両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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こんばんは。

ここで、子島君の投手能力を載せようと思います。
◎子島澄典(ねじますみのり)左左 オーバースロー
 145キロ コントロール・C スタミナ・A
 スライダー3、SFF5、チェンジアップ2
 奪三振、対左4、対ピンチ4、ノビ4、キレ◯、対強打者◯


Episode.13

エンチョウ

 

 八回表。二死満塁。

 俺は、ベンチから同点のピンチを固唾をのんで見つめていた。

 

 この回、先頭は四番丑光。ツーベースヒットを許す。

 無死二塁から、五番巳上はレフトフライに抑えたが、六番羊田にレフト前ヒット。

 七番猿渡は空振り三振に抑え、八番子島は敬遠気味に歩かせた。

 

 そして、今。二死満塁で、打席には九番羽鳥。

 内野は定位置、外野は、前進守備。

 

 相手エース、子島が、出ばなに三者連続三振を取ってからだ。

 流れが向こうに傾き始めている。

 

 一点リードしているけど、もはや、無いように感じてしまう。

 

 

 初球。高めにストレートが外れる。

 

 力が入ってるな。いや、まあ、当たり前だけど。

 

 二球目。ストレートを続け、今度はストライク。

 三球目。インコースに入ってくるスライダー。惜しくも外れ、ボール。

 

 カウント、1-2。バッティングカウント。

 

 四球目。フォークが外れて、1-3となる。

 五球目。ストレートをインローにビシッと決め、2-3。

 六球目。高めのストレート。バッターはカット。

 

 次で...決まる。

 

 運命の七球目。バッテリーが選択したのは、インコース、カットボール。

 羽鳥が、上手く腕をたたんで打つ。

 

「(マズイ!!)」

 

 打球は、ライト前――。

 

 

 ライトの玄山先輩が、打球に向かって飛び込んだ。

 

 

 ズザーッッ! パシッッ!

 

 

 玄山先輩のグラブが高々とあげられる。

 

「ア...アウト!!」

 

 

 ファインプレーだ。

 

 猛ダッシュからのダイビングキャッチ。

 

 

 この回、失点を免れた。

 

 少し暗い雰囲気になりつつあったが、またそれを盛り返す良いプレーが出た。

 

 これで、乗っていきたい!

 

 

 しかし、八回ウラ。

 先頭の三番松宮先輩は、見逃し三振。

 四番鈴木主将も、空振り三振で、五番佐藤先輩はキャッチャーフライ。

 相手エースの子島相手に、未だ外野まで打球を飛ばせていない。

 

 

 九回表。一点リードしている。

 先頭の一番木寅は、ショートゴロ。ヘットスライディングも、ワンアウト。

 二番有馬。サードゴロで打ち取る。これで、ツーアウト。

 

 良い流れで、ここまで来た。頼む、このまま、何も、起きるな...!

 

 三番卯川への初球。スライダーが外れて、ボール。

 

 頼む...!なにも、起きないでくれ...!

 

 

 しかし、野球の神は、干支高校の方に味方した。

 

 ここまで熱投を続けていた後藤先輩。

 

 今日の、127球目だった。

 

 

 フォークボールが、抜けてしまった。

 

 卯川はそれを、見逃さなかった。

 振り抜き、打球が飛ぶ。

 

 うなだれる、マウンド上のエース、後藤先輩。

 

 

 同点ホームラン。

 土壇場で、追いつかれた。

 

 

 さらに。

 四番丑光にも、レフト線への二塁打を許し、逆転されるピンチ。

 五番巳上を迎える。

 その初球。ストレートをきれいにはじきかえされる。センター前――。

 

 

 パシッッ!!

 

「アウトォ!!」

 

 ショートの杉山先輩がファインプレー。逆転は、防いだ。

 

 

 何も、負けてしまったわけじゃない!

 追いつかれたなら、放せばいい!

 

 

 

 

 その始まりは、突然だった。

 

 ポツッ

 一滴。

 

 そして、それは瞬く間に強いかたまりとなって。

 

 ――ザザァァーーーッッ――

 

 

 

 試合は、雨によって一時中断となった。

 

 予報では、もっと遅くに降るとのことだったが、どうやら外れたらしい。

 予報よりも、一時間ほど早くから、降り始めた。

 

 

 ・・・・。

 

 いや、降るんだったら、あと五分早くから降って欲しかったよ、正直。

 何で律儀に、同点になってから降り出したんですかね?

 どうやら、天気も少し干支高校サイドらしい。

 

 って、天気に文句言っても仕方ないか。

 

 ひとまず休めるんだから、プラスに受け止めるべきだな。

 

 

 それよりも、だ。

 

 俺は、相手のベンチにいる男、エースの子島を見ていた。

 

 

 三者連続三振。それと、ソロホームラン。

 本当に、やられてしまったとしか言いようがない。

 

 彼が出てから、何か、雰囲気のようなものが変わった気がする。

 

 それが、エースたるゆえん、というものだろうか。

 

 

 そして俺は、降りしきる雨を眺める。

 

 止むだろうか。

 止んだとして、再開するだろうか。

 止まなければ、再試合ということになる。

 

 この強豪校と、もう一試合戦う。

 

 正直に言って、キツイ。やめたい。

 

 

 でも、戦わなければならない。

 少しでも長く、夏を先輩たちと過ごすために。

 

 負けられない戦いなんだ。

 

 

 

 ・・雨、止まないなあ...。

 

 かれこれ、中断してからもうすぐ30分が経つ。

 

 

 今日、この球場である試合は、俺たちの試合で終わりだから、運営側が粘っているということなのだろうか。

 

 

 さっきまで、相手エースの攻略の糸口を探る会議をしていたが、今はそれも終わって、各々何か違うことをしている。

 

 俺は、ただただ雨を眺めている。

 

 俺は、雨が降っているのを見たり、音を聞いたりすることが好きだ。

 だから今、俺の心は結構躍っている。

 

 

 それと、十回表からのマウンドには、俺が上がることになった。

 

 投球練習などの準備は、試合の途中からしていた。

 あとは、心の準備。

 

 一回戦で、一度マウンドには上がったが、その時とは緊張感がまるで違う。

 

 とにかく、負けたくない。

 価値を呼び込むような、良いピッチングをするんだ!

 

 

 ってそれは、雨が弱くならないといけないんだけど。

 

 

 

 

 そして、それから約15分後。

 動きがあった。

 

 雨が少し弱くなり、雨雲の予測も踏まえ、試合は再開されることになった。

 

 中断してから、約40分が経っていた。

 

 

 ということで九回ウラ、小雨の中、ほしうら学院の攻撃から再開。

 

 先頭は、六番小野原。ショートゴロに倒れる。

 続く七番玄山は、空振り三振。

 そして、八番後藤はセカンドゴロ。

 あえなく三者凡退である。

 

 

 これで、試合は延長戦に突入。

 そして、マウンドには一年生投手、双葉諒。

 

 十回表。干支高校の打順は、六番羊田から。

 その羊田を、見逃し三振。

 七番猿渡はピッチャーゴロで、八番子島をセンターフライ。

 この試合久々の、干支高校の三者凡退。実に、1回表以来である。

 

 

 十回ウラ。一度止みかけていた雨が、予報とは裏腹にまた少し強く降り出してきた。

 ほしうら学院の攻撃は、九番の土屋から。

 雨の中でも、子島のピッチングは変わらず良い。

 土屋、サードゴロ。一番杉山はサードフライ。二番高橋はファーストゴロ。

 子島が投げ始めて、もう5イニング目。しかし、ランナーが未だに一人も出ていない。

 

 

 十一回表。干支高校は、九番羽鳥から。

 双葉も、一年生とは思えない落ち着きで、雨の中でもしっかり投げ込む。

 羽鳥、空振り三振。一番木寅をセンターフライ。二番有馬をセカンドゴロ。

 2イニング続けての三者凡退。双葉、素晴らしいピッチングである。

 

 

 十一回ウラ。

 本当に、そろそろランナーを出したいほしうら学院。

 この回の先頭、三番松宮。空振り三振。

 四番鈴木はセンターフライ、五番佐藤は、セカンドゴロ。

 雨が強まっているにもかかわらず、子島の好投は続く。

 

 

 十二回表。さらに雨が強くなった。

 先頭は、三番卯川。制球が定まらず、双葉は四球を与える。

 干支高校にとって、久々のランナー。しかも、ノーアウト。

 続くバッターは、四番丑光。送りバント。

 だが、雨の影響か、ボールが転がらない。キャッチャー小野原の素早いプレーで、二塁アウト。

 そして、五番巳上は、スライダーを引っかけて併殺打。

 スリーアウトチェンジ。せっかくのランナーも、活かすことができず。

 

 

 十二回ウラ。先頭の六番小野原先輩が、死球を受けて出塁した。

 子島に対して、初めて出たランナー。

 続く玄山先輩は、送りバント。ここで、相手の野手が処理を誤る。

 無死一、二塁。どうやら、こっちに流れが来ている。

 

 ここで、八番の俺が打席へ。サインはもちろんバント。

 俺は、バントには一応自信がある。左打席で、なら。

 だから思い切って。子島は左投げだけど。

 

 俺は、左打席に入る。

 

 そして、無事にバントを成功。

 正直ヒヤリとしたけど、まあ、良かった。

 

 九番土屋先輩は、いつもの粘りを見せる。

 15球目で四球を勝ち取り、一死満塁になった。

 

 打順は杉山先輩というところで、監督が勝負に出た。

 

 

 代打、梨田朔良。

 

 その初球、インローへのストレートだった。

 

 

 カキィンン!

 

 捉えた打球は、ライト方向へ高々と、上がった。

 

 

 

 終わりは、突然訪れた。

 

 

 

 

 

「お~い、諒?早く帰るぞ~」

 

「ああ、うん。今行くよ。」

 

 試合後、俺は雨の降りしきるグラウンドをのんびりと眺めていた。

 

 

 今日は、良いピッチングができた。

 これからも、今日のように落ち着いて投げられれば...。

 

「おいって、諒。」

 

「・・分かってるって。」

 

 ふたたび、朔良に呼ばれる。

 このままだと怒りそうなので、俺は感慨にふけるのをやめ、朔良のいる方へ。

 

 

 

「最後の...、惜しかったな。」

 

「ん?ああ、あれか。まあ、シンプルに力不足だよ。」

 

「ま、明日だな。」

 

「おう。明日だ。」

 

 

 今日の試合、朔良のあの打球は、ライトポールをきれてファール。

 その後、ファーストライナーで一塁ランナーが飛び出して、ゲッツー。

 

 そして、そのタイミングで、降雨による引き分け再試合となった。

 

 ここまできたなら最後までやってもいいじゃんとは思ったが、休めるのは有難い。

 

 ということで、再試合は明日行われる。

 

 明日。とにかく、明日だ。

 力を出し切って、勝つ!!

 

 

★得点表

                  計 H

 干支 0001101010000 410

 ほし 0020200000000 4 6

 (延長十三回、降雨のため翌日再試合。)

 




ああ、再試合になってしまった...。

果たして、書ききれるのか...!
お楽しみに!?


ではまた、次話で。
今話も、読んでくださり、ありがとうございました!!

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