百足と狐と喫茶店と   作:広秋

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お久しぶりです。本当に(´・ω・`)
お待たせしました、本当にお待たせしました今回で本当に原作三巻終了時と時間軸が並びます。
そして予告通りの大規模な原作乖離。
…基本は原作に沿うので…問題ないよね?(´・ω・`)
この乖離は賛否両論あるとは思いますがご了承ください。
最も、予想できていた人も多そうな気もしますが…

やっと、あのお方を出すことができそうです。
個人的に好きなキャラなの真戸さん達の様にフライング出演も考えていたのですが、プロットの段階で難しいことが分かっていたので没になってしまっていました。

しかし、それもこれまで!表舞台に出て頂きましょう!

ちなみに彼がどのような役に落ち着くかは後でダイスでも振って決めます()

それでは、第16話の始まり始まり~


~前回までのあらすじ~

 ヒナミと共にカネキとの合流を図るトーカ。
 獲物に逃げられた復讐者は怨嗟の声を上げる。
 そして、九尾と復讐者の戦いはどのような結末を迎えるのか。


16話 復讐者の後悔は九尾へと

――20区・郊外、河原――

 

 

「またしても…またしても…貴様か…!」

 

 憤怒の形相でこちらを睨み付ける男に対して、リンネは無言のまま対峙する。

 無論気を抜くことは無く、発現させた赫子を時折前に繰り出すことで牽制していた。

 

「貴様らは…何度…何度私の邪魔をすれば…気が済むのだっ!?」

 

 しかし、(復讐者)はそれらの牽制に気付いた上で前に踏み込んだ。

 

「貴様らは…貴様らだけはぁ!!」

 

 そうして、片腕を失った男はリンネ(キュウビ)に躍りかかっていった。

 

 

 

 

――20区・市街地――

 

 

 リンネの支援の下、離脱することに成功したトーカは、カネキと合流するべく、ヒナミを抱えたまま雨の降りしきる夜の街を駆けていた。

 先程の戦闘で消耗した体力が完全に回復した訳ではないが、あの場から距離を取ることを優先し、移動を続けていた。

 

「かぁ…なんでこんな日に限って雨が降るかなぁ…」

 

 降り続ける雨に悪態をつきながらも、その雨のお陰で自分たちの痕跡が薄れることが分かっているトーカはそのまま走り続け、市街地を抜けたあたりで一度ペースを落とした。

 

「とりあえずここまで来ればもう大丈夫だろう。」

 

 そして市街地の外周部に近い、住宅街の外れにある公園、リンネに告げられたカネキとの合流地点にたどり着いた。

 

「ここが、リンネ(あいつ)の言ってた公園…」

 

 トーカはヒナミを抱いたまま,周囲を警戒しつつ公園に足を踏み入れた。

 するとそこには、雨に打たれながらもじっと立ち尽くすカネキの姿がそこにあった。

 

「カネキ!」

 

「!…トーカ、ちゃん?」

 

 突然声を掛けられ驚いたのか、カネキは一度肩を跳ねさせるも、声の主がトーカであることに気が付くと安心したような笑みを浮かべた。

 しかし、ぐったりとしたヒナミがトーカの肩に担がれているのに気が付いたカネキは顔を青ざめ、大慌てでトーカに駆け寄った。

 

「ひ、ヒナミちゃん!?一体何があったの!?」

 

「うるさい!さっさと手を貸す!」

 

 トーカは狼狽するカネキを一蹴すると二人掛かりでヒナミをこれ以上雨に濡れないように木陰のそっとベンチに横たえた。

 その際にカネキの上着がトーカによってはぎ取られ、ヒナミの下に敷かれたのは余談であり、想像以上に器用な行動にカネキが半ば感心していたのはさらに余談である。

 

 

 

 

「それで?」

 

「なによ?」

 

「色々聞いてもいいかな?」

 

 ヒナミをベンチに横たえたカネキとトーカはそれぞれベンチの両端にある手すりに互いに背中を向けて腰かけ、目線を合わせぬまま話始めた。

 

「まあ、聞きたいことは大体察しが付くけど…一応何が知りたいの?って聞いておこうか?」

 

「…とにかく僕が聞きたいのは2つだけ。まず、ヒナミちゃんはどこにいたのか。そして、」

 

「なんでヒナミが気絶してるのか、だろ?」

 

 トーカは軽く息を吐くと「まあ、そうだろうな…」と呟くと首だけカネキの方に向け事の顛末を伝えた。

 顛末を聞いたカネキは立ち上がると念を押すように、トーカにもう一度訪ねた。

 

「…つまり、リンネちゃんは一人でその場に残ったんだね?」

 

「そうだよ。そう言ってるだろ」 

 

「そうか、ありがとう。」

 

 そう言ってカネキが公園の出口へ向かって歩き出すとトーカが鋭い口調で止めた。

 

「やめときな。」

 

「っ!」

 

 カネキが動きを止めトーカの方に向き直るとトーカは顔をカネキの方に向けずヒナミの頭をそっと撫でながら言葉を続ける。

 

「アンタが何を考えているかは分かる、けどやめておきな。リンネ(あいつ)はそう簡単にやられるタマでもない。それに、」

 

 一度そこで言葉を切ったトーカはカネキに薄い笑みを向ける。

 

リンネ(あいつ)はあたしより強い。」

 

 

 

 

――20区・郊外、河原――

 

 

 真戸は目の前の()に手に持ったクインケ(ナルカミ)の雷撃を放つ。

 

「クタバレェェェエエエ!」

 

 しかし、リンネの繰り出す赫子の防御を抜くことは出来ず、その場から動かずに赫子で身を護る()に対して必死に攻撃を繰り返す真戸。という図が出来上がっていた。

 

「貴様!なぜそちらからは手を出してこない!」

 

 片腕を失って尚、果敢に攻めかかる真戸は怨嗟の声を上げる。

 

「舐めているのか?それとも私を愚弄するかァ!?」

 

 そう言いながらも真戸は攻撃の手を緩めない。

 だが、怒り狂いながらも冷静な思考を保っていた真戸は理解していた。自分では目の前の()には勝てないと。

 

『なぜ向かってくる?』

 

 真戸の攻撃を軽く受け流しながら放たれた問いに真戸は一瞬固まり、その顔にさらなる憤怒を浮かべ吐き捨てた。

 

「なぜ!?何故だと!?貴様らが!貴様らがそれを言うのか!?私から全てを奪った(・・・・・・)貴様等がァ!!」

 

 真戸がその言葉を放った瞬間、今度はキュウビの動きが止まった。

 

「!」

 

 無論、歴戦の捜査官である真戸がその隙を逃すはずもなく、その一撃を逃さずクインケ(ナルカミ)をキュウビの身体に突き立てた。

 

 

 

 

“全てを奪われた”

 

目の前の男はそう言った。

 

“奪われた”?

 

貴様らがソレを言うのか?

 

リンネ()から全てを“奪い尽くした”連中が?

 

…笑わせる

 

なら返せ

 

返せ

 

ママを

 

パパを

 

“みんな”を

 

 

 カ エ セ

 

 

 

 

 真戸を襲った、押し潰す様な殺気は一瞬だった。

 

「!?、チッ!」

 

 真戸は自分に向けられた殺気に気が付くと同時に、間合いを取るべく、後ろに飛び退ろうとした。

 しかし、キュウビに突き刺したナルカミが抜けないことに気が付いた瞬間、躊躇いなくナルカミを手放し間合いを取った。

 自身の切り札ともいえるクインケを失うのは惜しかったが、真戸が長年、捜査官として磨いてきた“直感”に従い間合いを開けることを最優先したのだ。

 

 そして、その直感は正しかった。

 

 つい一瞬前まで真戸がいた空間にキュウビの鱗赫が、甲赫が、羽赫が、尾赫が、叩きこまれていた。

 無論、人間がそのうちの一撃でも喰らえば、いや、掠めただけでも死に至るような、文字通り「必殺」の攻撃。

 その余波も生半可なものではなく、避け切っていたはずの真戸を余波のみで数メートル吹き飛ばしていた。

 

「がっ!?ぐ、うぅ!」

 

 だが、真戸もそこらの一般人とは一線を画す身体能力の持ち主。衝撃を利用し、ダメージを追いながらも距離を取り、自らの右腕と共に吹き飛んでいたクインケ(フエグチ)を手にした。

 

「ハァ…ハァ…」

 

 間一髪、窮地から逃れた真戸にキュウビが問いかける。

 

『あなたは、あなた達はなんで私から奪ったの?』

 

「あ?」

 

『なんで私から奪ったの?』

 

 問いの意味を計りかねている真戸をよそにキュウビは問いを発し続ける。

 

『なんでママを奪ったの?』

 

 抑揚もない、

 

『なんでパパを奪ったの?』

 

 感情すら感じられない、

 

『なんで奪ったの?』

 

 冷たい声で、問いかけた。

 

 その問いに何かを察した真戸からプレッシャーが消え失せた。そして真戸は問いに答えず、逆に問いを返した。

 

喰種(化物)、名は?」

 

『まだ答えを聞いてない。』

 

「年長者は敬いたまえ。」

 

 問いの答えを得られていないキュウビが反論するも、真戸は取り付く島もなく切って捨てる。

 

『…』

 

「…ふむ。」

 

 答える気のないキュウビ(リンネ)の様子を見た真戸は、静かに話し始めた。

 

「いいか?私達(人間)は貴様らのような赫子()を持たない。そして貴様らはそれをいいことに奪って、奪って、奪い続けてきた。」

 

『…』

 

「それは違う、とは言えまい。現に、今この瞬間にも貴様のように親を失った(・・・・・・・・・・・)子供が増え続けている。そしてそのような子供はCCGの本部や支部にごまんといる。」

 

 真戸はそこまで話すと口を噤み、空を見上げた。

 

喰種(化物)に説教をかますとは…私も焼きが回ったのか…やれやれ…最近はこのようなことばかりだ」

 

私達(喰種)が正義だなんて思ってはいない。けど貴方達(人間)が絶対の正義だなんて、私は認めない』

 

 リンネの呟きを聞いた真戸はフエグチを構え、告げる。

 

「さて、キュウビ(化け物)よ。私はもう満身創痍。…次が最後だ。貴様の正義(エゴ)を貫く覚悟があるなら私を斃してみろ。」

 

「私を、殺してみせろ。」

 

 その言葉と同時に、真戸から先ほどよりも強いプレッシャーが放たれた。

 

「しかし私の首、簡単に取れると思うなよ…!」

 

 リンネもそれに応えるように、自らを串刺しにしているナルカミを掴み、引き抜くと足元に無造作に投げ捨て、前傾態勢を取った。

 

「…」

 

『…』

 

 いつの間にか雨は上がり、湿気を含んだ重苦しい空気が周囲を包んでいた。

 そして次の瞬間、雲の切れ間から月が顔を覗かせ、その光が二人に降り注いだ。

 

 瞬間、両者は同時に動いた。

 

 数メートルの距離など一瞬で踏みつぶし、互いをキルゾーンに捉えた瞬間、真戸は最も使い慣れたクインケ(フエグチ)を振りかぶり、キュウビ(リンネ)は自身の持つ赫子の中でも最も得意とする鱗赫を横薙ぎに払った。

 

 ほんの一瞬。

 普通の人間では見ることすら叶わない交錯は、

 

「ぐ、が…」

 

『っ…』

 

キュウビ(リンネ)の勝利に終わった。

 

 赤い飛沫を残しながら真戸の左足が腿の半ばから断ち切られ、その滑らかな断面から噴き出した血が空に浮かぶ月を二つに裂くように宙を舞った。

 片足を失った真戸はバランスを崩し仰向けに倒れる。

 

 しかし、真戸の放った渾身の一撃はキュウビ(リンネ)の防御を貫き、その一撃を届かせていた。

 真戸の一撃はキュウビ(リンネ)の横腹を抉った。

 

 

 

 

「か、ふっ…どうした…?止めを、刺さないのか?」

 

 右腕と左足を失い、気力も体力も底をついた真戸は仰向けに横たわり、自嘲気味に問いかける。

 

「どうした?…目の前の仇は、もう…満足に身動きも取れない…これ以上ない機会だぞ?」

 

『…』

 

 目の前のキュウビ(リンネ)は何も答えず、ただ黙って真戸を見下ろしていた。

 

「ふん…」

 

 リンネが何の言葉も発さずにいると、真戸がぽつぽつと話始めた。

 

「私は、何も守れなかった…失ってばかりだった…」

 

「愛する女一人も守れず…そしてその仇すら討てなかった…逃げ回るばかりで何も出来なかった…何も…」

 

「だから、私は力を求めた。そのために随分無茶をしたよ…」

 

「私達人間が貴様等化け物(喰種)に勝つためには、並大抵の手段では不可能だった。」

 

「だから、私は文字通り命を懸けた。」

 

 真戸はため息を吐くと目を閉じた。

 

「いや、もう関係のないことか…さっさと止めを刺したまえ。これでもう終わりだ。」

 

 そう言って目を閉じた真戸の横腹にリンネの蹴りが炸裂した。

 

「ガッ、ハァ!?」

 

 呻き声をあげて転がっていく真戸をキュウビ(リンネ)が冷たい目で見降ろしていた。

 

『諦めるの?』

 

 河原の土手によりかかる様にして止まった真戸に、キュウビ(リンネ)は一歩一歩距離を詰めていく。

 

「ぐっ、痛めつけるのがお好みか?」

 

 キュウビ(リンネ)は真戸の言葉に何も答えない。

 

「ふふふ…まあ、私には似合いの最後か…」

 

 自らを嘲笑うように呟く真戸の胸倉をキュウビ(リンネ)が掴み上げる。 

 

『諦めるの?』

 

「くっ、ふん…今更、出来ることなど…」

 

 血を流し過ぎたのか、朦朧とした意識の中弱々しく言葉を紡ぐ真戸。

 しかしキュウビ(リンネ)は耳を傾けることなく問い詰める。

 

『諦めるの?』

 

 繰り返されるその問いに真戸は声を荒らげる。

 

「今更…今更私に何ができると言うんだ!?」

 

 真戸は途切れつつある意識を必死に繋ぎ、血を吐くように叫ぶ。

 

「こんな様の私に、手足を捥がれ虫のようになった私に!」

 

 そう叫んだ真戸にリンネは身に纏っていた赫子を解き、素顔を晒し問いかける。

 

「何もないの?本当に、何一つ、残っていないの?」

 

「…」

 

 そう問い詰められた真戸は焦点も会わない目でリンネを睨みつける。

 例え、睨むことしかできなくなろうとも。

 

「…」

 

「…」

 

「そう、なら…いい」

 

 リンネは真戸に対してそう呟くと踵を返しその場を立ち去った。

 真戸は目の前の脅威が去ったことを認識すると緊張の糸が切れたのかその場で崩れ落ちた。

 

 その瞬間、意識が途切れる直前、自らを呼ぶ声が聞こえた気がしたが、それ以上意識を保つことは出来無かった。

 

 

 

 

――20区・市街地――

 

 

「はあ…」

 

 真戸との戦いを終えたリンネは市街地に戻って来ていた。

 

 正確にはあんていく近くの路地を歩いていた。

 

「はあ…なーんであんなことしちゃったかなぁ…顔まで晒して…まーた新しい寝床探さなきゃいけなくなるかもしれないのに…」

 

 リンネのそんな呟きは誰の耳にも届くことはなかった。

 

 しかし、彼女にしては珍しく、今回は大きな見落としをしていた。

 

 強者(真戸)との戦いで疲労していたのか自らを見つめる相貌に気が付くことはなかった。

 

「ふむ…あの喫茶店には面白い“素材”が多いが…リンネ(彼女)はその中でも飛び切りの逸品だ…」

 

 その相貌の持ち主は満足そうに幾度か頷くと夜の闇へと消えて行った。

 

 薄気味悪い笑みを浮かべ、まるで獲物を前にした狼のように。




 改めましてお久しぶりですm(__)m
 今回、百足と狐と喫茶店と 16話をお送りいたしました。
 
 本当に遅くなってしまって申し訳ない気持ちで一杯です…(´・ω・`)

 今回はネタ等は無しで次回予告に参ります…

 ネタ等は来週以降投稿予定の閑話で…

 ~次回予告~

 九尾は辛くも復讐者を退けた。
 しかし、彼女を見つめる影、生き残った復讐者。
 彼女の前にはいまだ多くの障害が待ち受ける。
 次回、百足と狐と喫茶店と 第17話

 美食家の笑みは九尾へと

誤字報告、感想お待ちしています<m(__)m>
次回もお楽しみに!

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