らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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舞い戻る旋律の裏側、その2~徐々に明らかになる組織~

時はバレンタインの少し前、慶一が旅行にあぶれたがかがみ達を預かる頃までさかのぼる・・・・・・

 

龍神家にて、龍也side

 

「よう、親父。あれから少しは進展あったか?」

 

家に帰り、あれからの捜査の進展を親父に確認する為に戻って来ていた。

 

親父はそんな俺を見て難しい顔をしつつ

 

「・・・うむ・・・まだこれといって新しい進展はないな・・・お前の方はどうだ?」

 

そう尋ねてくる親父に俺も苦笑しながら

 

「俺の方も動いちゃいるがさっぱりだな。末端の連中は時折捕まっているみたいだが、それを操る奴らには逃げられてしまっていて肝心な事が分からずじまいだ。」

 

その報告に親父も軽くため息をつくと

 

「・・・そうか・・・何にしても、今しばらくは奴らとの追いかけあいになりそうだな。龍也、まだまだ情報が必要だ、引き続き牧村さんや”紅”と連携を取り合って情報収集に当たってくれ。こちらも再び探らせるようにする。」

 

親父の言葉に俺も頷いて

 

「わかった、引き続きこっちはこっちで動こう。親父の方も任せる。それじゃちょっと出て来るかな。」

 

そう言って道場を後にしようとする俺に親父は

 

「お前なら問題はないかもしれんが、気をつけてな。」

 

そう言ってくれたので俺も振り返らずに片手を上げて

 

「分かってるよ。親父も気をつけとけよ?俺はまだこの年で道場なんて継ぎたくはないからな。」

 

そう言うと親父は怒ったのか俺に

 

「やかましい!まだお前に任せるほどこっちも衰えてはおらん!変な心配してないでとっとと言って来い!!」

 

という親父から逃げるように外に出た俺だった。

 

「まあ、あれなら当分は安泰だな・・・」

 

そう呟きつつ、俺は次の情報収集に関して考えを巡らせていたが、そこに”紅”の氷室君からの電話が入ったので俺は電話に出る。

 

「もしもし?俺だ。氷室君か。何か進展があったか?」

「龍也さん、こんにちは。とりあえず話したい事がありますから、レゾンへ来て欲しいのですが、今大丈夫ですか?」

「話したい事?今回の一件に関することか?」

「それも含めて、ですが、龍也さんに相談したい事もありますので。」

「わかった。何時ごろにそっちへ行けばいい?」

「午後1時に、ですが?どうでしょうか?」

「1時にレゾンだな?わかった。それより、今回の話に瞬坊は必要か?」

「いえ、今回の事に関しては龍也さんだけで大丈夫だと思いますので、では1時にレゾンで待っています。」

「ああ、了解だ。それじゃ後でな。」

 

そう言って電話を切った後、俺は、牧村道場に足を向けたのだった。

 

程なくして牧村道場に着いた俺は、道場へと足を踏み入れると、俺に気付いた牧村流の門下生や瞬坊達が俺に気付いて側までやってきて

 

「龍也さん、お疲れ様っス!」

「龍也さん、今度稽古つけて下さい!」

「俺もお願いします!」

 

という門下生を制しながら牧村3兄弟が俺に

 

「おい、お前ら、あんまり色々言って龍也さんを困らせるな!すいません、龍也さん。うちのものは血気盛んで。」

「俺達もよければ今度稽古つけて下さい。」

「龍也さんとの手合わせを楽しみにしていますから。」

 

という3人と門下生に俺は

 

「みんな!希望は受け取るよ。今日は無理だが、今度来た時稽古つけてやる。、祐坊、浩坊お前らもな。それと瞬坊、ちょっといいか?」

 

俺の呼び掛けに瞬一君は側に来て

 

「なんでしょう?あ、ひょっとして例の件ですか?」

 

その言葉に俺も頷きながら

 

「ああ。一応情報収集の状況を知りたくてな。で?どんな感じだ?」

 

それを訊ねると、瞬一君は複雑な表情になり

 

「それが、中々進んでません・・・どこへ行ってもトカゲの尻尾切りですからね・・・連中をつるし上げても何も出て来ていないのが現状です、あいつら余程に巧妙に隠れているみたいです。」

 

その答えを聞いた俺は頷きながら

 

「そうか、わかった。それじゃ引き続きそちらも動いてくれ。俺はこれから氷室君に会って来る。俺に話したい事もあるという事だからな。」

 

俺の言葉に瞬一君は

 

「氷室に会うんですか?俺は一緒に行った方がいいですかね?」

 

そう確認してきたので俺は首を振って

 

「いや、今回は俺だけでいいそうだ。後で話の内容を教えるから瞬坊は瞬坊のやるべき事をやってくれ。」

 

そう言うと瞬一君は頷きながら

 

「分かりました。何か役立つ情報が聞ける事を期待します。頑張って下さい。」

 

俺はそんな瞬一君に片手を上げて答えると、氷室君との待ち合わせ場所へと向かった。

 

レゾンに辿り着いた俺はコーヒーを注文し、ゆっくりと氷室君の到来を待つ。

 

しばらくゆったりと時間を過ごしていると、ようやく氷室君が現れた。

 

俺はすぐに氷室君に声をかけた。

 

「おーい!氷室君、こっちだ!」

 

その声に気付いた氷室君は俺に気付くと、急いでこちらへとやって来て

 

「どうも、龍也さん。わざわざご足労ありがとうございます。とりあえず席に着きますね。」

 

そう俺に挨拶しつつ席につく氷室君に俺も

 

「いや、構わないさ。取り合えずなんか飲むか?ここは俺が奢ってやる。」

 

そう言うと、氷室君は薄く微笑みながら

 

「はは。それじゃご馳走になります。マスター!僕にもコーヒーを!」

 

コーヒーを注文してから氷室君は俺の方に向き直り、早速用件の事について俺達はやり取りを始めた。

 

「早速ですが・・・うちのほうでも情報収集は続けていますし、末端の連中に辿り着く機会もありました。しかし、年が明けてから少し奇妙な事が起きています。」

「奇妙な事?」

「はい。連中の情報を掴み、末端をかぎつけてテコ入れに行くのですが、ここの所いつも僕達が現場に着く頃には末端の上にいるやつらはすでに逃げ去った後、という事が起きているんです。最初から数回は僕達の手際の悪さが原因で逃げられている、そう思っていたんですが・・・それにしては取り逃がす回数が多すぎるのですよ。」

「ふーむ・・・それで?」

「僕はその事を奇妙に思いましてね。ここの所のテコ入れの状況を調べさせました。すると、僕達が向かう頃にはすでにその事が相手に知れてしまっているらしい、という事が分かりました。」

「・・・つまり、情報がどこからかもれている、と?」

「はい・・・あまり考えたくない事ですが、うちのメンバーの中に奴らと通じている者がいるのではないか、そう考えるようになりました。そして同時に、それが起こり始めたのは年明けに数人のうちのメンバーに加わった者が入ってからなのだという事もわかってきたんです。」

「なるほどな・・・と言う事はその中に・・・」

「はい。内通者の存在があると僕は踏んでいます。ですが、可能性の段階ですからまだ確証は持てません。なので龍也さんに何かいい考えはないだろうかと思いましてね。こうして来て頂いた訳なんです。」

「そうか・・・うーん・・・・・・君達の中で特に信頼できるナンバー2の奴はいるかい?」

「ええ、いますよ。けど、それでどうしようというんですか?」

「情報を漏らしている内通者を炙り出すいい手があるんだが、それにはそいつの協力が不可欠だ。氷室君、内通者候補に悟られずにそいつを呼び出す事は可能かい?」

「ええ、出来ますよ。今から呼び出しますか?」

「ああ、頼む。そして、そいつと氷室君と俺とで打ち合わせて作戦を実行するぞ。」

「分かりました。少し待ってください。」

 

俺がそう言うと、氷室君は早速携帯を取り出してチームの信頼できるナンバー2の呼び出しをした。

 

しばらく氷室君と2人で待っていると、チームのナンバー2と呼ばれる奴らしい男が店にやってきて氷室君に挨拶をする。

 

「よお、氷室。俺を呼び出して何か用か?」

 

その男が氷室にそう言うと、氷室は薄く笑いながら

 

「お前を呼んだのはこの人さ。お前も聞いているだろう?龍神龍也さんだ。僕達と共に例の犯罪組織つぶしを協力してくれてる人だよ。さあ、坂上、自己紹介だ。」

 

そう氷室が言うと、その男が俺の方を見て

 

「あんたが氷室の言っていた龍也さんか。なるほど、確かにただものじゃないな。俺は坂上健也、”紅”ではナンバー2を張らせて貰ってる。よろしくな。」

 

その自己紹介に俺も頷きながら

 

「坂上君か。龍神龍也だ、よろしくな。早速だけど、あぶり出しの件について作戦を教えるぞ。2人とも近くに来てくれ。」

 

そう言うと2人とも俺の側に来てそして小声で

 

「いいか?まずはだな・・・・・・・そして・・・・・・・で、上手く接触できたら・・・・・・と言う事だ。この作戦、氷室君にも坂上君にも結構厳しい作戦になるが、成功は2人の演技力にかかってくる。どうだ?やってくれるか?」

 

俺が2人にそう促すと2人は少し考え込んでいたが、やがて顔を上げて

 

「分かりました。確かにその方法なら内通者を釣れるかもしれませんね。坂上、連中を潰す為の作戦の一つだ。お前にも覚悟はしてもらわなきゃならないが、いけるか?」

 

そう坂上に振ると、坂上は大きく頷いて

 

「俺達の相手は潰さなきゃならない連中だ。その為ならこの程度の屈辱は甘んじて受けてやる。その代わり成功したら、氷室、何か奢れよ?」

 

その言葉に氷室もニヤリと笑いながら

 

「ああ。飛び切り美味い物を奢ってやるさ。それじゃ後は僕達で綿密な打ち合わせをしよう。龍也さん。ご協力感謝します。」

 

そう言い、坂上君も

 

「ああ、わかった。龍也さん。今度はあんたの実力も見せてもらいたいもんだ。」

 

その言葉に俺も不敵に笑いながら

 

「まあ、そのうちにな。とにかく、2人とも頼んだぞ。」

 

その俺の言葉に頷いて2人は店を出て行く。

 

それを確認した後、俺もまた店をでて新たな情報収集へ向かうのだった。

 

俺が2人に指示した作戦はこうだ。

 

今度のテコいれがあった時、またしても逃げられるだろうから、その際に坂上を一緒に連れて行き、現場に居合わせる。

 

そこで坂上に最近の失態を責めさせる。

 

その指摘に腹を立てた振りをした氷室に坂上を殴らせ、その事に坂上が激しく反発する演技をさせる。

 

そして、末端に逃げられるようになる前にチームに入った新人らに坂上が上への不満をさかんに口にするように見せつける。

 

連中はチームの連携を崩すいい機会だと考えて、潜り込ませている内通者にそいつを利用するように指示を出すと思われるので、そいつからの接触を待つ。

 

そして、接触してきた内通者の話に乗った振りをしてそいつから話を聞きだし、内通者も捕らえてしまおう、というものだ。

 

うまくいけば、指示している奴の尻尾を捕まえる事ができるかもしれない。

 

そして、尻尾を掴めれば上の組織の全貌も明らかになってくるだろう、俺はそう考えたのだった。

 

この作戦には少時間がかかると思われるので、俺も作戦の結果を待ちつつも自身も情報収集へ向かう。

 

この事をきっかけに物事が動くと信じて。

 

氷室side

 

最近のチーム内の妙な動きが気になった僕は龍也さんに事のあらましを話して、今後どうするべきかのアドバイスをもらいたかったので龍也さんを呼び出し、話を聞いてもらう事にした。

 

そして、龍也さんと会い、今の現状を伝えると、龍也さんは信頼の置けるチームのナンバー2を呼んで欲しいとの事、僕はすぐにチームのナンバー2でもっとも信頼のおける坂上を呼び出した。

 

そして、2人で龍也さんの立てた作戦を聞いて、僕達は早速作戦の実行を行う事にしたのだった。

 

そして、チームの詰め所に戻ってみると、次の末端の連中の情報が入って来ていたので僕達は早速作戦の実行に動くのだった。

 

その際に、坂上と、末端連中に逃げられ始めたころに入った新人数人を引き連れて僕達は連中の隠れ家へと赴く。

 

その際にこっそりと坂上に作戦の開始を告げるのだった。

 

連中を取り逃がす回数の増えた時期にうちに入りたいと言ってきた新人は3人。

 

服部雄二(はっとりゆうじ)、岸辺友也(きしべともや)、石山勇(いしやまゆう)と言う名前だ。

 

この3人とうちのメンバー2人、そして坂上を連れて現場へと赴いた。

 

現場につくと、末端の下っ端連中はまだアジトに残っていて、そいつらは捕まえる事ができたが、肝心の上の奴はすでに逃げられてしまっていた。

 

そして、ここから作戦が開始された。

 

「・・・ふう、また逃げられた、って事か・・・連中も中々にすばしこいようだね。」

 

僕が呆れたようにそう言うとそこに坂上は

 

「へっ、お前のやり方に問題があるんじゃねえのか?前もそうやって逃げられていたよな?もっとやり方考えねえといつまでたっても同じ事の繰り返しになるぜ?」

 

そう言う坂上に僕は彼を睨みつけ

 

「ふん、何も知らない奴がえらそうに言うな!お前は僕の言うとおりに動いていればいいんだよ!」

 

そう言いながら僕は彼を殴りつける。

 

「ぐっ!て、てめえ!やりやがったな!?上等だ!てめえとは決着つけたいと思ってたんだ!前から思ってた事だがな!?このチームのナンバー1は俺のほうがふさわしいと思ってたんだ!今ここでてめえを叩きのめしてその座を奪ってやらあっ!!」

 

そう激昂して<演技だが>僕に食って掛かろうとした坂上を一緒についてきたチームのメンバーが止める。

 

「や、やめてください!今はそんな事で争っている場合じゃないでしょう!!」

「そうですよ!坂上さん!落ち着いて!!」

「俺達が争って結束が崩れたら元も子もないですよ!だから落ち着いて下さい!!」

 

そうやって他のメンバーに止められる坂上を一瞥して僕は

 

「ふん・・・そんな単純思考では、ナンバー1等つとまらない。事態はそんなに簡単な事じゃないという事も分らないほどお前は馬鹿なのか?少しは頭を冷やすんだな。」

 

そう言い放つと僕は暴れる坂上を無視して現場を探る。

 

そして、ようやく落ち着いた坂上は

 

「ちっ!何であんなやろうがナンバー1なんだよ。喧嘩だって俺はあいつには負けてねえ。まったくうんざりだぜ、いっつも後手後手に回ってしまってて一つも成果出てねえじゃねえか。いずれあいつは俺が叩き落してやる。」

 

そんな坂上の上への不満を聞いて、一人の男がニヤリとしていた事にこの場の誰もが気付かなかった。

 

そして、そんな事が何度かあったある日、ついに僕達の撒いた餌に1人の男が引っ掛かる事となった。

 

坂上side

 

ここまでは順調に作戦を進めてきた俺達だが、ようやく俺達の撒いた種に引っかかる奴が現れた。

 

それは、俺が意図的に氷室との距離を開けていたときの事、1人の男が俺に話し掛けてきた。

 

「坂上さん、ちょっといいですか?」

 

その声に顔を向けると、そこには新人の1人、岸辺友也だった。

 

「俺に何か用か?」

 

そいつを一瞥して俺は短くそう言い放つと、そいつは俺に愛想笑いを振り撒きながら

 

「ええ。ここ最近、氷室さんとは上手く行ってないご様子。それに、あなたが氷室さんの事をよく思ってない事も最近になってわかってきました。坂上さんは氷室さんを引き摺り下ろしてナンバー1になりたいのではないですか?」

 

そう聞いてきたので、俺はとりあえず奴の話を聞いてみようと思い、話に乗った振りをした。

 

「ほう?俺の事をよくみているようだな。確かお前は岸辺と言ったか?その口ぶりだと、何かいい考えを持っているみたいだな?」

 

そう持ちかけるとそいつは俺の側に来て小声で

 

「ええ、実はそうなんです。俺にはある知り合いがいましてね。そいつに協力すれば、活動の為の資金にも不自由せず、また、氷室を引き摺り下ろす事もできるようになると思いますよ。どうです?この話に乗ってみませんか?」

 

俺はその話を聞いてニヤリと笑うと

 

「おもしれえ。その話、聞かせてもらおうじゃねえか。」

 

そう言うと、その男もニヤリと笑ってそいつの知る事を俺に話し始めた。

 

「氷室は今、やっきになってある犯罪組織を追っていますよね?けど、ここ最近は失態続きで確実に下の者達からの信頼が揺らいでいる状況です。だから、今後も更に失態を重ねさせて完全に下の者の信頼を奪い、そして、それに乗じて坂上さんが氷室を叩き落せば、坂上さんが”紅”のナンバー1となれるでしょう。その為に、あいつらが突き止める末端の隠れ家の情報を犯罪組織の人に伝えて末端のまとめ役の人を事前に逃がすようにすればいいでしょう。そして、その情報は俺がその人等と連絡を取って伝えましょう。」

 

その言葉に俺は頷きつつ

 

「成る程な、そうすればあいつは破綻する、という事か。面白そうだな、一つ乗ってみるか。」

 

そう言うとそいつはニヤリと笑うと、連中と連絡を取り合う為に外へと出ていった。

 

俺はそいつがいなくなった事を確認すると、氷室に連絡を取った。

 

「もしもし、坂上か。どうした?」

「氷室、どうやら俺達の撒いた餌にかかったみたいだぞ。俺は引き続きそいつと行動を共にしつつ動く。事の次第がはっきりするまでは奴を泳がせるからな。」

「分った。任せたぞ?坂上。」

「ああ、任せとけ。これで一歩近づけるはずだ。」

「また連中に気付かれないように連絡を頼む。それじゃ切るぞ。」

「おう。そっちも上手くやれよ?」

 

そう言って俺は電話を切ったのだった。

 

この頃、成人の日が後1日に迫る日だった。

 

龍也side

 

とりあえず、内通者の件を任せつつ俺は俺で情報収集に当たっていたのだが、思ったよりも状況が進展しないので仕方なく一度家に戻る俺だったのだが、家に戻った時親父にお使いを頼まれる事となった。

 

「ただいまー、っと。お袋、親父は?」

 

家に帰り、お袋に挨拶をするとお袋は俺に

 

「お父さんなら居間にいるはずよ?龍也、いつもお疲れ様ね。」

 

そうねぎらいの言葉をかけてくれるお袋に俺は

 

「仮にも正当伝承者だからな。それに慶一達の為でもあるし。」

 

そう返事をするとお袋もにこにこと笑顔を向けてくれた。

 

俺はそんなお袋に笑い返しつつ、居間へと向かった。

 

「ただいま、親父。今日もあまり進展なし、だ。」

 

そんな俺を見て親父も軽いため息をつきつつ

 

「そうか。ご苦労だったな。龍也、お前に一つ頼みたい事があるのだが、明日、慶一の所へ行って伝言と共にこれをあいつに渡して来てくれないか?」

 

そう言って俺に手紙のような物を手渡し、更に

 

「慶一には、正月にも顔見せに来れなかったみたいだからな、明日にでも一度顔見せに来い、と伝えてくれるか?あいつが来た時に、少し確認したい事もあるのでな。」

 

そう言うと俺は今の状況、捜査の進展も望めないし、それもいいかもしれないな、と思い

 

「わかった。明日の朝一番で俺があいつにその伝言と手紙を渡して来よう。」

 

そう返事をすると親父も俺に「すまんな。」と短く答えて、俺はそれに頷きを返すのだった。

 

そして、次の日の慶一が朝食を作る前の時間に慶一の家に行き、慶一に親父からの伝言と手紙を渡そうと思ったのだが、手紙の件を慶一に話し忘れたのを後で気付いたが、まあ後で伝えればいいだろう、と思ってそのままにした。

 

まさか、まつりさんに押し切られてその日デートする事になるとは思わなかったが・・・。

 

そして俺はかがみちゃん達が帰る日までは慶一の家にいた。

 

その日もまたまつりさんの押しに負けてデートと相成ったのだが。

 

2人を見送った後、俺も家へと戻ったが、手紙の件を慶一に言うのを忘れてしまい、仕方ないから今度会う時にでも伝えるか、と思ったのだった。

 

坂上side

 

内通者と共に行動して、ついに奴らの尻尾を捕らえる時がやってきた。

 

俺は内通者に悟られぬように共に行動し、何度か隠れ家で奴の組織の上の者と会う機会があった。

 

そいつは、ここ数回出会った末端の隠れ家には必ず現れていたのだった。

 

俺は内通者を通じてそいつとも知り合いになり、そいつの信頼を得るまでになった。

 

そして、今回、再び”紅”が掴んだ隠れ家の情報を元に、ここで奴らを取り押さえる事にした。

 

そのためにまず、内通者だった岸辺友也を2人きりの時にぶちのめし、身柄を抑えて、俺は今回の情報を届けると言う名目で”紅”の兵隊数人を伏せさせてコンタクトを取りに行った。

 

その男の名前を秋吉勝(あきよしまさる)と言った。

 

俺は秋吉を呼び出して、今回の情報を伝える。

 

「秋吉さん。あの場所がかぎつけられたようだぜ?連中は後30分もすればやってくるだろう。そろそろここも引き払うのがいいと思うが?」

 

俺がそう言うと秋吉は俺に

 

「・・・いつもすまんな。所で、岸辺はどうした。お前と一緒じゃなかったのか?」

 

そう訊ねて来たのでお俺はとぼけつつ

 

「あいつ、ちょっと用事に手間取っているみたいでね、だから俺に先に行ってこの事を伝えておいてくれ、って頼まれたからな。」

 

そう言うと、俺を少し不審な目で見つつ

 

「・・・そうか、まあいい。お前が情報を持ってきてくれてるからな。奴にはきちんとあとで言っておかねばならんだろうが・・・」

 

その言葉に俺は不敵に笑うと

 

「そうだな。次があるならそうしてくれ。」

 

そう言ってパチンと指を鳴らすと近くに伏せていた”紅”の兵隊が秋吉を取り囲む。

 

この状況に血相をかえた秋吉は俺に

 

「っ!坂上っ!!これはどういう事だっ!!」

 

激昂しながらそう怒鳴りつける秋吉に俺は

 

「どうもこうもないぜ?俺は始めっからあいつの仲間になんぞなってはいなかったってだけの話だ。」

 

ニヤリと笑いながら俺がそう言うと秋吉は

 

「おのれっ!裏切り者めっ!!」

 

そう吐き捨てるように言う秋吉を睨みつけ

 

「言いたい事があるなら、”紅”の詰め所でじっくりと聞かせてもらうさ、まあ、運の悪い自分を恨む事だな。おらあっ!!」

 

そう言って奴のみぞおちに一撃を加えて昏倒させると”紅”の兵隊達が奴を縛り上げた。

 

「よし、作戦は成功だ。このまま”紅”の詰め所に運んでこいつを尋問する。いくぞ!?お前ら!」

 

そう言うと、俺達は奴を”紅”の詰め所に運ぶのだった。

 

詰め所につくと氷室が俺を出迎えてくれて

 

「よくやってくれた、坂上。ここから手がかりが掴めそうだ。約束どおり美味い物を奢ろう。」

 

そう言う氷室に俺も笑って頷きながら

 

「へっ、散々苦労したんだからな。それなりの物じゃなきゃ納得しねえぞ?」

 

そう言うと氷室も微笑みながら

 

「望むところだ。お前を満足させられる所へ行くとしよう。」

 

そう言った後俺たちはがっちりと握手を交わしたのだった。

 

龍也side

 

今回の事に関する重要参考人になりそうな男を捕らえたと言う報告を受けて、俺はそいつの尋問を氷室君達に任せつつ、次の手を練っていた。

 

その頃には1月も過ぎ、バレンタインも近づく頃だったが、そこに俺の携帯にまつりさんからの電話が、かかってくる。

 

「もしもし?まつりさん?」

「龍也さん、こんにちはー。ねえ、2月14日は予定はあるかな?」

「うーん・・・その日は特になにもないけど?」

「ほんと!?ならさ、その日にチョコプレゼントしたいから家に来てくれないかな?」

「え?うーん・・・わかったよ、14日にそっちだね?」

「来てくれるんだね?やったあ!それじゃ待ってるからねー。」

「あ、ああ、わかったよ。」

 

そう言って電話を切って俺は軽いため息をつきながら

 

「何だか俺、まつりさんに気に入られちゃったみたいだな・・・14日か・・・仕方ないから行くとするか・・・」

 

そう呟いたのだった。

 

そして2月13日、ついに組織の名前等がはっきりとする事となった。

 

組織の名前はシャドウ。

 

そして、それを取り仕切る者の名前は、親父達が壊滅させたと思っていた組織のリーダーの幹部の1人、非村崇(ひむらたかし)と言うらしい。

 

だが、秋吉も所詮は組織の末端を任される程度の男、上の詳しい所はよく分らないとの事。

 

とりあえず、少しの進展を見せたこの状況から、次の手を考えつつ俺は14日、柊家へと向かっていた。

 

そして、柊家の玄関に近づいた時、呼び鈴を押している慶一に出会ったのだった。

 

そして俺はそんな慶一に声をかける

 

「よう、慶一。お前もここに用事か?」

 

そう声をかけて、その後俺はまつりさんといのりさんの争奪戦に巻き込まれる事となる。

 

かくして明らかになってきた組織の実態、そして、それを牛耳る者の名前。

 

俺は、必ずやつらの所在を突き止めて今度こそ組織を潰す、そう改めて心に誓うのだった。

 

 




龍也達の探す犯罪組織に関する設定その1

今後は何度かこういう形で本編の裏側も書いていきたいと思っています。
今回の新キャラの紹介。

坂上健也、紅では氷室に次ぐ実力の持ち主。口が悪く、氷室とは仲が悪いのでは?と誤解されがちですが、実は氷室がもっとも信頼を置く人間です。

服部雄二(はっとりゆうじ)、岸辺友也(きしべともや)、石山勇(いしやまゆう)

この3人は年明け後に紅に入った新人3人です。
そして、岸辺は紅にいながら、組織とつながりのある内通者でもあります。

秋吉勝(あきよしまさる)

この男が唯一末端を仕切る、組織との連絡係でもありました。
こいつを捕らえた事により、組織の事が少しわかります。

非村崇(ひむらたかし)

この男こそが組織のトップであり、最終的に潰す相手でもあります。

成神章は末端の1人ですが、秋吉程の権限は持っていませんので、今まで捕まってきた連中と一緒ですが、龍神の息子とのつながりがある事から少し特殊な立場にいるようです。

今後も裏側の話の後書き部分に設定を載せて行きます。

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