両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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お久しぶりですね。

進行を早めているので、多少雑かもしれません。
ご容赦くださるとありがたいです。


Episode.20

春季大会と新入生達

 

 静岡県東部地区春季大会二回戦。

 

 ほしうら学院高校VS漢季都(かんきつ)商業高校の試合。

 ほしうら学院の先発オーダーは、

 一番 7 玄山

 二番 8 東條

 三番 5 松宮

 四番 3 沢良宜

 五番 9 梨田

 六番 2 小野原

 七番 1 双葉

 八番 6 歌間

 九番 4 渡

 

 

「・・諒、どうだ調子は?」

 

「エースってさ。」

 

「ん?」

 

「エースって、なんなんだろうな。」

 

「は?いきなりなんだよ。」

 

「・・・。」

 

「・・まあ言うならば、ケーキでいうスポンジ、とかかな。」

 

「ケーキの、スポンジ!?」

 

「ああ。ケーキの味の大方はクリームとかが占めてるだろう、でも、本当に一番大事なのは...」

 

「スポンジ...?」

 

「そういうことだ。」

「どんなものであろうと、土台が一番重要、ってことだ。」

 

「いや、ぜんぜん訳分かんねえよ。」

「ついでに、なんだよその例え。お前んちってケーキ屋とかじゃなかっただろ。」

 

「ああ。父は自動車工場勤め、母は専業主婦だ。」

 

「まるっきりケーキ関係ねえな、おい。」

 

「別に、緊張してんのかな、とか思っていっただけだからそんなに深く考えなくていいよ。」

「・・緊張、してんのか?」

 

「う~ん。まあ、若干。」

 

「あ、本当に!?お前も、緊張とかするんだな。」

 

「まあな。特に今は、俺以外にピッチャー本職の人がいないっていうのが正直キツイ。」

 

「ああ、それはな。」

「でもまあ、もうすぐ新入生も入ってくるし、それまでの辛抱じゃないか?」

 

「一年生にマウンド渡すのか?それもそれで、精神的にキツイよ...。」

 

「それもそうか。でも、大也先輩の弟は期待できるってお墨付きだったろ。」

 

「お兄さん直々の、な。」

 

 

 

 試合が、始まる。

 俺たちの先攻だ。

 

 初回、玄山先輩がヒットで出ると、伊月がバント。さらにこれが内野安打に。

 無死一、二塁から、松宮先輩が左中間を破るツーベースヒット。

 玄山先輩に加えて伊月も生還し、早速二点を先制。

 さらに、友章と朔良の二人連続のライトフライで、松宮先輩がホームイン。

 

 初回に三点を先制する幸先の良い展開から、試合は始まった。

 

 

 この日の俺は、立ち上がりこそ二人のランナーを許したものの、その後は落ち着いて投球することができた。初回は、二番打者に内野安打、四番打者に四球。だが、得点は許さなかった。

 二回からは得点圏のランナーを許さないピッチング。毎回奪三振で、七回十奪三振。

 

 打線の大きな援護もあり、この試合は、9-0のコールドゲームに終わった。

 

             計 H

 ほし高 3011022 9 15

 漢季都 0000000 0 3

 

 

* * * * * * *

 

 三日後。

 俺たちは、地区大会の三回戦を戦っていた。

 

 相手は、東海第八高校。エースが左のサイドハンドで、守備の堅いチーム。

 

 五回のウラまで終わって0-0と、接戦になってきていた。

 

 ちなみに先発オーダーは、

 一番 6 歌間

 二番 8 東條

 三番 5 松宮

 四番 3 沢良宜

 五番 7 玄山

 六番 9 梨田

 七番 2 井槻

 八番 1 双葉

 九番 4 渡

 

 小野原先輩がちょっと体調不良ということで、急遽雷雅が捕手をすることになった。

 その雷雅は、無失策&一安打、と良いはたらきをしていた。

 

 

 のだが。

 

 

 六回の表。

 先頭打者を空振り三振に取ったところで、雷雅がボールをはじき、振り逃げで出塁される。

 

 これには、俺にも非があった。が、しかし。

 

 

 問題はその後だ。

 

 次打者が、バントを試みて失敗し、後ろにショーフライをあげる。

 それを雷雅が取り損ない、結局その後バントを許して一死二塁。

 

 さらに浮足立った雷雅は、二塁走者をけん制して送球がそれる。ランナーは三塁へ。

 

 

 一旦マウンドに内野手で集まる。

 

「ごめん...。なんかオレ、ミスってばっかだ。」

 下を向いて言う雷雅。

 

「気にしすぎだって!誰でもエラーなんてするし!次から、気をつければいいんだよ。」

 

「次、ですか。」

「・・オレ、嬉しかったんです。初めて試合に出られて。」

「だから、めちゃくちゃ活躍してやろうって、いいトコ見せたいって、思ってたのに。」

 

「「・・・・。」」

 

 黙りこくる内野陣。

 

 

 

 その時、だった。

 

「ソーリー、伝令です。」

 

 

「・・小野原、先輩!」

 

「無理は...」

 

 

「ドント、ウォーリー、リョウ。少しなら、へーきだから。」

「ライガ。」

 

「・・はい。」

 

「ハハッ、キンチョーし過ぎだよ!?」

「キャッチャーっていうのはどういうポジション?」

 

「守備の、要、です。」

 

「そうそう。要がしっかりしてないと、ダメなわけ。」

 

「・・・。」

 

「・・とはいえね、オレたちはまだまだ高校生。トゥーヤング、なわけ。」

「だから、思い切っていけ、ライガ!フォローは皆がしてくれるよ!オーケー?」

 

「でも...」

 

「いろいろ考えはあると思う。でも今は、目の前のゲームに集中だよ?」

「って、オレが言っても説得力ないね。じゃ、ガンバレ!」

 

 

 

 そして。

 

 何とか落ち着きを取り戻した雷雅だった。

 

 

 のだが。

 

 

 

「ごめん、諒。オレのせいだよ。」

 

「いやいや!打たれたのは俺だから。本当に気にすんなって。」

 

 三振を取った後、二死三塁から、チェンジアップが浮いてしまってタイムリーヒットを浴びた。

 その後後続は断ったのだが、先制点を取られてしまった。

 

 そして、雷雅が責任を感じてしまっている。

 

 俺のせいなのに。

 

「絶対に、絶対に、点取り返すから。本当にごめん。」

 

 

 う~ん...。

 このネガティブ思考というかなんというか...どうしたらいいんだろう。

 

 

 六回ウラ。

 先頭は、きりよく一番の道隆から。だが、その道隆はセカンドフライに倒れる。

 二番の伊月も、サードゴロで、ツーアウトになる。

 そして、三番松宮先輩もライトフライで、スリーアウトチェンジ。

 

 それにしても、俺たちは何とも左投手が苦手だな...。

 去年の子島といい、すごく苦しめられている印象がある。

 

 ・・まあ俺も、打ててはいないし点も取られちゃってるんだけどな。

 

 

 七回表。

 何とか持ち直した俺は、サードフライ、ファーストゴロ、空振り三振の三者凡退に抑える。

 

「(点はもう絶対やれない。何とかリズムを作らないと。)」

 

 

 七回ウラ。

 四番の友章は、レフトフライに倒れ、ワンナウト。

 しかし、玄山先輩が粘って四球を選ぶと。

 朔良も右中間を破るツーベースヒットで続き、一死二、三塁とする。

 ここで打席に入るのは。

 

 

 七番の雷雅。

 

 

「(スクイズに、すんのかな...。)」

 

 その俺の考えとは裏腹に、初球、チェンジアップを空振り。

 

「(ヒッティングか...)」

 

 二球目、相手バッテリーは様子見でウエスト。

 三球目もウエストし、これでツーボールワンストライク。

 

 

 

 するとここで。スクイズのサイン。

 

 

 

 

 果たして。

 

 

 

 

 ピッチャーがボールを投じる。

 

 ランナーは走り出し、雷雅はバントの構え。

 

 

 相手投手は、少し外し気味に投げる。

 

 

 

 カァン

 

 

 

 雷雅の当てた打球は。

 

 

「ファール!」

 

 三塁線を切る、ファールとなる。

 

 スクイズ失敗だ。

 

 

「(雷雅...。)」

 

 今日のミス続きは、あいつをかなり苦しめているだろう。

 

 

 だからこそ。

 

 決めて欲しかったのだが。

 

 

 

 

 ホッとしたピッチャーが、次のボールを投じ、雷雅はフルスイング。

 

 

 

 カッキィィンン!

 

 

 会心の当たりが、伸びて、伸びて。

 

 

 ライトスタンドに入った。

 逆転の、スリーランホームランだ。

 

 

 

 

 

《結果》           計  H

 東海第八 0000010  1  3

 ほしうら 0000008× 8× 9

 

 

 雷雅のホームランで勢いづいた俺たちは、一気に8点を取った。

 

 結果的に、サヨナラコールド勝ちで、俺たちほしうら学院高校は次に駒を進めた。

 

 

 それにしても、相手投手が右に変わった途端に四連打したときは、正直ふざけてんのか、と思ったよ。

 

 対左の攻略か...。死活問題だな。

 これから、頑張ってしっかりと克服しないと。

 

 

* * * * * * *

 

「え~、外野手の善 琥羽夜(ぜん こうや)です。よろしくお願いします。」

 

「はい、捕手の國分 成樹(こくぶ なるき)ずr、じゃなかった、です。宜しくお願いするずr...です。」

 

「え、えっと、ピ、ピッチャーのっ、く、く、玄山 文也(くろやま ふみや)です。よ、よろしくお願い、します!」

 

矢部 秋牡(やべ あきお)っす!外野っす!よろしくです!」

 

少剛月 豪(しょうごうげつ たける)、です。よろしくお願い、致します。」

 

「・・中山田(なかやまだ)巧太郎(こうたろう)です。・・一応、どこでもできます。・・よろしくお願いします。」

 

 

 新入部員がやってきた。

 

 

 濃い。非常に濃いなと思う。

 

 ちなみに、矢部と少剛月は、堺シニア時代の俺の後輩。

 年末頃に会って、ココに来ると聞いたときは正直びっくりした。

 

 二人とも、確かな実力を持っていて、信頼できる後輩だ。

 

 

「悪い。中山田、巧太郎は...。」

 

「ちょっと、主将。ちゃんといるじゃないですか、ココに。」

 

「ああ、ごめん、ごめん。今、確認した。」

 

 

 中山田巧太郎。

 

 朔良の榊シニア時代の後輩、らしい。

 かなりの実力者ということだが、俺にはそんな奴がいた記憶はない。

 

 朔良いわく、『かなり影が薄い』らしい。

 

 実際さっきも、松宮先輩が見失ってしまったし...って、あれ?いないぞ?まあ、いっか。

 

 

 

 そして。

 善琥羽夜、國分成樹、玄山文也。

 

 この三人は、県内の硬式チームでスタメンを張り、全国大会の出場経験もある。

 

 いわゆる、"ゴールデンルーキー"と呼ばれる類いの者だ。

 まあ、本当にゴールデンかどうかは定かではないけれど。

 

 

 そして、分かっているかもしれないが。

 

「文也~!やっと来たね!兄は、この瞬間を待ち望んでいたよ!」

 

 玄山文也は、大也先輩の弟だ。

 

「お兄ちゃん!?学校ではそのノリはやめてって...」

 

「我慢できるわけないだろーっ!?文也~!!」

 

「いやちょっと、お兄ちゃん、ホントに、恥ずかしいから...」

 

 

 ・・・。

 兄弟愛、だな。

 

 

 

 場が落ち着きを取り戻したところで。

 

 二年生、三年生もそれぞれ自己紹介。

 

 

 これからは、一年生の実力チェックだ。

 皆上手そうなので、すごく期待できる。

 

「よし、じゃあまずは善と矢部の外野守備からだ。」

「文也と國分は、投球練習をしておいてくれ。」

「少剛月は、少ししたら打席に入ってもらうから、その準備を。」

「二、三年生は、昨日言ったようにしてくれ。」

 

 

「てことで、始」

 

「あの...。僕は...?」

 

「ん?」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・え?」

 

「ああ、えっと~、ごめん。忘れてた。」

「少剛月と同じで。よろしく。」

 

「・・はい。」

 

 

 そして、何とも言えない微妙な雰囲気の中、一年生の実力チェックが始まったのだった。

 




小野原先輩は、試合前日に風呂で寝落ちしてしまったそうです。
彼は、結構長風呂派で、最近の睡眠不足が祟ってしまったとのことです。

彼は!?最終学年として!?もっと!?自覚を持つべきではないだろうか!?

失礼しました。取り乱しました。


皆さんご周知のことだろうとは思いますが、各キャラのモデルを紹介しておきます。
・善 琥羽夜(ぜん こうや):津島 善子
・國分 成樹(こくぶ なるき):国木田 花丸
・玄山 文也(くろやま ふみや):黒澤 ルビイ
・矢部 秋牡(やべ あきお):矢部 秋雄
・少剛月 豪(しょうごうげつ たける):少豪月 剛
・中山田 巧太郎(なかやまだ こうたろう):田中山 太郎

まあ、基本的にはモデルとほぼ同じようなキャラだと思っていただいて問題ないかと。
詳しい能力については、おいおい紹介していきます。

では。今話も読んでくださって、ありがとうございました!

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