百足と狐と喫茶店と   作:広秋

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 ソロモンよ、私は帰ってきたああああぁぁぁぁ!!
 
 はい、お久しぶりです。
 更新が遅れてしまって本当に申し訳ないです。
 学校の試験は切り抜けた(単位は生き残れたとは言っていない)のですが資格の試験が控えているために更新はやはり不定期になってしまいます。
 本当に申し訳ないです(土下座)

 それにしてもなんで更新止まっている間にお気に入りが増えているんですか?(驚愕)
 50到達してるなんて流石に想定外でした。…この調子で感想なんかも欲しいかなぁって…
 …あ、調子に乗りすぎですか。すみません(´・ω・`)

 ちなみに今回の投稿にあたりタグにオリジナル設定を追加しました。
 …つけ忘れてた訳じゃないんだからね?(汗)

 今回はリョーコ&リンネvsCCGの翌日の朝、つまり前回の別視点です。
 別視点と言ってもあんていく視点なのですが。

 
~前回までのあらすじ~

 ヒナミを守るため強くなること決意したリョーコ。
 そして、CCGではある作戦が始動しようとしていた。


9話 子の号哭は狐へと

――20区・あんていく近くの道路――

 

 

 大学の試験が終わり午前中からシフトが入っていたトーカはあんていくへと向かっていた。

 

「ああ…古典やらかした…不味い…絶対に不味い…」

 

 表情はとても沈んでいたが。

 

 

――あんていく前――

 

 

「あれ?」

 

 あんていくの前に着いたトーカは店の表示が『CLOSE』になっているのに気が付く。

 

「お店開いてる…よね?」

 

 トーカは「今日お店休みだっけ?」と呟きながらあんていくに入って行った。

 

 

――あんていく――

 

 

「おはようございまーす」

 

 トーカがそう言って店に入るとカウンターには芳村がいた。

 トーカは早速店の表示のことを芳村に言おうとするが、

 

「あ、店長、表の表示「トーカちゃん…」

 

暗い表情をした芳村に遮られてしまった。

 

「…何か、あったんですか?」

 

 顔をしかめながら疑問を口にするトーカに芳村は静かに言った。

 

「2階に来てくれるかい?」

 

 

――あんていく・二階従業員用休憩室――

 

 

 状況が呑み込めないトーカが芳村に連れられあんていくの2階にある従業員用の休憩室に入ると、そこにはカネキ、古間、入見の三人、そして普段はあまり顔を見せることのない四方の姿があった。

 

「四方さんまで…」

 

 そしてこの場に漂う不穏な空気に気が付いたトーカが口を開く。

 

「…何かあったんですか?」

 

 トーカの問いに対し芳村がその重い口を開く。

 

「…笛口さんがCCG捜査官の手にかかり、行方不明になった」

 

「は?」

 

 呆けた様子のトーカに芳村は説明を続ける。

 

「ヒナミちゃんを庇ってのことらしい。襲撃直後、私もその現場に急行したのだが僅かな戦闘痕が残されているだけで特に手がかりはなかった」

 

「っ…!」

 

 唇を噛み、悔しそうな表情を浮かべたトーカが壁を殴りつけると、静かな室内に鈍い音が響いた。

 

「ヒナミは…?」

 

「…奥で寝かせてある。それともう二つ悪いことがある」

 

「一体なんですか?」 

 

 芳村の答えに顔を俯かせたトーカは苦々しげな口調で芳村に続きを促した。

 

 続きを促された芳村の口から告げられたのは限りなく最悪に近いものがった。

 

「ヒナミちゃんはCCGに恐らく顔を見られている。そして残念ながらその対処も出来ていない。さらに、これは確証はないが、笛口さんが襲われたと思われる場所に笛口さんとは違う赫子の戦闘痕があった」

 

「!…それってつまり!」

 

「…トーカちゃんも同じ結論に達したようだね」

 

 何かに気が付いた様子のトーカに芳村は告げた。

 

「笛口さんはCCGの襲撃を受けた上、別の喰種による襲撃を受けた…共食いか何かは分からないが戦闘痕がある時点で確定だろう」

 

「そんな…」

 

 ショックを受けている様子のトーカに芳村は言葉を続けた。

 

「ヒナミちゃんはしばらくはあんていくで預かるが、時期が来たら“24区”に移す予定だ」

 

 その言葉を聞いたトーカは声を荒らげ芳村に食って掛かる。

 

「店長、何を言っているんですか!?あんな肥溜めみたいなところでヒナミが一人で生きていけると思っているんですか!?」

 

 トーカは目つきをますます厳しくさせ、言葉を続ける。

 

「“白鳩(ハト)”もその乱入してきた喰種も殺せばいい!四方さんもいるし皆で、奴らがヒナミのことを探り出す前に!」

 

「駄目だ」

 

 興奮するトーカに冷や水を浴びせたのは今まで微動だにしなかった四方だった。

 四方は壁によりかかったまま冷たく言葉を続ける。

 

「20区内でCCGの人間が死亡する事件が続けば好戦的な喰種がいると判断されるだろう。そうなれば“本部()”の奴らは次々に捜査官たちを送り込んでくるだろう…俺達を狩りつくすまで…」

 

 そこまで言うと四方は一度言葉を切り言い聞かせるように再度口を開いた。

 

「皆を危険に晒すわけにはいかない。それにその乱入してきた喰種の正体も我々は掴めていないんだ…解れ、トーカ」

 

「でもっ!「トーカちゃん」

 

 なおも食って掛かろうとするトーカの言葉を遮ったのは芳村だった。

 

「四方君の言うとおりだ。みんなの安全のためにも彼らに手を出すわけにはいかないし、下手に動くこともできないんだ」

 

 トーカはその言葉に俯く。

 

「分かってほしい、みんなの安全を守るためにはこれが“最善”なんだよ」

 

 黙って俯いていたトーカだったが芳村の言葉に含まれていた単語に反応した。

 

「…“最善”?」

 

 するとトーカは憤りを隠そうともせずに吐き捨てた。

 

「仲間がやられたのをただ黙って見ている。それが店長の“最善”だと?」

 

 そこでトーカは一度言葉を切ると今度は悲しそうな口調で話し始めた。

 

「ヒナミは…父親を白鳩(ハト)に殺されてる…そして今また母親であるリョーコさんまで…行方不明と言っても生きている確率は低いって店長も分かっているんでしょう?せめて、仇くらいは取れないと…ヒナミが可哀そうよ…」

 

 しかし、トーカのその訴えにも芳村は厳しい言葉で返す。

 

「本当に可愛そうなのは、復讐に囚われて自分の人生を見失ってしまうことだよ」

 

「…私に…わたしに言ってるんですか?」

 

 芳村の言葉になおも反発するトーカだったが芳村が悲しそうな“目”をしているのに気づくと勢いよく部屋を飛び出して行ってしまった。

 その後、芳村が定員たちに身の回りに気を付けること。そしてCCGの人間に手を出さないよう言い、お店のお客たちにもその旨を伝えてほしいという連絡で今日の集まりはお開きとなった。

 今日はあんていくも休みになるらしく古間と入見も引き上げていった。

 しかし、トーカが心配だったカネキは店を出てトーカを追いかけようとしたが芳村に呼び止められ、あんていく裏の職員用通路で向かい合っていた。

 

「カネキ君…君は自分を責めてはいけないよ。むしろ責められるべきなのは私の方だ」

 

 思いつめた様子のカネキに気を使ったのか芳村が先に口を開いた。

 

「私は…間に合わなかった…それだけだ。だからカネキ君、君が自分を責める必要はないんだよ」

 

 そう芳村はカネキを慰めるが、カネキは俯いたままだった。

 その後、芳村に真っすぐ家に帰るよう諭されたカネキはそのままあんていくを出て行った。

 

 

 

 

 その後しばらくしてあんていくに来客があった。

 

「マスタ~?居る~?」

 

 今回の事件の当事者…どころか中心に位置している人物、リンネだった。

 

「あれ?CLOSEになってるのに開いてる…まあいいや、お邪魔しま~す」

 

 人が見当たらなくても鍵が開いている+知っているところだからOKという思考をしている彼女はあっさり中に入って行く。

 そしていつも通り二階に上がると芳村が居た。

 何から話したものかとリンネが迷っていると芳村が口を開いた。

 

「おや、リンネちゃん。どうかしたのかい?」

 

 そう声をかけてくる芳村の声に“影”を感じたリンネは何かあったことに気付き、それが何なのか知るために探りを入れることにした。

 

「店長?何かあったんですか?」

 

「…何でも…いや、リンネちゃんにも話しておこうか」

 

 そうして探りを入れようとしたリンネだった芳村が自分から話し出したことに半ば喜び、そして半ば驚いた。

 そして、リンネに彼が語ったのは以下のようなことだった。

 

 ・昨日、リョーコさんがCCGと思われる人間に襲撃を受けたこと

 ・その後、さらに正体不明の喰種に襲われた可能性があること

 ・リョーコさんは行方不明だが幸い、ヒナミちゃんは無事であること

 

「…」

 

 そこまで聞いたリンネは腕を組んで考える。

 リンネも、まさか自分まで襲撃者側だと思われているとは思っていなかったのだ。

 しかし、ここでリョーコのことを明かしてしまうと自分自身は勿論、あんていくにも危険が及ぶと考えたリンネはリョーコのことを伏せておくことを決めた。

 

「リョーコさんのことについてリンネちゃんは何か知っているかい?」

 

「っ!いや、ごめんなさい…」

 

「そうか…何か分かったらどんな些細なことでもいい、私に教えて欲しい。頼めるかい?」

 

「分かりました」

 

 一瞬思考を読まれたのか!?と焦ったリンネだったが流石の芳村もさすがにそこまでは読めなかったのか特に追及することもなく、その後リンネに今日は店を閉めることを伝え、帰るように言うと奥に引っ込んでしまった。

 

 

 

 

――20区・カネキのアパート――

 

 

 あの後自分の部屋に帰ってきたカネキは特に何もせずにいたが日が落ちてきたのに気づき、とりあえずシャワー浴びなきゃ…と呟くとシャワー室に入り、熱めのお湯を頭から浴びた。

 しかし、頭の中に響くのはシャワーから流れてくるお湯の音ではなく、昨日のヒナミの泣き出しそうな声。 

 そして感じるのはお湯の温かさでなく昨日の雨に濡れたヒナミを受け止めた時の冷たさとヒナミの必死な声を聴いたときに感じた身を刺すような不確かな冷たさだった。

 

「うぅ…」

 

 カネキは考える。

 もっと自分に力があればリョーコさんを助けられたのかと。

 芳村はカネキに「自分を責めるなと」言ったがカネキはその考えを止められない。

 脳裏に浮かぶのはヒナミのノートと人を傷つけないように生きて行こうとしたリョーコの言葉。

 世間的には駆逐されるべきなのは喰種だと頭では理解している。彼らCCGの人間がヒトの世界と平和を守るために喰種を殺すのも理解できる。

 

「クソ…クソっ…!」

 

 しかし、頭で理解できても心で受け入れられない少年は思う。

 “もっと力があれば”と。

 

 少年は誓う、更なる力を得ると。

 その思いの先に何が待っているのかも知らずに。

 

 

 

 

――20区・外れ――

 

 あんていくを離れ、同僚である入見から今回の事件の下手人である捜査官の画像を受け取ったトーカはその捜査官を狂ったように探し回っていた。

 そうして20区中を駆け回ること数時間、画像に写っていた男達によく似た人影を見つけたトーカは彼らの死角となる位置移動する。

 

「見つけたァ…」

 

 ついに目標の捜査官らを見つけたトーカの声には押さえきれない喜悦が滲んでいた。

 可愛らしいウサギのキーホルダーを着けた携帯を片手に握りしめたトーカ優しく、そしてどこか冷たい声で言う。

 

「待ってなよ、ヒナミ・・・私が、怖いものを全部無くしてあげるから・・・」

 

 そう呟く少女の目には燃え上がるような憎悪と冷徹な殺意とが浮かんでいた。

 

 少女は誓う、己を慕う幼子のために仇を殺し尽くすと。

 復讐に曇った眼では何も見つからないのも知らずに。

 

 

 

 

ーー20区・あんていく二階、空き部屋ーー

 

 普段は使われていないあんていくの二階にある空き部屋。

 そこには一人の幼い少女が毛布に身を包み、震えていた。

 

「お母さん・・・」

 

 哀しみに満ちた呟きは誰の耳に届くこともなく部屋の壁に吸い込まれて消えた。

 

「寂しいよ・・・お母さん・・・」

 

 哀しみに暮れる幼子の心は確実に歪んでいく。

 そして、幼子は思う。なぜ、私の大切なものを取り上げていくの?と。

 

 幼子は誓う、自分の大切なものを取り上げていくものと戦うと。

 戦いの道がどれだけ険しいかも知らずに。

 

 

 

 

ーー20区・CCG支部、地下ーー

 

 

 20区にあるCCG支部の地下。

 そこには捜査官らが訓練などに使う施設があり、クインケの慣熟訓練や新人への指導、またクインケや喰種に関する実験を行うことが出来るスペースがあった。

 その地下区画の内、奥まったところにある広めの部屋には“黒いケース”を手に持った真戸が立っていた。

 

「さて、今回の一件…“狐”乱入の報の直後、本部から贈られたこのクインケ…」

 

 そう言って真戸は黒いケースを肩の高さまで持ち上げ、愉快そうな笑みを浮かべた。

 

「恐らく、20区に“狐”が確認されたことにより戦力の増強を図ろうという魂胆だったのだろうな…」

 

 そう、先日“狐”が20区に出現したことを重く見たCCG本部は、早急な戦力の増強という名目で貴重なSレートのクインケの一つに配置変更を行い、それを真戸に貸し出すという名目で一時的に真戸の専用という形を取っていた。

 

「まあ、追加の人員もいいが貴重なSレート…これもいい機会だ」

 

 そう言うと真戸は、ケースの取手についているスイッチを押す。

 すると真戸の手にあった黒いケースが勢いよく開き白いレイピア(細い刃にナックルガードが着いた西洋の剣)のようなクインケが飛び出し真戸の手に収まる。

 

「Sレートのクインケ…ククク…これならば“狐”でも殺しきれるか…」

 

 まるで新しい玩具を与えられたような表情を浮かべる真戸。

 その眼には抑えきれない喜悦と喰種に対する怨念が浮かんでいた。

 

 それからしばらくの間、CCG20区支部の地下区画には電撃のような音と男の嗤い声が響いていた。

 

 そして甲高い電撃音と的の砕ける音の響く中真戸は誓う、必ず忌々しい喰種共を討つと。

 例え憎き仇を殺しつくしても何も戻らないということを知らずに。

 

 

 少年は力に、

 少女は復讐に、

 幼子は悲しみに、

 男は憎しみに、

 それぞれ囚われていく。

 その未来に何が待っているかも知らずに。

 

 

 

 

――13区・地下通路――

 

 

「ここ?」

 

「そうよ。ここで落ち合う予定になってる」

 

 場面は変わり、あんていくを出た後リョーコと合流したリンネ。

 二人はリンネが過去所属していた群にリョーコを預けるために13区を訪れていた。

 

「さてと、昔のままならここで良いはず…」

 

 リンネはそう言って赫子を発現させると周囲を見回し大声で叫ぶ。

 

「狐戻れり!狐戻れり!!」

 

 リンネの大声は地下通路に響き渡る。

 すると急な大声に驚いたリョーコがリンネに声をかける。

 

「り、リンネちゃん?一体何を?」

 

「いいの。まぁ見ててよ」

 

 リンネがそう言った直後、二人の前の暗がりから人影が出てくる。

 その男が口を開く。

 

「久しぶりですね…リン…」

 

 そういう男の顔には薄く笑みが浮かんでいた。




 …ふう、今回は真戸さんの秘密兵器とあんていく勢の心理描写がメインになりました。
 試験辛い…単位やばい…誰か助けてください…(´・ω・`)

 本編ではリョーコさんが一時的に表舞台から退場していただきます。
 アオギリ戦までには帰って来てね(´・ω・`)

 これからは原作に沿いますがちょこちょこ変わるところが出てきます。
 オリ主の本領発揮、行きますよ!
 …同じこと何回も言ってる気がする…まあいいか(阿保)

 感想で新クインケのことがばれてて草
 …なんでばれたんですかね?それとも分かり易過ぎたのか…
 あ、後者ですかそうですか(´・ω・`)

 次回はリンネたちのその後を少しとあんていく&CCGがどうなったがベースとなります。

 前書きにも書いてありますがこの先しばらくは更新が不定期です。
 申し訳ない…m(__)m

 感想、評価、誤字報告などお待ちしています!
 それでは次回をお楽しみに!


ヒナミ「お母さん返せよ」

(主)「いや…あの…すまない…本当にすまない…」


~次回予告~

 カネキは力に、
 トーカは復讐に、
 ヒナミは悲しみにそれぞれ囚われてゆく。
 そして真戸は新たな武器を手に新たな作戦を発動する。

 次回、百足と狐と喫茶店と 第10話

 復讐者の思いは狐へと

 次回も絶対見るナリよ~


ヒナミ「…ふざけてるの?潰すよ?」

(主)「すまない…本当にすまない…」

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