両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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…一ヶ月経つのって、早いですね。
気付いたら四月が終わってました。
せめて月一投稿くらいは守りたかったんですけど、無理でした...。

待っていた方、誠に申し訳ありません。
そして、話の内容を忘れてしまった方、どうぞ前の話へと飛んでいただければ、と思います。

では、Epi.24、どうぞ。

P.S.パワプロ2018がやりたくてたまらない今日この頃。(どーでもいい話すみません)



Episode.24

兄弟愛と深層心理

 

 

 カキィィンン!!

 

 球場内に、快音が響いた。

 

 

 

「おい、大也!今日は、やけに調子良いな!」

 

「まあな。なんといっても、弟の初登板戦だから。負けるわけにはいかないんでね。」

 

「それにしても、四打数四安打、三得点六打点は、調子良すぎだろ!」

「ホームランも、初めて打ったんじゃないか?」

 

 

 コールド勝ちを決定づける、ダメ押しのツーランホームランを打った玄山先輩が、ベンチ内で祝福を受ける。

 

 

 玄山先輩は、今日は絶好調で、一打席目は先頭打者としてヒットを放ち、その後生還。

 二打席目は、二死三塁という場面で、センター前にタイムリーヒット。

 三打席目では、一死満塁から走者一掃のツーベースヒット。

 そして、四打席目。一死一塁から、ツーランホームラン。

 

 これは本当に、覚醒したと言っても過言ではない。

 

「まあ、僕が本気を出せば、このくらいは造作もないことだ、ということだよ。」

 

 

 おい。今この人、本気を出せば、とか言わなかったか?

 最終学年なんだし、毎試合このくらいの力、出してくれませんかね?

 

 

「と、いうことで、文也。この回もピシッと抑えて、コールド勝ちだ!」

 

「うん、分かったよ!お兄ちゃん!」

 

 

 …本当に、兄弟仲が良いんだな。

 

 玄山先輩の大活躍により、9-0とリードして七回ウラを迎える。

 この回を二点以内に抑えれば、ほしうら学院の勝利となる。

 

 

 油断してはいけないとは思うが、正直、勝つ確信がある。

 

 

 なぜなら、

 

『七回ウラ。干支高校の攻撃は、一番、ショート、蛇川君。』

 

「蛇川ー!まずは一本!頼む!!」

 

 

 今日の文也は、未だ干支高校にヒットを許していないから。

 

 

 

 

 彼は、我々の想像を遥かに超えていた。

 

 左の、アンダースロー。

 その珍しさに、一巡目はどうしても苦戦を強いられるだろう、とは思っていた。

 

 

 そして、それは的中する。

 

 全く慣れていないところからボールが放られてくる。

 これは、とてつもない脅威であった。

 

 ストレートですら、掠らせるので精一杯。

 内外に上手く投げ分けられ、ランナーを出すことができない。

 

 

 だが、しかし。

 マウンド上の彼は、それだけではとどまらなかった。

 

 二巡目。だんだんと慣れ始めてきたタイミングで。

 これまでは見せていなかった、チェンジアップを織り交ぜた投球。

 

 その前に、わが干支高校は、凡退の山を築く。

 

 

 そして、今。

 コールド負けの危機に瀕している。

 

 打席に立つのは、三巡目の上位打線。

 俺には、選手たちを信じることしかできない。

 

 

 

 だったのだが。

 

 

 ガギッ

 

『最後はインコースのストレートを詰まらせました!

 セカンドの渡、落ち着いて捕って、一塁転送!アウト!ゲームセットです!

 一年生投手玄山文也、初先発ながら、七回を完璧に抑えて完封勝利を収めました!』

 

 

 

「文也!ナイスピッチング!」

 

「あっ、双葉先輩!ありがとうございます!」

 

「いや~、すごかったな。九回までいってたら完全試合あったかもな。」

 

「いえいえ!そんなことは...!」

 

「謙遜するなって。次も、頑張ってな。」

 

「はい!」

 

 

 

 

「双葉~。」

 

「何ですか、大也先輩。」

 

「次の試合結果によっては、…だな?」

 

「…。まあ、頑張りますよ。」

 

「…、そ。ま、僕も好調維持できるようにするわ。」

 

「はい。お互い頑張らないと、ですね。」

 

 

 

「(あいつ、ポーカーフェイスヘタクソかよ...笑。)」

 

 

 

 

「…おい、諒。」

 

「なんだよ、友章。」

 

「…。やっぱり何でもない。次の試合、期待してるから。」

 

「…おう。」

 

 

 

「(気にしてない風にしてた割には、大分今回の文也の投球に感化されたのか...?)」

「(次の試合、果たしてどうなるんだろうな...笑。)」

 

 

 

 

 俺はアイツのことを、甘く見ていたのかもしれない。

 初登板で、七回を投げて無安打無失点。

 

 左のアンダースローで、珍しいタイプに相手は戸惑うだろうとは思っていたが。

 まさか、ここまでとは。

 

 

 そして、分からないことが一つある。

 チームが勝ったのに、俺の心はなんだか晴れない。

 

 

 いや、違う。理由は分かってる。

 

 

 俺は、エースの座に拘る気はない、と友章に言った。

 

 でもそれは、真っ赤なウソだった。

 

 

 俺は、エースとして、このチームを勝利に導きたいんだ。

 

 自分の本当の気持ち。

 気付かせてくれた。いや、気付かされた。

 

 

 このままじゃ駄目だ。

 こんな中途半端な気持ちでは、自分の望みをかなえることなど、できやしない。

 

 

 だから、俺は――。

 

 

* * * * * * *

 

 今日は、春季大会三回戦。相手は、方角宮高校。

 

 三番でエースの南里、一番ファーストの吾妻、四番サードの木栖川、五番センターの喜多。

 この四人を中心とした、走攻守のバランスがかなり取れたチーム。

 

 特にエースの南里は、身長190cmオーバーながら、その投球フォームは右のアンダースロー。

 力強いストレートに、緩急差のあるスローカーブにチェンジアップ。

 そして最大の武器が、打者には少し浮き上がってくるようにも見えるという高速スライダー。

 

 相手エースは、文也と同じ、アンダースローの投手。

 下手投げには耐性がある分、今日は俺が先発することになっている。

 元々その予定で、前回の試合は文也が先発したというわけだ。

 

 またこの大会は、もう休養日がないため、残りの三試合は連戦になる。

 それを考え、今日のオーダーはいつもと違っている。

 

 一番 9 梨田

 二番 8 東條

 三番 5 松宮

 四番 3 沢良宜

 五番 2 小野原

 六番 6 歌間

 七番 4 渡

 八番 1 双葉

 九番 7 陸奥

 

 リリーフの準備のため、大也先輩がベンチスタート。

 代わりのスタメンは、練習の時から安定したプレイをみせている陸奥だ。

 

 

 

 と、試合が始まろうとしているのだが。

 

「「ええっ!?怪我...!?」」

 

「はい。そうみたいです。それも今日の朝だそうで...。」

 

「「……。」」

 

 どうやら、相手エースの南里が今朝怪我をしたそう。

 結果、今日の相手先発はいつもはファーストの吾妻になっている。

 

 

 …なんだか最近、相手チームの怪我、多くないか?

 この前の地区大会の決勝もそうだし...。

 

 皆もそれを気にしているのか、少し居心地の悪さを感じているように見える。

 

 

 そうこうしているうちに、試合が始まった。

 俺たちほしうら学院高校は、後攻なので先に守備に就く。

 

 打席に入るは、いつもは五番を打つ、センターの喜多。右打ちだ。

 俺は、アウトローギリギリに入ってくるスライダー、インハイにズバッと決まるストレート、タイミングを完全に外すチェンジアップで空振り三振に取る。

 

 さらに、二番打者(右)には全力ストレートを二球続けて詰まらせて、ピッチャーフライ。

 三番打者(左)には、インローのストレートでワンストライク、そこから少し曲がるシュートでファールを打たせ、最後はアウトローへのストレートをビシッと決めて見逃し三振。

 

 まったく隙を見せず、八球で一回の表を0点に抑える。

 

 俺がベンチに座って休んでいると、皆が円陣を組んで話し始めた。

 所々聞こえる声は、「むしろ失礼」とか「いつも通り全力」とかだった。

 

 

* * * * * * *

 

「諒、今日はありがとな。」

 

「なんのことだよ友章。大量得点はお前らの力だろう?」

 

「いや...まあ、いいや。とにかく、助かったよ。」

 

「なんじゃそら。」

 

 そう言いながら笑う諒は、どこか安心したような表情をしている。

 

 

 七回コールド、9-2。

 最終的に、圧勝という形になった。

 

 相手チームの主力の、相次ぐ怪我。

 気にしないことなど、できるはずもなかった。

 

 

 でも、こいつだけは違った。

 

 一回の表、こいつのピッチングを見て、俺たちは何を考えていたんだと思った。

 遠慮することは、相手に対してはむしろ、失礼なことだと気付いた。

 

 諒のピッチングに背中を押された一回の裏。

 俺たちは、相手投手を打ちに打ち、打者12人の猛攻。一挙に七点を奪う。

 

 そこから試合は、終始俺たちのペースで進んだ。

 

 打線は、二、五回に一点ずつを追加。

 

 諒は五回を投げて、許したヒットはポテンヒット一本のみ。

 毎回の八奪三振。素晴らしいピッチングだったと思う。

 

 前の文也の完璧なピッチングを見て以降、どこかが変わった気がする。

 

 ちなみに、六、七回は予定通り大也先輩が投げた。

 六回はうまく三者凡退に抑えたものの、七回は追いすがる相手打線から二点を奪われた。

 しかし、最後の一死一、三塁のピンチをセカンドゴロゲッツーでシャットアウト。

 

 こうして、俺たちほしうら学院高校は、春季大会の準決勝へと駒を進めたのだった。

 




あまりにも久々で、どういう感じで文を書いていたのか、作者自身も忘れていたのは内緒です。
過去話を自分で読み返しつつ、ちゃんと書いていきたいと思います。

多分、今月中にもう一話投稿しますので、よろしくお願いします。

では、ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

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