両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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前回:先輩たちの能力紹介。

ほしうら学院高校を、"ほし高"と略すことにしました。お見知りおきを!?


Episode.6

エーストハ

 

 エース。

 

 それは、野球のチームにおける絶対的な存在。

 そのチームで、最も優れた投手。

 

 では、具体的に、エースとはどうあるべきなのか。

 

 客観的に、素晴らしいピッチングをすればよいのか。

 チームを勝たせるピッチングをするのがよいのか。

 

 その答えは、自分には分からない。

 

 野球は、点を多くとられた方が負けるスポーツ。

 といっても、たいていの球技がそうなのだが。

 

 『失点=投手の責任』であることが多く、その責任は投手に重くのしかかる。

 

 そこから、勝敗の七、八割は投手の良し悪しで決まるとよく言われる。

 

 その上で、チームの投手陣の主、つまりエースは、すごく重要なポジションだ。

 

 高校野球では、背番号1。

 ピッチャーたるもの、その番号が欲しい。それは当たり前だ。

 

 では、その番号を背負うことで何か変わるのか。

 "エース"という称号を手にして、その人はどこか変わったりするのか。

 

 答えはもちろん、イエスだ。

 

 一つ、責任感が増す。

 ただ、エースは元々そういう人がなるものだとも思う。

 

 責任感。

 

 これは、大きな力だ。負の方向にも、良い方向にも働くものでもある。

 

 チームの援護がなければ、たった一失点でも敗戦投手になりうる。

 それが野球だ。

 

 その時に、援護を求めるのか。それとも、自分が与えた一点を悔やむのか。

 

 その差が、エースとして大成するかどうかの差であるように思う。

 

 俺は、現時点ではエースだ。

 

 だが、そうとも言ってられない状況になってきた。

 

 両投げの一年、双葉諒。

 右、左ともに完成度の高いボールを投げる。

 

 プレー一つ一つに気迫を感じる一年、梨田朔良。

 豊富な球種を操り、打者を翻弄する。

 

 負けられない。負けるわけにはいかない。

 

 今日は、GW初日。練習試合の日。

 

 俺は、チームのエースとしてマウンドに上がる。

 

 この座を守り、胸を張って自分がエースだと言い切るために。

 

 

「「お願いします!!!!!!」」

 

 練習試合が始まった。

 

 こっちが先攻だ。

 相手の先発は、二年生の二番手投手。

 右投げで、三種類のカーブを上手く投げ分ける。

 ただ、他の野手はレギュラー陣だ。

 

 一番の一春が打席に入る。

 

「しゃあ!打ってけよー!一春!」

 ベンチから声が飛ぶ。

 

 1-3となって5球目。

 普通のカーブを狙い打ち、レフト線ツーベースヒット。

 

 二番の秋五は、バントシフトの中、完璧に送りバントを決める。

 ワンナウト、三塁。

 

 三番の琉果が打席に入る。

 初回からチャンス。しっかりと点を取りたい。

 

 その期待に応え、初球のパワーカーブをすくい上げて、レフト前ヒット。

 

 ランナー一塁から、四番四季がツーベースヒットで続く。

 

 五番夏三、六番理玖は凡退したが、初回に二点を先制。

 この援護点は大きい。

 絶対に、守り切ってやる。

 

 一番打者、左打席。

 ストレートで押して、フォークで空振り三振。

 

 二番打者、左打席。

 カットボールで詰まらせ、ピッチャーゴロ。

 

 三番打者、右打席。

 外のスライダーから入り、最後は内角ストレートでショートゴロ。

 

 わずか13球で初回を抑える。

 かなりいい立ち上がりだ。

 

「おい!六!今日はすげえ気迫だな!」

 

 ショートの一春が声をかけてきた。

 

「そうか?」

 

「そうだよ。もう、あふれ出てるよね、やる気が。」

 

 そうなのか。

 あまり外には出さないように心がけようとはしてたんだけどな...。

 

「でもよ、」

「その気迫が伝わってるから、皆こうやって頑張ってるんだと思うぜ。」

 

 !!

 

「だから、この調子で、頼むぜ。エース!」

 

 こう言われて、燃えない人間はいない。

 

 二回表、ほし高は三者凡退。

 自分は、ピッチャーゴロだった。

 

 二回ウラ、俺のピッチング。

 

 四番打者、左打席。

 ストレートで押し、ショートフライ。

 

 五番打者、左打席。

 カットボールで空振り三振を奪う。

 

 六番打者、右打席。

 スライダーでセカンドゴロに打ち取る。

 

 全部で16球。このままランナーを出さずにいければ完璧だ。

 なんて、不可能だろうけど。

 

 三回表も、三者凡退に終わる。相手投手も、復調してきた。

 しかし、もう援護はもらっている。

 俺がこれを守り切れば、勝利だ。

 

 三回ウラ、三人とも右打者。

 

 スライダーで空振り三振。

 ストレートでサードファールフライ。

 フォークでサードゴロ。

 

 11球で、簡単にスリーアウト。

 

 試合も落ち着いてきたかと思われたが。

 

 四回表。

 四番四季が、ソロホームランを放ち、点差が三点に広がる。

 さらに、五番夏三のツーベースヒットと、七番玄山のセンター前ヒットが出て、一点追加。

 

 4-0となり、心にも余裕ができてきた。

 

 俺のピッチングはより良くなり、六回まで一人のランナーも出さないピッチング。

 

 さらに援護をもらって5-0となり、七回ウラ。

 

 

 

 流石にそろそろ相手も反撃が必要だ。

 切りよく、一番打者からの攻撃。

 

 しかし、付け入るスキを与えさせない完璧なピッチングを続ける、ほし高現エース、後藤六。

 

 先頭打者をファーストライナーで打ち取ると、次のバッターもセンターフライ。

 簡単にツーアウトを取る。

 

 そして、三番打者。

 カットボール、フォークで空振りを二つ奪い、ツーストライク。

 そこから粘りを見せ、十一球目。

 四球をなんとかもぎ取ることに成功。

 

 ようやく一人、ランナーが出た。

 

 そうなると、意外と簡単に先に進める。

 

 次の四番打者がライト戦にツーベースヒットを放ち、あっさりと一点を返す。

 

 さらに、五番打者がセンター前ヒットで続き、二塁ランナーは本塁へ。

 しかし、ここは高橋秋五の肩が勝り、ホームでタッチアウト。チェンジとなる。

 

 八回表、ほし高は三者凡退。

 

 八回ウラ、先頭の六番打者が甘く入ったフォークを捉え、ツーベースヒット。

 

 ここで守備のタイムを取り、いったん落ち着かせる。

 すると、息を吹き返したかのように七、八番を連続三振に抑え、ツーアウト二塁とする。

 

 九番打者に代打が出され、その代打にライト前タイムリーヒットを許すが、後続は断つ。

 

 結果として、後藤六、投球回数8回、被安打4、与四球1、奪三振8、失点2。

 エースとして、十分に力を示したピッチングと言っていいだろう。

 

 ちなみに、試合結果は5-2で、ほし高の勝利に終わった。

 

 ほし高、九回を投げたのは、玄山大也。

 ピッチャーゴロ、空振り三振、センターフライでスリーアウト。ゲームセットである。

 

 こうして、練習試合一戦目は勝利を収めることができたほし高野球部。

 次の試合は勝つことができるだろうか...?

 

 それではみなさん、またお会いしよう。

 

 ん?私は誰か?って?

 そうだな...。"仙人"とでも言っておこうか。

 

 

★得点表

 

 学校名 123456789 計H

 ほし高 200200100 59

 工業高 000000110 24




読んでいただき、ありがとうございました!

"仙人"は、第三者目線で野球の試合をお届けするキャラです。
あたたかく、見守ってやってください。笑

と、いうことで、このあたりで。
次話も、練習試合編です。
感想など、お待ちしています!

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