両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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テンポ良く、テンポ良く、進めていきます!

そういえば。
皆さん分かっているとは思いますが、東條伊月くんは東條小次郎の弟です。
ついでに言えば、兄と比べて下手なわけであって、一般的に見れば普通に上手い方って感じです(なんかセコイな)

てことで、どーぞ!


Episode.18

四五六と練習試合

 

 十月。二学期の始まりから一か月が過ぎ、今月下旬には公式戦が待つ。

 

 そして、俺たちほしうら学院高校野球部は、今日も練習に励んでいた。

 

「次、ストレートな。」

 

「よっし、来い!」

 

 俺は、バッティングピッチャーをしているところだ。

 打席に入っているのは、井槻 雷雅(いつき らいが)

 道隆フレンズトリオの一人だ。

 三人の中では一番パワーがあり、打撃力に期待できる。

 

 が、しかし、

「次、カットボール。」

 

「・・今日こそ...!」

 

 

 ブルン。

 見事なまでの空振り。

 

「だあ~、なんで打てないんだよ、チクショウ!」

 

 とまあこんな感じで、変化球にめっぽう弱い。

 

 

「ラスト、ストレートいくぞ。」

 

「よっし!」

 

 

 カキィィン!

 しっかりと捉え、外野までもっていく。

 そのパワーで、外野の頭を...

 

 パシッ。

 

 越えなかった。

 

「おお、ナイスキャッチ、草平!」

 

「くっ、追いつかれたか。」

 

 

 芳美 草平(よしみ そうへい)

 道隆フレンズトリオの一人で、走力に長けている。

 

 一方の打撃力。

 バットに当てるのは上手い。

 だが、ヒット性の強い当たりはあまり打てない。

 

 自慢の足を活かした守りと走塁が武器で、今はそっちを磨いている。

 

 

「諒?はやく投げてくれ、待ってるぞ。」

 

 打席の方から声がかかる。

 

「悪い悪い。じゃ、いくぞ。」

 

 

 トリオの三人目、陸奥 風太郎(むつ ふうたろう)

 三人の中で、というかふつうに全体的に見てもセンスがあり、かなり上達速度がはやい。

 正直、初めて一か月半とは思えないくらいに、今は上手くなっている。

 

 ある程度のパワーと、良いバットコントロール。

 肩も強くて、しっかり守れる。

 唯一、足が遅めなのが欠点だが、十分上手だ。

 

 俺が試合に出ないときはおそらく、この陸奥が出ることになるんだろう。

 

 

 

 練習が終わって。

 着替えて帰ろうとしていたところ、佐藤先生が来た。

 

「ああ、良かった。皆、いるな。」

 

 こんにちは、とあいさつをし、松宮先輩が尋ねる。

「あの、どうかされたんですか?」

 

「いや、ちょっと、皆手止めて聞いてくれ。」

 とここで一旦、言葉を切る。

 

 そして、

「いきなりだが、今週の日曜日、帝徳実業(ていとくじつぎょう)高校と練習試合することになったんだ。」

 

 

 静寂。

 

 

「え?帝徳実業高校、ですか?」

 

 思わず聞き返す。

 

「ああ、そうだぞ。向こうさんの学校に行くことになるから。あ、詳細は後々連絡するから。」

「じゃあ、今日もお疲れさん。気をつけて、帰れよ。」

 

 そう言って、先生は部室を後にした。

 

 

 帝徳実業高校、か...。

 これも、何かの縁なのか。

 

 まさか、友章と()()()が似てるって思って、友章が野球部に入って間もなく試合をすることになるなんて、考えてもみなかったよ...。

 

 

 

 

 そうして、あっという間に日曜日。

 俺たちの目の前には、高校野球部の練習風景があった。

 

 今日は、一試合だけする。

 メンバーはこれだ。

1、遊・歌間

2、二・渡

3、三・松宮

4、一・沢良宜

5、右・梨田

6、捕・小野原

7、中・玄山

8、投・双葉

9、左・東條

 

 新チームになって、初試合となる。

 俺たちは、少しの緊張とともに、帝徳実業高校ナインと相見える。

 

 

「(亮...!俺たちが、勝つぜ!)」

 

 

「なあ、諒。」

 

「ん?」

 

「あれが...?」

 

「ああ。前言ってた、俺の親ゆ...いや今は、ライバル、か。」

 

「友沢...亮...。」

 

「なあ、友章。」

 

「どうした?」

 

「俺は、すごく嬉しいんだ。またこうやって、試合ができるっていうのが。」

「だから入ってくれて、ありがとな。」

 

「ふっ。・・全く、それはこっちのセリフだよ。」

「誘ってくれて、ありがとな。」

「勝とう、この試合。」

 

「ああ!もちろんだ!」

 

 

 

 一回表。

 一、二番があえなく倒れて簡単にツーアウト。

 しかし、三番松宮がインコースをうまく打ってレフト線ツーベースヒット。

 

 この先制機で打席には、四番沢良宜。

 ツーボールからの二球目。アウトローのボールを捉える。

 打球はショート頭上へ飛び、ショートの友沢はジャンプ。

 ボールはグラブに収まり、スリーアウト。

 

 友沢の好プレーにより、ほしうら学院の先制とはいかなかった。

 

 

 そのウラ。

 ワンナウトから、二番打者が出塁。

 打席に友沢が入り、その初球にランナーが盗塁を決めて一死二塁となる。

 

 そして友沢。

 追い込まれてからも粘り続け、8球目。

 少し浮いたフォークを捉える。

 先制タイムリーライト線ツーベースヒット。

 

 双葉は、後続を何とか断ち、一失点にとどめる。

 

 

 

 その後。

 ほしうら学院の攻撃。

 相手投手の投球に抑え込まれ、ランナーが出せない。

 

 一方の帝徳実業の攻撃。

 チャンスは幾度もつくるが、双葉の粘り強いピッチングに抑えられる。

 

 

 

 そうして回が進んで六回表。

 ワンナウトから、東條が足を活かした内野安打で出塁。

 さらに盗塁も決め、得点圏にランナーを置く。

 

 だが。

 歌間、渡、ともに内野ゴロで凡退。得点ならず。

 

 

 すると六回ウラ。

 友沢からの攻撃で、三、四、五番が三連打。

 さらに犠牲フライなども絡んで、この回三点を追加する。

 

 

 しかし、七回表。

 ワンナウトから沢良宜、梨田の連打でチャンスを作る。

 

 だが、しかし。

 六番小野原が併殺打。チェンジとなり、得点できず。

 

 

 ほしうら学院は、八回表に代打陸奥のヒットと東條の二本目の内野安打で作ったチャンスを内野ゴロの間に一点返すのが精いっぱい。

 

 八回ウラ、変わってマウンドに上がった玄山が二失点を喫し。

 九回表、三者凡退で、試合終了。

 

 結果、6-1で帝徳実業高校の勝ちとなった。

 

 

 

 

 

 負けた、か。完敗だな...。

 

「よう、久しぶりだな、諒。」

 

「おう、久しぶり、亮。負けたよ。」

 

「当たり前だ。勝ってこその強豪校、だからな。」

「とはいえ、少し不気味だったぞ。」

 

「不気味?どういうことだよ?」

 

「いや、不気味というか...。う~ん...。」

「言葉にし難い、何か、”雰囲気”みたいなのを感じたんだ。」

 

「は?いや、分からんわ。」

 

「とりあえずまあ、やってて楽しかった。今日はありがとう。」

 

「ああ、こっちこそ。次は、絶対勝つからな!」

 

「望むところだ。じゃあな、また。」

 

 

 

 ”雰囲気”ねえ...。

 

「どうしたんだ、諒?難しい顔して。」

 

 学校への帰路に就くバスで、隣に座る友章が尋ねてきた。

 

 だから俺は、亮の言ったことをそのまま伝えた。

 

「どうだ?って、訳わかんないだろ?」

 

「・・いや、何となく言わんとすることは、分かる気が、する。」

「東條にも、何となくわかるんじゃないのかな。」

 

「伊月も?う~ん...。分かんねえな。」

 

「ははっ、別に、今気にすることでもないだろ。」

「というかそんなことよりも。」

 

 おいおい。そんなこととは何だ。そんなこととは。

 

「今日の反省でも、しようぜ。」

「まず、何で今日は右で投げたのかを知りたいな。何か理由でもあるのか?」

 

「理由か。まあ、あるにはあるが...。話すようなことじゃないな。」

 

「ふ~ん、ま、いいや。」

 

「お前は?久々の野球の試合、どうだったよ?」

 

「もちろん、悔しいさ、負けたからな。」

「でも、それよりも今は、野球ができたことの喜びの方がデカいな。」

「いっぱい試合して、勝って負けて。」

「最後はやっぱり、野球を楽しみたいって、そう思ったよ。」

 

「そっか。」

 

「今日は負けたが、次はリベンジしに行きたいな。」

 

「それはもちろんだ。」

「・・その時は、俺も、変わってんのかね。」

 

「ん?なんか言ったか?諒。」

 

「ん、気にすんな。」

 

 

 バスに揺られて、揺られて。

 ほしうら学院高校野球部員十二人は、帰路に就く。

 

 

 各々が、それぞれの想いを、胸に抱えて。

 




読んでくださって、ありがとうございました!

3000字。久々に書きました。
あ、内容の濃さは不問てことで。

次回は、秋も終わりを迎えたほしうら学院高校野球部の能力の紹介と、最近出したオリキャラのちょっと詳しめな紹介をする予定です。
よろしくお願いします!

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