両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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夏大、開幕ス。


Episode.10

ナツ、ヨセン

 

 五月。

 

 練習。合宿。練習。練習。

 

 

 六月。

 

 梅雨の時期。雨。練習。雨。雨。

 

 

 そして、六月下旬。

 

 

 夏の全国高校野球選手権大会の県予選、抽選が行われた。

 

 

 結果、一回戦は、清貧(せいひん)高校との対戦に決まった。

 

 ちなみに、三回戦で、第二シードの干支(えと)高校と対戦する可能性が高いトーナメントとなっている。

 

 

「俺たちは、とにかく人数が少ない。」

 

 試合前日。皆で気合を入れる。キャプテンが話しているところだ。

 

「試合は総力戦になってくるから、一年生にも、もちろん心の準備が必要だ。」

「皆で戦って、勝利を手にするぞ!」

 

 ここでいったん言葉をきった後、

 

「目標は、もちろん甲子園出場!さあ、いくぞ!」

 

 「「「オオーー!!!」」」

 

 さあ、甲子園への戦いが幕を開ける!

 

 

 

 翌日。

 ほしうら学院高校と清貧高校との試合。

 

 清貧高校は、エースの左近 陽大(さこん ようた)を中心とした、守りのチーム。

 

 左近投手は、三年生で、左のサイドハンド。

 持ち球は、スライダーとスクリュー。コントロール良く投げ込んでくるタイプだ。

 

 この試合、ほしうら学院の先発投手はこちらもエースの後藤六。

 

 ほしうら学院の後攻で始まったこの試合。

 四回表まで、テンポ良く、ランナーも出ずに進む。

 

 四回のウラ、先頭の杉山がショートへの内野安打で出塁する。

 二番の高橋がきっちりと送り、一死二塁。

 三番松宮はレフトフライに倒れ、二死二塁となる。

 が、四番鈴木の打席の初球、バッテリーエラーでランナーは三塁に進塁。ここで、鈴木がしっかりとセンター前にタイムリーを放ち、ほしうら学院は一点先制。

 

 その後、六回表。

 ワンアウトから、一番打者の仁科がツーベースヒットを放つ。

 二死三塁となって、三番でエースの左近がフォークを巧くすくって打ち、タイムリー。同点となる。

 

 しかし、六回ウラ。

 ツーアウトから三番松宮が四球を選ぶと、四番鈴木がレフトオーバーのツーベースヒットで一点。

 さらに、五番小野原がレフト前ヒット。鈴木が生還し、この回二点を挙げる。

 

 その後、ほしうら学院のエース後藤は、ランナーも時々背負うが、危なげないピッチングで8回を投げて1失点。

 

 ほしうら学院は、8回に代打出場した梨田が三塁打を放ち、犠牲フライでホームイン。

 ダメ押しの一点を加え、9回のマウンドに上がるのは、一年生の双葉諒。

 

 右投げでマウンドに上がり、最初の打者をサードゴロに打ち取りワンナウト。

 しかし、次の打者にはヒットを許し、更に盗塁も決められる。

 次の打者は、セカンドゴロ。進塁打となって、二死三塁となる。

 次の打者を、ツーストライクと追い込んでおきながら粘られ、ツースリーとなる。

 11球目。ストレート。きれいに打ち返される、が、打球は双葉のグラブに収まる。投直。

 

 ゲームセット。4-1で、ほしうら学院高校の勝利に終わった。

 

★得点表

            計H

 清貧高校 000001000 15

 ほしうら 00010201× 48

 

 

 

 一回戦から、約一週間後。

 

 ほしうら学院は、二回戦に挑む。

 

 相手校は、打多田(ダダダ)高校。

 5点取られたら6点取り、10点取られたら11点取る、打ち勝つ野球をする高校だ。

 

 相手投手は、二年生エースの丹川。持ち球は、スローカーブと、今時珍しい、パーム。

 緩急をつけたピッチングをする投手。右投。

 

 ただ、あくまで打撃のチームのため、投手陣は、良いとは言い難い。

 

 

 この試合、ほしうら学院の先発投手は、二年生の玄山大也。

 躱すピッチングに期待を込めて、送り出された。

 

 また、普段と違う選手起用として、セカンドに一年生の渡が入った。

 いつもセカンドの三年生、土屋は、ライトへ。

 

 この起用は、守備力を上げるためのものであるが、単にそれだけではない。

 

 真の目的は、きっと後に分かることになるだろう。

 

 

 そして、試合が始まった。

 先攻が、ほしうら学院。後攻は打多田高校。

 

 試合は、序盤から動く。

 一回表。

 一死から、二、三、四番打者が、三連打。

 更に、犠牲フライを挟んで、六番打者もタイムリー。

 幸先よく三点先制。

 

 対して、一回ウラ。

 こちらは、一、二番打者が、連打。

 三番打者が三振の後、四番が、サード強襲のヒットで一死満塁とし、五番打者が打席に入る。

 

 

 打多田高サイドは、相手のセカンドが一年生であることに目を付けていた。

 

 

 そして、この場面。

 左打の五番打者は、思いっきり引っ張り打って、ビビらせてやろうという心持ちだった。

 

 初球。アウトコースへのストレート。見逃してストライク。

 

「(いいピッチャーなのかもしれんが、俺らにとっちゃ、何でもない。)」

 

 二球目もアウトコースのストレート。見逃してボール。

 三球目はアウトコースのシンカー。平然と見逃してボール。

 

「(ほら、はやくインコースに来いよ。セカンドには打たせられないことが見え見えだぜ。)」

 

 

 四球目。インコースにストレートが来る。

 打者は、狙い通りセカンド方向に思いっきり打つ。

 

 セカンドベース付近。センター前に抜けるか、という当たり。なおかつ鋭い当たり。

 中間守備の内野を抜けるかという当たりだ。

 

 

 それを難なく捕ったセカンド渡。ショートの杉山にトス。

 杉山はファーストへ送球。4-6-3のダブルプレーで、スリーアウトチェンジ。

 

 渡は、実は少しセカンドベース側に寄っていた。

 

 相手はそれに気づくはずもなく。

 

 ただただ、上手だなと思った。

 そして、それと同時に、対抗心からか、『俺がセカンドをぶち抜いてやる。』とも。

 

 併殺打の彼も、次こそはセカンドをビビらせてやろうと奮起するのだった。

 

 

 これこそが狙い。

 

 打撃には自信を持っている彼らを、渡をセカンドに置くことで、言うなれば煽っているのだ。

 

 『セカンドは一年生だぞ、と。』

 

 

 回は変わって二回表。

 ほしうら学院の打線を止めることができないのは、打多田高のエース、丹川。

 

 彼は、パームの制球が定まっていなかった。

 そこで、他の二球種で上手くやりくりしようとしていたが、そうはいかない。

 

 八番打者四球の後、ヒットエンドラン成功で無死一、三塁となって上位打線へ。

 一番打者のセーフティスクイズで一点を失う。

 

 しかし、ここでエースの意地を見せたか。

 パームを、なんとかギリギリ使い物になる状態に戻す。

 二番打者を内野フライ、三番打者を投併殺打に切り、なんとか一失点に防ぐ。

 

 二回ウラ。

 打多田高校の攻撃は、六番から。

 セカンドライナー、空振り三振、セカンドゴロ。三者凡退。

 

 六番打者は、会心の当たりだったが、渡がファインプレー。

 

 段々と、消沈していく打多田高打線。

 

 

 三回表からは、試合も落ち着く。

 

 パームをなんとか使い物にした丹川。

 慣れない軌道に戸惑うほしうら学院の選手たち。

 

 五回表まで、3イニング続けて三者凡退に抑える。

 

 

 一方、打多田高打線は、未だ点を取れずにいた。

 

 三回ウラ、ピッチャーゴロ、セカンドゴロ、セカンドゴロ。

 

 四回ウラ、サードフライ、左越え二塁打、セカンドライナー(ランナーが飛び出して併殺)

 

 五回ウラ、ライト前ヒット、死球、セカンドフライ、ファースト併殺打。

 

 

 再び試合が動いたのは六回表。

 

 この回先頭の四番鈴木が、打ちあぐねていたパームをライトスタンドに運ぶ。

 勢いづき、その後、二塁打、二塁打、ファーストゴロ、サードエラー、センター前ヒット、セカンドゴロ(併殺崩れ)、センター前ヒット、二塁打と続く。

 

 再び四番鈴木というところで、投手交代をするも、二塁打。

 五番佐藤がファーストゴロに倒れてスリーアウトとなったが、この回一挙七点。

 

 11-0と試合を決定づけ、更にこの回、ウラを抑えればコールド勝ちとなるところまできた。

 

 

 一矢報いたい打多田高校。打順はきりよく一番から。

 今日、四番打者は二安打と当たっており、とにかくそこまで回したい。

 

 一番打者が、粘って四球をもぎ取ると、二番打者のところで代打。

 ライト前ヒット。一塁ランナーも懸命に走った。無死一、三塁とする。

 

 ここで打席に立つのは三番を打つ二年生。

 今日は、三振と三飛。全くいいところがない。

 

 初球を打ち上げる。

 

 打球は外野へ。ライトへの犠牲フライ。一点を返す。

 

 四番打者は、四球。

 五番打者が打席に入る。こちらも二年生。今日は不運もあり併殺打二つ。

 

 現在、一死一、二塁。

 

 あと一点取れば、この回でのコールドは免れる。

 

 打ちたい、打たなければならない。

 

 力みは、凡退につながる。

 

 初球、二球目ともに空振り。ストレートとシンカー。

 三球目のシンカーをギリギリバットに当ててファウル。

 

 ここで、あまりにも力みのある打者に声をかける。

 打撃のタイム。伝令は、同じポジションの先輩。

 

 四球目の釣り球、五球目のシンカーを見逃して、2-2。

 

 六球目、ストレートを打ってファール。力みはとれてきたか。

 

 七球目、スライダー。鋭い打球は、セカンド方向へ。

 

 

 しかし、セカンドは、渡。

 

 

 祈る打多田高校の面々をよそに。

 4-6-3のダブルプレー。ゲームセット。

 

 

 うなだれる打多田高校、喜びを見せるほしうら学院高校。

 

 

 こうして、ほしうら学院高校は、三回戦へと駒を進めた。

 

 

★得点表

             計 H

 ほし高 310007 1114

 打多田 000001  1 6

 




一、二回戦のほしうら学院のスタメンを、一応載せておこうと思います。
守備位置を、数字表記にしています。

◎一回戦      ◎二回戦
1番 6 杉山   1番 6 杉山
2番 8 高橋   2番 8 高橋
3番 5 松宮   3番 5 松宮
4番 7 鈴木   4番 7 鈴木
5番 2 小野原  5番 3 佐藤
6番 9 玄山   6番 2 小野原
7番 3 佐藤   7番 4 渡
8番 1 後藤   8番 9 土屋
9番 4 土屋   9番 1 玄山


次話は、県の第二シード、干支高校との試合です。

今話も、読んでいただき、ありがとうございました!!

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