両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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今話から、第二幕。
ということで、ダイかなまり世代です。



第二章
Episode.15


再始動と問題点

 

 時間は、止まってはくれない。

 

 そう。俺たちは、次の夏に向けて、動き出さなければならないのだ。

 

 

 そして俺たちは、ある課題に直面していた。

 

 シンプルに、部員が足りなさすぎるのだ。

 

 現在、三年生3人、二年生4人で、部員は7人。

 

 

 八月中旬からは、秋季大会も始まる。

 しかし、今のままでは間に合わないのだ。

 

 

 学校自体も小さい方なため、有力な候補も少ない。

 

 とにかく、人に当たっていくしかないというわけだ。

 

 

 その前に。俺は一つ気になっていることがある。

 

「なあ、道隆。」

 

「うん?どうかした、リョウ君?」

 

「一つ、聞きたいことがあるんだけど、この学校、俺たち以外に経験者っているのか?」

 

「・・いきなりなんで?」

 

「いや、別に。ただ、道隆と同じチームにいたやつとか、ここに来てないのかなーって。」

 

「・・・。」

 

 

 あの...黙り込まられても困るんですが...。

 

「いや、知らないなら別にいいんだぞ?」

 

「・・いるよ。僕と同じ中学校にいたんだ。」

 

「あっ、そうなの?え、誰よ?」

 

 

「これは...少し話しにくい内容なんだけど。」

 

 そう前置きして、道隆は話し始めた。

 

 沢良宜 友章(さわらぎ ともあき)という、元チームメイトの話を。

 

 

 トモは、僕がいた中学校の野球部の、エースだったんだ。

 すごいピッチャーで、県でNo.1の実力だった。

 トモのおかげで、僕たちは最後の夏、全国大会にも出たんだよ。

 

「えっ!?お前って、全国大会出たことあったのか?」

 

「まあ、そうだよ。」

 

「そんなこと、知らなかったんだけど?」

 

「いや~、聞かれなかったから。」

 

「そ、そう言われればそうだけど...。」

「悪い。続けてくれ。」

 

 

 その、中三の夏、全国大会で、事件は起きたんだ。

 

 初戦、トモは、完全試合ペースで投球を続けて、さらに四番だったトモは、自分のホームランとかで、三点リードする展開だったんだ。

 問題は最終回。先頭バッターへの初球だった。

 

 投げた瞬間に、トモがうずくまって倒れたんだ。

 

 バッターはデッドボール。

 ここで止めさせるべきだったのに、トモはそこから、三者連続三振を奪った。

 ノーヒットノーランを達成したんだ。

 

「・・・。」

 

 

 でも、トモの左肩は、壊れてた。

 これまでずっと、トモが一人で投げ続けてたんだ。

 だから、溜まってたものが最後、一気に出ちゃったんだと思う。

 

 トモの怪我は、選手生命を絶ってしまうようなもので、投球はもちろん禁止されたよ。

 

 そして、二回戦。

 トモを欠いた状態でも、なんとか勝とうと頑張ったけど、勝てるはずなんてなくて。

 圧倒的な大差で、負けちゃったんだ。

 

 五回コールド、31-0でね。

 すごく屈辱的な負け方で、僕たちの最後の大会は終わったんだ。

 

 トモは、泣いてた。

『俺が怪我なんてしたからだ。』って。

 

 トモ一人に頼りきりだったのは、僕たちの方だったのに。

 

 責任を感じたからなのか、単に肩を壊してしまったからなのか、トモはその日以来、全く野球には関わらなくなってるんだ。

 

 それで、高校生になって、トモと同じ学校だったから、せっかくならと思って、最初は誘ったりしてたんだけど、ずっと断られて...。

 

「それで、今に至る、と。」

 

「うん。トモが怪我したのは僕たちにも少なからず責任があるとも思うし、無理させたくはなくてさ。それで今は、話すこともほとんどなくなったんだ。」

 

 

 そうか...。沢良宜友章、か。

 せっかくだし、一回会ってみたいな。

 

「その...沢良宜って、何組なんだ?」

 

「えっと、確か四組だったかな。会いに行く?」

 

「そうだな。せっかくの経験者なんだし、話しておいて損はないかな、と。」

「しかも...。」

「(・・俺は、似たような境遇の奴を知ってるんだよな。同じタイプなら、脈はあるだろう。)」

 

「??」

 

 

 

 翌日。

 沢良宜は朝早くから学校にいるとのことなので、俺も早めに出て、学校に向かっている。

 

「・・それで、何で道隆も一緒に来てるんだ?」

 

 隣の男に目をやりながら聞く。

 

「え?僕も久しぶりにトモと話したいな~って思って。」

 

「別に、今日じゃなくてもいいだろうに...。」

 

「まあまあ。気にしなくていいじゃん。」

 それよりも。と、俺に向き合った。

 

「トモを、野球部に誘う?」

 

「ん?まあ...一応、な。」

 

「策は、あるのかな?」

 

「う~ん。どうだろうな。とりあえず、話してみないと分かんないかな。」

「でも、結構いける気はしてるぜ。まあ、楽しみにしてろよ。」

 

「ふ~ん。自信あるんだ。僕も、トモと野球、またできたら嬉しいな。」

 

 

 そんなこんなで学校に到着。

 当たり前のことながら、他の生徒はほぼ見当たらない。

 

 その時、俺は一つの問題を自分が犯してしまったことに気付いた。

 

「やべえ、忘れてた...。これは...困ったな。」

 

 いや、正確に言えば、俺は何もしてない。

 悪いのは、俺についてきた道隆と...その友達、W君だ。

 

 まあいいや。今は気にしないようにしよう。

 

 一回自分の教室へ行ってバッグ等を置いてから、四組の教室へ向かう。

 道隆は...もう先に行ったみたいだな。

 本当に、沢良宜とまた話したかったんだろう。

 

 教室に近づくにつれて、道隆の声が大きくなってきた。

 ホントに声デカいな、道隆は。

 

 さて...お探しの彼は...って、え?

 

 どうして、道隆は()と話しているんだ?

 

 しばしの間、思考停止。

 

 すると、彼も俺の視線に気づいたのか、こっちを見た。

 そして言った。

 

「あれ?君はいつもの...?」

 

 

 すると、道隆が俺たち二人の様子を見て、

 

「え、何?二人は、知り合いだったの?」

 

 

 いや、知り合いっていうか...。

 

 

 ()()()()、会ってるんだよ。

 

 

 

 というか、()()も、会ったよ。

 

 

 

 

 まさか、沢良宜が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だとは、思ってもいなかった。

 




急展開?ご都合展開?
んま、次話からも、どうかよろしくお願いします。

では。今話も、読んでいただき、ありがとうございました!!

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