百足と狐と喫茶店と   作:広秋

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 連休で時間が取れたので2話目も投稿です。
 このペースを維持できたらいいなぁ…

 今回は少し時間が飛んでカネキ君がトーカちゃんに連れられて一緒にウタさんの所に行くあたりです。
…主人公の名前…どうしようかな…

(注)今回は視点移動があります

~前回のあらすじ~

 20区へとたどりついた主人公は眼鏡の喰種とカネキと呼ばれた学生の喰種と争いを目撃し「面白そう」との理由で動き出した。
 “狐”の気まぐれは一体どこに向かうのか。


2話 狐は喫茶店へと・前編

 彼女が路地裏で面白そうな喰種、カネキを見つけ「彼に会いに行こう!」とその場の後片付けをして歩き回ること数日。

分かったことといえば…

 

 

 ・今いるところが20区である。

 

 

                 以上。

 

 

「ふっざけるなぁあああぁぁ!!!」

「何日も歩き回って分かったことが『ここが20区です』だああぁぁ!?」

 

 そう、彼女は数日の間あちこち歩き回って件の喰種、カネキ君を探していたのだが、何の手がかりも見つからずもう夕方になろうとしていた。

 

「せっかく「鳩」にもばれないように行く先々で私のですらない食事の後始末までして来たってのに…誰だよ、「情けは人のためならず」とか抜かした奴は。ひとっつも恩恵が帰ってこないじゃん…あー…一回どっかで休むか」

 

 と言って路地裏から出るとよい香りが漂ってきて彼女の鼻をくすぐった。

 

「ん?久しぶりにいい匂い…コーヒーの匂いかな?」

 

 そして匂いにつられて少し歩いていくと。

 

「あん…あんていく?アンティークじゃないのか…」

 

 あんていくという名の喫茶店を見つけた。

 

「な-んか喰種の臭いがする気がするけど…ま、いいか」

 

   

――あんていく――

 

 

(お邪魔しまーすっと)カランカラン

(おお、中々いい感じの雰囲気じゃん…、全体的にオシャンティー(死語)な内装と…気に入ったわ、ここ。今は人もいないし。これなら気楽に居られるしね)

 

 などと彼女がくだらないことを考えているとカウンターに居る老いたマスターが目に入った。

 

(そうだ、席の事とか聞かなきゃ)

「すみません、席はどこに座ればいいですか?」

 

「ああすみません、はじめての方ですね。席は…今は他にお客様も居りませんのでお好きな席にどうぞお座りください」

 

(お、まじで?このおじいちゃんいい人だね)

「じゃ、マスターの前のカウンター席で」

 

そういいながらカウンター席に着いた彼女に老いたマスターは軽い笑みを浮かべた。

 

「ははは、では私で良ければ少し話し相手になりましょうか?」

 

「ほんと?ありがとうマスター。とりあえずコーヒーお願いしまーす」

 

 そういいながら彼女は老いたマスターの気遣いに頬を緩め、笑みを浮かべながらマスターの前のカウンター席に腰を下ろす。

 

「かしこまりました」

 

 老いたマスターは彼女の注文を受けるとカウンターの下からコーヒーの豆を取り出し、

マスターは慣れた手つきでコーヒーを入れていく

 

「あ、ちゃんと豆から淹れるんだ、本格的だね~」

 

「ええ、一応この店の売りですからね。ここは手間をかけますよ」

 

「ふーん」

 

「できましたよ。どうぞ」

 

 彼女の座る席の前にいい香りの漂うコーヒーが置かれた。

 

「うわぁ、いい匂い。ありがとマスター、いただきます」

 

 彼女が目の前に置かれたコーヒーを口にすると彼女の口の中に芳醇な香りと、深みのある味わいが広がった。

 

「うん、凄くおいしい」

 

「ふふふ、ありがとうございます」

 

 彼女達がコーヒーの話題で談笑していると、顔色の悪い男と生真面目そうな男の二人組がそれぞれアタッシュケースのようなものを手に店に入ってきた。

 

「いらっしゃいませ」

 

マスターの声に反応した二人の男のうち顔色の悪い男のほうが口を開く。

 

「おや、これは二人の楽しい時間をお邪魔してしまいましたかねぇ…」

 

(あ?誰だこの おっさん)

「セクハラですよ、おじ様たち」

 

 おじ様たちと言われているがおじ様といえるような年なのは顔色の悪い男の方だけでもう片方の生真面目そうな男は若く、むしろお兄さんと呼ばれるべき年であるということはここでは置いておく。(亜門ファンの皆様、申し訳ありません)

 

「これは失礼」

 

顔色の悪い男は彼女の抗議をあっさり流すとマスターに向き直った。

 

「マスター、席はどこに座ればよろしいかな?」

 

「今は見ての通りお客様も少ないのでお好きな席にお座りください」

 

「そうですか。では亜門君、ちょうどよいからそこの日当たりのいい席にしようか。注文は…私はコーヒーを一つ。亜門君は何にするかね?」

 

「私もコーヒーで」

 

「コーヒー二つですね。では席に座ってお待ちください」

 

 すると、マスターはコーヒー二杯を手早く入れると先の二人組のところへ持って行き、二言三言言葉を交わすとすぐにカウンターに戻ってきた。

 

(そうだ、ここ最近人間の食べ物食べてなかったな…はっきり言って嫌だけどこれやっとかないと体が受け付けなくなって後々つらいしなぁ…人も少ないし、やるなら今か…)

「仕方ない…か…」

 

「何か?」

 

「いいや、なんでもないよ。ところでマスター、何かおすすめのサンドイッチとかある?小腹すいちゃった」

 

「…そろそろ夕食時ですよ?」

 

「いいのいいの。私よく食べる方だから」

(それに、本当のご飯は別に調達しなきゃいけないしね)

 

「そうですか、なら軽めのものを用意しましょう。」

 

「ありがとマスター」

 

するとマスターは棚からパン、冷蔵庫からはトマトとハム、レタスを取り出すとパンとトマトを程よい厚さに切る。そして先ほど出したレタスとハムを切ったパンの上に重ね、マスタードをベースにした黄色いソースを塗るともう一切れのパンで挟んで二つに切り、手早く皿に盛りつけた。

 

「はい、お待たせしました」

 

「全然待ってないって、むしろ早すぎるくらいだよ」

「パンは自家製?」

 

「ええ、この店の自慢の一つです」

 

「へぇ、いただきまーす」

(さてと、この微妙な不味さの中にあるのは…っと)

「うん、パンのいい香りもそうだけど野菜も新鮮だね。ハムもいいの使ってる?」

 

「そんな上等なものではありませんよ。市販のものですから」

 

(つかみは上々、あとはこのソースのことで上手くお茶を濁せればいいかな?…えっと…この舌を焼くような刺激は「辛さ」で、恐らくさっきの黄色いソースが原因だよね。なら間違いなくマスタード使ったものかな?)

「うーん、このソースはマスタードがベースかな?なかなか好みだよ」

「あたりです。マスタードをベースに私が作りました。気に入っていただけたようで何よりです」

 

(よかったぁ~、間違えてなくて。でもちょいちょい食べないと駄目だなぁ…体が受け付けなくなっちゃう)

「うん!すっごく気に入った!」

 

「ありがとうございます。ところで、コーヒーのお代わりはいかがですか?」

 

「あ、おねがいしまーす!」

 

 

――芳村視点――

 

 

(四方君が、トーカちゃんに呼ばれた先で偶然見たという新しく20区に来た喰種。闘争の後始末をするなど明らかに鳩を避ける方法を熟知している。つまりそれなりに頭が回るのは間違いない。その上、四方君からみても「かなりの手練れ」ということはカネキ君ではもちろん、トーカちゃんでも戦えばただでは済まない…どうしたものかな。四方君の言うことにはその喰種は女性。年はぱっと見トーカちゃんと同じくらいで、その時の服装は黒いパーカー、短いパンツスタイルだと言っていたな)

 

芳村がもの思いにふけっていると一人の女の子が店内に入ってきた。

 

(…トーカちゃんと同じくらいの年の女の子かな?…黒いパーカーに短いズボン…まさか?…いや、そんな偶然があるとは…)

 

「すみません、席はどこに座ればいいですか?」

 

(四方君がいれば確認が取れたのだが…まあ仕方がない)

「ああすみません、はじめての方ですね。席は…今は他にお客様も居りませんのでお好きな席にどうぞお座りください」

 

「じゃ、マスターの前のカウンター席で」

 

(会話の中で何か手がかりか…情報を引き出せないだろうか…)

「ははは、では私で良ければ少し話し相手になりましょうか?」

 

「ほんと?ありがとうマスター。とりあえずコーヒーお願いしまーす」

 

(とりあえず、今はお客様として対応だな)

「かしこまりました」

 

「あ、ちゃんと豆から淹れるんだ、本格的だね~」

 

「ええ、一応この店の売りですからね。ここは手間をかけますよ」

 

「ふーん」

 

(コーヒーを注文か…喰種かどうかの判断は普通の食べ物を頼んでこない限りは区別がつけられんな…)

「できましたよ。どうぞ」

 

「うわぁ、いい匂い。ありがとマスター、いただきます」

「うん、凄くおいしい」

 

(こんなにこやかに笑う娘が手練れの喰種とは考えたくはないな、まったく…)

「ふふふ、ありがとうございます。」

 

(ん?人の気配…だがこの感じは…)

「いらっしゃいませ」

 

「おや、これは二人の楽しい時間をお邪魔してしまいましたかねぇ…」

 

(この気配は間違いない…CCG…!ベテランに新人のツーマンセルか…だが、今店に居るのは私だけ。ならばどうとでもなるか…?)

 

「セクハラですよ、おじ様たち」

 

「これは失礼」

 

「マスター、席はどこに座ればよろしいかな?」

 

(特に問題が起きない限りは普通のお客様として対応するのが最善手か…)

「今は見ての通りお客様も少ないのでお好きな席にお座りください」

 

「そうですか。では亜門君、ちょうどよいからそこの日当たりのいい席にしようか」

「注文は…私はコーヒーを一つ。亜門君は何にするかね?」

 

「私もコーヒーで」

 

「コーヒー二つですね。では席に座ってお待ちください」

(さて、少し探りを入れてみるか…)

 

 

 

 

「おまたせしました」

 

「早いですねぇ。なかなかのベテランとお見受けしますがどうでしょう?」

 

(あのケース、クインケか?)

「いえいえ、ただのしがない喫茶店のマスターですよ」

(…探りを入れてみるならここか…)

「ところでそのケースから見るに、何かお仕事のものですか?」

 

「ええ、そろそろ大きな収穫…成果が上がると思っていたのですが…なかなかどうして、うまくいかないものでしてねぇ。」

 

(つまり、喰種狩りはあまり上手くいってないと…そういうことなのか?)

「そうですか、お気を落とさずに。それではごゆっくり」

 

(今現在、ここ20区は美食家や“アオギリ”などの問題ごとを抱えすぎている。いつまでこの平穏が長続きしてくれるのやら「…」ん?)

「何か?」

 

「いいや、なんでもないよ。ところでマスター、何かおすすめのサンドイッチとかある?小腹すいちゃった」

 

(…この娘もどうやらわたしの思い過ごしのようだな)

「…そろそろ夕食時ですよ?」

 

「いいのいいの。私よく食べる方だから」

 

(…私の娘も、こうなっていたかもしれない未来があったのだろうか。いや、今はよそう。とにかく今はこの娘に何か用意してあげなくては)

「そうですか、なら軽めのものを用意しましょう」

 

「ありがとマスター」

 

 

――真戸視点――

 

 

「…ここ最近虫どもの手がかりが少なくなっている。亜門君、これがどういうことか分かるかね?」

 

「そうですね、…喰種どもが自らの痕跡、つまり決定的な証拠になりうる捕食跡などを隠滅することで己の身を守ろうとしているから…だと思います」

 

「そうだろうな。私も同意見だ。しかし、これは我々CCGにとって小さくない痛手だ」

 

「どうすればよいのでしょうか…」

 

「ふむ、今は本部にもここの支部にもあまり有力といえるような情報は入ってきていない…となると取れる手は少なくなってしまうな」

 

「少なくなるということは取れる手はあるにはあるのですか?」

 

「そうだ、ある。「勘」というものがな」

 

「勘…ですか…」

 

「そうだぞ、ここまでくると勘というのも馬鹿にならんものだぞ?」

 

「…説得力がありますね」

 

「ははは、ならば勘に従って少し歩いてみるか」

 

しばらく歩いていくと二人はあんていくという喫茶店の前にたどり着いた。

 

(ふむ、勘に従うならばここがどうにも引っかかるが…入ってみるか)

「亜門君、息巻いているところ申し訳ないが私は少々疲れた。やはり、君は歩くのが速いようだ。少しここで休息をとってもいいかな?」

 

「…そうですね。朝からほぼ歩き通しでしたし少し休憩を入れましょうか」

 

「感謝するよ、亜門君。どれ、コーヒーの一杯でも飲みながら足を休めるとしよう」

(さて、もしここに虫どもがいるのならば容赦はしない一匹残らず駆逐してくれる…)

 

 

                                            

「いらっしゃいませ」

 

(ふむ、老齢のマスターと客と思われる少女一人か…今のところはどちらもおかしなところはないが…)

「おや、これは二人の楽しい時間をお邪魔してしまいましたかねぇ…」

 

「セクハラですよ、おじ様たち」

 

「これは失礼」

(今のところはそこまで警戒することもないか…)

「マスター、席はどこに座ればよろしいかな?」

 

「今はお客様も見ての通り少ないのでお好きな席にお座りください」

 

(親切なことだ。ならば好きにさせてもらうとしよう)

「そうですか。では亜門君、ちょうどよいからそこの日当たりのいい席にしようか」

「注文は…私はコーヒーを一つ。亜門君は何にするかね?」

 

「私もコーヒーで」

 

「コーヒー二つですね。では席に座ってお待ちください」

 

(ふむ、やはり怪しいところはない…か。にしても…)

「亜門君、どうしたのだね?」

 

「はっ、何でしょうか」

 

「いやなに、少し気落ちしているような気がしたのでね」

 

「いえ、何もありません」

(女の子におじさま呼ばわりされてへこんでました…なんて言えないしなぁ…)

 

「そうか…」

 

「おまたせしました」

 

(早いな)

「早いですねぇ。なかなかのベテランとお見受けしますがどうでしょう?」

 

「いえいえ、ただのしがない喫茶店のマスターですよ。」

「ところでそのケースから見るに、何かお仕事のものですか?」

 

(やはり怪しいところはないか、クインケのことも知らないのならば…私の思い過ごしか?)

「ええ、そろそろ大きな収穫…成果が上がると思っていたのですが…なかなかどうしてうまくいかないものでしてねぇ」

 

「そうですか、お気を落とさずに。それではごゆっくり」

 

「うむ、ありがとう。それでは亜門君、温かいうちに頂くとしようか」

 

「そうですね」

 

「ふむ、いい香りだ」

(それに味も悪くない、むしろ上等だな)

 

「このコーヒーおいしいですね、真戸さん」

 

「そうだな、支部の給湯室にあるインスタントとはまるで違う。たまにはこういうのもいいものだな」

(いつの間にかあっちの少女はマスターとサンドイッチの話で盛り上がっているようだな…やはり二人とも白か)

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、なんでもないよ」

(美味いな…さて、またしばらくは歩き回ることになりそうだな)

「亜門君、これを飲み終えたらまた捜査に付き合ってもらうぞ」

 

「もちろんです」

 

「うむ、全く君のようにエネルギーに満ち満ちているような若者は羨ましいものだよ」

(私の勘も鈍ったのか…まあいい。私は私の使命を果たすまでだ)




 はい、主人公あんていくに接触。ここから徐々に原作に介入していくことになります。
 それと、少々早いですが真戸さんと亜門さんに登場していただきました。
 タグのせいでとある知り合いの山猫さんから
「CCGの人間ばかり退場させていくようなことするつもりじゃないだろうな?ンなことしてみろ、月光で叩き切ってやる」(#^ω^)ピキピキ
とのお言葉をいただいたので(月光で叩き切られるの嫌なので)誤解されないうちに補足しておきますと、若干のオリ主TUEEEEEはあるかもしれませんが片方の陣営に肩入れするという予定はございませんのでご安心ください。
 喰種には好きなキャラが多いので私もそうPON☆PON☆退場させたくはありませんししません。(多分、きっと、めいびー)
 さて、次回ではそろそろ原作キャラのカネキ君たちと“彼女”を本格的に接触させていくつもりです。
 そして“彼女”の設定も次回から少しずつ明かしていきます。

 …名前、どうしようかなぁ(遠い目)

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