Episode.0
プロローグ
「あと一人!!あと一人!!あと一人!!」
甲子園。
全国高校野球選手権大会の決勝戦。
甲子園の常連、パワフル学園高校VS一年前まで全くの無名だった、UT-Z高校の戦いは最終回を迎えていた。
UT-Z高校一点リードの九回ウラ。
ツーアウト二、三塁。
一打出れば逆転サヨナラという場面。
打席には、四番でキャプテンの東條小次郎。
今日の成績。ライトフライ、四球、タイムリーツーベース、セカンドライナー。
当たりは悪くないものの、結果として一安打一打点に抑えられていた。
投手の吉良が、捕手の当奈とサインを交換し、投じた初球。インローへのカーブ。
東條はそのボールを捉えるも、打球はファールとなる。
二球目。インハイへのストレート。
東條は悠々と見逃し、ボール。
三球目。アウトローへのストレート。
完璧に制球されたそのボールは、キャッチャーミットに吸い込まれ、ストライク。
これで、ワンボールツーストライク。
観客のボルテージが上がる。
甲子園に響く、「あと一球!!」の声。
観客の声援を味方につけ、投手吉良が腕を振る。
四球目。
この試合の、吉良の133球目。この大会での、777球目。
真ん中、少し低めに来たそのボールを、東條は当てにいく。
しかし。
ボールは、バットから逃げるように縦に落ち、キャッチャー当奈のミットに収まった。
その瞬間。
パワフル学園高校の優勝の夢が消え、UT-Z高校の春夏連覇が決まった。
『三振!!最後は得意の縦スライダーで決めました、エースの吉良!!3-2の接戦を制し、UT-Z高校、春夏連覇達成!!』
マウンドに駆け寄るUT-Z高校の選手たち、総勢十六名。
真っ先に飛びついたのは、今日の三点、全ての打点をあげたファーストの安住。
キャッチャーの当奈も続き、勝利の喜びを分かち合う。
三番を打ち、絶対的なエースで、甲子園での全試合を一人で投げ抜いた
高校通算39本塁打ながら、ここぞの場面に強い四番ファースト、
豊富な知識、巧みなリード、チームを引っ張る五番キャッチャーの
この三人を中心として、UT-Z高校の創設七年目、野球部創部三年目にしての春夏連覇は成し遂げられた。
そして、この旋風は日本各地に広がり――。
* * * * * * *
S県、浦内ヶ浜。
AM6:00。
一人の少年が、浜辺を走っている。
この少年の名は、
今日から、ほしうら学院高校に入学する、新高校一年生。
日課である早朝ランニングを行っている。
いかにもスポーツをしていると思われる、そのがっしりした身体。
身長、176cm。体重、67kg。
ランニングを終え、帰宅する彼。
朝食は健康的だ。白米に梅干し、ワカメの味噌汁。
右手でスマホを操作しながら席に着き、「いただきます。」そのまま左手でご飯を食べ始める。
食べ始めてすぐ、彼はテレビをつけようとリモコンを探す。
それが彼の左側にあると見つけたとき、彼は右手に持っていたスマホを机に置いた。
そして、リモコンを
さっきまで左手にあった箸は、右手に持ち替えられている。
しかも、そのまま食事を続けている。
彼は、両利きであった。
どちらの手でも、ほとんど同じように動かして使える。
登校の準備をすませた彼は、登校用のリュックをからい、家を出た。
向かう先はもちろん、ほしうら学院高校。
彼が今日から入学する、私立高校だ。
名前をうまい具合に変えることに力を注ぎました。笑
これから頑張っていくので、どうか、よろしくお願いします!!