両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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結構空いちゃったな...(遠い目)

さして気に留めない読者さんばかりだろうから、大丈夫かな!
全然知られてないし!

はい。今話は、沢良宜友章君の話です。


Episode.16

努力と類似境遇

 

 俺の日課は、早朝ランニング。

 走れる日は毎日、約3キロ、海沿いを走る。

 

 走り始めてすぐ、俺より少し背が高いくらいの奴とすれ違う。

 

 その人が、今朝初めて知った、沢良宜だったようだ。

 

 

 沢良宜は、中学生時代から早朝ランニングが日課だったらしい。

 道隆が言っていた。

 

 

 やはり、()()()に似ている、と思った。

 

 日々の努力の積み重ねで、成功を手にする。

 決して才能で、とかではなく。

 

 だから、絶対に引き入れたい。うちの野球部に。

 

 

「諒!ちょっと来い!」

 

 練習中、名前を呼ばれる。

 この声の主は...見なくてもわかる。アイツだ。

 声のするほうは向かず、無視する。

 

「おい!聞こえてるだろ!無視するな!」

 

 ・・・。

 

「諒!」

 

 ・・・。

 

「リョウ君?呼ばれてるけど、いいの?」

 

 ()()()()が、聞いてくる。

 いや、うん。君のせいでこんなことになってるんだけど?

 

 

「そっちがその気ならいいさ。いいか!お前には絶対渡さないからな!」

 

 最終的に、こんな捨て台詞を残していった、洋介だった。

 

 

 

 

 

「ねえ、渡すって、何のこと?」

 

 それはそちらで考えてください。道隆さん。

 

 

 

 翌朝。

 目が覚めて、外を見る。

 

 雨。

 

「今日は、ランニングなしか。」

 

 沢良宜と会って、話したかったんだが...。

 まあ、天気は仕方ない。

 

「ふう。ストレッチでもするか。」

 

 

 それから、いつものように学校へ。

 

 

 昼休み。

 俺は、沢良宜のいる教室へ。

 

 沢良宜は、弁当を食べていた。単語帳を片手に。

 

「よう、沢良宜。なんだ、メシ中も勉強か?」

 

「ん?ああ、双葉か。もう高校生だし、早めに勉強をしていて損はないだろう?」

 

 もう、受験のことを考えてるのか。

 

「それで、何だ?」

「言っておくが、野球部に入る気はないぞ。」

 

「そう。それなんだよ。」

 

「ん??」

 

「何も、部活はしてないんだよな?」

 

「・・それが、どうした?」

 

「何で、走ってるんだ?」

 

「別に、大した理由はないさ。中学の頃の流れで、日課になってるんだよ。」

 

「ふ~ん。」

 

「野球に未練がある、とか言って欲しいのか?」

「悪いが、俺はもう野球はしたくないんだ。」

 

 

 ま、ここまでか。正直、()()()だ。

 

「そっか。残念だな。んじゃ、また。」

 

「お?おう。」「・・また?」

 

 

 

 放課後。

 今日の部活は、休み。

 きっと各々が、部員の勧誘をしているだろう。

 

 それは俺も、例外ではない。

 

「よっ。沢良宜。」

 

「またか。今度は何だ?」

 

「ちょっと、付き合え。」

 

「は?」

 

 

 俺は、沢良宜とグラウンドへ。

 

「おいって!なんでココに...」

 

「キャッチボールするぞ。」

 

「は?いきなりなんだよ。」

 

「いいじゃん。久しぶりにボール、投げたくないか?」

 

 しばしの沈黙の後、俺の差し出したグラブをとる。

 

「ちょっとしたら帰るから。」

 

「おう。帰りたくなったら帰るといい。」

 

 

 ボールがグラブに入る音だけが響く。

 

 

「投げられるんだな。」

 

「ん?」

 

「いや、左。」

 

「まあな。今となっちゃ、古傷さ。」

 

 

 段々と、距離が離れる。

 ここにいる二人は今、キャッチボールをただ楽しんでいた。

 

 

 キャッチボール。

 それは、単純な行為。

 

 だがここに、野球の基礎の基礎がある。

 

 沢良宜は、ボールを久々に触ったその懐かしさから。

 双葉は、好きなことができているその嬉しさから。

 二人は心から、キャッチボールを楽しんでいた。

 

 

「・・俺にも、中学の時の試合で、投手生命を絶つことになった友達がいてさ。」

 

 話し始めたのは、双葉。沢良宜は、ただ聞いていた。

 

「そいつは、才能にあふれたやつで、敵チームだったけど、親友、だった。」

「でも、そいつは努力者で、まあ、だからこそ怪我しちゃったんだけど。」

 

「・・・。」

 

「沢良宜の話を道隆から聞いた時、すごく、似てるなって思ったんだ。」

 

「・・そいつとは、今も?」

 

「ん。仲良くしてるよ。」

 

「何、してるんだ?」

 

「野球、続けてるよ。」

「そいつは、投手がダメってなって、今は、ショートしてるよ。」

「元々、野球が大好きだから、離れるなんて無理なんだと。」

 

「・・・。」

 

「なあ、沢良宜。」

「お前は、ホントに野球を金輪際やらない、のか?」

 

「・・・。」

 

「野球は、嫌いじゃないよな?

 

「それは...。まあ、当たり前だ。」

 

「好きなら、やろうぜ。というか、一緒にやりたいんだ。」

 

「・・・。」

 

「どうだ?」

 

 

「・・俺は左だから、ショートはできないぞ。」

 

「ハハッ笑。残念だけどショートには、道隆がいるんだよ。」

 

「そうだったな笑。アイツには、かなり助けられた。」

 

「ファーストの席が空いてるんだ。・・どうだ?」

 

「・・ちょっとだけ、考えさせてくれ。」

 

「ああ。いい返事、期待してるぞ。」

 

 

 

 そして、数日後。

 ほしうら学院高校の野球部員が、一人増えた。

 

 

 夏休みに入った。

 ほしうら学院野球部では、二つの動きがあった。

 

 一つ目は、部員が三人増えた。

 三人とも、道隆、洋介たちと同じ中学校の出身で、頼みを聞いて、快く入ってくれた。

 

 二つ目は、秋季大会への出場辞退だ。

 人数的にはギリギリ条件は満たせているが、まだチームとして成り立っていない。

 八月中旬から秋季大会だが、それには出ないという方向で確定した。

 

 ただ、代わりに、練習試合を多めにするということになった。

 

 十月下旬に市長旗大会があり、ひとまずそこまでは、公式戦はなしだ。

 

 だからこれからは、ひたすらに前だけを見て頑張っていきたいと思う。

 来年の夏、先輩との野球を良い形で終われるように。

 

 しっかりと、努力を積み重ねていこう。

 




まあそりゃ、入部しますわな。
ありきたり展開は、許してください。

では。
今話も読んでいただき、ありがとうございました!!

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