ということで、ダイかなまり世代です。
Episode.15
再始動と問題点
時間は、止まってはくれない。
そう。俺たちは、次の夏に向けて、動き出さなければならないのだ。
そして俺たちは、ある課題に直面していた。
シンプルに、部員が足りなさすぎるのだ。
現在、三年生3人、二年生4人で、部員は7人。
八月中旬からは、秋季大会も始まる。
しかし、今のままでは間に合わないのだ。
学校自体も小さい方なため、有力な候補も少ない。
とにかく、人に当たっていくしかないというわけだ。
その前に。俺は一つ気になっていることがある。
「なあ、道隆。」
「うん?どうかした、リョウ君?」
「一つ、聞きたいことがあるんだけど、この学校、俺たち以外に経験者っているのか?」
「・・いきなりなんで?」
「いや、別に。ただ、道隆と同じチームにいたやつとか、ここに来てないのかなーって。」
「・・・。」
あの...黙り込まられても困るんですが...。
「いや、知らないなら別にいいんだぞ?」
「・・いるよ。僕と同じ中学校にいたんだ。」
「あっ、そうなの?え、誰よ?」
「これは...少し話しにくい内容なんだけど。」
そう前置きして、道隆は話し始めた。
トモは、僕がいた中学校の野球部の、エースだったんだ。
すごいピッチャーで、県でNo.1の実力だった。
トモのおかげで、僕たちは最後の夏、全国大会にも出たんだよ。
「えっ!?お前って、全国大会出たことあったのか?」
「まあ、そうだよ。」
「そんなこと、知らなかったんだけど?」
「いや~、聞かれなかったから。」
「そ、そう言われればそうだけど...。」
「悪い。続けてくれ。」
その、中三の夏、全国大会で、事件は起きたんだ。
初戦、トモは、完全試合ペースで投球を続けて、さらに四番だったトモは、自分のホームランとかで、三点リードする展開だったんだ。
問題は最終回。先頭バッターへの初球だった。
投げた瞬間に、トモがうずくまって倒れたんだ。
バッターはデッドボール。
ここで止めさせるべきだったのに、トモはそこから、三者連続三振を奪った。
ノーヒットノーランを達成したんだ。
「・・・。」
でも、トモの左肩は、壊れてた。
これまでずっと、トモが一人で投げ続けてたんだ。
だから、溜まってたものが最後、一気に出ちゃったんだと思う。
トモの怪我は、選手生命を絶ってしまうようなもので、投球はもちろん禁止されたよ。
そして、二回戦。
トモを欠いた状態でも、なんとか勝とうと頑張ったけど、勝てるはずなんてなくて。
圧倒的な大差で、負けちゃったんだ。
五回コールド、31-0でね。
すごく屈辱的な負け方で、僕たちの最後の大会は終わったんだ。
トモは、泣いてた。
『俺が怪我なんてしたからだ。』って。
トモ一人に頼りきりだったのは、僕たちの方だったのに。
責任を感じたからなのか、単に肩を壊してしまったからなのか、トモはその日以来、全く野球には関わらなくなってるんだ。
それで、高校生になって、トモと同じ学校だったから、せっかくならと思って、最初は誘ったりしてたんだけど、ずっと断られて...。
「それで、今に至る、と。」
「うん。トモが怪我したのは僕たちにも少なからず責任があるとも思うし、無理させたくはなくてさ。それで今は、話すこともほとんどなくなったんだ。」
そうか...。沢良宜友章、か。
せっかくだし、一回会ってみたいな。
「その...沢良宜って、何組なんだ?」
「えっと、確か四組だったかな。会いに行く?」
「そうだな。せっかくの経験者なんだし、話しておいて損はないかな、と。」
「しかも...。」
「(・・俺は、似たような境遇の奴を知ってるんだよな。同じタイプなら、脈はあるだろう。)」
「??」
翌日。
沢良宜は朝早くから学校にいるとのことなので、俺も早めに出て、学校に向かっている。
「・・それで、何で道隆も一緒に来てるんだ?」
隣の男に目をやりながら聞く。
「え?僕も久しぶりにトモと話したいな~って思って。」
「別に、今日じゃなくてもいいだろうに...。」
「まあまあ。気にしなくていいじゃん。」
それよりも。と、俺に向き合った。
「トモを、野球部に誘う?」
「ん?まあ...一応、な。」
「策は、あるのかな?」
「う~ん。どうだろうな。とりあえず、話してみないと分かんないかな。」
「でも、結構いける気はしてるぜ。まあ、楽しみにしてろよ。」
「ふ~ん。自信あるんだ。僕も、トモと野球、またできたら嬉しいな。」
そんなこんなで学校に到着。
当たり前のことながら、他の生徒はほぼ見当たらない。
その時、俺は一つの問題を自分が犯してしまったことに気付いた。
「やべえ、忘れてた...。これは...困ったな。」
いや、正確に言えば、俺は何もしてない。
悪いのは、俺についてきた道隆と...その友達、W君だ。
まあいいや。今は気にしないようにしよう。
一回自分の教室へ行ってバッグ等を置いてから、四組の教室へ向かう。
道隆は...もう先に行ったみたいだな。
本当に、沢良宜とまた話したかったんだろう。
教室に近づくにつれて、道隆の声が大きくなってきた。
ホントに声デカいな、道隆は。
さて...お探しの彼は...って、え?
どうして、道隆は
しばしの間、思考停止。
すると、彼も俺の視線に気づいたのか、こっちを見た。
そして言った。
「あれ?君はいつもの...?」
すると、道隆が俺たち二人の様子を見て、
「え、何?二人は、知り合いだったの?」
いや、知り合いっていうか...。
というか、
まさか、沢良宜が
急展開?ご都合展開?
んま、次話からも、どうかよろしくお願いします。
では。今話も、読んでいただき、ありがとうございました!!