らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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慌しき旋律~慶一の疲れる1日模様~

柊家において家族旅行が当たり、家族でのくじ引きの結果、今回は留守番をする事になったかがみとまつりさん。

 

ただおさんは2人を残して行く事を心配し、俺に旅行の間2人を預かって欲しいと頼んだのだった。

 

ただおさんの頼みを快く引き受けた俺は、早速2人を自宅に招く。

 

そして、3人での3日間だけだが、一緒の生活が始まったのだった。

 

慌しい初日を終えて次の日の朝、俺はいつもの時間に目を覚ます。

 

「うーん・・・今日もいい朝だな。さて、と・・・」

 

そう呟いた後、俺は早速服を着替えて顔を洗う為に洗面所へと向かう。

 

まだまだ水温は低い今の季節、顔を洗って目を覚ますにはもってこいの水の冷たさだった。

 

そして、2人が起きてくる前に朝食の用意をしようとキッチンへ行った俺だったが、そこに何時の間にか来ていた人物に俺は、驚いて思わず声をかけたのだった。

 

「た、龍兄?いつ家に来たんだよ?」

 

そう訊ねると龍兄は笑いながら

 

「慶一、朝の挨拶はおはよう、だろ?まあ、お前が起きるちょっと前くらいだな。お前に親父から伝言預かってきたんでな。」

 

という龍兄の指摘に俺も思わず

 

「お、おはよう。ん?親父から伝言?」

 

挨拶を返しつつ、龍兄の言う伝言の事が気になったので聞いてみると、俺の言葉に龍兄は頷いて

 

「ああ。正月も風邪引いたりして結局家に顔見せにも帰ってきてないから今日一度顔見せに来い、ってさ。」

 

そう言う龍兄の言葉を聞いて、親父からの伝言の内容にあきれつつ

 

「何かと思ったらそんな事かよ・・・まったく・・・あ、でも、まいったな、今うちにはかがみとまつりさんが居るんだよ。」

 

そう、龍兄に言うと、龍兄は俺に

 

「ん?かがみちゃんとまつりさんが?一体何でだ?」

 

と言う龍兄に俺は事情を説明すると

 

「成る程な・・・なら俺がお前が戻ってくるまで代わりに居てやろうか?親父の所には泊まってくる必要もないから日帰りで帰ってくればいいしな。」

 

そう言う龍兄の言葉に俺はしばし考え込んでいたが、やがて顔をあげると

 

「うーん、それならちょっと任せてもいいかな?今行っておかないと何だかうるさそうだし、行ってきちゃうよ。」

 

と言う俺の言葉に龍兄は頷いて

 

「おう、そうしろ。こっちは俺に任せておけばいい。あんな親父でも俺達の事を心配はしてくれてるみたいだからな。顔見りゃ安心もするだろ?」

 

俺はそんな龍兄の言葉に頷いて

 

「まあ、それもそうか。じゃあ、龍兄、こっちは任せるよ。2人をよろしく頼む。」

 

俺の言葉に頷く龍兄。

 

そんなやり取りをしていると、かがみがキッチンへとやってきて、俺と龍兄の姿を見てびっくりしていた。

 

「おはよう慶一くん、ってあれ?龍也さん?何時の間に来てたんですか?」

 

かがみの言葉に龍兄は笑いながら事情を説明すると

 

「そういう事だったのね。そっか、慶一くん、実家に顔出しに行くのね?」

 

その言葉に俺も頷いて

 

「ああ。前々からの親父達との約束でもあったからな。でも日帰りで帰ってくるから大丈夫さ。それまでは俺の代わりに龍兄が居てくれるから何の問題もないよ。」

 

俺の言葉にかがみは苦笑しながら

 

「まあ、私は別に構わないけどさ。まつり姉さん、龍也さんの事気に入ってるみたいだもんね・・・大丈夫?龍也さん、姉さんの相手するの結構しんどいかもしれないわよ?」

 

かがみの言葉に龍兄は苦笑しつつも

 

「まあ、なるようになるさ。それじゃ朝御飯食ったら早速出発だな。慶一、今日の献立はなんだ?」

 

そんな龍兄に苦笑しながらも俺は

 

「あはは・・・とりあえず今日は和食メインで塩鮭に漬物、大根の味噌汁って所だな。」

 

と、一応説明をすると、龍兄は満面の笑みを浮かべて

 

「おー、いいねえ。まさに俺好みの朝食だ。楽しみだぞ?」

 

そんな龍兄に俺とかがみは顔を見合わせつつ

 

「ねえ、慶一くん。龍也さんて和食好きなの?あ、それと味噌汁今回も私に任せて欲しいな。」

「ああ。龍兄は昔から和食派だよ。味噌汁の方は前にも好評だったし、今回も期待してるぞ?かがみ。」

 

そう言うとかがみは顔を赤くして照れつつ

 

「あはは、そう期待されちゃうとプレッシャーかかるけど、とにかくやってみるわ。」

 

と言うかがみの言葉に俺も頷きで応えるのだった。

 

程なくして朝食も出来上がり、おれたち3人は食卓を囲んでの朝食となった。

 

この場にまつりさんがいなかったのは、もう少し寝かせておこうと言う事にしたからだったのだが。

 

そして、今回もかがみの味噌汁は龍兄にも好評だったようで、龍兄に褒められたかがみは顔を赤らめつつ照れていたのだった。

 

その後、洗い物を済ませた俺は、実家へと行く準備を整えてかがみ達に出発の旨を伝えて家を出た。

 

「それじゃいってきまーす。かがみ、帰ってきたらラノベの約束果たすからさ、ごめんな。」

 

見送ってくれるかがみにそう言うとかがみは笑いながら

 

「いいわよ。実家の事だって大事なんだからちゃんと顔見せて安心させてきなさいよ?私はちゃんと待っててあげるから。」

 

その言葉に俺も頷いて手を振って家を出て駅へと向かった。

 

そして、時間通りに電車に乗り込んで俺は一路実家を目指すのだった。

 

電車に揺られる事1時間、ようやく俺は実家の最寄駅へと辿りついた。

 

一応持ってきた手土産の確認をして、いざ実家へと歩き出そうとした時、俺はふいに後ろから声をかけられたのだった。

 

「あら?あなたは確か、みゆきのお友達の森村君だったかしら?」

 

と言う言葉に俺は声の方に振り返ってみると、そこには買い物帰りらしいみゆきの母親、ゆかりさんがにこにことしながら立っていたのだった。

 

「あ、こんにちは。ご無沙汰しています。ゆかりさん。」

 

そう声をかけると、ゆかりさんはにっこり笑いながら

 

「そういえばそうよね?以前にみなみちゃんと一緒に一度家に来てくれて以来、家には遊びに来てくれてないわよね?」

 

軽く首を傾げつつそう言うゆかりさんに俺は苦笑しつつ

 

「いやあ、俺も埼玉に住んでますしね。親父達への顔見せとかで戻る程度で余りここのとここちらへ来なかったですから。でも、去年のクリスマスには立ち寄らせてもらったんですよ?まあ、ゆかりさんには会えませんでしたけど・・・」

 

俺の説明にゆかりさんは頬に手を当てながら

 

「まあ、そうだったの。ねえ、森村君。これから少し時間、あるかしら。折角また会えたんだし、家でお茶でもどう?みゆきも居るし、久しぶりにお話聞きたいわ。」

 

ゆかりさんのお誘いに俺は少し考えつつ

 

「そうですね・・・ちょっとこちらの用事済ませていきたいので、その後でも構いませんか?用事済ませたらそちらにお邪魔させていただきますから。」

 

そう言うとゆかりさんも頷いて

 

「わかったわ。それじゃ用事を済ませたら家に立ち寄ってね?みゆきと一緒に待ってるから、忘れて帰っちゃいやよ?」

 

と一応念を押してきたので、俺は笑って頷きながら

 

「分かってますよ。それじゃ後ほど。」

 

そう言ってゆかりさんに手を振って俺は実家へと足を向ける。

 

実家に辿り着くと玄関をくぐって俺は声をかける。

 

「ただいまー!お袋、親父ー、言われたとおり顔見せに帰ってきたぞー!?」

 

そう叫ぶと、奥からにこにこと笑いながらお袋が出迎えてくれて

 

「あら、慶一、お帰り。お父さんも奥にいるわよ?さあ、あがりなさい。」

 

そう促されたので俺は頷いて家に上がり、奥へと向かった。

 

そして親父を見つけた俺は

 

「よっ、親父。龍兄に言われた通り顔見せに戻ってきたぞ?」

 

そう声をかけると親父はギョッとしたような表情で俺を見て

 

「・・・珍しい事もあるものだな。いつも私の顔を見るなり憎まれ口を叩くお前が。」

 

そんな親父に俺はそっぽを向きつつ

 

「俺だってたまにはそういう時もあるさ。それに今回帰れなかったのは俺にも原因あったからな。まあ、その事の反省の意味もあるって思ってくれ。」

 

そんな俺の言葉に親父はニヤリと笑いつつ

 

「ふん、聞く所によれば無様に風邪を引いたらしいじゃないか。気合と鍛え方が足りんからそうなるんだ。そのあたりもしっかりと反省するがいい。」

 

その言葉にカチンと来た俺は

 

「おい、親父。風邪は不可抗力だ。それに気合とか言うがな、昔それを俺に言って無理させて死なせかけた事忘れてないよな?」

 

そう指摘してやると親父はその事を思い出したのか急に苦しげに唸ると

 

「ううむ・・・その事はよく分かってる。私の過ちだったからな。まあいい、とにかく元気そうでよかった。こうして顔を見せられるのならこちらも安心できる。」

 

俺の言った事に対して素直に自分の過ちを認める親父に、俺は少しだけ拍子抜けしつつも、一応は俺の事も気遣ってくれている事に絶対に表には出さないが、心の中で礼を言う俺だった。

 

しばらくはお袋や親父と談笑していた俺だったが、そろそろ頃合の時間になったので俺は高良家へと向かう為に家を出る準備をしていた。

 

「慶一、そろそろ行くのね?また顔見せにいらっしゃい。」

 

俺はその言葉に頷きながら

 

「分かってるよ。また長い休みの前とかに戻ってくるようにするから。お袋も元気でな。」

 

そう返事をするとお袋はにっこりと笑って頷いてくれたのだった。

 

玄関で靴を履いているとき親父が俺の側にやってきて

 

「慶一、お前に尋ねたい事があるのだが、最近お前の周りでは変わった事は起きていないか?」

 

何時になく真剣な表情の親父に俺も表情を引き締めつつ

 

「変わった事?例えばどんな事だ?」

 

そう聞き返すと、親父は言葉を濁すように

 

「いや・・・近頃結構物騒になっているからな。犯罪も多発してきている事だし、少し気になったのでな。」

 

そう言う親父に俺は、何となく何か隠しているようなそんな雰囲気を感じ取ったが、それでも心配は本当にしてくれてるのも見て取れたので

 

「まあ、確かにそういうの増えて来てる感じだけど、大丈夫だ。ここの所も平和そのものだよ。」

 

そう伝えると、少し緊張気味の表情を緩めながら

 

「そうか、それならばいい。」

 

短くそう言って踵を返して立ち去ろうとした親父に俺は

 

「でも、珍しいな。親父がそんな事気にするなんてさ。」

 

何となく気になった事を口にすると親父は俺の方には振り返らずに

 

「ふん!お前の事は特に気にはしとらん。むしろ、お前の周りのあの子らの事が少し心配なだけだ。」

 

そう言う親父に俺はニヤニヤとしつつ

 

「ふーん?何だかんだ言ってても親父のあいつらの事気にするんじゃやっぱりそっちの気があるって事か?いいのか?お袋に愛想尽かされてもさ。」

 

その言葉に親父は大慌てで俺の方へ向き直りつつ反論をする。

 

「な、何を言ってる!あの子らに何かあった時にお前が・・・いや、なんでもない・・・」

 

その親父の台詞を聞いて俺は、親父の真意を知った気がした。

 

俺は親父を馬鹿にした事を反省しつつ、親父の顔を見ないように後ろを向いて

 

「悪かった・・・親父。それと、ありがとう・・・」

 

そう言うと親父も少しだけ優しげな声で

 

「・・・ふん・・・かまわんさ・・・それに、これこそが私とお前だろう?だから、いつもどおりで構わん・・・」

 

結局俺も親父も同じように素直になれないのだと改めて思いつつ

 

「ま、それもそうだな・・・なあ、親父。」

 

俺がそう呼ぶと親父は「何だ?」と俺に返事を返す。

 

「俺は何時までもあんたの息子だ。だから親父も何時までも俺の親父であってくれ。その俺の気持ちを此処において行く。また憎まれ口叩くとは思うが・・・これからもまた何かあれば戻ってくる。だから、元気で居ろよ?それじゃな、親父。」

 

そう言って家を出ようとする俺に親父は

 

「慶一、お前は私の息子だ。そしてここはお前の家だ。覚えておけ、お前の帰る場所はここにもあるという事をな。まあ、達者でやれ、それだけだ。」

 

俺にそう言い残して奥へと戻って行く親父の背中を、俺は改めて目に焼き付けて道場を後にしたのだった。

 

少しだけ心の中を暖かくしつつ、俺は先ほどの約束の通り、高良家を目指して歩き出した。

 

程なくして高良家に着いた俺は、インターホンを鳴らす。

 

しばらく待っていると、インターホンからゆかりさんの声が聞こえてきた。

 

『はーい。どなたー?』

 

と言うゆかりさんに俺はインターホン越しに

 

「森村です。約束どおりお邪魔しにきました。」

 

と言うと、ゆかりさんは

 

『あ、森村君。今玄関を開けるわ。そこまで来てくれるかしら?』

 

そう言ったので俺も

 

「わかりました、それじゃそっちに移動しますね。」

 

そう伝えた後玄関口へと移動すると、玄関を開けて俺を手招きするゆかりさんの姿が見えたので、俺はゆかりさんのいるほうへと向かう。

 

「いらっしゃーい。森村君。さあ、あがってあがって?」

 

と言って俺を促すゆかりさんに従い、俺は家へとお邪魔する事になったのだった。

 

「こちらにお邪魔するのは2度目ですが、改めてお邪魔します。」

 

そう言って上がって、俺はゆかりさんに連れられてリビングへと行くのだった。

 

「今お茶用意するから、そこに座っててね?」

 

そう言ってお茶を入れに行こうとするゆかりさんに俺は

 

「あの、みゆきの姿が見えないみたいですが、今日はどこかへ出かけてるんですか?」

 

と聞くと、ゆかりさんは微笑みながら

 

「みゆきは今自分の部屋で勉強してると思うわ。ついでに呼んでくるつもりだったのよねー。」

 

と言うゆかりさんの事場に俺も納得して

 

「そういう事でしたか。わざわざ引き止めてしまってすいませんでした。」

 

そう言うとゆかりさんは手を振りながら

 

「いいのよー。そのまま森村君はゆっくりしててね?」

 

と言ってキッチンへ姿を消すゆかりさんを見送って、俺はお言葉に甘えさせてもらい、しばらくのんびりとしていたが、少し待っているとみゆきがリビングに顔を出してきて

 

「慶一さん、いらっしゃい。お母さんから聞いて驚きました。まさかこちらにいらしてるなんて思っていませんでしたから。ところで慶一さん、いつこちらにお帰りになったんですか?」

 

そう聞いてくるみゆきに俺は

 

「俺も今朝方龍兄から親父が正月帰っていないのだから顔をだせ、という伝言を預かってきたと聞いたんだよ。それで急遽、って訳さ。で、駅に着いたらゆかりさんと会った訳だ。」

 

そう言った後、俺はみゆきを見て

 

「ゆかりさんに誘われた事もそうだけどさ、お前ともクリスマスの時に約束したからな。今回のお誘いは丁度いい、って思ってな。お邪魔させてもらったんだ。」

 

俺の言葉にみゆきも納得して、嬉しそうに微笑みながら

 

「そうですか・・・あの時の約束、覚えていて下さったのですね?ありがとうございます、慶一さん。」

 

そのお礼の言葉に俺も照れつつ

 

「ま、まあ、俺の方からした約束だったからな。言った以上は実行しなきゃ、お前にも悪いからな。」

 

と言う俺の言葉にますます嬉しそうにしているみゆきだった。

 

そうやってみゆきと談笑してると、お茶を入れ終わったゆかりさんがティーセットを持ってリビングに戻って来て俺達の前に紅茶を並べてくれた。

 

そして、お茶受けにクッキーをつまみつつ、俺達3人は談笑を始めたのだった。

 

「さあ、召し上がれ。」

「どうもありがとうございます。それじゃいただきますね。」

「私もいただきます。お母さん。」

「どうぞどうぞー。それじゃお話聞かせてもらいましょうか。」

「話と言ってもどこから話せばいいですかね?」

「そうねえ・・・クリスマスの後からの事が聞きたいわね。」

「そういう事でしたら・・・・・・という事がありましてそれで・・・・・・って事がありましてね。」

「そう言えば慶一さんは・・・・・・でしたよね?あれは私もとてもお似合いだったと・・・・・・そういう事もありましたね。」

「い、いや、みゆき。あの時の事は出来れば忘れてもらえたらありがたいんだけどな・・・」

「うふふ。そうはいきません。あの姿はとても新鮮でしたから、忘れようと思っても忘れられませんよ。」

「・・・はあ・・・まあ、いいか・・・もう諦めるさ・・・」

 

そこまでのやりとりをし、そんな俺達の姿をにこにこしながら見ていたゆかりさんは、ここでいきなりの爆弾投下をする。

 

「ふーん?中々楽しく過ごして来たのね。ねえ、みゆき?あの事はどうなの?」

「あの事?どの事でしょうか?」

「うふふ。みゆきが森村君とキスした事よ?」

 

いきなりのゆかりさんの爆弾発言に俺とみゆきは

 

「「ぶーーーーっ!!」」

 

と思い切り紅茶を噴出してむせ返っていた

 

「ゲホ!ゴホ!ゴホン!!」

「こほっ!けほ!」

 

その様子を見てゆかりさんは細い目をさらに細くしながら

 

「あらあらー?どうしたのかしら?2人とも慌てて」

 

と、自分が爆弾発言した事に自覚なしという顔で聞いてくると、俺達は顔を真っ赤にしながら

 

「ゆ、ゆかりさん、どうしてその事知ってるんですか・・・」

「お、お母さん、その話は・・・」

 

そう訊ねるとゆかりさんはしれっと

 

「え?この事はみゆきから聞いたのよ?まあ、人工呼吸だったって事だけど、でもそれをしたって事は、やったって事よね?」

 

その言葉にみゆきは更に顔を赤くして慌てながら

 

「し、仕方なかったんです!慶一さんの呼吸が止まってしまっていたんですから!医者を目指す者としてはほおって置けない状況だったんですよ!」

 

俺もみゆきの言葉に続いて

 

「そ、そうですよ!立派に医療行為です。ゆかりさんが思っているようなそんな事ではなくてですね!」

 

その言葉にゆかりさんは軽く笑いながら

 

「うふふ。若いっていいわねえ・・・」

 

と言うゆかりさんの言葉に、結局俺達は終始真っ赤になって慌てていたのだった。

 

そんな疲れるお茶会を終えて、俺はみゆきに見送られて高良家を後にする。

 

「慶一さん、すみません。母が変な事口走って・・・」

 

さっきの事を思い出していたのか、みゆきはまたも頬を赤く染めながら俺に言う。

 

「い、いや、気にしてないから。それに・・・」

 

言葉を一度切り、みゆきの顔を見ながら

 

「命を救ってもらったのは事実だからな。俺、思い出したんだけど、あの一件が起きて混乱しまくっていて、結局お前にその事に対するまともなお礼すらしてなかった事に気付いたよ。改めて、ありがとうな、みゆき。」

 

俺の言葉に顔を更に赤くしながら

 

「い、いえ、私も必死でしたから・・・でも、本当に・・・助かってよかったです・・・」

 

少しだけあの時の怖さを思い出したらしいみゆきは、心持ち元気をなくしながらそう言うのだった。

 

「お前には、大きな借りができちゃったな。」

 

俺がそう言うとみゆきは慌てて手をぶんぶんと振って

 

「そんな事ないですよ!それ以前に慶一さんから色々お世話になっています。今回の事でも私自身はまだ慶一さんから受けた借りを返しきれたとは思っていません。まだ、私は・・・」

 

そんなみゆきの頭をぽんと軽く叩いて

 

「いや、それを帳消しにできるほどの大きな借りさ、今回のはな。だから、また何かさせてくれ。その借りを返すためにさ。」

 

みゆきに微笑みながらそう言う俺に

 

「ありがとうございます・・・慶一さん。」

 

にっこりと笑いながらそう言うみゆきに俺も笑顔で応えたのだった。

 

そして、みゆきに手を振りながら俺は高良家を後にして家へと向かう。

 

道中に今日の事を思い出しながら、改めて俺は幸せな人間なのだと思ったのだった。

 

家に帰り着いた俺は玄関を開けて中に入り「ただいまー」と声をかけると奥から俺の声に気付いたかがみが出てきて俺を出迎えてくれた。

 

「お帰りなさい、慶一くん。どう?今回は親孝行してこれた?」

 

そう声をかけてくるかがみに俺は苦笑しながら

 

「かがみ、お前それが限りなく難しい事を知っていてそう言ってるだろ?」

 

そう突っ込むとかがみは舌をだして

 

「あはは。ばれてたか。まあ、とりあえずお疲れ様、かしらね。」

 

その言葉に俺も頷きつつ

 

「ありがとう、かがみ。そっちは何かあったか?」

 

家に上がりながらそう訊ねると、かがみは苦笑しながら

 

「私は問題なかったけど、姉さんがね・・・」

 

その言葉に俺は思わず「何かあったのか?」と訊ねると

 

「実はね、姉さんが龍也さんとデートしたいと言い出してさ。龍也さんに散々迫ってたのよ。最初のうちこそかわしていた龍也さんだったけどそのうちに姉さんに押し切られちゃってね、すぐさまデートにでかけちゃったの。私は仕方ないから留守番していたのよ。それに、まだ2人とも帰ってきてないしね・・・」

 

その言葉に俺も大きなため息をついて

 

「はあ・・・まつりさんらしいな。そっか、かがみ、1人きりでつまらなかったろ?朝にした約束もあるし、早速実行するか。かがみ、俺の部屋にラノべ持ってきてくれ。」

 

そう俺が言うと、1人きりと言う部分に反応して赤くなりつつ

 

「べ、別に寂しかったわけじゃないわよ!うるさいのが出て行ってくれたからせいせいしてたんだからね!?で、でもあんたの約束に付き合うわよ・・・ラノベ準備して部屋に行くから。」

 

その素直じゃない物言いに苦笑しつつも

 

「はは。わかった。着替えも済ませちゃうから一応部屋はいる前にノックしてくれ。それじゃ後でな。」

 

そう言って俺は2階の自分の部屋に上がっていく。

 

かがみは俺を見送りつつ

 

「うん。それじゃ準備したら部屋いくわ。後でね?慶一くん。」

 

そう言って自分の部屋へラノベを取りにいくかがみだった。

 

自分の部屋で着替えつつ、何気に窓の外に目をやると、なにやら見知った顔が家の近くにいるのが見て取れた。

 

(ん?あの人は確かうちの道場の弟子の1人だったはずだよな?何でこんな所にいるんだ?)

 

心の中で不思議に思っていると、弟子は家を一目見てからその場を立ち去ったのを、俺はなんともなしに見送っていたのだった。

 

考えてもしかたないか、と思いつつ俺はラノべを準備して部屋でかがみが来るのを待っていた。

 

しばらくすると、部屋をノックする音が聞こえてきたので俺はドアに向かって「どうぞー?」と声をかけるとドアを開けてかがみが部屋に入ってきた。

 

「お待たせ、慶一くん。はいこれ、新作と前に買ったやつよ。慶一くんの方はどれなの?」

 

かがみからお勧めを受け取り、俺は自分の持ってるかがみがまだ読んでないやつを手渡して

 

「俺からはこれだな。それじゃ早速読むとするか。」

 

俺の言葉にかがみも頷きで応えて2人してラノべを読み始めるのだった。

 

しばらく読んでいると、かなり本の世界に入り込んでいたようで、気付いたらかがみが俺の隣に座っていたのだった。

 

俺はそんなかがみに少しドキリとしつつ、極力意識しないように意識を本に向けようとしたのだが、ふいにかがみが

 

「・・・ねえ、慶一くん。あんたさ、始業式の日にこなたと秋葉行ったのよね?で、その時にこなたと・・・その・・・キス・・・したんだって、聞いたわ・・・」

 

そう言って来たので俺は慌てながら

 

「な、何でかがみがその事を?まさか・・・」

 

俺の予想の的中を裏付けるようにかがみはゆっくりと頷いて

 

「うん、こなたから聞いた・・・。」

 

そう短く言った後押し黙るかがみに俺は

 

「そっか・・・でも、今回の事も事故だったんだよ。あいつが階段を踏み外して落ちてきた。それを俺が助けようとしたが、タイミングが合わなかった、で、気がついたら・・・って事さ。」

 

軽いため息をつきながらそう説明すると、かがみは心持ちほっとしているようにも見えた。

 

「クリスマスパーティの時もそうだけどさ、全部・・・事故・・・なのよね?それって気持の入らないキス、だよね?」

 

かがみの言葉にどう応えればいいか困惑していたのだが

 

「まあ、かがみの言うとおりだな。全部事故、お互いに気持のあるキスではなかったな。」

 

そう応えるとかがみは再び押し黙り、俺もどう言葉を発すればいいのか迷っている、と言う状態がしばらく続いたが、その雰囲気に耐え切れなくなってきた俺が言葉を発しようと口を開きかけた時、かがみが急に立ち上がって

 

「あはは、ごめん。何か変な空気になっちゃったね。私何か飲み物取って来るわ。ついでに慶一くんのも取ってくるからここで待ってて?」

 

なんとも複雑な表情で笑いながらかがみはそう言うと、部屋を出て行こうとする。

 

俺もかがみに何か声をかけようとかがみを見上げるように顔を上に向けた瞬間、突然部屋のドアが開き、上機嫌のまつりさんと疲れたような表情の龍兄が一緒に帰ってきて俺達に声をかけるのだった。

 

「やっほー、森村君、かがみー、今帰ったよー!」

「慶一、お帰り・・・」

 

そう声をかける2人、そして、その声に驚いて慌てたかがみは、足元に置いてあったラノべに足を取られてバランスを崩して俺の方に倒れこんできた。

 

「ちょ!慶一くん、あぶな・・・」

 

俺も慌てながらかがみを受け止めようとして

 

「か、かがみ!ってうわっ!」

 

かがみを受け止めながら倒れ込むと次の瞬間

 

「かがみ、森村君、大丈夫!?って、ああーー!!」

「慶一、かがみちゃん、無事か?って、うわ・・・」

 

2人が俺達を見てそう声をあげる。

 

そして、俺とかがみは自分達の状況を把握して2人して顔を真っ赤に染めるのだった。

 

俺とかがみは・・・キスをしてしまった事を互いに認識したのだった。

 

大慌てで離れる俺達。

 

「あ、うう、その、大丈夫か?かがみ。」

 

顔を真っ赤にしながらかがみにそう声をかけると、かがみも同じように真っ赤になって慌てながら

 

「う、うん・・・だ、大丈夫、怪我はないわ・・・えと・・・その・・・の、飲み物取ってくる!!」

 

そう言って猛ダッシュで部屋から飛び出していくかがみを、俺達3人は呆然と見送っていた。

 

その後、その事を思い切り2人にからかわれて、俺達2人はその日は寝るまで顔を真っ赤にしていたのだった。

 

かがみside

 

慶一くんとこなたの事が少し気になっていた事もあったのだけど、私はラノべを2人で読んでいるあの時間に、慶一くんにどうしても確かめておきたい事があったので、思い切って聞いてみた。

 

それは、いずれのキスも慶一くんの望みでしたのではないのかどうかという事だった。

 

その事を訊ね、納得の行く答えを貰って安心した私は気分を変えようと慶一くんに飲み物を取ってくると言い出して部屋を後にしようとしていた。

 

しかしそこに、デートから戻ってきたまつり姉さんと龍也さんが現れて、いきなり声をかけられた私は自分の持ってきた本に足を取られてバランスを崩し、慶一くんの方へ倒れ込む事となった。

 

そして、私も・・・慶一君と事故によるキスをしてしまったのだった。

 

その後、2人に、ずっとその事でからかわれてほとほと疲れ果てた私は、布団に入って今日の事を思い出していた。

 

(クリスマスパーティでの事故の事から今回のこなたの事もちょっと気になっていたのよね・・・慶一くん、どんな気持でいたのだろうって・・・今日その事を思い切って聞いたけど、やっぱり事故は事故だったって事みたいで少し安心したな・・・でも・・・私・・・慶一くんと・・・しちゃった・・・キス・・・うわーうわーうわーーー!!)

 

最後の方はもう混乱しまくりで、考えもどこかへ吹っ飛んでしまっていたのだった。

 

結局その事を終始思い出しては顔を真っ赤にしていた私は、その日まともに寝ることが出来なかったのだった。

 

慶一side

 

急遽実家へ向かう事となり、親父の真意を知り、そして、みゆきとの約束も果たして俺は疲れる会話もあったことを思い返し、少しだけ参っていた。

 

そんな状況で家に戻って俺は、かがみとの約束も果たす為にかがみを部屋に呼んだ。

 

そして、一緒にラノべを読んでいたのだが、そこでふいにかがみが振ってきた話で微妙な空気になり、その空気を変えようとかがみが動いたが、そこに偶然まつりさんと龍兄が帰ってきてそれに驚いたかがみが本に足をとられて俺の方に倒れ込みそして・・・・・・事故とはいえ、今度はかがみとのキスをしてしまったのだった。

 

結局その日は龍兄とまつりさんに終日からかわれ続けて、俺はくたくたの状態で布団に入ったのだった。

 

(今日は色々な事ありすぎだ・・・急に龍兄はくるわ、実家に帰らなきゃならないわ、ゆかりさんに出会うわ、高良家で疲れる話されるわ、家に帰ったら今度はかがみと・・・・・・ここの所事故ばっかしだよな・・・これもやっぱり凶の効果なのか?でも・・・悪い事、って訳じゃないから複雑だな・・・あー・・・明日まともにかがみの顔見れるかなあ・・・)

 

そう考えながら眠れぬ夜を過ごす事になった俺だった。

 

2人を預かるのも後1日、俺はこのまま何事もなく過ぎて欲しいと願うが、その願いも空しいかもしれないな、と思う俺だった。

 


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