両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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皆狩命っていう名前、今更だけどちょっとこわいですね笑

それはさておき練習試合の続きです。
よろしくお願いします。


Episode.8

ジツリョク

 

両チームのスターティングメンバー

 

★遠沖野学院 

 

 1番 セカンド   栄川(えいかわ) 3年 右投右打

 2番 レフト    尾井田(びいだ) 3年 左投左打

 3番 ショート   椎橋(しいはし) 3年 右投右打

 4番 ファースト  東(あずま)   2年 左投左打

 5番 ライト    出居(でい)   3年 右投右打

 6番 ピッチャー  彩里(あやさと) 2年 右投左打

 7番 キャッチャー 小屋沢(こやさわ)2年 右投右打

 8番 サード    帆阪(ほさか)  1年 右投右打

 9番 センター   飯原(いいはら) 3年 右投左打

 

★ほしうら学院

 

 1番 ファースト  土屋  3年 右投右打

 2番 ライト    玄山  2年 右投左打

 3番 サード    松宮  2年 右投右打

 4番 レフト    鈴木  3年 右投左打

 5番 センター   梨田  1年 右投左打

 6番 キャッチャー 小野原 2年 右投右打

 7番 ショート   歌間  1年 右投右打

 8番 セカンド   渡   1年 右投右打

 9番 ピッチャー  双葉  1年 両投両打

 

※尚、現在一回を終わって0-0。双葉クンは、右で投げております!

 二回表、遠沖野学院の攻撃からです。

 

 

*  *  *  *  *

 

「お願いします。」

 

 一言いって、バッターボックスに入るのは四番の東。左打席に入る。

 

「キャッチャー君も、よろしくな。」

 

 

「・・ヨロシク。」

 

 

 気を取り直して、サインを出す。

 

 

 一年生投手、双葉諒。

 『両投げなんです。』と聞いたときは、正直、ナニ言ってんだコイツは?と思った。

 

 ただ、受けてみて分かった。

 

 コイツはホンモノだ、と。

 

 

 リョウは、右投ならば縦スラ、左投ならばスライダーが決め球。

 

 それなら。

 それを最大限に生かせるリードを。オレなりに。

 

 初球は、フォークだ。できるだけストライクで。

 

 リョウがうなずき、投げる。

 要求通り、ストライク。東は見逃した。

 

「へえ~、そうくるか。」

 

 ・・これはもう、無視しよう。

 

 

 見逃した。何か狙っているのか。だとしたら、何を。

 

 

 次は、アウトロー、ストレート。外れてもいい。際どいトコロに。

 

 リョウは左投げの制球力はすさまじく良く、右投げだとまあ、並程度。

 

 投じたボールは、少し内に入ってくる。

 

 ヤバイ、と思ったが、東はバットを振らず、ボールはミットに収まる。

 これでツーストライク。

 

「(振ってこなかった...。何か別の球種を狙ってるのか?)」

 

「いや~、見逃しちゃったな、もったいない。」

 

「(やっぱり、別の球種を...!)」

「(だとしたら、何だ?投げていないのは、縦スラとスローカーブだけど...。)」

 

「ちょっと~、長くない?ピッチャーの子待ってるで~。」

 

 

 言われてはっと見ると、リョウが少し不安げに俺のサインを待っている。

 

 

「(とりあえず、一球外すか。)」

 

 

 出したサインは、外のボールゾーンに、スローカーブ。

 

 要求通りに投げられ、バッターも見逃す。ツーストライク、ワンボールだ。

 

 

「(全く、ピクリとも反応しなかった...。ということは、決め球の縦スラを...?)」

「(それなら、投げなければいいだけだ。縦スラは使わないようにしよう。)」

 

 

 そこで、フォークのサイン。

「(ストライクから、ボールになる球を。空振り三振、狙っていくぞ!)」

 

 リョウも、意図が分かったようで、力強くうなずく。

 

「(さあ、来い!)」

 

 リョウが振りかぶり、投げる。

 

 少し、低いか。これじゃ、見逃される。三振は無理...

 

 

 

 

 しかし、東は振ってきた。

 

 

 フォークが来るとわかっていたかのように、ジャストミート。

 

「(ウソだろ!?フツーにボール球だぞ!?)」

 

 カキィィンン!!

 

 

 きれいな打球音。ボールは、ライト前へ――。

 

 

 

 

 

 パシッッ!!

 

 抜けると思われた打球を捕球したのは、

 

「っ!!ナイスキャッチ!洋介!」

 

セカンドに入っていた、渡洋介。

 

 

「へ??」

 

 打った東は、キョトンとしている。

 

「ナイスキャッチ、ヨースケ!!」

 

 いや、ホントに助かった。できるだけ試合前半は、ランナーを背負いたくない。

 

 

「あのセカンド一年?」

 

「ああ。守備はもはや一流だぜ。」

 

「ハハッ。すごいのもいるんだな。」

 

 

 その後、このファインプレーに背中を押され、リョウは五番の出居を縦スラで空振り三振、六番の彩里をスローカーブで見逃し三振に抑えた。

 

 

 チェンジ後。

 

「洋介!マジでナイスキャッチだった。助かったよ。」

 

「・・そう。まあ、引っ張りに警戒してたからね。」

 

「すごかったよ、洋くん!プロかと思っちゃった。」

 

「そうか?いや~、プロは言い過ぎだって、ミッチー!」

 

 未だに、先ほどのファインプレーの余波が残っていた。

 

 

 ・・それにしても、ミチタカが褒めた瞬間、表情が変わったんだが?ナゼ?

 

 

 まあ、いい。ひとまずそれは置いとこう。 

 

 体につけている防具を外す。

 そうして、ネクストバッターズサークルに向かう。

 

 俺は、六番。五番、サクラのあとに、打席に入ることになる。

 

「サクラ~!ヒット、ヨロシク!」

 

 

 しかし、俺の頼みもむなしく、サクラはサードゴロに倒れる。

 

 

 やっぱり、いいピッチャーだ。

 

 流れは、ひとまずどちらにも傾くことはなさそうだな。

 

 

 

 

 そこから試合は、投手戦の様相を呈してくる。

 

 双葉諒は、気迫のこもった力強いピッチング。三振を次々奪う。

 

 対する彩里律も、ストレート系の変化球で、打たせて取るピッチング。ヒットを許さない。

 

 

 

 試合が動いたのは、5回の表。

 

 この回の攻撃、先頭打者は、

 

 

「お願いします。・・キャッチャー君も、ね。」

 

 四番の東望だ。

 

 

「(さあ、試合も中盤。そろそろ、配球も変えていくかな...。)」

「(さっきは、フォークを狙ってた。というか、ボール球を狙ってた?)」

 

 とりあえず初球は、アウトローにストレートを。

 

 今日は、けっこう球が走っている方だ。きちんと制球できれば、長打はない。

 

 

 果たして。

 リョウは、完璧なコースに投げ込んできた。

 

 東は、当然のように見逃す。ストライクだ。

 

 まあ今のは、フツーでも手が出ない、いいボールだった。

 

「(こうなって、次だ。)」

「(かなりいいストレートだった。この初球を、活かしたい。)」

 

 スローカーブを要求。

 インコースに。外れてもいい。とにかく体に迫る感じで。

 

 

 リョウが、投げる。

 

 

 

 

 バッターは...振ってくる。

 

「(いや、待て!ボール球!)」

 

 

 完璧に捉えられた打球は、ライトスタンドへ一直線――、から、きれて、ファール。

 

 

「(助かった...。)」

「(でも、これで分かった。このバッターは、悪球打ちだ。)」

「(あまりボール球が投げられないの、なら。)」

 

 アウトローに、ストレートだ。

 

 

 きれいに投げてくれたが、東は流し打ち、レフト前へ。

 

 両チーム通じての、初ヒットがうまれた。

 

 

「(ただの悪球打ちじゃない。・・いや、当たり前だろ!四番だぞ!相手は。)」

 

「(初球と同じようなのが来てたら危なかったけど...。まあ、そこは、一年生やね。)」

 

 

 ノーアウト、ランナー一塁。五番打者は、送りバント。

 これで、ワンナウト、ランナー二塁。

 

 打席には、六番の彩里。

 

 

「(さっきは、見逃し三振。でも、ピッチャーで六番なら、打力は当然あると考えて言いはず。)」

 

 初球は、慎重に。低めボール球のスローカーブだ。

 

 

 投じたボールは、少しゾーンに入ってきてしまった。

 

 バッターはそれを見逃さず、センター前に運ぶ。

 

「(やっぱり、甘くなれば打たれるか...。)」

 

「(さっき抑えられたスローカーブ、打ち返せた!これでリベンジはできた!)」

 

「(ふふっ。りっちゃん、狙ってたんやろうな、スローカーブ。)」

 

 

 ワンナウト、一塁、三塁となる。

 

「(・・ピンチだな。次のバッターは...。)」

 

「しゃあ!まかせとけ!ランナー、返してやるよ!」

 

 七番、小屋沢。キャッチャーとしてはレベルが高い。

 

 だが、一打席目を見る限り、打力は...ほぼない。

 

「(二球で追い込むぞ。スローカーブと、ストレートだ。)」

 

 初球は、インコースにスローカーブ、二球目は、アウトコースにストレート。

 タイミングを外して空振り、きれいに決まって見逃す。

 

「(よし、理想的だ。二球でツーストライクは、デカいぞ。)」

「(というか今更だけど、スクイズはしないのか...。まあ、助かったな。)」

 

 あとは、釣り球の後に縦スラで三振にとろう。

 

 高めの釣り球。手は出してこなかった。ボールだ。

 まあ、これは、想定内。

 

「(さあ、来い!無失点で切り抜けるぞ!)」

 

 縦スラを要求。

 

 良いコースに来た!三振に...

 

 

 

 

 

 次の瞬間。

 

 

 

 バッターの小屋沢のバットが、バントをする形になる。

 

 

 !!

 

 

 縦スラは良かった。

 

 しかし、小屋沢のバントが一、二枚上手だった。

 

 コツッンン

 

 変化するボールに難なく合わせて、完璧に、一塁側に転がしてきた。

 

 

 俺は、その行く先を見送ることしかできず。

 

 リョウが一塁にボールを送ってバッターはアウトにしたものの、

三塁ランナーの東が生還するのを背中で感じた。

 

 

 

 その後、八番打者の帆阪も良い当たりを放つ。しかし打球は、ショート正面。ショートゴロで、チェンジとなる。

 

 先制点を取られた後のほしうら学院の五回のウラ。

五番梨田、六番小野原、七番渡。セカンドゴロ、サードフライ、ショートゴロ。

未だ、ヒットが出ない。さらに言えば、外野にすら、飛んでいない。

 

 六回表。ほしうら学院の投手、双葉諒は少し持ち直す。

九番飯原を見逃し三振に抑える。また、一番栄川はショートライナー、二番尾井田はレフトライナー。

栄川と尾井田は、三巡目ということもあり、捉えるようになってきた。野手正面なので助かったが。

 

 六回のウラ。

八番歌間は空振り三振、九番双葉はピッチャーゴロ、一番土屋はファーストゴロ。

依然として、遠沖野学院のエース、彩里を捉えきれない。

 

 

 そして、ピッチャーのつくる良い流れは、打線にも活気をもたらす。

 

 

 

 カキィンン!!

 

 

「(クッ...。三巡目となるとさすがに...。)」

 

 三番椎橋にセンター前ヒットを浴びる。

 

 久しぶりのランナー。しかも、ノーアウトだ。

 

 

「(次は四番の東か。どうすっかな...。)」

 

 

 リョウの方を見る。

 

「(だんだん制球力も悪くなってきてる。)」

 

 そんなことを考えていた時、リョウが俺を手招きしている。

 

 

「すみません。ちょっと、タイムを。」

 

 そう言って、マウンドに向かう。

 

 

「どうした?リョウ」

 

「あの、左にスイッチしてもいいですかね?」

 

 

 !!

 

「(そうくるか...。)」

 

「もう、右で投げてもダメだと思うんですよ。」

 

「それはまあ...そうだな。」

「だから左で、って?」

 

「はい。降板したくはないので。」

 

 

「(ほう...。)」

「左でなら、抑えられるのか?」

 

「わかりません。・・このイニングだけでも、っていうのは、強欲でしょうか。」

 

 

 

 

 キャッチャーの小野原が、主審をしていたほしうら学院の後藤に、二言、三言話す。

 

 話しかけられた後藤は、少し驚いた様子を見せた後、遠沖野学院のベンチへ。

投手の左スイッチに関することを、伝えに。

遠沖野学院のメンバーは、かなり驚いた様子。まじまじと投手の双葉諒を見る者もいた。

 

 その間に、ほしうら学院のバッテリーは、監督の元へ、了承を受けにいく。

 

 

 

 しばしの時間の後。

 

 無死一塁、打者は四番の東、投手はグラブを右手に持ち替えた双葉、という場面から再開。

 

 打者の東は、投球練習をしているときから、注意深く観察をしていた。

その感想は、

 

 『おそろしい一年生が現れたもんやなあ。』

 

 

 初球。精密な制球力を誇る左投げから、きれいにアウトローにストレートが決まる。

 

 思わず双葉の方を見る打者東。

 

 二球目は、そこから外に逃げるスライダー。

東は手を出しかけたが、なんとかバットを止める。ボール。

 

 三球目。インハイへのストレート。

アウトローからのインロー。対角線投球。球速はあまりないが手が出ない。

 

 ツーストライク、ワンボール。

 

 四球目。

 

 東の目には、外にはずれたストレートと映ったのだろう、が、ボールはそこからシュートする。

手が出ない。見逃し三振。

 

 

 完璧としか言えない投球。ワンナウトだ。

 

 右投げは、本格派タイプ。そこからスイッチした左投げは、軟投派タイプ。

それも相まって、即座に対応するのは難しい。

 

 また、今は左投げ。ランナーは一塁にいるが、走るのは難しいか。

まあ、それは、ランナーの椎橋があまり盗塁が上手くないからでもあるが。

 《これが世にいう、ご都合展開である。》

 

 

 その後、五番出居を三球で空振り三振、六番彩里を六球目で空振り三振にとった。

 

 

 一年生投手は立ち直った、完璧に。

 

 

 流れに乗りたい七回ウラ。二番打者、玄山からの打者。

 

 

 だったが。

 

 玄山は空振り三振、三番松宮はショートゴロ。四番鈴木もセンターフライで、三者凡退。

 

 

 三者凡退だが、ようやく外野に打球が飛んだ。これは小さいが、進歩したと言える。

 

 

 八回表。双葉のピッチング。

七番小屋沢は外角のストレートを打つも、セカンドゴロ。

八番帆阪は、外角スライダーで見逃し三振。

九番のところで代打、海園正。ここで、初球にスライダーがすっぽ抜け。手を出すも、ショート正面。ショートライナーだ。

 

 スリーアウト、チェンジ。

 

 

 八回ウラ。ようやくここで、流れに乗ったか。

五番梨田が、ライト前ヒット。チーム初ヒットがようやく出てくれた。

六番小野原は、送りバント。

 

 と、ここで、サードの帆阪がファーストへの送球をミス。

一塁ランナーの梨田は、三塁まで進む。

 

 一気にノーアウト、ランナー一塁、三塁とチャンスをつくる。

 

 とにかく一点を取りたいほしうら学院。打席には、七番、渡洋介。

 

 その初球、アウトコースのカットボールに対してスクイズ。

しかし、ファーストが猛然と突っ込み、本塁アウト。

 

 点数は入らず、ワンナウト一、二塁となる。

 

 八番の歌間は、初球に送りバントを試みるも失敗。

二球目。彩里のボールは歌間の身体に当たる。デットボール。一死満塁とチャンス。

 

 

 ここで、九番は双葉。見逃し三振。

 

 二死満塁から、一番土屋。ショートゴロ。

 

 

 せっかく作ったチャンスを活かすことができない。

 

 

 九回表も、双葉は完璧なピッチング。

ファーストフライ、空振り三振、サードゴロに抑える。

 

 九回のウラ。

二番玄山はサードゴロ、三番松宮はレフトフライ。

 

 簡単にツーアウトとなって、打席には四番鈴木。

初球、インコースへのカットボール。少し甘かった。

振り抜くと、打球はライトのフェンスを越えた。

 

 同点ホームラン。

 

 五番の梨田は、ピッチャーライナー。

 

 これで、試合終了。1-1。引き分け。

 

 

★得点表

               計H

 遠沖野 000010000 13

 ほし高 000000001 12

 

 

 

 両チーム合わせて、ヒットが5本。

 

 打力がないからなのか、投手が良かったからなのか。

 

 

 ・・後者だと、思いたいものだ。

 




長い。何でこうなった...。
試合描写難しいよ...。

次回からはもっと軽めにかけるように善処していきたいですね、はい。

この後は、一話はさんでから、夏大編という予定です。
よろしくお願いします。


では。読んでいただき、ありがとうございました!

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