待って下さった方がいれば、土下座して謝りマス!!
では、練習試合、第二試合です。
カオミシリ
五月。
世間は、GWの真っ最中。
とある高校の、野球グラウンドに散らばっていく、九人の野手。
一人の男は、グラウンドの中の少し小高いところ、マウンドに上がる。
ふう、と一息。
数球の投球練習を終え、相手の一番打者も打席に入る。
審判から、『プレイ!』という声がかかる。
その声を聞いた投手は、振りかぶり、一球目を投じる――。
* * * * * * *
約一時間前。
ほしうら学院高校の野球グラウンドに現れたのは、練習試合の対戦相手。
待っていた、練習試合の相手。
俺の、高校初先発試合の相手校。
「あれ?朔良じゃないか?」
「あ、律先輩!やっぱり!」
唐突に、相手チームの人から名前を呼ばれる朔良。
どうやら、知り合いのようだ。
「どうして、ココに?」
「それはまあ、いろいろありまして。」
「それよりも、先輩がいるということは...」
「おー!朔良!久しぶりだな!」
「え?さっちゃん?何でココにおるん?」
「やっぱり!笑先輩、望先輩も!お久しぶりです。」
「それと、望先輩。さっちゃんはやめてって何回言ったらいいんすか。」
いやいや、ちょっと待て。
なんかだんだん騒がしくなってきてないか。
「ちょっと、朔良。この人達、知り合い?」
そう聞くと、朔良は我に返ったようになる。
話によると、この三人の人達は二年生。
朔良が、榊シニアにいたころの先輩たちだそうだ。
一人目の人は、
ピッチャー、だそうだ。
強気の、闘志あふれるピッチングが持ち味。
二人目は、
キャッチャー、だそう。
その圧倒的な野球知識で、守備の要を担う。
三人目は、
ファースト、だそうだ。
力強いバッティング、チャンスに強い、ザ・四番打者。
言われてみれば、俺が五年の頃、そういう三人が榊シニアを引っ張っていたような...気もする。
「朔良以外のメンバーは、結構遠沖野に来たぞ。」
律さんがそう言ったとき。
「さっくん?さっくんだよね!」
「朔良!こんなところで会うとはな。」
「さっくん!!久しぶり~!」
「おう!久しぶりだな、崇、正、命。」
口々に声をかけてくる三人組。同級生みたいだ。
後から聞いた情報だが。
一人目は、
二人目は、
三人目は、
三人とも、朔良の同級生で、榊シニアの出身らしい。
「さっくん!どうして遠沖野に来なかったんだよ~。」
「そりゃあまあ、いろいろあるんだよ、事情が。」
「事情ってなんだよ~。」
「まあまあ、別にそっちが気にすることじゃねえよ。」
かなり話し込んでるけどいいのか、三人組よ。
いろいろ荷物持ってるんだし、早めに移動した方がいいと思うけど...?
俺がそんな風に考えていると、遠沖野高のキャプテンから声がかかる。
ほら、言わんこっちゃない。
「またキャプテンに怒られたじゃん!崇のせいだよ!」
「そんなこと言って~、正が一番話したがってたじゃん。」
「そっ、そんなことないよ!」
「まあ、落ち着こう、二人とも。早くいかないともっと怒られちゃうよ。」
「そうだね。じゃ、またね、さっくん!」
「ああ。試合でな。」
そう言って、急いで皆がいる方に向かう三人組。
慌ただしいな。そして、
「仲いいな。」
「ホント、その通りだよ。」
あれ?考えたこと声に出てた?
「でも、あんな感じだけどプレイは確かだよ。」
「それよりも、」
そこで声をきり、律さん、望さん、笑さんの方に目を向ける。
「あの三人は、ホンモノだよ。今どうなのかはわからないけど、俺の知る限りでは、あの三人がいて負けたことは、無かったはずだから。」
「えっ!そんなに!?」
いわゆる不敗神話というやつですか。
「ああ。でも、」
そこでまた声をきり、今度は俺の方を向いてくる。
「諒が自分のピッチングをすれば、こっちだって負けないと思うよ。」
!!!
「期待してるよ、スーパールーキー!」
「・・おう!まかせとけ!」
* * * * * * *
そして、今。
審判の合図とともに、試合が始まった。
ほしうら学院高校は、後攻め。
先に守備に入った。
俺は、気合十分に投げ込む。
一番は、右バッター。
初球は、アウトローへのストレート。しかし、ボール。
そこから、スローカーブを二球続ける。どちらも見逃される。ワンストライク、ツーボールに。
四球目、インコースにストレート。詰まらせて、ショートゴロに打ち取る。
二番バッターは、左打席に入る。
初球、二球目と続けてストレート。どちらもファールとなる。
ツーストライクから、外角のフォーク。見逃され、ボール。
次も、同じ球。さっきよりかは少しストライク気味だ。これを打たせて、サードゴロ。
三番は、右打席に入る。
フォークから入り、空振りでワンストライク。
ストレートは、外れてボール。スローカーブは決まってストライク。
四球目は、ストレート。カットされる。
次もストレート。高めの釣り球だが、手は出してくれない。
ツーストライクツーボールとなり、六球目。
低めへのボール。打者は振っていくが、ボールは縦に落ちる。
今日初出しの縦スラで、空振り三振。
順調な立ち上がり。三者凡退に抑えた。
そして、一回ウラ。
マウンドには、律さんが上がる。
背番号1。二年生エース。
右投げ。力強いフォームだ。ミットのいい音が鳴っている。
この試合、一番打者は土屋冬二先輩。
初球、二球目とアウトコースにストレート。どちらもいいボールだ。早くもツーストライク。
「さあ、先輩!ここから粘っていきましょう!」
俺の声に応えるかのように。
三球目の釣り球を見逃し、
四球目、アウトコースのカットボールも見逃し、
五球目、インコースへのストレートをカット。
六球目は、アウトコースのカットボール。これもカット。
ツーストライク、ツーボール。
七球目、アウトローのストレート。八球目、インコースにストレート。
どちらもカット。
九球目は、インコースへのシュート。初めて見たこのボールも、カット。
十球目。アウトコースにストレートが外れ、ツーストライク、スリーボールとなる。
十一球目。カットボールをファールにする。
そして、十二球目。インコースへのストレートが外れる。
「よし。」
「「「ナイッセン!!!」」」
土屋先輩は、四球をつかみ取った。
二番は、玄山大也先輩。
初球で一塁線にバントを決め、ワンナウト二塁とする。
三番、松宮琉果先輩。
一球目、アウトローにストレートが決まり、ワンストライク。
二球目。少し踏み込んだ松宮先輩の体近くにボールがいき、更にシュートして、体に当たる。
デッドボールだ。これでワンナウト一、二塁。
そして打席には、頼れる四番、鈴木四季キャプテンが入る。
「(キャプテン!先制点ほしいです!)」
初球は、アウトコースにカットボール。いっぱいに入ってストライク。
二球目、三球目は外角へのストレート。どちらも少し外れ、ボール。
ワンストライク、ツーボールからの四球目。
インコースへのボール。鈴木主将は、振っていく、が、ボールは体のほうに向かってくる。カットボール。
しかし、先輩も読んでいた。
体を少し開きつつ、芯で捉えようとする。
だが、ピッチャーが一枚上手だった。
それまでのカットボールよりも、大きく変化する。
ボールは、主将のバットの根っこ近くに当たり、ピッチャー正面に転がる。
1-6-3のダブルプレー。スリーアウト、チェンジ。
チャンスに強い鈴木主将をゲッツーに。
律さんを見ていると、目が合った。
次は君の番だよ。
そう言われた気がした。
俺は、よし!と気合を入れなおし、マウンドに向かう。
両投手ともに、立ち上がりは良い、と言っていいだろう。
練習試合だが、負けるつもりはない!
いいピッチングから、良い流れをつくる。
それが、先発投手の俺に任された仕事だ。
お久しぶりでした。
練習試合、次話まで続く流れになってしまいました。
こんな作者ですが、楽しみに待って下されば、と思います。
人物モデル紹介(一応)
・彩里律:絢瀬絵里
・小屋沢笑:矢澤にこ
・東望:東條希
・帆阪崇:高坂穂乃果
・海園正:園田海未
・皆狩命:南ことり
では。読んでいただき、ありがとうございました!