らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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波乱の旋律~乙女達の戦い、バレンタイン騒動記、前編~

こうの誕生日を何とか苦心しつつ演出して祝う事に成功し、さらにはアニ研にとっての人材さえも増やす事が出来た。

 

今後、あの2人は何かとこうの役に立ってくれる事だろうと思いつつ、俺達はパーティの後片付けをして学校を後にした。

 

そして、こなた、つかさ、みゆきは柊家で、かがみとみさおはあやのと共に峰岸家に行きそれぞれにバレンタインの準備をしようとしていた。

 

少しだけ話はパーティの準備中までさかのぼる・・・・・・

 

こなたside

 

今回も慶一君のアイデアにより、八坂さんの誕生日を祝う為に私達は準備にいそしんでいたのだが、それと同時にもうすぐやってくるあのイベントの事に思いを馳せていた。

 

そして、皆にも事情を聞くべく慶一君もいない今の状況に皆に話を振ってみた。

 

「ねえ、もうすぐ2月14日、バレンタインだよね?皆は今年何か用意しようとか思ってる?」

 

そう話題を振るとみんなはそれぞれに

 

「よ、用意っていったって誰かにあげる予定なんて・・・」

「わたしは今年もがんばろうって思ってるよ~?」

「こ、今年は・・・その・・・一応準備はしようと思っていますが・・・」

「私も今年は義理だけど用意してみようかな?」

「私も兄貴以外にも今年はあげれそうだなー。」

 

という言葉を聞いた私は

 

「皆それなりに考えてるんだねー。じゃあさ、今年は皆で作ってみない?幸いここにはお菓子作りが得意な人が2人もいるしさー。」

 

私がそう言うとつかさと峰岸さん以外の人が

 

「それは・・・是非教わりたいですね。お願いできますか?つかささん、峰岸さん。」

「手作りかー・・・それも面白そうじゃん?あやの、頼むゼー?」

 

そして私も2人に

 

「私も今回は指導お願いするよー。」

 

そう言うと2人はにっこりと笑いながら頷いて

 

「うん。いいよ~?一緒に手作りチョコ作ろうか~。」

「私も及ばずながら協力させてもらうわね?」

 

と言ってくれたので私も2人に「ありがとう、2人ともー。」とお礼を言うのだった。

 

しかし、その中に何故か、かがみの声があがらなかった事に気付いた私は、頭にハテナマークを浮かべつつ

 

「あれ?かがみはいいの?2人に教わらなくて。」

 

そう声をかけると、何やら考え込んでいたかがみが驚きつつ

 

「え?あ、いや、私は・・・別に・・・」

 

と、明らかに動揺を見せている様が感じられたのだった。

 

私はそんなかがみの様子を見て、どうするべきだろうか?と少し悩んでいたが

 

「とりあえず、かがみ。私達はチョコ作りをこのパーティが終わった後に教わるからさー、かがみも一緒に習うつもりなら後で声かけてよね?」

 

そう改めてかがみに言うと、かがみは戸惑いつつも

 

「わ、わかったわよ・・・どうするかはこのパーティが終わってから決めるわ・・・」

 

少し気のないかがみの返事を貰いつつ、私は気を取り直して

 

「それじゃ皆、そういう事で。とにかく今はパーティの準備終わらせちゃおう。」

 

と言う私の言葉に頷いてくれるみんなだった。

 

かがみside

 

八坂さんの誕生日の準備中にこなたは、みんなに今年のバレンタインの事について持ちかけてきた。

 

私もそれを意識してなかった訳じゃないけど、いざその事に話題が行くと、改めてその事を意識させられる事となった。

 

そして、こなたはみんなに今年はチョコを手作りしようと言いだし、それをつかさと峰岸から教わろうと言うのだった。

 

私はそれを聞いたとき、どうしようかと悩んでいたが、私が中々決断できずにいると、とりあえず話を終えたこなたが私に改めてチョコ作りを習おうよ、と言って来たので私はそこで我に帰り、こなたに曖昧な返事をしたのだった。

 

とりあえずは誕生日会が終わるまでにどうするかを決める事となった。

 

パーティの間もずっと考えていたのだが、私はその時に考えていた事を実行に移す事にした。

 

パーティ終了後、私はこなたに

 

「こなた、さっきの事だけどさ。私は一緒にはやらないわ。」

 

そう告げるとこなたは驚いたような表情で

 

「え?どうして?皆で作って皆で渡そうよ、かがみん。」

 

そう言ってくるこなたに私は

 

「かがみん言うな!私はそういうの苦手だから、市販の物を用意しようと思う。だから、こなた達はこなた達で頑張りなさいよ。」

 

そんな私の言葉にこなたは少しがっかりした顔で

 

「うーん、それじゃ仕方ないねー・・・でもかがみも一応は用意するんだね?まあ、それが聞けただけでもよかったかな?」

 

最後の方はニヤニヤとしつつ私にそう言うこなたに私は心の中で(しまった!)と思いつつ

 

「べ、別に用意しないとは言ってないわよ!それにあくまでも今までお世話になった御礼みたいなものよ!それに特別な意味なんてないんだからね!?」

 

と、顔を赤くしつつ慌てて取り繕うが、それがかえって逆効果になってしまい、さらにこなたに嫌な笑顔を向けられる事になったのだった。

 

「あれあれー?私は誰に、とかは言ってないんだけどなー。そうかそうか、かがみもやっぱり・・・」

 

その言葉に私は大いに慌てながら

 

「な、何言ってるのよ!私は、べ、別にそういう事じゃ・・・」

 

と、言ってみるものの、結局はこなたに弄ばれる事となってしまった。

 

そんなこなたとのやりとりでかなり疲れた私だったが、気を取り直してこなたがお手洗いに行ってる隙に私は峰岸に

 

「ねえ、峰岸。ちょっと相談あるんだけど、いいかな?」

 

そう声をかけると峰岸は私の方を向いて

 

「なあに?柊ちゃん。相談って?」

 

そう聞いてきたので、私は他の人達もいない事を確認した後

 

「実は峰岸にチョコ作りを教わりたいのよ。」

 

そう告げると、峰岸は不思議そうな顔をして

 

「え?でも、さっき柊ちゃんは市販の物を用意するって・・・」

 

その言葉に私は峰岸の側に寄り、小声で

 

「あれはこなたの追求を誤魔化す為の嘘よ。それに、こなたはつかさとあんたに教わりたいと言っているけど私はどうにも照れくさいから皆と一緒にはどうしてもできないのよね・・・それに一緒に作ってる所をこなたにひやかされたくもないからさ・・・だからお願い。こなた達を教えた後でいいから私にその後で、大変かも知れないけど教えて?」

 

そう説明すると峰岸はにっこりと笑って

 

「そういう事だったのね?いいわ。泉ちゃん達へのレクチャーが済んだら私が連絡するから連絡を受け取ったら、私の家でやりましょう。」

 

その峰岸の言葉に私は

 

「ありがとう、峰岸。恩に着るわ。今度何か奢らせてもらうから。それと、今回の事、こなたには内緒でお願いね?」

 

峰岸に念を押すように言うと、峰岸も頷いて

 

「わかったわ。私は口は堅い方だから安心してね。それじゃ後でまた連絡するわね?」

 

そう言ってくれたので私は

 

「うん。ありがと。それじゃ後でね。」

 

そう言った後、手を振って別れる私だった。

 

その後、こなたがお手洗いから戻って来ると、つかさたちを引き連れて自宅へと向かったのを見届けて、私もとりあえずチョコ作りに関する本などを漁ってみようと学校を出るのだった。

 

やまとside

 

泉先輩達がバレンタインの事を話し合っている事など露知らず、私達はとりあえず先輩が用意しているパーティ会場にこうを連れて行くためにこうと一緒に学校へ向かっていた。

 

「まったく・・・今日は部活で急がなきゃならないのなら、どうして待ち合わせに遅れて来るのよ!?」

 

移動しつつ、先輩の希望どおりにこうを連れて来れなかった事に罪悪感を感じつつ、私はこうに強い口調で文句を言っていた。

 

「ごめん、やまとー。まさか目覚まし鳴らなかったとは思わなかったんだよー。その代わりいつも以上に急いで動いてるから勘弁して?」

 

私に平謝りしながらも移動するこうだったが、ふいに何かを思い出したようで私に

 

「ねえ?やまと。そろそろバレンタインが近いよね?やまとは先輩に何か用意するの?」

 

そういきなり振られて私は顔を赤くしつつ

 

「え?あ、そ、そういえばそうね・・・ま、まあ、いつもお世話になってる先輩だし、そのお礼に何か用意してあげてもいいわよね。」

 

と、照れながら言う私にこうも

 

「あはは。素直じゃない所はやまとらしいよね。私も一応用意するつもりなんだよね。クリスマスとかのお返しもしてないもんね。」

 

笑いながらそう言うこうに私も、その時と誕生日会の事を思い出すと

 

「そういえば先輩にはそれ以降何もお返ししてないわね・・・まあ、”義理”でも用意しようかしら・・・」

 

わざと”義理”の部分を強調して言ったのだが、それを聞いたこうがニヤニヤとしながら

 

「”義理”?本命の間違いじゃないのー?やまと。」

 

そのこうの言葉に途端に真っ赤になる私。

 

「な、何言ってるのよ!大体私は先輩に対してそんな風になんて・・・」

 

その言葉にこうはさらにニヤニヤしながら

 

「えー?ほんとかなー?怪しいなー?」

 

と言うこうに私は、なおもむきになって反論したのだった。

 

しかしながら、それが逆効果になる事を分かってはいながら、どうしてもその行動を止めれない私だった。

 

結局散々からかわれ、私達はようやく学校へ辿り着き、30分は遅れてしまったが、先輩への義理を果たした私だった。

 

慶一side

 

あれから数日が過ぎ、俺はかがみ達がチョコ作りに奮闘している事など知る由もなく、ここの所学校から帰るときもこなた達は何かをするために急いで帰っている事は知っていたものの、結局俺はその事を聞く事も出来ずにいた。

 

そんな事があってから3日が経ち、いよいよあのイベントの当日となったのだった。

 

とはいえ、その当日になっても俺はいつもと変わらない普段どおりの行動をしていた。

 

いつもの時間に目を覚まし、いつもの時間に朝食を作り、そしてのんびりとしている所に呼び鈴が鳴るのが聞こえ、俺は玄関へと出迎えに向かった。

 

「はいはいっと、今日は誰かな?」

 

そう言って玄関を開けると、そこにはまたここの所、猫の世話をしにやってきてくれるようになったあやのとみさおの2人が立っていた。

 

「おはよう、慶ちゃん。今日も様子、見に来たわよ?」

「おはよ、慶一。今日は私もあやのにつきそいだゼ。」

 

そう言う2人に俺は頭を下げながら

 

「ここのとこいつも立ち寄ってくれるよな。ほんと助かってるよ。ありがとな、あやの。」

 

あやのにそう伝えるとあやのも微笑みながら

 

「いいのよ。私がやりたい、って思ってやってる事だもの。それじゃ今日もやることやってくるわね?」

 

というあやのに俺は頷きながら

 

「ああ、頼むよ。それじゃ、みさお、お前はキッチンへ来い。お茶いれてやるから。」

 

何だか存在を忘れ去られたかのようにがっかりした表情をしてるみさおに声をかけてやると、途端に満面の笑顔になって

 

「よかったー。私、忘れ去られたのかと思ったゼ。んじゃお邪魔するな?慶一ー。」

 

そう言って上がってくるみさおを伴い、俺はキッチンへと行くのだった。

 

そして、あやのとみさおの分のお茶を用意している時、みさおが俺に

 

「あ、そうだ、慶一。お前に渡す物あるんだ。ほら、これ。受け取ってくれよなー。」

 

そう言って丁寧にラッピングされたチョコレートを俺に手渡してきた。

 

「お?これってひょっとして手作りか?悪いな、みさお。」

 

そう言って礼を言うとみさおは笑いながら

 

「ああ、すっげえ苦労したけどその甲斐あって上手くいったぞ?会心の作だから味わって食ってくれよな。」

 

そう俺に言ってくるみさおに、俺は貰ったチョコをじっと見つめていたのだが、おもむろにラッピングを取るとみさおの作ったチョコをほおばった。

 

そんな俺の行動に驚いたみさおは俺に

 

「ちょ!?慶一?食ってくれとは言ったけど今すぐとは言ってねえんだけど・・・。」

 

と言うみさおの言葉に答えず俺は黙々とチョコを食べる。

 

そして、すべて食べきると、俺はみさおに親指をびしっと立てて

 

「みさお、お前の苦労の甲斐もあったな、チョコ美味かったぞ?」

 

そう告げると、みさおは俺の行動に驚きつつも満面の笑顔になって

 

「あはは。突然のお前の行動には驚いたけどさ、美味いって言ってくれて嬉しかったゼ?」

 

と言うみさおに俺も笑顔を返していると、猫の世話を終えたあやのが戻って来て

 

「あら?ずいぶん楽しそうね。あ、みさちゃん、それ慶ちゃんに渡したのね?あれ?ラッピングが解かれてるという事は・・・」

 

テーブルに置いてあるラッピングを見ながらあやのがそう言うと俺は

 

「ああ、早速いただかせてもらった、と言う訳さ。」

 

そう言う俺にあやのも優しく微笑みつつ

 

「そうだったの。よかったわね?みさちゃん。みさちゃんも頑張ったもんね。」

 

その言葉にみさおも頷きつつ

 

「まあなー。でも、突然食い出したのには驚いたけどな。」

 

みさおの言葉に苦笑しつつ、あやのも自分の鞄からチョコを取り出して俺に手渡してくれた。

 

「はい、慶ちゃん。これは私から。いつもお世話になってるお礼も兼ねて義理だけど作ってきたの。」

 

そう言うあやのに俺も

 

「ありがとう。あんまり意識してはいなかったけど、義理でももらえると少しは嬉しいもんだな。」

 

と言うとあやのもいたずらっぽく笑いながら

 

「義理でも心は込めたわよ?」

 

そう言ってくれるあやのに俺は頷くと、またしてもラッピングを剥ぎ取りあやののチョコも食べ尽くすのだった。

 

あやのもまた、俺のこの行動に驚いたようで

 

「け、慶ちゃん?大丈夫なの?一気に2つもいきなり食べちゃって・・・」

 

と、少し心配そうに声をかけてくれるあやのに俺は頷きつつ

 

「ああ、問題ないよ。あやの、これも美味かった。改めてありがとうな。」

 

そうお礼を言うと、あやのは嬉しそうに首を左右に振りながら

 

「ううん。喜んでくれたのならよかったわ。私も作った甲斐あったわね。」

 

と言うあやのに俺も笑顔を向けながら

 

「ああ。実際バレンタインでチョコ貰うなんて初めての事だからな。驚きはしたけどさ。さて、お茶を飲んでそろそろ学校へ向かうとしようか。」

 

チョコを食べつつも、あやの達に用意したお茶を出して自分もお茶をすすりつつそう言うと、そろそろ学校へと向かう時間となったので俺達は3人で家を出た。

 

そして電車に乗り込み学校を目指したが、その日に限っては俺はかがみやつかさ、こなたに電車の中で出会えなかったのだった。

 

珍しい事もあるものだと思いつつ学校に近づいた時、俺は何やら周りの空気が変わったようなそんな感覚に襲われたのだった。

 

そして、学校の近くで俺は、知らない女生徒数人からチョコを受け取る事となった。

 

「お?慶一、モテモテだなあ。早速5個ゲットかー?」

「体育際以降、沈静化してたと思ったけど、まだ慶ちゃんの事諦めてない子がいたのね。」

 

と言う2人の言葉に俺は困惑しつつ

 

「うーん・・・嬉しい反面、何だか嫌な予感もするんだよなあ・・・また織部さんみたいな子が現れたりしないよな・・・?」

 

そう呟いていると、俺の後ろから声をかけてくる子がいたのだが、俺がその声に驚いて振り向いてみるとそこには織部さんが立っていた。

 

「おはよう、森村君。私がどうかしたの?」

 

そんな織部さんに思わず警戒しつつ身構えてると、織部さんは俺に少し困ったような表情を見せながら

 

「もう、今更何もしやしないわよ。だからそんなに構えないでくれるかな。それと、はいこれ。」

 

そう言って俺にチョコを渡して来たので、慌てて俺はそれを受け取る。

 

「え?あれ?これって・・・」

 

いきなり渡されたチョコに困惑してそう聞き返すと、織部さんはにっこりと笑いながら

 

「まあ、義理だけどね。仮にも私は一度はあなたの事好きになった訳だしね。それにあなたはあんな事をした私を嫌わないでくれた。そんなあなたの気持が嬉しかったって事もあったんだけど、それと共にあなたにかけた迷惑に対するお詫びも兼ねてるんだけどね。とりあえず私のやりたい事は済んだし、そろそろ行くわ。それじゃね?森村君。」

 

そう言って俺に手を振って去って行く織部さんを半ば呆然と見守りつつ

 

「うーん・・・やっぱし、根はいい子みたいだよな・・・でも、お詫びのためとはいえ、こんな事してもらったら逆に気がひけるなあ・・・」

 

そう呟いているとその様子を見ていたみさおとあやのが

 

「なあ、慶一。今の織部だよな?あいつお前になんか言ったんか?」

「様子は見ていたけど、あの時のようなトゲトゲしさはなくなってはいたわね。それで?慶ちゃん、大丈夫だったの?何か言われた?」

 

少し心配そうに俺に聞いてくる2人に俺は首を振って

 

「いや、俺にかけた迷惑のお詫びも兼ねて、チョコをくれただけだよ。それ以外には特に変な事言われたりはしてないよ。」

 

そう伝えると、2人とも安心しつつ俺に

 

「そっか、何事もなくってよかったけどよ。心配はいらねーぜ?私らはもう何があってもお前の事を信じるからな。お前と一緒に困難に向かう覚悟できてるしな。」

「私もよ?慶ちゃん。だから、何も心配要らないわ。」

 

そんな2人に俺は心から「ありがとう」と伝えると、2人とも満面の笑顔で「「どういたしまして」」と言ってくれたのだった。

 

そして、2人と話しながら下駄箱に着いた俺は、早速下駄箱を開けて上履きを取ろうとしたのだが、そこからチョコが雪崩のように落ちてきたのを見て、俺はしばし呆然としていた。

 

俺の様子に気付いた2人も俺の所にやってきて

 

「どうしたんだ?慶一、うお!すげえな、これ・・・」

「何かあったの?慶ちゃん。あらら・・・凄いわね、これ・・・」

 

俺はとりあえずチョコを拾い集めて鞄の中に入れておいた紙袋を取り出すと、その中にチョコを詰めた。

 

そんな俺の用意周到振りを見た2人は

 

「慶一、ずいぶんと用意いいじゃねえか。お前この事態を想定してたのか?」

「朝に私達からチョコもらった時は初めてだ、って言ってたわよね?それも本当なの?何だか怪しいんだけど?」

 

少し黒いオーラを放ちつつ言う2人に俺は

 

「みさお、言っておくが俺はいつでもこれは持ち歩いているんだぞ?突然荷物増えた時や体操着を持ち帰る時なんかにあると便利だからな。それと、あやの、朝も言ったとおり、貰うのは初めてだよ。けど、それがいきなりこんな風になるなんて想像すらしてなかったからな・・・それに2人とも見てただろ?俺がこのチョコを見た時の反応をさ。慣れてるんならあんな風に呆然としたりしないはずだ。もっと余裕もってチョコをかき集めていたろうさ。」

 

軽いため息をつきつつ2人に説明をすると、俺の行動に納得がいったみたいで

 

「それもそうか。よくよく思い出してみたら、どう見てもさっきの慶一の反応は素人の反応だよなあ・・・疑って悪かった。」

「確かにそうね・・・さっきの態度が演技にはとても見えなかったものね。疑ってごめんなさい、慶ちゃん。でもこうなるとまた、あの時のような生活にもなりかねないかもしれないわね・・・あの時慶ちゃんが急にモテ出して逃げ回る事になっていた体育祭の後の日みたいな事に・・・それがちょっとだけ心配だわ。」

 

そんなあやのの言葉に俺は少しだけ不安を心に抱きつつ

 

「確かに、これはあの時と状況が似てるな・・・あ、ひょっとして、またこうなったのは・・・」

 

俺が何かを思い出したように呟いた言葉を聞いて2人は

 

「ん?慶一、何か思い出したんか?」

「慶ちゃん、この状況になった事に何か心当たりでもあるの?」

 

そう聞いてきたので俺はバツの悪そうな顔をしながら

 

「ありえそうな事が2つほどね・・・一つは文化祭の準備してる時に俺が不審者を捕まえたあの時、もう一つは文化祭の最中に腕相撲で5人抜きをやった時、おそらくあれで目立ったんじゃないだろうか・・・?」

 

そんな俺の言葉に2人は

 

「不審者の事は私らも当事者だったからわかるけど、腕相撲の事は知らなかったなー。」

「そうね、あの時も確かに話題にはなっていたけど・・・でも、腕相撲か・・・それは私も知らなかったわね。」

 

俺は頭をかきつつ2人に

 

「腕相撲の件に関しては俺もその後で色々な事あったからな、話し忘れてたよ。でも、お前ら気付いたんじゃないのか?俺の家のリビングにおいてあるテレビが変わってた事をさ。あれ、その時の優勝景品だったんだぜ?」

 

その言葉に2人とも”はっ”となって

 

「そういや最近慶一の家のテレビが立派になったと思ってたけど、あれってそういう事だったんかー。」

「慶ちゃんの家の大きさにマッチしているテレビだっただけに違和感なさ過ぎて気付かなかったわね・・・」

 

そんな2人の言葉に俺も苦笑しつつ

 

「まあ、何にしてもだ。今日は色々と苦労しそうだな、これは覚悟して臨まないと厳しそうだ。」

 

そう言う俺に2人は笑いながら

 

「まあ、せいぜい頑張れよ?慶一。一応応援はしてやるぞ?」

「今日一日の無事を祈っているわ。頑張ってね?慶ちゃん。」

 

そう言う2人に俺は力なく笑い返すのだった。

 

そして、教室に辿り着くやいなや、同じクラスの女子数名からチョコを渡される俺。

 

そんな中、俺達よりも先に来ていたかがみがそんな俺の様子に気付いてこちらを見ている事に気付かず、波乱の一日が幕を開けることとなった。

 

果たして俺は、今日1日無事にこの状況を乗り切っていけるのだろうか、そして、このバレンタイン騒動の結末は?

 

誰にも予想できない1日が今はじまりを告げた。

 


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