両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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え~、はい。かなり空きましたが...第八話です。

待って下さった方がいれば、土下座して謝りマス!!


では、練習試合、第二試合です。


Episode.7

カオミシリ

 

 五月。

 世間は、GWの真っ最中。

 

 とある高校の、野球グラウンドに散らばっていく、九人の野手。

 

 

 一人の男は、グラウンドの中の少し小高いところ、マウンドに上がる。

 

 

 ふう、と一息。

 

 

 数球の投球練習を終え、相手の一番打者も打席に入る。

 

 審判から、『プレイ!』という声がかかる。

 

 その声を聞いた投手は、振りかぶり、一球目を投じる――。

 

 

*  *  *  *  *  *  *

 

 約一時間前。

 

 ほしうら学院高校の野球グラウンドに現れたのは、練習試合の対戦相手。

 

 遠沖野(とおきの)学院高校野球部。部員は、17人。

 

 

 待っていた、練習試合の相手。

 

 俺の、高校初先発試合の相手校。

 

 

「あれ?朔良じゃないか?」

 

「あ、律先輩!やっぱり!」

 

 唐突に、相手チームの人から名前を呼ばれる朔良。

 どうやら、知り合いのようだ。

 

「どうして、ココに?」

 

「それはまあ、いろいろありまして。」

「それよりも、先輩がいるということは...」

 

 

「おー!朔良!久しぶりだな!」

 

「え?さっちゃん?何でココにおるん?」

 

「やっぱり!笑先輩、望先輩も!お久しぶりです。」

「それと、望先輩。さっちゃんはやめてって何回言ったらいいんすか。」

 

 

 いやいや、ちょっと待て。

 

 なんかだんだん騒がしくなってきてないか。

 

「ちょっと、朔良。この人達、知り合い?」

 

 そう聞くと、朔良は我に返ったようになる。

 

 

 話によると、この三人の人達は二年生。

 

 朔良が、榊シニアにいたころの先輩たちだそうだ。

 

 

 一人目の人は、彩里 律(あやさと りつ)

 ピッチャー、だそうだ。

 強気の、闘志あふれるピッチングが持ち味。

 

 二人目は、小屋沢 笑(こやさわ しょう)

 キャッチャー、だそう。

 その圧倒的な野球知識で、守備の要を担う。

 

 三人目は、東 望(あずま のぞむ)

 ファースト、だそうだ。

 力強いバッティング、チャンスに強い、ザ・四番打者。

 

 

 言われてみれば、俺が五年の頃、そういう三人が榊シニアを引っ張っていたような...気もする。

 

 

「朔良以外のメンバーは、結構遠沖野に来たぞ。」

 

 律さんがそう言ったとき。

 

「さっくん?さっくんだよね!」

 

「朔良!こんなところで会うとはな。」

 

「さっくん!!久しぶり~!」

 

「おう!久しぶりだな、崇、正、命。」

 

 口々に声をかけてくる三人組。同級生みたいだ。

 

 

 後から聞いた情報だが。

 

 一人目は、帆阪 崇(ほさか たかし)

 

 二人目は、海園 正(うみその ただし)

 

 三人目は、皆狩 命(みながり みこと)

 

 三人とも、朔良の同級生で、榊シニアの出身らしい。

 

 

「さっくん!どうして遠沖野に来なかったんだよ~。」

 

「そりゃあまあ、いろいろあるんだよ、事情が。」

 

「事情ってなんだよ~。」

 

「まあまあ、別にそっちが気にすることじゃねえよ。」

 

 

 かなり話し込んでるけどいいのか、三人組よ。

 

 いろいろ荷物持ってるんだし、早めに移動した方がいいと思うけど...?

 

 

 俺がそんな風に考えていると、遠沖野高のキャプテンから声がかかる。

 

 ほら、言わんこっちゃない。

 

 

「またキャプテンに怒られたじゃん!崇のせいだよ!」

 

「そんなこと言って~、正が一番話したがってたじゃん。」

 

「そっ、そんなことないよ!」

 

「まあ、落ち着こう、二人とも。早くいかないともっと怒られちゃうよ。」

 

「そうだね。じゃ、またね、さっくん!」

 

「ああ。試合でな。」

 

 そう言って、急いで皆がいる方に向かう三人組。

 

 

 慌ただしいな。そして、

 

「仲いいな。」

 

「ホント、その通りだよ。」

 

 あれ?考えたこと声に出てた?

 

 

「でも、あんな感じだけどプレイは確かだよ。」

「それよりも、」

 

 そこで声をきり、律さん、望さん、笑さんの方に目を向ける。

 

「あの三人は、ホンモノだよ。今どうなのかはわからないけど、俺の知る限りでは、あの三人がいて負けたことは、無かったはずだから。」

 

「えっ!そんなに!?」

 いわゆる不敗神話というやつですか。

 

「ああ。でも、」

 

 そこでまた声をきり、今度は俺の方を向いてくる。

 

「諒が自分のピッチングをすれば、こっちだって負けないと思うよ。」

 

 !!!

 

「期待してるよ、スーパールーキー!」

 

「・・おう!まかせとけ!」

 

 

*  *  *  *  *  *  *

 

 そして、今。

 

 審判の合図とともに、試合が始まった。

 

 

 ほしうら学院高校は、後攻め。

 

 先に守備に入った。

 

 

 俺は、気合十分に投げ込む。

 

 一番は、右バッター。

 

 初球は、アウトローへのストレート。しかし、ボール。

 

 そこから、スローカーブを二球続ける。どちらも見逃される。ワンストライク、ツーボールに。

 

 四球目、インコースにストレート。詰まらせて、ショートゴロに打ち取る。

 

 

 二番バッターは、左打席に入る。

 

 初球、二球目と続けてストレート。どちらもファールとなる。

 

 ツーストライクから、外角のフォーク。見逃され、ボール。

 

 次も、同じ球。さっきよりかは少しストライク気味だ。これを打たせて、サードゴロ。

 

 

 三番は、右打席に入る。

 

 フォークから入り、空振りでワンストライク。

 

 ストレートは、外れてボール。スローカーブは決まってストライク。

 

 四球目は、ストレート。カットされる。

 

 次もストレート。高めの釣り球だが、手は出してくれない。

 

 ツーストライクツーボールとなり、六球目。

 

 低めへのボール。打者は振っていくが、ボールは縦に落ちる。

 

 今日初出しの縦スラで、空振り三振。

 

 

 順調な立ち上がり。三者凡退に抑えた。

 

 

 そして、一回ウラ。

 

 マウンドには、律さんが上がる。

 

 背番号1。二年生エース。

 右投げ。力強いフォームだ。ミットのいい音が鳴っている。

 

 

 この試合、一番打者は土屋冬二先輩。

 

 初球、二球目とアウトコースにストレート。どちらもいいボールだ。早くもツーストライク。

 

「さあ、先輩!ここから粘っていきましょう!」

 

 俺の声に応えるかのように。

 

 三球目の釣り球を見逃し、

 四球目、アウトコースのカットボールも見逃し、

 五球目、インコースへのストレートをカット。

 六球目は、アウトコースのカットボール。これもカット。

 

 ツーストライク、ツーボール。

 

 七球目、アウトローのストレート。八球目、インコースにストレート。

 どちらもカット。

 九球目は、インコースへのシュート。初めて見たこのボールも、カット。

 

 十球目。アウトコースにストレートが外れ、ツーストライク、スリーボールとなる。

 

 十一球目。カットボールをファールにする。

 

 そして、十二球目。インコースへのストレートが外れる。

 

「よし。」

 

「「「ナイッセン!!!」」」

 

 土屋先輩は、四球をつかみ取った。

 

 

 二番は、玄山大也先輩。

 

 初球で一塁線にバントを決め、ワンナウト二塁とする。

 

 

 三番、松宮琉果先輩。

 

 一球目、アウトローにストレートが決まり、ワンストライク。

 

 二球目。少し踏み込んだ松宮先輩の体近くにボールがいき、更にシュートして、体に当たる。

 

 デッドボールだ。これでワンナウト一、二塁。

 

 

 そして打席には、頼れる四番、鈴木四季キャプテンが入る。

 

 

「(キャプテン!先制点ほしいです!)」

 

 

 初球は、アウトコースにカットボール。いっぱいに入ってストライク。

 

 二球目、三球目は外角へのストレート。どちらも少し外れ、ボール。

 

 ワンストライク、ツーボールからの四球目。

 インコースへのボール。鈴木主将は、振っていく、が、ボールは体のほうに向かってくる。カットボール。

 

 しかし、先輩も読んでいた。

 体を少し開きつつ、芯で捉えようとする。

 

 

 だが、ピッチャーが一枚上手だった。

 それまでのカットボールよりも、大きく変化する。

 ボールは、主将のバットの根っこ近くに当たり、ピッチャー正面に転がる。

 

 1-6-3のダブルプレー。スリーアウト、チェンジ。

 

 チャンスに強い鈴木主将をゲッツーに。

 

 

 律さんを見ていると、目が合った。

 

 次は君の番だよ。

 

 そう言われた気がした。

 

 

 俺は、よし!と気合を入れなおし、マウンドに向かう。

 

 両投手ともに、立ち上がりは良い、と言っていいだろう。

 

 練習試合だが、負けるつもりはない!

 

 いいピッチングから、良い流れをつくる。

 それが、先発投手の俺に任された仕事だ。

 

 




お久しぶりでした。

練習試合、次話まで続く流れになってしまいました。
こんな作者ですが、楽しみに待って下されば、と思います。


人物モデル紹介(一応)
・彩里律:絢瀬絵里
・小屋沢笑:矢澤にこ
・東望:東條希
・帆阪崇:高坂穂乃果
・海園正:園田海未
・皆狩命:南ことり


では。読んでいただき、ありがとうございました!

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