らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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困惑の旋律~2年最後の勉強会、そして、やってきたパティ~

パティとの秋葉での出会いから数日、俺達は2年生最後の期末試験に向けて、学校が終わってから家に集まって勉強する、という毎日を過ごしていた。

 

それに際し、若干名は勉強したくないと不満をぶちまけていたが、俺とかがみに物理的に黙らされる事となった。

 

そして、今日も家へと皆で向かいながら歩いている。

 

「・・・はあ・・・テスト、めんどくさいねー・・・」

「だよなあ・・・こんな事せずに私は走ってたいゼ・・・」

「けいちゃんのおかげで大分勉強しやすくなったとはいっても、やっぱりいやだよね・・・」

 

と、勉強嫌い3人組が言うと、俺とかがみのツッコミ組みは

 

「そう腐るなよ。2年生最後のテストなんだから少しは気合いれたらどうだ?」

「大体、あんたらはいつもテストの度にそんな事言ってるじゃないの!まったく、毎度毎度呆れるわよ!!」

 

そう、がなり立てると、みゆき、あやののフォロー組みが

 

「まあまあ、お2人とも。泉さん達もまったく勉強をしていないというわけでもないんですから、その辺で。」

「慶ちゃんや柊ちゃんの言い分もわかるけど、みさちゃん達も頑張ってるし、あまりきつく言わないであげて?」

 

と言い、勉強嫌い組みはそれに便乗して

 

「そうだよー?私達だって何もしてないわけじゃないんだからさー。」

「ちびっ子の言う通りだゼ。私らだって頑張ってるんだからそんなにきつい物言いしなくてもいいじゃん?」

「みんな仲良く穏やかに行こうよ~。」

 

と言う3人に俺とかがみがため息をつく、という感じでループしていた。

 

そんなやり取りをしつつ、家へと辿り着くと、そこには今日から一緒にテスト勉強をしたいというこうとやまと、そして、それに便乗したいと言う毒島さんと山辺さんもまた、俺達とテスト勉強する事となった。

 

あっちの2人はこうや、やまとと話していて一緒にやりたいと思ったらしい。

 

今更人が増えた所で一緒なので、俺も勉強会をやる事を了承した。

 

「あ、先輩ー。一足先に来て待ってましたよー?」

「お帰りなさい、先輩方。」

「森村先輩、今日からテストまでお世話になりますね?」

「分らないところあったら教えて欲しいです。」

 

と言う4人に俺は頷いて

 

「お待たせ、4人とも。とりあえず家に上がってくれ。場所の準備はもうできてるからね。まあ、俺に教えられる範囲でならなんとかするよ。」

 

そう言うと4人は頷きつつ、他の皆も揃って俺に着いてきて家へと上がるのだった。

 

「「「「「「「「「「お邪魔しまーす!」」」」」」」」」」と言って上がってくる皆を俺はリビングに通すとそこにあらかじめ用意しておいた勉強用のテーブルに皆をつかせる。

 

「飲み物とか準備してくるから皆そこで勉強の準備しといてくれな。」

 

そう言って部屋を出て行こうとする俺にこなたとやまとと毒島さんが

 

「慶一君、1人じゃ大変でしょ?私も手伝うよー。」

「先輩、私も手を貸すわ。手分けして用意しましょ?」

「森村先輩、私にも手伝わせて下さい。しばらくお世話になるんですし、その位はさせてください。」

 

という3人に俺は頷いて

 

「分かった。それじゃ、3人とも頼むよ。一緒にキッチンへ来てくれ。」

 

そう言うと3人とも俺に着いてきてくれたのだった。

 

キッチンで飲み物などの準備をしている時、俺を見ていた毒島さんが声をかけてきた。

 

「ふふ。やさこが言ったとおりの人ですね、森村先輩って。」

 

その声に俺は振り向きながら

 

「え?あいつ、俺の事なんて言ってたんだ?」

 

俺の問いに毒島さんは笑顔になって

 

「先輩は面倒見のいい人だって、困ってる人を見るとほおっておけなくなる人だって言ってましたよ?今の先輩を見ていたら本当にそうだな、って思えます。」

 

その言葉に俺は照れながら

 

「はは、照れるな。なんというかさ・・・頼ってくれる人、困ってる人、見て見ぬふりって出来なくてな・・・おかげで結構馬鹿も見てるけどな。」

 

ははは、と笑いつつそう言うと毒島さんは

 

「優しいんですね、先輩は。やさこがちょっと羨ましいかも。そんな良い人と友達で・・・。」

 

複雑そうな表情でそう言う毒島さんに俺は

 

「今からだっていいじゃないか。」

 

そう声をかけると毒島さんは俺を驚きの表情で見て

 

「え?今からって?」

 

そんな俺の言葉に何だか訳が分からないという感じで聞き返す毒島さんに、俺は笑いながら

 

「部活の後輩という事で知り合った俺達だけどさ、今からだって友達にはなれると思うぞ?それに、山辺さんや、俺の周りの仲間達もな。」

 

そんな俺の言葉に便乗するようにこなたとやまとも

 

「そうだよ。毒島さんさえよければ私たちだって友達になれるよ?」

「私はこうと一緒にすでに友達になってるけど、先輩やみんなとも友達になれると思うわ。」

 

俺達の言葉を聞いて喜びの表情を見せる毒島さんは俺達に

 

「私も、皆さんのお友達になってもいいんでしょうか?」

 

と、おそるおそる聞いてきたので俺達は揃って頷き、「「「もちろん」」」と答えると毒島さんも嬉しそうに

 

「あ、ありがとうございます。この話、たまきにもしますね。えっと?もちろんたまきも、いいんですよね?」

 

そう聞いてくる毒島さんに俺達は笑いながら大きく頷くのだった。

 

そして、俺やこなた、やまとよりも先に皆の所に戻って行く毒島さんの後ろから俺達3人もそれぞれ飲み物を持って移動していたが、その際に2人が俺に

 

「・・・まったく、慶一君、またフラグ立てたねー?君は天然でそんな事してる自覚ないみたいだよねー。」

「お人好し過ぎよ?先輩、そのうち痛い目見ても知らないわよ?」

 

と、なんだか2人してきつい言葉を浴びせられた俺は

 

 

「フ、フラグって、別に俺はそんな事してるつもりはないんだけどなあ・・・」

 

そんな俺に2人は呆れたような顔で

 

「これだよ・・・ほんと、前途多難だよね。」

「先輩は中学時代からこうよね・・・ほんと呆れるわ・・・」

 

やれやれ、と首を振る2人に俺はますます困惑していたのだった。

 

毒島さんと俺達がリビングに着くと、さっそく先程の話を聞いた山辺さんが俺達に「よろしくおねがいします!」と挨拶をし、俺は俺で、数人に冷ややかな視線を浴びつつも、皆は2人を受け入れてくれたのだった。

 

そして、今日も勉強会が始まる。

 

俺と、かがみ、みゆき、あやのの4人は例の如く、3人の指導をしつつ、時折、こうたちの様子を見ていた。

 

「ほら、この公式、違ってるぞ?前に教えた事思いだせ。」

「この訳はこうよ?後でもう一回復習してやってみなさい。」

「ここはこうなりますから、後は・・・」

「ヒントはこうよ?後は教えた通りにやってみて?」

 

3人に指導する俺達。

 

「うー・・・難しいよ・・・」

「頭爆発しそうだってヴァ・・・」

「えっと、えっと、ここはこうで、ここは・・・はうう・・・わからなくなっちゃったよう・・・」

 

そんな3人に苦笑する俺達。

 

そして、後輩組みからそれぞれ質問が来る。

 

「先輩ー、ちょっとこっちお願いしたいんですが。」

「高良先輩、ここ、合ってるか見て欲しいんだけど・・・」

「柊先輩、ちょっといいですか?」

「峰岸先輩、これ、見てもらっていいですか?」

 

そう声がかかると、俺達はこなた達に問題をやらせてる間に後輩組みの様子を見たのだった。

 

そして、後輩組みの様子を見ている時、ふいに呼び鈴が鳴ったので俺はみんなに

 

「あれ?どうやらお客さんみたいだ。ちょっと行って来るから、みんな勉強続けていてくれ。」

 

そう伝えて俺は玄関へと向かった。

 

「はいはい、どちら様ですか?」

 

そう言いながら玄関を開けるとそこにはゆたかとみなみ、そしてひよりの3人がいたのだった。

 

「こんにちは、先輩。お邪魔しにきちゃいました。」

「・・・こんにちは・・・みゆきさん達も・・・ここに来ているときいていましたので・・・」

「受験も済みましたし、勉強会されているとの事で、陵桜の程度を知りたいと思いまして、3人で話し合って来てみましたっス。」

 

俺はそんな3人に驚きながら

 

「まさかお前らだとは思わなかったよ。けど、なかなか殊勝な心がけだな。まあ、参考になるか分からないけど、見ていってくれ。」

 

そう言いつつも、3人を家へと上げる俺だった。

 

「「「お邪魔します」」」

 

そう言って上がってくる3人に俺はリビングへ案内しつつ

 

「お前らの分の飲み物も用意してくるから先に行ってろよ。あー、それと、ゆたか。」

 

キッチンへ行く前に声をかける俺にゆたかは振り向いて

 

「なんですか?先輩。」

 

そう訊ねてくるゆたかに俺は苦笑しながら

 

「こなたがだらしなくしてるかもしれないが、お前はこなたの悪い所は見習っちゃだめだぞ?」

 

そんな俺の言葉にゆたかも苦笑しつつ

 

「あはは・・・大丈夫ですよ、先輩。そんなこなたお姉ちゃんでも私にとっては大好きなお姉ちゃんですから。」

 

そんな言葉を聞いて俺はゆたかに微笑むと

 

「はは、俺の取り越し苦労だったな。ゆたかはこなたの事よく見ていたって事か。」

 

そう答える俺にゆたかもにっこりと笑いながら「はい!えへへ。」と答えると、笑顔のまま3人とリビングへ向かうのを微笑ましく見送ると、3人の為に飲み物を用意しにキッチンへ足を向けた。

 

こなたside

 

今日もここ最近の恒例の試験前の勉強会という事で、私たちはそろって慶一君の家に集まり、勉強をしようとしていたのだが、その勉強会に八坂さん達も参加したいと言い出した。

 

さらには、この前アニ研に入部を果たした毒島さんと山辺さんも便乗する事になり、私はかなり賑やかな勉強会になりそうだなあ、と思っていた。

 

慶一君の家の前で八坂さん達と合流した時、私の思った通りになりそうだな、と思ったのだった。

 

家に上がり、勉強の準備をする時慶一君が飲み物を準備すると言ったので、私は慶一君1人でこの人数はきついだろうと思い、手伝いを志願したのだが、そこに永森さんと毒島さんも名乗りをあげた。

 

結局3人で慶一君を手伝う事になり、私は慶一君達と共に飲み物を準備している時、毒島さんが私達が羨ましいと言った。

 

そんな言葉を聞いた慶一君は、案の定、毒島さんに友達になろうというのを私は半ば呆れつつ聞いていたけど、結局私も仲間が増える事が嬉しかったのもあるみたいで、そんな慶一君の言葉に便乗して毒島さんに私達だって友達になれる、と言うのだった。

 

何となく毒島さんに優しくしている慶一君を見て一瞬いらつきを感じた私は、そんな感情の捌け口に慶一君に嫌味をぶつける事ですっきりさせたのだった。

 

そして私達がひとまずリビングに戻り、さっきの事をみんなや山辺さんに話して盛り上がっている時、この家にまたお客が来た事を知らせる呼び鈴が鳴る。

 

慶一君が出迎えに行き、そこに現れた3人を見て私は驚きつつ声をかけたのだった。

 

「ゆ、ゆーちゃん?それに、みなみちゃんやひよりんも、どうしたのさ、いきなり。」

 

その言葉にゆーちゃんは笑いながら

 

「あはは。受験も終わったし、時間も出来て、それで、こなたおねーちゃん達が勉強会してるって聞いたから、陵桜の勉強ってどんな感じなのかな?って思って、みなみちゃん達と一緒に見に来たんだよ。」

 

そして、みなみちゃんも

 

「・・・折角の機会でもありますし、どの程度難しいのか・・・知りたかったんです・・・」

 

そう言うとひよりんも頷きつつ

 

「あはは・・・まあ、今のうちから心構えつけておけば焦らずにもすむかなーって思いまして・・・」

 

そんな3人に私はニヤリと笑いながら

 

「ふふふ・・・覚悟しなよー?3人とも。陵桜のレベルは半端ないからねー?さあ、どの程度ついて来れるかな?」

 

そう言って脅かすと3人ともびくり、として怯えたような感じになるのを見て私は満足気に頷いたのだがそこにかがみの鉄拳が脳天に振ってきて

 

「こら、こなた!あんまりゆたかちゃん達脅かすんじゃないわよ!!」

 

そう突っ込まれ、私は涙目になりながら殴られた頭をさすって

 

「ちょ、ちょっとした冗談じゃん・・・こぶできるほど殴らなくたっていいでしょー?」

 

と抗議の声を上げるが、ぎろりと睨みつけるかがみを見てすぐさま黙る私。

 

そんなやり取りをしていると、ゆーちゃん達の分の飲み物を用意した慶一君が戻ってきて、私を見るなり苦笑していたのを見て、私は頬を膨らませて慶一君を睨みつけた。

 

慶一side

 

まさかのゆたか達の来訪で、俺はもう一度、ゆたかたちの分の飲み物を用意すべくキッチンに向かう。

 

そして、飲み物を用意し終えてそれを運んでリビングに近づいた時、ゆたかたちとこなた、かがみのやり取りが聞こえ、少し耳を済ませていたのだが、こなたのかがみから鉄拳を喰らった音を聞いた俺は驚きつつも部屋の中へと入って行くと、頭をさすって涙目のこなたと苦笑を浮かべる皆と困惑顔のゆたかたちが見えたので俺もまた苦笑してしまった。

 

そんな俺を見たこなたは、頬を膨らませて俺を睨みつけていたのだが、俺は軽く肩をすくめると、ゆたかたちの所へ用意した飲み物を持っていき、3人に配った。

 

「ほら、3人とも。これでも飲め。それと、こなた。あー・・・俺が悪かったからそんなに睨まないでくれ。」

 

困惑しながらそう言うと、こなたはぷい、と横を向いてしまったのを見て、俺は更に困惑するのだった。

 

そんな俺にかがみが助け舟を出してくれた。

 

「慶一くん、気にしなくていいわよ。こなたの自業自得なんだから。」

 

かがみの言葉にこなたはぼそぼそと

 

「別にちょっとゆーちゃん達からかっただけじゃん、それだけなのに、何も殴らなくたってさー・・・」

 

と言うこなたの言葉を目ざとく聞いたかがみはこなたを”きっ”と睨みつけると

 

「あんたの場合はやりすぎる事が多いの!それを自覚しなさい!!」

 

と、またもこなたを怒鳴りつけるかがみを何とかなだめて再び勉強会を再開するのだった。

 

「・・・うん、いい感じだ。その調子で次を・・・」

「中々いい感じよ?後はそれを応用して・・・」

「それを例題にしてですね・・・と言う感じで・・・」

「こっちは合ってるわよ。それじゃ次はそっちね?」

 

こなた達に教え、下級生組みに教え、自分たちの勉強を行い、そんな様子を見ているゆたかたちは俺達のやっている勉強を見ながら

 

「・・・やっぱりかなり難しそうだなー・・・陵桜ってレベル高いねー・・・」

「・・・流石にこれは頑張らないと・・・ついて行くのも大変かも・・・」

「正直、舐めてたかもしれませんね・・・うーん・・・」

 

と、それぞれに感想を漏らしていた。

 

俺はそんな3人に

 

「おいおい、まだ入学もしていないうちからそんな事じゃ困るぞー?確かにパッと見、難しいかもだけど、お前らなら十分やっていけるって。」

 

そう励ますと3人とも複雑な表情を見せつつも頷いて

 

「そ、そうですね・・・がんばってみます。」

「・・・わからない所とかがあったら・・・頼っても・・・いいでしょうか・・・?」

「私にも力を貸してくれたなあ、と、あはは・・・」

 

そんな3人の言葉に軽いため息をつきつつも頷く俺だった。

 

そして、3人を改めて見据えながら

 

「・・・とにかく、新学期には3人とも欠ける事無く俺達の前に来てくれる事、最後まで祈ってるからな。」

 

そう言って笑うと、3人とも少し驚きの表情をした後、それぞれに笑ってくれた。

 

俺はそんな3人を見て満足気に頷くと、改めて勉強会を再開する。

 

そして、予定の所まで終わらせた時、不意に俺の携帯が着信を告げたので、俺は携帯を開いて番号を確認する。

 

すると、番号は見た事のない番号で、俺は少し不審に思いつつも電話にでる。

 

「はい、もしもし、森村ですが。どちら様でしょうか?」

「もしもし、森村さんですね?私は留学生支援団体の者ですが、この度あなたの家にホームスティの予定の人がいまして、その確認の電話をさせていただきました。」

「は?俺の家に、ですか?何かの間違いじゃ・・・」

「ええと、あなたは龍神龍真さんの息子さんで合っていますよね?」

「え、ええ、そうですけど?」

「実は本来は龍神さんのお宅に予定があったんですが、龍神さんの方が取り込んでいる事があるとの事で、龍神家で預かれない代わりに、息子さんであるあなたを指名されたのですよ。」

「え?親父が?でも、俺には何の連絡もないんですが・・・」

「え?しかし、龍真さんはあなたに委任状を送られたとおっしゃられていましたが・・・」

「委任状?そんなのも貰った覚えはないと思いますが・・・うーん・・・ちょっと後でかけなおさせてもらってもいいですか?家のほうに確認取ってみますから。」

「ええ、それでは、後ほどもう一度こちらにおかけ直し下さい。」

「はい、それでは。」

 

そう言って俺は、なにやら訳のわからないうちに、とりあえずさっきの電話の確認の為に実家に電話を入れようとしたのだが、そこに先程の電話の内容を聞いていたこなたが俺に

 

「ねえ、慶一君。さっきの電話ってなんなの?ホームスティがどうとか言ってなかった?」

 

そう聞いてきたので、俺も困惑しつつこなたに

 

「あ、ああ。確かにそう言ってた。でも、どういう事なのかさっぱり分からなくてさ。今実家に電話して聞いてみるつもりなんだよ。」

 

そんな俺の答えにこなたも困惑しているみたいだった。

 

とりあえず実家に電話を入れる俺。

 

数回のコールの後、親父が電話に出た。

 

「もしもし、慶一か?急に電話してきてどうした?」

「親父か?実はさっき・・・・・・ってな訳でな、一体どういう事なのか聞きたくてな。」

「ん?その事か?それならお前に龍也に頼んで委任状を届けてもらったはずだが。」

「え?いつの話だよ、それって・・・」

「確かお前に龍也に頼んで伝言してもらった日だから・・・1月、お前が顔見せに来てくれた日だな。」

「ん?あの日?けど、龍兄、手紙なんて・・・待てよ?」

 

そこまで話して俺はあの時、龍兄が手紙入れの近くに何かを置いていた事を思い出して

 

「ちょ、ちょっと待っててくれ、親父、確認してみるから。」

「うむ。」

 

俺がそう言い、親父の短い返事を聞いて俺は、手紙入れをあさりにキッチンへと走って行く。

 

そして、手紙入れをあさってみると、そこに見慣れない手紙を見つけたので、俺はその手紙の封を切り、中身を確認した。

 

そこには確かに、親父の直筆による委任状が入っていたのだった。

 

俺はそれを確認した後、親父に

 

「委任状は見つけた。はいいんだが、なんで留学生をそっちで受け入れなかったんだよ?」

「その事なのだが、最近、家の近辺も何かと犯罪が多発するようになっていてな。町内の自治を預かる家としては色々と動かねばならんのだ。それに、そんな物騒な場所にいるよりは、今の所何の問題もないお前の所に預かってもらうのがいいと考えてな。なあに、心配せずとも、留学生の分の生活費は出るから心配はいらん。」

「いや、そういう事じゃなくてだな・・・ふう・・・だから、あの日実家を出るときに親父は俺に俺の身の回りの事を確認したのか・・・」

「・・・その事もあったが、だが、あの時お前に言ったお前の周りの子らに何かあったら、と言うのも嘘と言うわけじゃない。まあ、今更信用してもらえるかはわからんがな・・・」

「あー・・・その事に関しては俺は信用はしてるよ。これでも親父が嘘ついてるかどうかぐらいは分かるようになったつもりだ・・・」

「・・・ふ、言ってくれる・・・まあ、とりあえず、慶一よ、お前に頼んでもいいだろうか?私らに留学生の子を相手にできるほどの余裕がないのだ、すまんが、頼みたい。」

 

俺はそんな親父の言葉に少し考えてから

 

「・・・わかったよ。親父の頼み、聞いてやる。ま、この借りはいつか返してもらうって事でな。それじゃ俺はもう一度留学生支援団体に連絡を取ってみるよ。」

 

その言葉に親父はほっとしたような声で

 

「・・・そうか。引き受けてくれるか。なら、頼むぞ。借りはいずれ返すとしよう。ではな、慶一、元気でやれ。」

 

そう言う親父に俺も

 

「ああ、親父もな。犯罪者相手にするっていうなら無理はするなよ?」

 

そんな俺の心配に親父は

 

「ふ、お前に心配されるとはな。お前、私を見くびっておらんか?なあに、そこらへんの連中では私の相手にすらならんわ。まあ、すぐに決着(けり)はつけるつもりだ。」

 

そう言う親父に俺は苦笑しつつ

 

「ま、とりあえずこれで、な。」

「ああ、また顔見せには戻って来い。」

 

そう言って俺は電話を切った。

 

そして、再度、留学生支援団体に電話を入れる。

 

「もしもし?森村ですが、先程の支援団体の・・・はい、確認はしました、それで留学生はいつこちらに?」

「すでに、留学生の子はこちらに降ります。これからお宅へ伺わせていただく事になりますが、ご都合の方はいかがでしょう?」

「こちらは特に問題はないですよ?」

「そうですか、それでしたら、今から30分後位にお伺いいたします。」

「分かりました。お待ちしています。」

 

そう言って電話を切り、俺はみんなの待つリビングへと向かった。

 

リビングに着くとなにやらみんな心配してたようでこなたが代表で俺に

 

「あ、慶一君、どうだったの?結局。」

 

と聞いてきたので俺は

 

「騒がせてすまん。今実家に確認を取ってきた。留学生は家で引き受ける事となったよ。」

 

と言うと、他の皆も驚いた顔で

 

「え?それじゃ、受け入れるんだ?そういえばその子って男の子なのかしら、女の子なのかしら?」

「アメリカ人なのかな~?それとも、韓国人とかアジア系の人?」

「そこらへんの確認はされたんですか?」

 

そのみゆきの言葉に俺は”はっ”となって

 

「しまった、そこらへん確認するの忘れた・・・」

 

そんな俺の言葉にこなたとかがみ、つかさ、みゆきは呆れ顔になり、みさおとあやのは

 

「何だかおもしれえことになりそうだな。」

「私もお友達になれたらいいなあ・・・」

 

そう言っていたので、俺は笑いながら

 

「たぶん大丈夫だろ?まあ、お互いに慣れなきゃいけないだろうけど。」

 

そう言うと2人は複雑な表情をしていた。

 

「年っていくつなんですかね?」

「男の子か女の子かそこらへんはどうなの?」

「ちゃんと日本語もわかりますかね?」

「英語は苦手ー・・・」

 

と後輩組みが言う。

 

ゆたかたちも突然の事に困惑を隠せないようで

 

「何かいきなりすごい事になっちゃったね。」

「・・・学校、どこに通う人なんだろう・・・」

「興味はあれど、怖いような気もするし・・・複雑っスねー・・・」

 

と3者3様の意見を言い合っていた。

 

俺もそこらへんの詳しい所を確認する事を忘れていたので、自分のミスに凹んでいたが、そうこうしているうちに30分が過ぎ、玄関の呼び鈴が鳴らされたので俺は

 

「あ、どうやら来たみたいだな。俺、ちょっと行って来るよ。」

 

そう言うとみんなも「「「「「「「「「「「「「いってらっしゃーい」」」」」」」」」」」」」と言って見送ってくれた。

 

そして、玄関へ着いた俺は「今開けまーす。」と言って玄関を開けると、そこには先程の電話の留学生支援団体の職員らしき人が立っていて、俺を見て

 

「こんにちは。私は留学生支援団体の○○と言いますが、あなたが森村慶一さんですね?」

 

そう確認をしてくる職員さんに俺は頷いて

 

「はい、そうです。それで、留学生の子ってどんな子なんですか?」

 

そう訊ねると、職員さんは自分の後ろに控えていた留学生の子を呼んで

 

「この子です。さあ、自己紹介して。」

 

そして、一歩前に出てきた子を見て俺は、驚きの表情になった。

 

「ハジメまして。ワタシ、パトリシア・マーティンといいマス。あ!」

 

自己紹介しながら俺に挨拶するパティは、俺を見て驚いていた。

 

そして俺もパティの姿を見て

 

「家にホームスティしてくる留学生って・・・パティ、お前の事だったのか?」

 

驚きながらそう返事をすると、パティは途端に笑顔で俺に抱きついてきて

 

「オウ!まさかここでケイイチとサイカイデキルとはオモいませんデシタ!やっぱりケイイチはウンメイのヒトでしたネ!!」

 

そんなパティに困惑する俺だった。

 

かくして・・・俺は留学生のホームスティを受け入れる事となったのだが、それは、あの時出会った子との再開となる事等、まったく予想もしなかったのだった。

 

そして、俺の家にパティはやってきた。

 

 


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