両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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約半月くらい空いたでしょうか。こんばんは。
と、いうことで、今話は県春季大会初戦の模様をお送りします。
どうぞ。


Episode.23

因縁と対左対策

 

「さて、初戦の相手についてだが――、」

 

 来たるべき春季大会の初戦に向けてのミーティング。

 松宮先輩が、いつものように皆の前に立って話す。

 

 

「俺たちは、一回戦はなく二回戦から戦うことになっている。」

「そして、相手になると予想されるのが、二、三年はもちろん知っている、干支高校だ。」

 

 

 その瞬間、俺たちの間に緊張が走った。

 

 

 干支高校。

 去年の夏、再試合の末に敗北を喫した因縁の相手。

 

 このタイミングで再戦することになるとは。

 

 絶対に、リベンジしたい。

 

 

 そう思っているのは俺だけじゃないらしく、皆もやる気に満ち溢れているように思える。

 

 

 

 続けて松宮先輩が話す。

 

「去年、俺たちと戦ったメンバーは全員三年生だったからいなくなってる。

 だが、強豪であるのに変わりはない。」

「二年生エースながら打順では三番も務める、このチームの柱が、犬崎だ。」

 

「犬崎?それって去年もいたような。。」

 

「ああ。去年、二番手投手でアンダースローの犬崎がいたな。

 こいつは、その従兄弟にあたるそうだ。といっても、この犬崎は、左の本格派だ。」

「球種は、SFF、スライダー、チェンジアップ。」

 

「それって...!」

 

「そうだ。去年のエース、子島と同じようなタイプのピッチャーってわけだ。」

 

 

 子島に、極似した投手。

 

 

「どうだ?リベンジし甲斐が、あると思わないか?」

 

 

 そう言いながら、不敵な笑みを浮かべる松宮先輩。

 

 

「・・干支高校。俺たちが、苦杯をなめさせられた相手。

 確かに怖い存在だ。もしかして、返り討ちにされるかもしれない。」

「でも、俺たちはこれまで、努力を重ねてきた。地区大会でも、準優勝できた。」

 

 

 

「勝てる!俺らのいつもの野球をやれば、絶対にな。」

 

 

「・・そうだよな。」

 

「そうだ!いつまでも、弱い俺たちってわけじゃない!」

 

「リベンジ、絶対やってやろうぜ!」

 

 

「「オオーー!!!」」

 

 

 

 

 

「それで?」

 

「うん?」

 

「お前は、何を危惧してそんな顔してるんだ?」

 

「あ?分かった?」

 

「まあ、これだけ一緒にいればな。」

 

 

 そう、友章に切り出され、俺は、自分の胸の中の恐れを打ち明けた。

 

 

「左に弱い?」

 

「そう。なんとなく、不安なんだよ。」

 

「・・まあ、思い当たる節がないと言えば嘘になるが。」

 

「だろ?あ~、大丈夫かな?」

 

「なんだ、お前。他人事みたいに。」

 

「だって俺、ピッチャーだし?打つのは領域外っていうか?」

 

「無責任な奴だな。文也の奴、打撃力もあるみたいだぞ。」

 

「あっ、そうなの?それなら、先発は文也で決まりだな。」

 

「いやいや。初戦だぞ?普通ならエースが登板だろ。」

 

「初戦だからこそ、確実に勝てる布陣じゃないと。

 って、それはまあ別にいいんだよ。それよりも、左投手の対策をやらないと。」

 

「明日、キャプテンに聞いてみるか。」

 

「そうするか。」

 

 

 かくして。

 ほしうら学院の、左投手対策の特練が始まることになった。

 

 

 といっても、どうしたらいいか分からない。

 

 左投手がいるなら話は別なのだが、なにせ自分はサイドスロー。

 これではあまり意味がない。

 

 

 

 そこで。

 

 

「なんで俺が...。」

 

「そりゃ、チームの勝利のために決まってんだろ。」

 

 

 投手役として、友章がバッティングピッチャーをすることになった。

 

 

 

 さすが、元投手。

 文句を言う必要なんて、全くないんじゃないだろうかと思える。

 

 肩も、だいぶ治っているようだ。

 

 

 ただ、変化球対策は流石に無理だし、犬崎くらいの球速もでているわけではない。

 

 

 まあ、それは仕方ない。

 

 試合本番で、しっかり合わせていくしかない。

 

 

 

 

 

 

 

「・・なんですか?玄山先輩?」

 

「いや~、なにも~。」

 

「そうですか。それならいいんですけど。」

 

 

 

 

「双葉。」

 

「何ですか。」

 

「エース陥落、ドンマイ!まあ、これからは二番手投手として頑張ってね!」

 

 

 

 ・・そんなことだろうと思ったよ。

 

 それにしても、本当に玄山先輩は弟が絡むと面倒くさい人間になるな。

 いつも通りの先輩なら、わざわざこんなことは言わないと思うんだが。

 

 いや、むしろこっちが平常で、今までを取り繕っていたのか?

 

 

 なんて。

 こんなことを考える試合前。

 

 

 昨日から春季大会本選が始まった。

 

 そして、俺たちの相手は予想通り干支高校に決まり。

 俺たちほしうら学院の初戦も、間近に迫っているところだ。

 

 

 両チームのスターティングオーダーがコチラ。

 

  6 蛇川  1番  玄山大 7

  5 龍嶋  2番  渡   4

  1 犬崎  3番  松宮  5

  7 馬野  4番  沢良宜 3

  2 牛津  5番  小野原 2

  3 虎宮  6番  梨田  9

  9 猿井  7番  歌間  6

  8 鵜飼  8番  東條  8

  4 兎美  9番  玄山文 1

 

 

 予想通り、相手の先発は犬崎だった。

 

 

 逆にこちらの先発は、一年生で、初先発となる玄山文也。

 

 相手の虚をつけただろうか。

 

 

 日程や予想対戦相手等、色々な点を加味した結果、今日の先発は文也に決まった。

 

 是非とも、自身の特徴をフルに生かして、チームを勝利に導いてほしい。

 

 

 

 

 干支高校監督、嘉猫(かねこ)

 

 

 昨年夏の三回戦。ほしうら学院との試合。

 

 それは、彼の記憶にも強く刻まれていた。

 

 

 特に、一年生ながら四イニングを完璧に抑えた、双葉諒。

 雨の中でも、丁寧にコーナーをつき、必死に投げていた。

 

 その姿は、まさにエース。その心意気は、まさに最終学年のように見受けられた。

 

 

 対戦が決まった時、正直やらかした、と思った。

 

 

 

 だが、先発投手は、その少年ではない。

 

 嫌な予感が自身の背中を駆けるのを、嘉猫は感じていた。

 

 

 

 そして、試合が始まる。

 先攻がほしうら学院。

 

 早速、一番にヒットを打たれ、二番が送りバントを決めて一死二塁。

 そして、三、四番に連打を浴び、味方失策も絡んだ結果、早くも二失点。

 

 

 犬崎、踏ん張ってくれ!

 

 二年生で、エース。三番も打つ。

 最近の試合は、ずっとあいつに頼りすぎている気がしてならない。

 

 だが、あいつは、どんなに苦しくてもそういう表情を見せない。

 

 

 このチームは、確実に強くなる。

 彼は、そう感じていた。

 

 

 その後のピンチはなんとか乗り切って、一回のウラ。

 

 かわってマウンドにあがるのは、背番号18をつけた、一年生投手。

 

 それは、最近高校生になったばかりの選手なわけであり。

 もちろん、彼の情報など持っているはずがない。

 

 とにかく、投球練習を見なければ。

 

 

 

 瞬間。

 

 嘉猫は、自分の予感があながち間違っていなかったことを悟った。

 

 

 なぜなら、そのマウンドには。

 

 

 

 

 左の、下手投げの投手がいたからである。

 

 

 俺、確実にやらかしたな。

 

 そう思った。

 




相手チームの監督の思考を入れたのは、なんとなくこれが一番個人的にしっくり来たからです。
こんなことを試合中に考える監督はどうなのかとも思いましたが、まあその辺りはご容赦を。

えー、ここまで引き延ばしてきた玄山文也くんの投球フォームは左下手投げでしたね。
予想は、当たっていたでしょうか?
意外性をもたらせていれば筆者的には満足なのですが。

では、今回はこのあたりで。
今話も読んでいただき、ありがとうございました!

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