百足と狐と喫茶店と   作:広秋

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 時系列は金木が喰種になった後、路地裏でニシキと接触し、トーカに助けられる場面から行きます。


序章
1話 狐は20区へと


「あー、暇だー…」

 

 はい、私は今13区を追い出され、流れに流れて今や宿無しの根無し草ライフ中です。

と言っても寝床は道端でいいし、食べ物もその辺を()()()()()()()から歩き回っているから別に問題ないけど

 

「何か面白いことはないかな~」

 

 などと彼女が呑気なことを言っていると彼女の優れた聴覚が少し離れたところから響いてきた物音をとらえた。

 

「ん?」

(すごい物音…何か面白そうな気がする!)

 

 

 

 

「…つーかお前の体スゲェ脆いのな…豆腐でも突いてんのかと思ったぜ?」

 

「うぐ…ゲホッ…」

 

(おっと~?路地の角の向こうではどうやら喰種同士が小競り合い中ですね~)

 

 彼女が物音の現場の路地が見える場所に来てみると、そこでは2体の喰種が争ってい

た。

 

(学生っぽい見た目の子の様子とあっちの眼鏡の台詞、さっきの音と合わせて考える限り学生君を眼鏡の奴が蹴っ飛ばしたって感じかな?…近くにご飯もある?…ってことは喰場争いか…にしても眼鏡の奴の口上、下品で嫌いだな…なんか“俺強いんだぜ?”みたいで気に食わないし…ん?もう1体近づいてくる?)

 

 すると、ビルの屋上を足場に喰種1体が接近してきた。彼女が「物騒だなぁ…」とつぶやいていると、その喰種は2体の喰種の争っている路地のほぼ真上に陣取った。

 しかしその気配は近くのビルの上から動く気配がない。

 

(漁夫の利狙いかと思ったら介入する気は無いみたいだね…気配からすると羽持ちで…あの眼鏡は尻尾持ちであっちの学生君が…多分鱗持ちだと思うんだけど…どうにも気配が薄くて分かりづらいんだよなあ…)

 

 彼女がそんなことを考えていると眼鏡をかけた方の喰種が口に指を突っ込み、

 

「…馬の糞でも喰ってる気分だぜ」

 

 吐き出した。

 

(って吐くんかい!なら喰うなや!)

(それに大事な喰い物汚すなや!)

 

 彼女が物陰でキレている事などつゆ知らず、眼鏡の喰種は悪びれる様子もなく気を失っている人間に吐しゃ物を浴びせる。

 

「おっと、ワリィカネキ、お前の喰いもん汚しちまったわ」

 

 すると眼鏡の喰種に吐瀉物をかけられた人間が少し反応する。

 

(あの人間…生きて…る?生きたまま食べるつもりだったのかな?にしても力の差がありすぎだねえ、あの学生君…カネキって呼ばれてたかな?…あれじゃあ勝てないね。赫子も使えず、お腹ペコペコ、勝ち目なんてほぼ無いし)

 

 彼女の言う通り学生のような喰種が眼鏡をかけた喰種に一方的にやられていく。

 

(あーあ、ご飯もとられ、ボコボコにされ…うん、死んだら私が美味しく頂いてあげるよご愁傷…!?何!?)

 

彼女がのんびり皮算用していると、突然学生の喰種の雰囲気が変わり、今まで使用していなかった赫子を発現させる。

 

(学生君の気配が変わった!?いったい何が…?)

 

 突然のことに驚く彼女の前で学生の喰種が赫子を使い眼鏡の喰種を圧倒し始める。   

 

「な…んだよそれはッ‼」

 

 突然の事態に対処できなくなりつつある眼鏡の喰種は声を上げるが、そんなことはお構いなしに学生の喰種はその赫子の持つ圧倒的なパワーで攻め立てていく。

 

「すげえ…」

(…あの赫子かなりイイものだ…なんで使わなかった?いや、使えなかったのかな?)

 

 学生の喰種の赫子は鱗赫と呼ばれるもので一撃の重みもあり、再生能力も比較的高いという代物だった。

 急に赫子を使われた眼鏡をかけた喰種は学生の喰種の攻撃を徐々に捌けなくなり、ついに致命的な隙をさらしてしまう。

もちろん学生の喰種がその隙を逃すはずもなく、眼鏡をかけた喰種が晒した一瞬の隙を突き、赫子の一撃を放つ。

 

(あ、眼鏡君危ないよー)

 

 学生の喰種が放った赫子の一撃が、眼鏡の喰種のどてっ腹をまともに捉え、貫いた。

 

「…っめろォ‼やめろォ馬鹿野郎ォォ‼死ぬッ‼死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ‼」

 

 眼鏡をかけた喰種はそのまま振り払われ、壁に激突すると動かなくなった。

 

(どてっ腹にでかい風穴開けられてやんのザマァw)

 

  これで邪魔者も居なくなり学生の喰種は食事を始めるかと思いきや、食べることそのものを拒絶するかのように悶え始めた。

(学生君はお食事タイム…じゃない?様子がヘンね…食べたくないの?…分かんないなあ…?ってさっきの羽持ちがきた?漁夫の利狙い?)

 

すると、場に残ったのがぼろぼろの学生の喰種だけになった途端にビルの上に陣取っていた喰種が降りてきたが、特に攻撃する素振りも見せずに学生の喰種に向けて話出した。

 

「ずいぶんらしくなってんじゃん、半端野郎」

 

 降りてきた喰種は、学生の喰種の視線を気にせずに言葉を続ける。

 

「激痛と空腹で理性吹っ飛んで…死にたいぐらい苦しいんじゃない?」

 

「その苦痛から解放されるためなら友達の命ですらどうなろうとかまわないでしょ?」

 

「そしてアンタは彼を喰い散らかした後に一人で後悔するの。血と臓物の海の上で」

 

(ふーん、ずいぶんとカワイイ娘だねえって、ん?何?戦わないの?)

 

「今回は救ってあげる」

 

 そう言うと、羽持ちの女の子の喰種は学生の喰種を気絶させると、気を失っている人間の学生とを一緒に抱えてどこかへと行ってしまう。

 

「ありゃ、行っちゃった…眼鏡の奴もどっか行っちゃったし…」

 

 彼女はそこで一度言葉を切り、笑みを浮かべて言葉を続けた。

 

「にしても、あの鱗持ちの学生君、面白いなあ…不釣り合いなまでに強力な赫子…あれは絶対に何かありそうだなぁ…しばらくあの子の事を追っていれば、もっと面白いことにありつけるかな?」

 

 そう言って“狐”は路地の向こうに消えてい「やっべ!この場どうにかしなきゃCCGに目付けられるじゃん‼」

 

…戻ってきた。

 

「えーっと、とにかくこの辺の廃材は適当に積みなおして、あー眼鏡の奴の血の跡は一体どうしよう…」

 

 こうして少々頭の足りない狐は20区へと足を踏み入れた。

 これが20区に、そして物語に一体どんな影響を与えるのか。

 

次回をお楽しみに

 

 

 

 

「トーカに呼ばれてきてみれば…一体なんだ?アイツは…」

 




はい、今回は初回ということでかなり短めです。申し訳ない…
 次回以降は5000文字…いけたらいいなあ…
 今回はカネキとニシキの戦闘のイベントがメインでした。
 …こうしてあとがきを書いている間も誤字脱字に怯えています。遠慮なく指摘してください。悦びます。
 感想もいただければ幸いです。
 因みに私は原作も最後まで読んだわけでもなく、アニメも見ていないので原作と設定が食い違っているところがある(もしくはこれから出てくる)と思います。そして設定の齟齬が大きくなり対処できなくなったその時はタグにオリジナル設定を加えたいと思います。

拙い文ではありますが、どうにか皆様の暇をつぶせる程度のものができるように頑張っていくので何卒よろしくお願いします。

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