百足と狐と喫茶店と   作:広秋

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さて」今回で原作三巻終了。
やっとあの方を出すことが出来ます。
皆さん大好き、ギャグにネタにと大活躍のあのお方ですw
一応今回は大きな原作乖離があります。
これに関しては賛否両論あると思いますが…
まあ、こんなマイナー作品でどうこうなったりはしないだろう(慢心)

一応物語としてはひと段落着く15話、お楽しみください<m(__)m>


と、なる予定でしたが文字数が増えに増え、あまりにも長くなってしまったので分割することにしました(´・ω・`)
後半(16話)は再推敲してからの投稿になります。
本当に申し訳ない<m(__)m>


~前回までのあらすじ~

 
 少年が初めての戦いで勝利を収めた。
 一方、復讐者同士は戦いの幕を上げた。
 この戦いの結末は彼らに何をもたらすのか。


15話 復讐者の悲嘆は九尾へと

――20区・郊外、橋の下――

 

 

「どうした?ラビット。その程度か?」

 

「チィ!」

 

 目の前の男が嘲る様な言葉とともに攻撃を放つ。

 トーカは、風切り音を立てながら迫ってくる一撃が致命に近い威力を持っていることを悟る。

 

「くっそ…」

 

 普段の悪態は鳴りを潜め、目の前の攻撃を凌ぐことに手一杯のトーカ。

 その様子を楽しむように男の放つ攻撃のスピードが上がっていく。

 

「さあ、もっとだ!凌いで見せろ喰種(化け物)!」

 

 通常、トーカは敵の攻撃を正面から受け止めることはせず、羽赫の機動力で敵の攻撃を躱し反撃の一撃を叩きこむ一撃離脱を主とする戦いをする。

 しかし、今回は後ろにヒナミが居る以上、迂闊に後ろに受け流すことも出来ず、じりじりと消耗していた。

 

「そらそらそらぁ!喰種(虫けら)」ぁ!その程度か!?」

 

「こん、のぉ…調子づくなァ!人間がァ!」

 

 このまま消耗を重ねるのは得策ではないと判断したトーカは一気にギアを上げ、短期決戦を図る。

 

「こ…っ、のォ!」

 

 だが、手数で負け、技量で負け、また一撃の重さでも負けていたトーカは一時的に間合いを詰めることには成功したものの、あっさりと対応され攻めあぐねてしまった。

 

「くっ…うぅ…」

 

 そして、恐れていた事態が起きた。

 もともと、かなりの消耗を強いられていたトーカのスタミナがほぼ尽きてしまったのだ。

 

「はぁ、ぐっ…」

 

 もともとトーカの赫子は持久戦、長時間の戦闘に不向きな羽赫。

 加えて、無理な攻勢に出たために消耗はさらに加速していた。

 

「はぁ…はぁ…、くっ…」

 

「どうした?もう終いか?」

 

 喰種のスタミナは一般の人間より圧倒的に多いとはいえ、決して無限ではない。

 そして、体力が尽きれば赫子の展開も出来なくなる。

 

 こうなってしまえば、トーカにはもう打つ手がなかった。

 

赫子(玩具)はもうおしまいかァ!?」

 

「くっ…」

 

 自身のの最大の武器を失い、疲労困憊の状態に陥ったトーカは理解していた。

 目の前の男相手には勝ちを拾える可能性など、万に一つもないということに。

 

「こ、これ以上は…」

 

 トーカに限界が近いことを悟った捜査官の男は嬲る様に連撃を加えていく。

 

 

 

 

 トーカは現在の状況を分析しながら自問自答する。

 

・・・状況は、最悪。

 

・・・私は、もうまともに動けやしないし、赫子も、もう打ち止め。

 

・・・逃げる?

 

・・・まさか。あの状態のヒナミを置いていく訳にはいかない。

 

・・・といっても、こちらに勝ち目はほぼ無い…

 

・・・…詰み、か?

 

 “詰み”

 その単語が脳裏をよぎった瞬間、トーカは強い寒気に襲われた。

 そうして、脳裏に浮かんできたのは自分とヒナミの無残な亡骸。

 その吐き気すら覚える光景に、トーカは思わず足を止めてしまった。

 無論、目の前の敵がそんな隙を見逃すはずもなく、ここぞとばかりに一撃を放ってきた。

 

 

 

 

 幼子は薄暗い物陰からその光景を眺めていた。

 自分を護るために矢面に立った少女が戦っているのを。

 

 そして、その少女の命の灯が消えようとしている光景もまた、見ていた。

 

「…!」

 

 その光景が、母親の最期(あの日の記憶)重なる。

 幼子の心が、本能が理解する。

 目の前の少女は、自分を守るため(自分のせいで)死ぬ、と。

 

「いやだ…」

 

 火の消えた暖炉のように冷え切った幼子の心にかすかな灯が灯る。

 

「嫌だ…!」

 

 血を吐くような声と共に幼子の心の仄暗い灯が燃え上がる。

 

「いやだ…嫌だ…嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…!」

 

 幼子は拒絶する。

 

「トーカお姉ちゃんが、死んじゃうのは、嫌だ…!」

 

 そして幼子は覚悟を決める(立ち上がる)

 

「お姉ちゃんは…」

 

 自らの力を、明確な意図をもって外に向ける。

 

「やらせない…!」

 

 その意思を込められたヒナミの一撃は、今まさにトーカに止めを刺そうとした男に吸い込まれていった。

 

 

 

 

――ふん、この程度か――

 

 真戸は心の中で一人呟く。

 

――大体、この程度の奴に手間取りおって…支部の奴らも情けない――

 

 しばらく交戦していると不利を悟った喰種が一気に攻勢に出てきた。

 

―小賢しい…その程度でどうにかなるとでも思ったか――

 

 そうしてしばらくの間攻撃を捌いていると目の前の喰種の少女が力尽きた。

 攻撃にキレがなくなり、動きも精彩を欠いた。

 

――限界か…ならば…!――

 

 そうして、真戸は敢えて攻撃の手を強める。

 目の前の敵(化物)を屠るために。

 

 

 しかし、

 

 

――これで…!――

 

 

 勝利を確信した真戸の一撃は、

 

 

――クタバレェ!――

 

 

 届かなかった。

 

 

 

 

 トーカは目の前に迫っていた一撃に備え、とっさに腕で頭を庇ったがいつまでも衝撃が襲ってこないことに気が付き、そっと腕の間から目の前を伺う。

 そして、トーカの目に映ったのは不思議そうな顔をさらしている男と、男の右腕に握られたまま(・・・・・・・)あらぬ方向に吹き飛んでいく、先ほどまで自分に迫って来ていたフエグチ(クインケ)だった。

 

「…あ?」

 

「な、なにが…」

 

 状況を呑み込めていないトーカだったが、突如、真後ろから発せられた強烈な殺意(・・)に身をすくませる。

 それと同時に目の前の男も大きく横に飛び退る。

 男が飛びのいたのとほぼ同時に、先ほどまで男が居た位置に赫子(・・)の一撃が叩きつけられた。

 

「な、何が…」

 

 そう言って、恐る恐る背後を振り返ったトーカの前にいたのは、

 

 丸太のように太い、獰猛な大蛇のようにのたうち回る一対の鱗赫

 

 外敵を威嚇する蛾の羽ように大きく広げられた、目玉のような模様の浮かんだ一対の甲赫

 

 それらを発現させ、光のない瞳で薄く笑うヒナミの姿だった。

 

 

 

 

「さーてと。二人で対処できる状況じゃなくなっちゃったか」

 

 リンネは捜査官相手に奮戦するトーカとヒナミを近くの建物の屋根の上から眺めていた。

 

「さて、そろそろ私が出た方がいいのかねぇ…」

 

 彼女は、トーカにヒナミの位置を教えた後、ここでずっと二人の様子を観察していた。

 もちろん、トーカが苦戦している様子も見ていたが、ヒナミの予想外の援護もあり、出ていくタイミングを完全に失ってしまっていた。

 

「まいったなぁ…すこーしばかり実戦を経験させるつもりが…ほんとにまいったなぁ。リョーコさんに約束したのにこれじゃあ、なぁ…」

 

 そうぼやいていたリンネだったが、ヒナミが本格的に攻勢に出るとその攻撃が“殺す気”で放たれていることに気が付き、顔を青くした。

 

「まって、まってまって、まだ人殺し(ソレ)は早いっ!」

 

 リンネは素早く最低限の赫子を展開するとヒナミの攻撃の射線上に割り込んだ。

 

 

 

 

 ヒナミは自らの赫子を使い、先ほど片腕を切り飛ばした男に追撃を加えて行った。

 男はその攻撃を避け、時に左手に構えたナルカミ(クインケ)で受け流す。

 そんな状況下でもあるにも関わらず、男は新しい玩具を見つけた子供のように言う。

 

「なんと!その距離から私の右腕を肘から先を持っていったのか!?素晴らしい、実にいい赫子だ!欲しい!」

 

 完全に場の流れから取り残されていたトーカは男の言葉に首をかしげる。

 

「赫子が欲しい(・・・)?アンタ、いったい何言ってるの?」

 

 その質問を聞いた男は大きく間合いを取り、ヒナミの赫子の射程範囲から逃れた。

 そして、肘から先がなくなった右腕とクインケを持った左腕を左右に広げ、役者のように芝居がかった調子で話し出した。

 

「不思議に思わなかったのか?なぜ、私たち人間が貴様らの赫子を武器として使えるのか。赫子(コレ)は人間には作れない。だからある所から持ってくる必要がある。」

 

 その言葉を聞いたトーカは何かに気が付いたように息を詰まらせると問いかけた。

 

「まさか、お前らのクインケ(ソレ)は…」

 

 トーカの問いかけに男は気がふれたような笑みを浮かべ答える。

 

「正解だよ小娘(化物)。クインケは貴様らの赫胞、赫子から作るのだからなァ!」

 

 その瞬間、男は半歩後ろに下がるとバランスを崩し、そのまま地面に倒れこんだ。

 

「ぐ、うぅ…」

 

 倒れこんだ男が呻き声を上げると、唐突にヒナミが口を開いた。

 

「そんなことのために私のお母さんを殺して、お姉ちゃんまで殺そうとしたの?」

 

 その冷え切った問いかけには、嘲る様な答えが返ってきた。

 

「なぜ、貴様らのようなゴミ(・・)の都合に私達が気を配る必要がある?」

 

 瞬間、男の姿が掻き消え河原の土手に叩きつけられた。

 

「もう、いいや。あなたは、もういい。」

 

 その言葉と共にヒナミが一歩前に踏み込んだ。

 

「さよなら。」 

 

 そして、止めを刺そうとしたヒナミは、その瞬間背後に突然現れた(リンネ)によって意識を刈られ、その場に崩れ落ちた。

 捜査官の男は突然の事について行くことが出来ずにいたが、トーカは驚きながらも抗議しようとする。

 だが、リンネに言葉を遮られてしまった。

 

『その子を連れてここから離れな。コレの相手は私がする。』

 

 しかし、リンネの行動を理解できないトーカは声を上げる。

 

「なんでこんなことするの!?」

 

 今にも掴みかかってきそうなトーカにリンネは淡々と告げた。

 

『その子に、人を殺させたくない。』

 

「なっ…!?」

 

『これじゃあ、駄目?』

 

 リンネはそう言って羽赫、甲赫、鱗赫、尾赫の全てを展開し、こちらに背を向ける狐の姿から九尾の姿へと変貌した。

 トーカはその様子を見て何かを悟ると静かに言う。

 

「戻ったら、あんたには聞きたいことが山ほどある。逃げんじゃないわよ。…ちゃんと帰って来なさい。」

 

 しかし、リンネはその言葉に反応を返すことなく、静かに、トーカ達と捜査官の男との間に立ち塞がっていた。

 その様子にトーカは首を静かに横に振ると、気を失い、赫子も消えたヒナミを横抱きに抱えて踵を返した。

 

「おいつの持ってる剣みたいなクインケ、遠距離でもキツイの飛んで来るよ、気を点けな」

 

 トーカのその警告にリンネは一度トーカに視線を向けると、赫子越し籠った声だったが気遣うような声音で言った。

 

『市街地外れの公園に向かいな…そこにカネキ(あいつ)もいる。一応、マシにはなった。いないよりはいい。』

 

「…!」

 

 リンネの言葉に一瞬驚いた表情を浮かべて振り返ったトーカは「ありがと…」と小声で言い残して今度こそ踵を返しその場を立ち去った。

 

 そして、その場に残されたのは、

 

「またしても…またしても…貴様か…!」

 

 憤怒の形相を浮かべる

 

「貴様らは…何度…何度私の邪魔をすれば…気が済むのだっ!?」

 

 (復讐者)だった。




~次回予告~

 九尾の介入により窮地を脱したトーカ。
 トーカはヒナミと共にカネキとの合流を図る。
 その場に残った九尾と復讐者の結末は何をもたらすのか。
 次回、百足と狐と喫茶店と 第16話

 復讐者の後悔は九尾へと


※今回はネタは何もないよ!
 なんせ就活のせいで考える暇がなかったからね!
 本当にごめんなさい<m(__)m>

誤字報告、感想お待ちしています<m(__)m>
次回もお楽しみに!

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