ。じゃあトーカちゃん、もう帰ろうか」
「そうね、じゃあ失礼します」
トーカとカネキの二人が帰り支度を始めるとリンネが立ち上がった。
「じゃあ、見送りに行くよ」
すると芳村はポケットから鍵を取り出すとリンネに渡しながら言った。
「じゃあ、お店の表の鍵をリンネちゃんに渡しておこう。二人を見送った後戸締りをしておいてくれないかな」
「了解です、
リンネに店長と呼ばれた芳村は一瞬驚きの表情を浮かべた。
「じゃあ、お願いね。」
「よーし、じゃあ二人とも行こう!」
「ったく、そんなに焦んなよ」
「わ、わ、待ってよ!」
にぎやかに下へ降りていく三人の背中を見ながら芳村は物思いにふけっていた。
――あんていく前――
「さてと、それじゃあね、リンネちゃん」
「店長に迷惑かけんなよ?」
「大丈夫だって、トーカちゃんは一言多いよ、まるでおばあ「なんだって?」ナンデモナイデス」
「あはは…じゃあ行こうかトーカちゃん」
「不安だなぁ…」
「明日はお店に来るの?」
「いや、僕もトーカちゃんも明日はシフトがないからお店には来ないよ。シフトは明後日だね。トーカちゃんは?」
「しばらく休みだよ。だからあんたと顔を合わせるのは4,5日後だよ」
「そうなんだ。じゃあ、それまでにちゃんとお仕事覚えなくちゃね」
「ああそうだな」
「じゃあ、もう行くねリンネちゃん」
「うん、また明後日ね~」
――芳村視点――
(六道輪廻、13区から来た“流れ”の喰種。鳩との戦闘を避けるすべを心得ており、また本人も非好戦的で危険度は高くはない、が戦闘能力はおそらく四方君と同等かそれ以上…)
芳村は窓の外で話をしている三人を見下ろす。
(とっさにうちで引き取ると言ってしまったが、これは一体吉と出るか凶と出るか。…助け合い、それは素晴らしいことだ。だがそれに損得勘定を絡めて考えを回さなくてはならないというのは…いつまでたっても慣れはしないな…)
ここで芳村の脳裏に先ほどのリンネのセリフが浮かんできた。
(「なんでこんなに良くしてくれるの?今日会ったばかりの得体の知れない奴に…」か…この言葉かから察するに、あの子は少なからず一度は他者からの悪意に晒された経験があるということは間違いない。まず、善意を向けられることに抵抗を見せたこと、これは恐らく過去に偽りの善意で何かしらの被害を受けたということだろう。そして自分を得体の知れない奴と卑下していた。つまり、あの子はやはり他者の悪意におびえている。もしくは、初対面の他者に対して常に警戒心を抱いているということだろう)
あんていく前で話していた三人が解散しカネキとトーカが店を離れ、リンネが店内に戻ってくる。
その様子を見ていた芳村は軽く頭を振って思考を切り替える。
(難しく考えていても仕方ない、今はあの子の信用を勝ち取るのが先だ)
「やれやれ、ままならないものだな…」
芳村のつぶやきは誰に聞かれることもなく、部屋の壁に吸い込まれていった。
――20区・郊外――
人が近寄らなそうな20区の外れにある雑木林。そこには一人の女性が立っていた。
「あなた、どうか見守っていて…あの子は、ヒナミは、私が立派に育てて見せるから…」
女性のつぶやきに言葉が返ってくることはなく、静かな風が供えられた白い百合の花を揺らすだけだった。
おまけ
――リンネの人間の食べ物食べ方講習――
「な、なに?これ?」
「おっと、今日の挑戦者はカネキ君か~よーし、じゃあ今日も元気に食べてみよう!」
「えっと…リンネちゃん?まず状況の説明が欲しいんだけど…」
「え~と、ここに“主”から預かったメモがあるよ?」
「主?メモ?一体何のこと?」
「それじゃあ読みまーす!」
「ああ、これ逆らえない奴だ…」
「えーと何々…『とりあえず4話までは来たものの今回は文字数が少々足りなくなってしまった。そこで文字数を稼ぐ必要が出てきてしまったためこのコーナーを設ける運びとなった。このコーナーでは喰種の方々に順繰りに登場してもらって人間の食べ物を食べてもらう。ちなみに拒否権などはないので悪しからず。それじゃあみんな愛してるよ~。』とのことです」
「えー…」
「という訳でこのコーナーの初の挑戦者はカネキ君!そしてお題は…この箱の中のボールを引いてね、されに書かれているものが今回のお題になるから」
「どこからその箱出したの…逆らっても無駄か…わかった、引くよ…」
「おお、もの分かりが良くて素晴らしいですね~では記念すべき一発目どうぞ!」
「…はい、っと。なにこれ…えーと“たまごサンド”?」
「はーい、一発目はたまごサンド!さあ、ここにあるから元気よく一口行ってみよう!」
「いやだから、一体どこから出したの…ってやめて口に詰め込まなモゴッ」
「まあまあよいではないか~」
「モゴッ!モゴゴッ!モガガッ!」(ちょ!待って!やめてぇ!)
「よいではないか、よいではないか~」
「モゴーーーッ‼」
その後、カネキの姿を見たものはいなかった。
(このコーナーは)続かない
今回は少しシリアス気味な要素がありましたがまだ本格的にシリアスモードににはなりません。もう少しだらだらとギャグ風味のパートやりたいので。(え?バレバレ?最後?何のことかちょっとわかりませんねぇ~すっとぼけ)
今現在は、ハッピーエンドにするかバットエンドにするかは決めていません。むしろこの先の展開もあまりまとまってはいません。(オイ)ですが未完結にするつもりはないのでご安心ください。…投稿が遅れる可能性はありますが。
それではまた次回、感想や誤字報告、お待ちしています。
~次回予告~
カネキはあんていくの表の仕事と裏の仕事の二つの存在を知る。
その内容に悩む中、一人の喰種があんていくを訪れる。
次回、百足と狐と喫茶店と 第5話
狐はウェイターへと
君は生き残ることができるか