らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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消えかける旋律~地獄と化したクリスマスパーティ~

皆への感謝のクリスマスプレゼント配りも無事に済ませ、俺は今年のクリスマスイブを充実したものとする事ができた。

 

そして、今年1年も残りわずかになり、俺は最後までこの1年を楽しもうと決めたのだった。

 

アルバイト最終日・・・・・・

 

「ありがとうございましたー。またお越しください。」

 

俺達は最終日も忙しく動き回っていた。

 

今日はクリスマス最後のイベントも店であり、店員の代表がサンタクロースのコスプレでダンスを披露するという事になっていた。

 

そして、その役に選ばれたのはこなたとみゆき、こうの3人だった。

 

イベントの開催時間も近くなり、俺はスタッフルームに3人の様子を伺いに行くのだった。

 

ドアをノックすると「どうぞー」という声が聞こえたので俺は

 

「俺だ、入るぞ?」

 

そう言ってスタッフルームに入ると、少々緊張気味のこうとみゆき、そして何故か落ち込んでいるこなたの姿があった。

 

「あ、先輩、お疲れ様です。こっちに様子見に来て大丈夫ですか?接客はバイトの先輩が居てくれてるとはいえ、かがみ先輩1人きりになってるんじゃ・・・」

 

少し心配そうにそう言ってくるこうに俺は

 

「大丈夫だ。長居する訳じゃないしな。それより3人とも大丈夫か?特にこなた、何か落ち込んでないか?」

 

そう声をかけるとみゆきとこうは

 

「私はこういう事をするのは初めてですので、少々緊張しています。」

「私は何とか大丈夫です。私意外とこういうの好きみたいですしね。」

 

そう言っていたのだが、こなただけは暗い表情をしながら無言でいたので、俺は気になってこなたに声をかけてみた。

 

「どうしたんだ、こなた。お前こういうの慣れてるってイベントに立候補した時言ってたよな?そんなお前が何故落ち込んでいる?」

 

そう訊ねると、こなたは暗い顔を俺に向けながら

 

「・・・そりゃ、私は前の店でもこういう事やってたよ・・・だけどさ・・・今回のって私に対する嫌がらせ以外の何者でもなくない?」

 

何か、泣きそうな表情のこなたに俺は理由を尋ねてみた。

 

「嫌がらせって・・・どういう理由でだよ。」

 

そう訊ねるとこなたは”ぶわっ”という表現があっていそうなほどに涙を流しながら

 

「だってさ!八坂さんやみゆきさんと私を並べるんだよ!?しかも私、真中のポジションなんだよ!?嫌がらせだよね!?私の胸のなさを強調する嫌がらせだよね!?」

 

その言葉にこうは苦笑して、みゆきは真っ赤になり、俺も真っ赤になって慌てて

 

「な、何言ってるんだお前は!何かと思ったらそんな理由かよ!」

 

その言葉にこなたは大いに反論して

 

「そんな理由って何さ!私にとっては大問題だよ!胸のある人になんかない人の辛さなんてわかんないんだ・・・」

 

そうやっていじけるこなたに俺は、どう言うべきか大いに悩んでいたのだが、とりあえず気を取り直すと

 

「落ち着けよ、こなた。お前だって言ってたじゃないか、コスプレ喫茶でバイトしてること教えてくれた時にお前は自分の体型を誇ってたろう?”貧乳はステータスだ!希少価値だ!!”ってさ。お前がそれを誇りにしてるんだったら、自信をもってやればいいだろう?お前の希少な所を見せてやればいいだろう?」

 

その言葉にこなたは”はっ”とした表情になり、少し考え込んでいたがやがて

 

「むー・・・そうだね、私は私にしかない希少な武器を見せつければいいんだよね・・・ありがとう、慶一君。少しだけ自信出てきたよ。」

 

そう言うこなたに俺は(なにやらむちゃくちゃな理論で納得させちゃったかも・・・)と心の中で複雑な思いを感じながらもとりあえず立ち直ったこなたに

 

「それならよかった。とりあえず3人ともそろそろ時間だからしっかり頑張ってくれよ?俺はまた接客に戻るからな。」

 

そう言うと3人とも

 

「分かりました。こちらの方はしっかりとやりますからお任せください。」

「先輩も自分の仕事、頑張ってくださいよ?」

「後は私達のトリオにまかせたまへー」

 

という言葉に俺も頷きで応えて接客へと戻る俺だった。

 

接客に戻って来ると俺の姿を見つけたかがみが

 

「あ、お帰り、慶一くん。様子どうだった?」

 

そう聞いてきたので俺は

 

「こうとみゆきは少し緊張気味だったな。こなたは変な事で落ち込んでたみたいだったから活入れてきたが・・・」

 

そう応えるとかがみは不思議そうに首を傾げながら

 

「こなたが?珍しいわね・・・一体何で落ち込んでたのかしら?」

 

その言葉に俺は答える術を持たないでいたので話しにくそうに

 

「あー・・・ちょっと俺の口から言える事じゃないとだけ言っておく。ただ、かがみが聞いたら下らないと思うかもしれないな。詳しく知りたかったら後でこなたに訊ねてみてくれ。」

 

苦笑しながらそう言う俺に少し納得がいかないという視線を投げていたかがみだったが、俺が話しにくそうにしている姿に何かを察したらしく、それ以上は聞いてこなかった。

 

「・・・まあ、いいわ。後でこなたに聞いてみるわよ。それより、さっきお客さんからね?・・・・・・ってのを聞かれてさ、まだ在庫あったかな?」

 

かがみの言葉に少し心の中でほっとしつつ

 

「あ、それだったらまだあると思う。後でみさお達の所に行ってみればいい。さて、そろそろイベントの仕切りをやんなくっちゃな。かがみ、また後でな。」

 

そう言って話を切り上げてイベントのサポートのに向かおうとしてる俺にかがみも

 

「うん。それじゃまた後でね。何かあればあんたに内線飛ばすわ。イベントの仕切り、頑張ってね。」

 

その言葉に俺も頷きながら

 

「ああ。そっちも引き続き接客、任せるぞ。」

 

そう言って手を振って俺は仮設ステージの方へと歩いていくのだった。

 

イベントでは、こなたこう、みゆきの3人による、ハレ晴レユカイだった。

 

こうとみゆきの硬さは少しあったのだが、こなたが上手い具合に2人を引っ張る形になり、店に訪れているお客にも大分うけていたようだった。

 

しかしながら、何故か男性客がかなりをしめていたのを見て俺は複雑な心境で苦笑していたのだが。

 

そして、仕事も一通り終わり、俺達は最後に今年お世話になった殿鬼さんの所へ挨拶に出向いた。

 

「店長、今年はこれでバイトも終わりとなりますが、自分達を雇っていただきました事、本当にありがとうございました。それではよいお年をお迎えください。」

 

皆を代表して俺が殿鬼さんに挨拶をすると

 

「うむ。短い間であったがご苦労だった。できれば来年もうちで働いて欲しい所なのだが、もしそのように考えてくれた時にはまたうちに来てくれたまえ。その時も歓迎させてもらおう。」

 

そのように力強く言いながら俺にがっしりと握手を求めてくる殿鬼さんに俺も握手を返しながら

 

「そのような機会がある折には相談させていただきます。その時にはよろしくお願いします。」

 

そう挨拶を返すとみんなも「「「「「「「「お世話になりましたー」」」」」」」」と言って店を出るのだった。

 

帰り道に俺達は軽いやり取りを交わす

 

「とりあえず今年も終わりだな。こなたのボディガードを引き受けてここにバイトに来てそして、みんながやってきて最後にはこなたまでやって来て、短い間だったけど楽しいバイトだったな。」

 

そう言うとこなたは

 

「私は最初はみんなが慶一君のバイト先へ行くなんて思ってなかったからね、あの時は本当にびっくりだったよ。」

 

そう言うとかがみも軽く笑いながら

 

「あはは。でも、私達だって採用されるなんて思ってなかったわよ。あくまでも私達は伝説のお2人の関係者ってだけだったんだからね?」

 

そう皮肉混じりに言うかがみ。

 

「でも、賭けてみよう、って言い出したのはおねえちゃんだったよね?」

 

まったく意識せずかがみの裏をばらすつかさ。

 

「ちょっ!つかさ、何でばらしちゃうのよ!」

 

そのつかさの言葉に途端に顔を真っ赤にして慌てるかがみに、つかさは相変わらずのぽやぽやとした笑顔で

 

「え?言っちゃいけなかった?ごめん、おねえちゃん。」

 

反省の色があるのかどうかも分かり難い顔で言うつかさに、かがみはため息をついていた。

 

「そっかー。結局かがみんも寂しかったんだねー。」

 

その様子をニヤニヤしながら見ていたこなたがそう突っ込むと、かがみはさらに慌てながら

 

「う、うるさい!かがみん言うな!!大体あんただって、元々やってたバイトやめてまでこっち来たのはなんでなのよ!」

 

というかがみのまさかの反撃にこなたも途端に慌て出して

 

「え、えーっと・・・そのう・・・」

 

そう言いながら答えに困ってるこなたを見ながらみゆきが

 

「まあまあ、お2人とも。私や皆さんと一緒ですよね?結局みなさんと一緒に居たいって思ったのが理由なのでしょう?」

 

というみゆきのフォローに2人とも便乗するように

 

「ま、まあ、そういう事ね。慶一くんとみゆきがした約束に私達も噛ませて貰おうと思っただけよ。」

「うんうん。そうそう。そういう事なんだよ。」

 

その2人の様子を見て苦笑しているみさおとあやのは

 

「私らもそうなんだけどなー。ま、結局はみんな同じだってことだよなー。」

「うふふ。そうね、その方が楽しいって思ったんだものね。」

 

そう言って笑いあっていた。

 

こうとやまとも同じように笑いながら

 

「そうですよー。慶一先輩と高良先輩と交わした約束なら、私達だって乗る権利はありますからね。」

「そうよ?ここで仲間はずれなんて認められないわよ。もう私達はそんな簡単な仲間じゃないはずだしね。」

 

その言葉にみんなして笑顔で頷いていた。

 

「結局はみんなの願いが形になったんだな。まあ、結果オーライという事でいいよな。」

 

俺の言葉にみんなは

 

「楽しめたからいいじゃん?」

「ま、私もいい経験できたわよ。」

「わたしも仕事覚えられたからよかったよ~。」

「貴重な体験でしたね。」

「いい給料もらえたよなー。」

「それも慶ちゃんや泉ちゃんのおかげかしらね。」

「またみんなで行ったら採用してくれますかね?」

「きっとしてくれると思うわよ?2人の先輩がお願いしてくれればね。」

 

そう言って笑いあっていた、そして最後に俺が

 

「ま、何にしても明日は打ち上げも兼ねた少々遅めの俺達のクリスマスパーティだからな。明日は思い切り騒ごうぜ?」

 

その言葉にみんなも「「「「「「「「賛成ー」」」」」」」」と言って応えてくれたのだった。

 

帰る際にこなたとかがみ、つかさ、あやのが俺の家に泊まって行くことになった。

 

こなたの話で今日のうちに仕込める料理は仕込んでおきたい、という提案があったのも理由なのだが。

 

なお、当日には今回は黒井先生も呼んだ。

 

24日には先生の自宅の場所がわからず、プレゼントも渡せなかったからというのもあるのだが、先生は一緒に過ごせるいい人もいなさそうだったので、せめて教え子の俺達がパーティに誘おうという事になったのだった。

 

家に帰る間際に食材を買い込んで家に帰って来た俺は、料理の仕込みの前に体を温めて疲れをとってもらおうと思い、先に俺が風呂の準備を済ませてこなた達に入ってしまうように進めた。

 

そして、部屋の準備も済ませて俺は、こなた達が風呂から上がるまでの間、俺ものんびりとさせてもらっていたのだった。

 

しばらくすると、こなた達も明日の仕込みの為に2階から降りてきたのを確認した俺は、こなた達を追ってキッチンへと入っていった。

 

「これから仕込みだろ?俺にも手伝える事あるか?」

 

そうこなたに言うとこなたは俺を見て

 

「あれ?手伝ってくれるの?でも慶一君って料理とかできたっけ?」

 

俺を見てそう言うこなたに俺は呆れながら

 

「あのな・・・俺はたいがい自分の弁当は自分で作って来るんだぞ?お前もそれ知ってただろうが。」

 

そう言うと、こなたは少し考える仕草をした後”はっ”とした表情になって

 

「そう言えばそうだったね、慶一君の所に泊まりに来た時とかも朝食なんかも作ってくれたっけ。でも、まずは慶一君もお風呂入って疲れとってきちゃいなよ。その後で何か手伝ってもらう事あれば呼ぶからさー。」

 

ばつの悪そうな顔でそう言いつつ、俺に風呂に入って来いと促すこなたに

 

「そうか?ならそうさせてもらっちゃうかな。じゃあ、風呂行って来るから続きは後でな。」

 

俺がそう言うとこなたやみんなも頷いて

 

「うん、いってらっしゃい。」

「ゆっくりしてらっしゃいよ。」

「こっちはまかせて~。」

「私もいるし、大丈夫よ?慶ちゃん。」

 

そう言ってくれたので、俺もみんなの好意に甘える事にして部屋に着替えを取りに戻り、風呂へと向かった。

 

こなたside

 

私達でクリスマスパーティ用の料理の仕込みをやろうと思っていたけれど、慶一君も手伝うと言ってきた。

 

私達はその言葉に驚いて思わず料理出来るのかな?と訊ねたが、私は慶一君がいつもお弁当を自分で作って来ていた事をすっかり失念していて、間抜けな質問になってしまったのだった。

 

結局その事を慶一君に突っ込まれて苦笑しながらも、私は慶一君にお風呂いってきちゃいなよ、と告げると、慶一君も私の好意に甘えてくれるみたいだった。

 

とりあえず慶一君をお風呂に行かせてから私は

 

「ふう・・・とりあえず行ってくれたね。慶一君もいつも動き回ってるからこういう時くらいは休んでてもらいたいよね。」

 

そうみんなに言うとみんなも

 

「そうね。あいつは自分の体省みないで無茶してるから少しは休んだ方がいいんだわ。」

「うん。そのかわりわたしたちがけいちゃんの分までがんばればいいよね。」

「何かと理由をつけて、慶ちゃんには体休めてもらうようにしましょ?」

 

そう言う峰岸さんに私達も頷いていたのだった。

 

慶一side

 

俺のいない間にキッチンでそんな会話がなされている事も知らず、俺は風呂に浸かって体を休めた後、キッチンでこなた達を手伝おうとしていたが、事あるごとにはぐらかされ、誤魔化され、結局俺は何も手伝う事が出来なかった。

 

そのうちに、こなた達も料理の仕込みを済ませて後は明日の飾りつけや本番を待つ事となり、俺達は今日は休む事にしたのだった。

 

そして次の日の朝、俺はこなた達に料理の仕上げと飾り付けを任せて、駅までみゆき達を迎えに行った。

 

「わざわざ迎えに来ていただきまして、ありがとうございます。家に着き次第、泉さん達と共に飾り付けをやってしまいますから。」

「わりーな慶一。私も準備がんばっからよー。」

「私も頑張りますよー。先輩、向こうについたら指示お願いしますよ?」

「年に一度の事だけど、今年は3人だけじゃないクリスマスパーティなんだから私も張り切るわよ?」

 

と言う4人に俺も頷いて皆を家に連れて行き、飾り付けの指示を出した後、頃合の時間になったので俺は黒井先生を迎えに駅まで向かったのだった。

 

「おー、森村。今日はわざわざ招待してくれてありがとなー。料理の足しになるかわからんが、鳥腿買うてきたで?」

 

鳥腿の入った箱を見せながらそう言う先生に俺は

 

「わざわざありがとうございます。今日は楽しんでくださいね。それとこれは俺から先生へのクリスマスプレゼントです。」

 

そう言ってプレゼントを渡すと先生は嬉しそうな顔で

 

「おー?これもらってもええんか?気い使わせてしまって悪いなあ、森村。」

 

そう言ってくれる先生に俺も笑顔で

 

「24日に渡せなかったですからね、今日お渡ししようと思っていたんですよ。中身は後で家に帰ってからあけてみて下さいね。」

 

と言う俺の言葉に満面の笑みで頷く先生だった。

 

そして、先生を家に連れてきて、いよいよ2日遅れのクリスマスパーティが始まったのだった。

 

だが、ここにいる面々の誰もが気付かずにいた。

 

黒井先生が引き起こす、最大の地獄が待っているという事を・・・・・・。

 

「それでは皆さん、飲み物を持って下さい。せーの!メリークリスマスー!」

「「「「「「「「「メリークリスマスー!!」」」」」」」」」

 

そう言って乾杯して、楽しいクリスマスパーティが始まったのだった。

 

「おお、料理もなかなかだな。こなた達がんばったなー。」

「うん。めっちゃいけるで?これ。ケーキも美味いしなー。」

 

こなた達の作った料理を食べてその美味しさに舌を巻く俺と黒井先生。

 

ケーキはつかさと峰岸さんが作ってくれたのだった。

 

「つかさ、あやの。ケーキも美味いよ。ありがとな。」

 

俺がそう言うと2人とも照れながら

 

「えへへ。あの時けいちゃんとも約束したからね。頑張ったよ~。」

「美味しく出来ていてよかったわ。流石は妹ちゃんね。私もほっとしてるけど。」

 

そう言って笑顔を見せてくれていた。

 

「私も料理がんばったんだけどなー・・・」

 

その後ろでそう呟くかがみの声を聞いて

 

「わかってるさ。俺も見てたからな。かがみの作ったピザも美味いよ。」

 

俺はかがみがピザ作りで奮闘していた事を知っていたし、実際に美味かったのでそう言うと、かがみは嬉しそうに

 

「あ、ありがと・・・喜んでくれたからよかったな。」

 

顔を少し赤くしながらそう言うかがみに俺も微笑みながら頷いていたのだった。

 

「今回はかがみも頑張ったねー。私もかがみの事を見直したしね。」

 

そんなかがみの様子をニヤニヤしながら見ていたこなたがそう言うと、かがみが途端に真っ赤になって

 

「な、何よ突然・・・気持悪いわね・・・あんたが褒めるなんて珍しいじゃないの。」

 

と言うかがみにこなたは少し不満顔で

 

「むうー・・・本当にそう思ったから褒めたのにその言われよう・・・私は傷ついたよ・・・」

 

そう言いながらこなたが傷ついたと言う演技をしているのが俺達からみたらバレバレだったのだが、かがみはそのこなたの態度に慌てていて気付かないようだった。

 

「ご、ごめん、こなた。褒めてもらったのにそんな事言っちゃだめよね。このとおり!謝るから機嫌なおしてよ、こなた。」

 

と言うかがみの様子を伺いながらにやりとしているこなたを俺は見逃さなかったが、あえて黙っている事にしたのだった。

 

その後はゲームをしたり、皆で選んだ映画を見たりと楽しんでいたのだが、程よく酔っ払って気持よくなってる先生がふいに俺のところにお酒を持ってやってきて

 

「うー・・・いい気持や。ほれ、森村。お前も飲まんかい、ほれほれ!」

 

そう言って俺に無理やり酒を飲まそうとしてきたので、俺はそれを避けようとしたのだが、一瞬妙な動きを見せた先生に気を取られ、その隙をつかれて酒を飲まされたのだった。

 

「わ!ちょ!待ってください、先生っ!う、むぐ!んぐんぐ・・・ぷはっ!!」

 

その場の乗りで俺に酒を飲ませた先生は上機嫌でカラカラと笑っていたのだが、飲まされた俺は急に酔いが回ってきて足元がふらふらしだしたのだった。

 

俺と先生の様子を見ていた、俺達に一番近い所にいたこうが俺のふらつく様を見て心配になったらしく、俺の側に寄ってきた。

 

「だ、大丈夫ですか?先輩。」

 

そう聞いてくるこうに俺はろれつが回らない声で

 

「ら、らいりょうぶら・・・ふこししたらなおるからひんぱい・・・ふるな・・・」

 

そう言った瞬間俺は、自分の足に自分の足を引っ掛ける形になり、こうの方へと倒れ込む事となった。

 

「あ、あら?」

「ちょ!先輩!ってむぐっ!」

 

そしてこうの所に倒れた俺は・・・・・・こうにキスしてしまっていたのだった。

 

途端に真っ赤になるこう。

 

さらにその様子を見ていて顔を真っ赤にするみんな。

 

俺も慌てて立ち上がろうとするが酔いのせいで上手くいかず、それを見ていたかがみとやまとが顔を真っ赤にしながら俺をこうから引っぺがすと

 

「何やってんのよあんたはー!!」

「こうから離れなさい!先輩!」

 

そう言いながらかがみとやまとにダブルで鉄拳を貰い吹っ飛ぶ俺。

 

そして派手な音を立てて俺はその場に倒れ込んだのだった。

 

こなたside

 

黒井先生の悪乗りにより、慶一君が先生に無理やりお酒を飲まされて酔っ払わされ、ふらふらとしている所に一番近くにいた八坂さんが慶一君を心配して駆け寄っていた。

 

そして慶一君がふらつき、八坂さんの方へ倒れ込んだのだけど、その時に慶一君と八坂さんは・・・その・・・キスをしてしまっていたのだった。

 

私も何が起こったのか一瞬分からなかったのだが、事態を把握したかがみと永森さんが慶一君を八坂さんからひっぺがして錯乱のあまり慶一君に鉄拳を叩き込み吹っ飛ばしていた。

 

その時かがみが放った一撃は、慶一君があの時不審者を撃退し、保険をかけるといって見せた螺旋弾そのものだった。

 

そして、その一撃が見事に慶一君の急所に突き刺さっていたのもしっかりと見えたのだった。

 

かがみに吹っ飛ばされ、近くの家具に激突して倒れ込んだ慶一君はピクリとも動かなかったのだが、私は未だにパニックから抜け出せなかったのか、すぐに動く事が出来なかった。

 

そして、私よりもいち早くパニックから抜け出たみゆきさんが慌てて慶一君の側に駆け寄って慶一君を診ていたのだけど、その時みゆきさんの「ひぃっ!」という短い悲鳴が上がったのだった。

 

その悲鳴を聞いて我に帰った私はみゆきさんに

 

「み、みゆきさん、どうしたの?何かあったの?」

 

そうみゆきさんに聞いてみると、みゆきさんは私の方を青い顔を向けながら見て

 

「け、慶一さんが・・・慶一さんが・・・息をしていません!」

 

その言葉を聞いた私達は一瞬にして顔が青くなったのだった。

 

その言葉に我に返ったかがみと永森さんとそしてみんなと共に慶一君の側に駆け寄ると

 

「慶一君!慶一君!しっかりして、慶一君!」

 

体を揺すって呼びかけてみたが反応なし。

 

かがみたちも大慌てで

 

「慶一くん!起きて!ねえ、慶一くん!」

「先輩!目を開けて!先輩!先輩!!」

「けいちゃん!しっかりして~!お願い~!」

「慶一!目えあけろ!慶一ーー!!」

「慶ちゃん!戻って来て!慶ちゃん!逝っちゃダメ!!」

「先輩!起きて!お願い!起きて!」

「森村!しっかりしい!!こんな所で死んでる場合やないやろ!目えあけえ!」

 

最後の黒井先生の言葉に皆で

 

「「「「「「「「先生が原因作ったんでしょ!?」」」」」」」」

 

と突っ込みを入れると先生は途端に落ち込むのだった。

 

そんなやり取りもお構いなしに慶一君を診ていたみゆきさんがおもむろに

 

「泉さん!この場で蘇生させましょう!心臓マッサージをお願いします!」

 

というみゆきさんの言葉に私は”はっ”となって慌てて

 

「わ、わかったよ!みゆきさんはどうするの?」

 

そう訊ねるとみゆきさんは真剣な顔で

 

「私は慶一さんに人工呼吸を施します。私が息を吹き込んだらそれにあわせて心臓マッサージをしてください!」

 

とにかく慶一君を助けたい一心で私はみゆきさんの指示に従うのだった。

 

みゆきさんが人命救助の基本である気道確保を行い、人工呼吸を開始した。

 

それにあわせて私も心臓マッサージを行う。

 

そんな行為をみんなは真剣な、それでいて心配そうな眼差しで見守っていたのだがその行為を数度繰り返すと・・・・・・

 

「・・・う・・・ごほっ!ごほっ!っはあっ!!」

 

という声と共に心臓も動き出して慶一君の呼吸が戻ったのだった。

 

それを見た私達は一気に緊張が解けて、みんな慶一君が助かった事に安堵の涙を流していた。

 

「・・・よかった・・・よかったよ・・・」

「よかった・・・あのまま慶一くんが戻ってこなかったら・・・私・・・」

「生きてる・・・けいちゃん生きてるよ・・・よかった~・・・本当によかったよ~・・・」

「・・・危ない所でした・・・でも、いち早く蘇生できてよかったです・・・」

「・・・高良が医者目指していたからよかったよな・・・そうでなかったらと思うとぞっとするゼ・・・」

「・・・怖かったわ・・・本当に・・・どうなる事かと思った・・・」

「・・・よかったです、先輩・・・本当によかった・・・」

「・・・ごめんなさい先輩・・・本当にごめんなさい・・・助かってくれてよかった・・・」

 

そんな中、私達以上に落ち込んでいたのは元凶を作ってしまった黒井先生だった。

 

「すまん、森村・・・ほんまにすまん・・・うち、教師失格やな・・・」

 

そう言いながら自分のやった事に深い後悔をしていた。

 

とりあえず私達はそのまま先生には反省していてもらい、蘇生はしたけど未だ意識が戻らない慶一君を部屋のベットまで連れて行くことにしたのだった。

 

ベットに慶一君を寝かせた後、私達はクリスマスパーティの後片付けをするのだった。

 

そして片付けが済んだ後、慶一君が心配だった私達は今日も慶一君の家に泊まって様子を見ようという事になった。

 

そして、少しして落ち着いた頃、みゆきさんは慶一君を助ける為とはいえキスをしてしまった事を思い出したらしく、その日はずっと真っ赤な顔のままだった。

 

私は何気に八坂さんの方に視線を向けたが、少しだけ頬を赤らめて嬉しそうな感じだった。

 

そんな2人の様子を見た私は、なんだか複雑な気分になり、心がいらいらするのを感じていたのだった。

 

慶一side

 

俺は酷く痛む頭に耐えられなくなり、目を覚ました。

 

黒井先生から酒を飲まされた後の記憶もはっきりせず困惑していたのだが、ふとベットの横を見ると、俺の側に付き添いながら眠り込んでいるかがみとやまとの姿があった。

 

そして、俺が体を動かしたのがかがみ達にも伝わったのか、かがみ達も目を覚まして俺をじーっと見つめていた。

 

俺はその視線に耐えられず目をそらそうとしたのだが、そのかがみとやまとの目にどんどん涙がたまって行くのが分かり、俺はそれを見た瞬間目をそらせなくなった。

 

と同時にかがみとやまとが2人して俺に飛びついてきて

 

「慶一くん!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「先輩!よかった!そしてごめんなさい!」

 

泣きじゃくりながら抱きついてくる2人に俺は困惑しつつ

 

「お、落ち着け、2人とも。一体何があったんだよ。」

 

そう2人に聞いてみるが、2人は喋れるような状態じゃなかったので俺はますます困惑していたのだった。

 

そうしているうちに俺の部屋のドアが開き、みゆきが俺の部屋に入ってきたのだった。

 

「あ、慶一さんおはようございます。意識も戻ったみたいですね、本当によかった。」

 

そう声をかけつつ、俺に抱きついて泣きじゃくってる2人を見て優しく微笑むみゆきは、俺に泣きじゃくる2人に代わって事情の説明をしてくれた。

 

「2人の代わりに私が説明しますよ。実は昨晩ですね・・・・・・っていう事があったんですよ。」

 

事情を聞いて俺は青くなった。

 

「俺は・・・一歩間違えばやばかった、という事か・・・。それに俺は・・・こうに・・・うあああああー!!」

 

俺は記憶がないとはいえ、こうにしでかした行為に恥ずかしさで思わず頭を抱えて叫んでいた。

 

そして少し落ち着いた俺は、泣きじゃくる2人の背中をぽんぽんと叩きながら

 

「事情はわかったよ。けど、ちゃんと戻って来れたんだし、もう気にするな、っていうのは難しいかもしれないけど、とにかくもう泣くなよ。俺は気にしないからさ。」

 

そう優しく声をかけると、2人とも涙目の顔を俺に向けながら

 

「許して・・・くれる・・・の?」

「・・・先輩、ありが・・・とう・・・それに・・・ごめんなさい・・・」

 

そう言う2人に俺も笑顔で応えたのだった。

 

やがて2人は落ち着いたのか、顔を洗いに部屋を出て行ったのだが、みゆきは俺の顔をじっと見つめると、何かを思い出したのか”ボンッ”と言う音が聞こえそうな勢いで顔を真っ赤にしたのを見て

 

「ど、どうした、みゆき?何かあったのか?それとも俺は俺が記憶のない時に他になにかやらかしたのか!?」

 

そう訊ねると、みゆきはもじもじとしながら言おうか言うまいか悩んでいるような風だったが、覚悟を決めたのか俺に

 

「実は・・・その・・・呼吸の止まった慶一さんを蘇生させる時に・・・ですね・・・その・・・私が・・・慶一さんに・・・その・・・人工呼吸を・・・施したんです・・・」

 

俺はその衝撃の台詞に頭の中が真っ白になっていた。

 

そして、物凄い衝撃に耐えながら俺はおそるおそるみゆきに

 

「つ、つまり・・・俺は・・・お前とも・・・その・・・した、って事・・・なのか?」

 

俺の言葉にまたしても顔を真っ赤にしてみゆきが小さく頷いたのを見て、俺もまた”ボンッ”と言う音が聞こえそうな位の勢いで顔を真っ赤にしていたのだった。

 

そして、その場に居たたまれなくなったのかみゆきも赤い顔のまま俺に「し、失礼しますね。」と言いながら部屋を出て行ったのをぼーっとしながら見送ったのだった。

 

俺はそのまま自分のした行為に自己嫌悪になりながら落ち込んでいたのだが、そこに俺の様子を見にこなた達もやってきた。

 

「おはよう、慶一君。目が覚めたんだね?本当に安心したよ。」

「よかった~。けいちゃん、ちゃんと無事だった。」

「けど、あぶねー所だったのはかわんねえぞ?」

「何にしてもほっとしたわ。慶ちゃん、気分はどう?」

 

最後のあやのの言葉に俺は

 

「とりあえず、昨日のお酒の影響で二日酔いっぽい感じだよ。頭痛い・・・」

 

そんな俺の言葉にあやのは

 

「そうかもしれないと思ってはいこれ、水と胃腸薬持ってきたわ。」

 

そう言って水と薬を渡してくれたので俺は

 

「お、ありがとな。あやの。まったく、酒なんて飲むもんじゃないよ・・・」

 

そう言って軽く凹んでいると、こなたが不機嫌な表情で

 

「でも、そのおかげでイベント起きたじゃん?お酒も満更悪いもんじゃないんじゃない?」

 

少しトゲのある言い方をしてきたので俺は苦笑しながら

 

「いや・・・あんなのはもう勘弁だよ・・・俺はまだ死にたくない・・・」

 

その言葉にはこなたも苦笑せざるをえなかったのだった。

 

その後、皆は部屋を出て行ったので、俺は薬を飲んでゆっくりしてる事にした。

 

それからしばらくして今度はこうが俺の部屋に来たのだった。

 

「先輩、痛い所とかないですか?昨日はかがみ先輩とやまとのダブルパンチ食らってましたしね。」

 

俺の体を心配してそう言ってくれるこうに俺は

 

「とりあえず大丈夫だ。二日酔いみたいで頭痛いけどその程度だしな。」

 

そう言った後俺はこうに

 

「こう、昨日は酔っ払っていたとはいえ、お前に変な事しちゃって悪かった。一言謝っておかないときが済まなくってな。」

 

そう言うとこうは少し不機嫌そうな顔で

 

「何で謝るんですか?あれは不可抗力ですし、それに先輩は私とキスするのって嫌でしたか?」

 

そう聞いてくるこうに俺は困惑しながら

 

「い、いや、その・・・嫌って訳じゃないけどあんなのはまともなキスとはいえないだろうしさ・・・こうとしても嫌だったんじゃないか、って思ってな・・・。」

 

俺の言葉を聞きながら俺の顔をじっと見ているこうだったが

 

「私は別に嫌じゃなかったですよ。でも、先輩も嫌じゃないって言うのならもういいじゃないですか。私も気にしてないんですから先輩ももう気にしないで下さいよ。」

 

そう言ってくれたのだが、俺は何となく気がすまなかったので

 

「ありがとう、こう。そう言ってくれるのはとてもありがたいが、それじゃ俺の気が済みそうにないから、お前が俺に望む事があれば言ってくれ。今回のお詫びに一つだけ言う事を聞こう。」

 

その俺の言葉にこうはにやりと笑うと俺に

 

「そうですか?それじゃ遠慮なく言わせてもらいますね。私は先輩に・・・・・・」

 

そして俺はこうの願いを聞いた事を後悔する事となったのだった。

 

そしてそれから3日後の29日から31日、俺は戦地に借り出される事となった。

 


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