ほしうら学院高校を、"ほし高"と略すことにしました。お見知りおきを!?
エーストハ
エース。
それは、野球のチームにおける絶対的な存在。
そのチームで、最も優れた投手。
では、具体的に、エースとはどうあるべきなのか。
客観的に、素晴らしいピッチングをすればよいのか。
チームを勝たせるピッチングをするのがよいのか。
その答えは、自分には分からない。
野球は、点を多くとられた方が負けるスポーツ。
といっても、たいていの球技がそうなのだが。
『失点=投手の責任』であることが多く、その責任は投手に重くのしかかる。
そこから、勝敗の七、八割は投手の良し悪しで決まるとよく言われる。
その上で、チームの投手陣の主、つまりエースは、すごく重要なポジションだ。
高校野球では、背番号1。
ピッチャーたるもの、その番号が欲しい。それは当たり前だ。
では、その番号を背負うことで何か変わるのか。
"エース"という称号を手にして、その人はどこか変わったりするのか。
答えはもちろん、イエスだ。
一つ、責任感が増す。
ただ、エースは元々そういう人がなるものだとも思う。
責任感。
これは、大きな力だ。負の方向にも、良い方向にも働くものでもある。
チームの援護がなければ、たった一失点でも敗戦投手になりうる。
それが野球だ。
その時に、援護を求めるのか。それとも、自分が与えた一点を悔やむのか。
その差が、エースとして大成するかどうかの差であるように思う。
俺は、現時点ではエースだ。
だが、そうとも言ってられない状況になってきた。
両投げの一年、双葉諒。
右、左ともに完成度の高いボールを投げる。
プレー一つ一つに気迫を感じる一年、梨田朔良。
豊富な球種を操り、打者を翻弄する。
負けられない。負けるわけにはいかない。
今日は、GW初日。練習試合の日。
俺は、チームのエースとしてマウンドに上がる。
この座を守り、胸を張って自分がエースだと言い切るために。
「「お願いします!!!!!!」」
練習試合が始まった。
こっちが先攻だ。
相手の先発は、二年生の二番手投手。
右投げで、三種類のカーブを上手く投げ分ける。
ただ、他の野手はレギュラー陣だ。
一番の一春が打席に入る。
「しゃあ!打ってけよー!一春!」
ベンチから声が飛ぶ。
1-3となって5球目。
普通のカーブを狙い打ち、レフト線ツーベースヒット。
二番の秋五は、バントシフトの中、完璧に送りバントを決める。
ワンナウト、三塁。
三番の琉果が打席に入る。
初回からチャンス。しっかりと点を取りたい。
その期待に応え、初球のパワーカーブをすくい上げて、レフト前ヒット。
ランナー一塁から、四番四季がツーベースヒットで続く。
五番夏三、六番理玖は凡退したが、初回に二点を先制。
この援護点は大きい。
絶対に、守り切ってやる。
一番打者、左打席。
ストレートで押して、フォークで空振り三振。
二番打者、左打席。
カットボールで詰まらせ、ピッチャーゴロ。
三番打者、右打席。
外のスライダーから入り、最後は内角ストレートでショートゴロ。
わずか13球で初回を抑える。
かなりいい立ち上がりだ。
「おい!六!今日はすげえ気迫だな!」
ショートの一春が声をかけてきた。
「そうか?」
「そうだよ。もう、あふれ出てるよね、やる気が。」
そうなのか。
あまり外には出さないように心がけようとはしてたんだけどな...。
「でもよ、」
「その気迫が伝わってるから、皆こうやって頑張ってるんだと思うぜ。」
!!
「だから、この調子で、頼むぜ。エース!」
こう言われて、燃えない人間はいない。
二回表、ほし高は三者凡退。
自分は、ピッチャーゴロだった。
二回ウラ、俺のピッチング。
四番打者、左打席。
ストレートで押し、ショートフライ。
五番打者、左打席。
カットボールで空振り三振を奪う。
六番打者、右打席。
スライダーでセカンドゴロに打ち取る。
全部で16球。このままランナーを出さずにいければ完璧だ。
なんて、不可能だろうけど。
三回表も、三者凡退に終わる。相手投手も、復調してきた。
しかし、もう援護はもらっている。
俺がこれを守り切れば、勝利だ。
三回ウラ、三人とも右打者。
スライダーで空振り三振。
ストレートでサードファールフライ。
フォークでサードゴロ。
11球で、簡単にスリーアウト。
試合も落ち着いてきたかと思われたが。
四回表。
四番四季が、ソロホームランを放ち、点差が三点に広がる。
さらに、五番夏三のツーベースヒットと、七番玄山のセンター前ヒットが出て、一点追加。
4-0となり、心にも余裕ができてきた。
俺のピッチングはより良くなり、六回まで一人のランナーも出さないピッチング。
さらに援護をもらって5-0となり、七回ウラ。
流石にそろそろ相手も反撃が必要だ。
切りよく、一番打者からの攻撃。
しかし、付け入るスキを与えさせない完璧なピッチングを続ける、ほし高現エース、後藤六。
先頭打者をファーストライナーで打ち取ると、次のバッターもセンターフライ。
簡単にツーアウトを取る。
そして、三番打者。
カットボール、フォークで空振りを二つ奪い、ツーストライク。
そこから粘りを見せ、十一球目。
四球をなんとかもぎ取ることに成功。
ようやく一人、ランナーが出た。
そうなると、意外と簡単に先に進める。
次の四番打者がライト戦にツーベースヒットを放ち、あっさりと一点を返す。
さらに、五番打者がセンター前ヒットで続き、二塁ランナーは本塁へ。
しかし、ここは高橋秋五の肩が勝り、ホームでタッチアウト。チェンジとなる。
八回表、ほし高は三者凡退。
八回ウラ、先頭の六番打者が甘く入ったフォークを捉え、ツーベースヒット。
ここで守備のタイムを取り、いったん落ち着かせる。
すると、息を吹き返したかのように七、八番を連続三振に抑え、ツーアウト二塁とする。
九番打者に代打が出され、その代打にライト前タイムリーヒットを許すが、後続は断つ。
結果として、後藤六、投球回数8回、被安打4、与四球1、奪三振8、失点2。
エースとして、十分に力を示したピッチングと言っていいだろう。
ちなみに、試合結果は5-2で、ほし高の勝利に終わった。
ほし高、九回を投げたのは、玄山大也。
ピッチャーゴロ、空振り三振、センターフライでスリーアウト。ゲームセットである。
こうして、練習試合一戦目は勝利を収めることができたほし高野球部。
次の試合は勝つことができるだろうか...?
それではみなさん、またお会いしよう。
ん?私は誰か?って?
そうだな...。"仙人"とでも言っておこうか。
★得点表
学校名 123456789 計H
ほし高 200200100 59
工業高 000000110 24
読んでいただき、ありがとうございました!
"仙人"は、第三者目線で野球の試合をお届けするキャラです。
あたたかく、見守ってやってください。笑
と、いうことで、このあたりで。
次話も、練習試合編です。
感想など、お待ちしています!