らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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クリスマスの旋律~幸せを運ぶ慶一サンタ前編~

皆へのプレゼント選びも終わり、2学期の終了式を終えて俺達は冬休みへと突入していた。

 

そして、俺達の今年のバイトも25日の最終日までは目一杯続く事となり、最終日に向けて俺達はがんばっていたのだった。

 

それから2日後の24日、この日は朝から夕方までの時間帯が俺達のアルバイト時間だった。

 

店内に流れるクリスマスソング、そして店員もみなサンタクロースのコスプレをしてそれぞれが仕事を行っていたのだった。

 

「いやー。やっぱしクリスマスのコスはこれじゃないとねー。」

 

自分以外のみんなのコスプレ姿を見ながらうんうんとしみじみ頷いているこなたに

 

「クリスマスだからって私達もこんな格好しなきゃならないなんて・・・いくら接客の為とはいえ、少し恥ずかしいわ・・・」

 

接客担当なだけに人目に晒されて、恥ずかしさで小さくなっているかがみがそう愚痴をこぼしていると、こなたは満面の笑みで

 

「見られてこそのコスプレじゃん?それに私達は接客処理担当なんだし、見てもらうのも仕事だよー?」

 

あっけらかんとそういうこなたにかがみは

 

「私はそんな趣味になった覚えはないわー!!」

 

と激昂してこなたに詰め寄るかがみに俺は

 

「おいおい、かがみ。気持はわからなくもないが、今は業務中だぞ?見ろ、お客さんが変な目で見てる。」

 

そう指摘すると、かがみは途端に顔を真っ赤にして俯いたのだった。

 

「うーん、やっぱりかがみんは可愛いねえ。」

 

にやにやとしながらかがみにそう言うこなたに俺は苦笑しつつ

 

「お前もあんまりかがみをからかってやるなよ?あれじゃかがみ本来の動きすらできないぞ?」

 

そう忠告する俺にこなたは軽いため息を1つついてから

 

「うーん・・・まあ、しょうがないね。かがみが立ち直ったら接客処理の続きやらせてよ。それまでは私が頑張るからー。」

 

そのこなたの言葉に俺も、経験者の頼もしさを感じながら

 

「わかった。とりあえずそれまでは頼むぞ?こなた。」

 

俺の言葉に頷いて、こなたは接客業務へと戻っていくのだった。

 

「あの、慶一さん。かがみさん、大丈夫ですか?何だか泉さんとお話してから動きにくくなっているみたいですけど・・・」

 

そこにやってきたのは俺やこなた、かがみと共に接客処理業務をやっているみゆきだった。

 

「こなたがちょっとからかってたからな。かがみ意識しちゃってるみたいでな。みゆき、お前は大丈夫なのか?」

 

そう俺が尋ねると、みゆきは少し顔を赤らめながら

 

「お恥ずかしながら、私も少し照れているのですが、お仕事と割り切る事である程度は慣れて来たみたいです。ただ、他の男性客の方々から何だか注目を浴びているみたいで・・・」

 

そう説明するみゆきのコスプレ姿をみて何となくは納得できる俺だった。

 

みゆきは元々スタイルもいい方だから、この衣装はみゆきの体のラインを浮き上がらせるデザインとなっていたというのももある。

 

こなたもみゆきの姿を見た時には「萌えー」とか言ってたくらいだ。

 

俺がそんな事を考えていると、みゆきは俺の顔を覗き込みながら

 

「あの、慶一さん。どうかしましたか?」

 

そう聞いてくるみゆきに俺は慌てながら

 

「い、いや、なんでもない。ちょっと考え事してただけだから。とりあえずだ。仕事終わるまでは頑張るしかないからな。みゆきも頼むぞ?」

 

そう言うとみゆきはにっこりと笑って

 

「はい。頑張ってきますね。それでは慶一さん、後ほど。」

 

そう言って再び業務に戻るみゆきを見送った時、いつのまにかこなたからの羞恥プレイから立ち直ったかがみがジト目で俺の事を見てることに気付いた。

 

「・・・なんだよ、かがみ。俺の顔に何かついてるか?」

 

そう言うと、かがみは俺の言葉にプイッと横を向いて

 

「・・・別に、なんでもないわよ。私も仕事に戻るわ。」

 

そう言って少し不機嫌になりながら仕事に復帰するかがみに俺は、頭にハテナマークを飛ばしていたのだった。

 

そして、俺も仕事を再開させようと動こうとした時に、最初にア○メ○トに来た時に感じた気配に気付いて店内を見回すと、物陰で血の涙を流しながらこちらを恨みがましく見ている兄沢店長の姿を見つけたのだった。

 

兄沢店長は俺と目が合うと途端に俺の側まで走り寄って来て俺の両肩を掴むと

 

「電気街店の売上が急に伸びたと思ったら!何故だ!伝説の少年A!!何故この店でアルバイトをしているんだ!何故伝説の少女Aもこの店でアルバイトしている事を隠していたんだーーー!!」

 

そのあまりの迫力に若干引き気味になりながら

 

「い、いや、何故と言われても丁度アルバイトを探していた時にこの店での募集がありましたから・・・。」

 

そう言い訳をしていると、兄沢店長の肩をがっしりと掴む者が現れたのだった。

 

「兄沢ー!!今更見苦しいぞ!!貴様が何を言おうとも、もはや伝説の少年Aと伝説の少女Aのうち以外でのバイトはありえんのだっ!大人しく引き下がれい!!」

 

その殿鬼店長の言葉に兄沢店長は真っ赤な炎を燃え上がらせながら

 

「おのれ!殿鬼!!こちらが知らぬ間に卑怯な真似を!!見ているがいい!!貴様の所よりもいい条件で伝説の2人を引き抜いて見せるわっ!!」

 

兄沢店長の言葉に殿鬼店長も

 

「ふはははは!!無駄無駄無駄だっ!うちを上回る条件など貴様の所で出せる訳もないわっ!!諦めるのだな!」

 

そうやって火花を散らす2人をとりあえずほっといて、俺は業務へと戻るのだった。

 

実のところここにアルバイトに来てから何度かこういう事が起こっていたのだが、最初のうちは止めていた俺も最近はすっかり本人達同士で好きにさせておこうと思い、止める事すらしなくなっていた俺だった。

 

とはいえ、2人の張り合いのせいで俺達の自給はとんでもない額にまであがっていたのだが・・・

 

最初のうちこそ自給1200円とそれでも高配当だった状況だったが、2人の争いがいつしか自給8000円とかいうとんでもない額まで上がってしまったのだった。

 

流石にこれ以上は一介の学生の貰うバイト代ではないと思った俺は、店長に遠慮をしていたのだが、どうしても殿鬼店長は俺達を兄沢店長に渡したくないという思いからこの条件を出し、俺達もそこまで出してくれる殿鬼店長を裏切れないな、と思ったので、とりあえず兄沢店長の誘いを断りつづけてきたのだった。

 

人件費にそこまでかけて経営やっていけるのか?という心配もあったのだが、俺達がバイトに入ってからは売上の伸びが半端ないらしく、俺達にそこまでの配当を配っても余裕が出来てしまうほどなのだと殿鬼店長が言っていたのだった。

 

しかしながら当然この高配当を貰ってるのは俺達だけだったので、他のアルバイトの人には内緒なのだが・・・。

 

ある意味兄沢店長と殿鬼店長の対決もこのア○メ○ト電気街店の名物みたいな物にもなっていたので、これも一種のイベント扱いにもなっていた。

 

だから放置した、というのもあるのだけど他に様子を見に行こうと思っていた場所もあったから、というのも理由なのだった。

 

俺はそんな事を漠然と考えながらみさおたちの様子を見に行った。

 

「よう、みさお、つかさ、やまと。順調みたいだな。」

 

商品の補充陳列担当の3人の所に言って声をかけると3人は

 

「お、慶一。店長達またやってんのか?いつも飽きねえよなあ。」

「2人とも何だか怖くてまだなれないよ~。」

「ある意味似たもの同士なのかしらね?あの人のおかげで高給取りになれたようなものだけど。」

 

その言葉に苦笑しながら

 

「はは。あれがあの人達のライフワークってやつなんじゃないか?なんだか色々あるから飽きないけどさ。」

 

そう言う俺に、やまととつかさが仕事の件で思い出した事があったようで

 

「先輩、そういえば・・・・・・の商品の事なんだけど在庫まだ残ってたかしら?」

「けいちゃん。・・・と・・・の商品の在庫切れちゃってるみたいなの。それと・・・の在庫チェックして欲しいんだけどいいかな?」

 

その2人に俺は頷いて

 

「わかった。ちょっと在庫状況見てみるから、後で内線飛ばす。とりあえずは今の商品の陳列まかせるぞ?」

 

その言葉に2人とも頷いて「お願いね、先輩。」「内線もらったら動いてみるから連絡お願いね~」と言う2人に俺も頷いて

 

「オーケー。それじゃこっちは頼むぞ、みさお。2人のフォロー任せたぞ?」

 

俺がそう言うとみさおは頷いて

 

「分かった。こっちは任せろってヴァ。とりあえず残りの作業やっちまおうゼ?」

 

みさおがつかさとやまとに声をかけると、2人とも頷いて作業に戻って行ったのを俺は見送りつつ、レジの側のPCの所に向かった俺だった。

 

「あ、先輩。お疲れ様です。」

「こっちは問題ないわよ?慶ちゃん。」

 

俺に気付き、そう声をかけてくるこうとあやのに俺は

 

「2人ともお疲れさん。ちょっと在庫チェックするから引き続きレジの方頼むぞ。何かあったら呼んでくれ。」

 

と言う俺の言葉に2人とも頷いて

 

「分かりました。こっちは任せてください。」

「何かあれば声をかけるわ。慶ちゃんはそっちに集中して?」

 

と言う2人の言葉に甘えさせてもらって、俺は早速在庫チェックを始めるのだった。

 

そんなこんなで今日も仕事終了の時間まで頑張った俺達は、今日のイブはそれぞれの家で過ごす為に駅で別れ、それぞれの家に戻るのだった。

 

俺はというと、実家の方に一度顔見せに戻らないといけなかったので、そのまま実家へと向かった。

 

その際にみゆきたちはそれぞれに用事があると言う事で、今回は俺一人で実家へと向かう事となったのだった。

 

実家の門をくぐり、俺は玄関で靴を脱ぎながら

 

「ただいまー!お袋、親父。顔見せに来たぞ。龍兄も帰ってるのか?」

 

そう声をかけながら居間に行くと、お袋はいつもの笑顔で

 

「あら、慶一。おかえりなさい。龍也はちょっと出かけているわ。お父さんは牧村さんの所よ?」

 

との言葉に少々拍子抜けしながらも、俺はとりあえず元自分の部屋へと向かい、今日の為に準備をしていた事を始める為にあらかじめ送っておいた荷物を持ち下へ下りると

 

「お袋、親父や龍兄に顔見せていけなかったけど、俺、これからやる事あるから出かけるよ。年内にはもう一回位戻る予定だけど今日はこれでな。それじゃお袋、元気でやってくれよ。」

 

そう声をかけるとお袋も

 

「あら、忙しいのね。わかったわ。お父さんと龍也には伝えておくから。またうちに来なさいよ?」

 

そう言ってくれるお袋に「わかってる。それじゃなー。」と言って俺は実家を出たのだった。

 

実家を出てまず立ち寄ったのは、みゆきの家の向かい側の家、つまり、みなみの家だった。

 

俺はサンタクロースの帽子を被り、岩崎家のインターホンを押してしばらく待つ。

 

少し待つとインターホンから『はーい、どなたー?』という声が聞こえてきたので俺は

 

「夜分にすいません。森村慶一といいますがみなみさんはご在宅でしょうか?」

 

俺がインターホンの声の主に名乗るとしばしの間があいた後

 

『あなたが夏の旅行の時にみなみがお世話になった森村君ね?ちょっと待っててね、今開けるから。』

 

インターホンの声の主がそう言って少しすると玄関が開き、そこに先ほどの声の主が立っていた。

 

「こんばんは、森村君。私はみなみの母親のほのかです、よろしくね?」

 

そうほのかさんが挨拶してくれたので俺も挨拶を返す。

 

「初めまして、ですね。森村慶一です。それと、メリークリスマス。」

 

そう言って挨拶すると、ほのかさんも柔らかく微笑みながら

 

「ふふ。メリークリスマス。ちょっと待ってね、今みなみを呼んでくるから。みなみー!森村君が来てるわよ?下におりてらしゃいー!」

 

そう言って、2階にいるらしいみなみを呼んでくれたほのかさんと共にしばし待っていると、いきなり俺に向かって白い大きな物体が飛びついてきたのだった。

 

「うおっ!?びっくりした。チェリー、脅かすなよ。」

 

俺に飛びつき顔を舐めまわすチェリーの頭をなでながらそう言っていると、ほのかさんも微笑みながら

 

「あら、見知らぬ人にいきなり懐くなんて珍しいわね。チェリーは結構人を見る犬なんだけどそのチェリーがそこまで懐くなら森村君はチェリーにとって安心できる人なのね。」

 

そのほのかさんの言葉に照れながら

 

「いやあ、照れますね。でもチェリーと俺は初対面と言うわけじゃないんですよ。お宅のみなみちゃんと初めて出会った時からチェリーにはこうされていましたからね。」

 

そうほのかさんに説明すると少し驚いた表情で

 

「まあ、そうだったの。あなたも犬は好きなのね?」

 

俺にそう言うほのかさんに頷きながら

 

「ええ、とはいっても犬だけではなく猫も好きですけどね。実際家で飼っていますから。」

 

そう説明すると、ほのかさんもにっこり笑っていたのだった。

 

そうこうしているうちにみなみが2階から降りてきたらしく、俺の姿を見て

 

「・・・お待たせしました・・・。こんばんは、先輩。今日は突然どうしたんですか・・・?」

 

俺にそう聞いてくるみなみに

 

「よっ、みなみ。メリークリスマス。今日は24日だからな。」

 

そう言う俺にみなみも

 

「・・・メリークリスマス・・・そういえば今日は・・・そういう日でしたね・・・。」

 

みなみの言葉に頷きながら

 

「そういう事だ。クリスマスにはサンタ、そしてサンタと言えばプレゼント。つまりだな・・・」

 

そうみなみに言いながら俺は、自分の持っている荷物からみなみへのプレゼントを取り出して

 

「ほら、みなみ。慶一サンタからお前にクリスマスプレゼントだ。」

 

そう言って笑いながら、俺がみなみにプレゼントを渡すとみなみは

 

「・・・え?これ、もらってしまっていいんですか・・・?」

 

突然のプレゼントに驚きながら俺に聞き返してくるみなみに俺は頷くと

 

「ああ。その為に選んできたものだからな。これからまだまだ寒い日も続くし受験に向けて風邪を引かないようにって思ってな。暖かく出来るものを選んできた。」

 

そう言うと、俺の言葉を聞いてみなみはおずおずと

 

「・・・あの、これ・・・あけてみてもいいですか?」

 

そう聞いてくるみなみに俺は頷いて

 

「ああ、まあ、気に入ってくれるかは分からないけどな。」

 

そう答えると、みなみはプレゼントの包みを開け始める。

 

中に入っていたのはマフラーとセーター、そしてかがみの所で買ったあの時のお守りだった。

 

それを見たみなみは嬉しそうな顔で

 

「・・・ありがとうございます・・・とても暖かそうで・・・そして・・・とても嬉しいです・・・私、受験頑張りますから・・・先輩も私を応援していてください・・・。」

 

俺にそう言うみなみに微笑みながら頷く俺だった。

 

「がんばれよ?みなみ。それじゃ俺はまだ回る所あるからこれで行くよ。来年は皆揃って陵桜で会おうな。」

 

手を振りながら玄関を出ようとする俺にみなみは

 

「・・・はい・・・必ず・・・必ず合格してみせます・・・だから、待っていてください、先輩・・・。」

 

その言葉に俺も力強く頷いて見せるのだった。

 

「あー・・・それとな、みなみ。ありがとう。俺が過去を乗り越える事が出来たのもお前にも勇気をもらったおかげだ。その事も一言礼を言っておきたくてな。今日のプレゼントにはその感謝の意味もあるんだ。」

 

そう俺がみなみに伝えたい事を言うと、みなみは顔を赤くして照れながら

 

「・・・い、いえ・・・私は・・・あの場に一緒に居ただけですし・・・先輩のお役に立てていたかどうかも・・・わかりませんでしたから・・・」

 

そう言いながら慌てているみなみに俺は

 

「役に立っていたさ。あの時どれほどに心強かった事かわからない。だから本当に感謝してる。それは俺の正直な気持だからさ。だから、ありがとう。」

 

笑顔でみなみにそう言うと、みなみも赤い顔のままではあったが

 

「私こそ・・・素敵なプレゼントをありがとうございます・・・先輩の気持・・・受け取りました・・・とても・・嬉しかったです・・・」

 

そう言ってくれたのだった。

 

俺はみなみに感謝しつつ、みなみと別れの挨拶を交わして次の目的地を目指す。

 

みなみside

 

突然に先輩が家を訪ねてきたので何事だろうと思い、玄関口まで行った私に先輩から思いもかけないプレゼントをもらう事になった。

 

まったく予想外の出来事と、先輩の気遣いが嬉しくて私は先輩からもらったプレゼントを改めて見て、受験への闘志を新たにするのだった。

 

「いい子ね、森村君って。みなみも彼の事気に入ってるみたいね。」

 

と言うお母さんの言葉に私は顔を真っ赤にして俯きながら

 

「・・・うん。とっても優しくて・・・暖かい人・・・だから・・・」

 

私の言葉にお母さんもにっこりと笑って頷いていたのだった。

 

そして別れ際に先輩が言ってくれた言葉は、私にとっても凄く嬉しい言葉だった。

 

(・・・ありがとう先輩・・・私・・・頑張りますね・・・そして、ゆたかや田村さんと共に・・・きっと先輩の前に・・・立ちますから・・・)

 

先輩の言葉を噛み締めながらそう改めて心に誓う私だった。

 

慶一side

 

自分からやろうと思った作戦だったが、事のほかみなみも喜んでくれたので、俺はやってよかったな、と心の中で思いながら今度は向かいのみゆきの家へと伺う事にしたのだった。

 

道路を渡り、俺は高良家のインターホンを押す。

 

しばらくするとインターホンからみゆきの声が聞こえた。

 

『はい。どちら様でしょうか?』

 

と言うみゆきの言葉に俺は

 

「俺だ、慶一だ。急にすまないな。」

 

そう返事をするとみゆきは少し驚いたような声で

 

『慶一さん、なのですか?ちょっと待っていてください。今そちらに行きますから。』

 

と言った後、少し待っていると、みゆきが玄関から出てきてこちらへやってくるのが見えた。

 

「お待たせしました、慶一さん。あら?その帽子は、サンタクロースの帽子ですか?」

 

俺が被っているサンタ帽を見てみゆきがそう言うと、俺はその言葉に頷きながら

 

「その通り。メリークリスマス、みゆき。慶一サンタからお前へのプレゼントだ。」

 

そう言って持っている荷物からみゆきへのプレゼントを取り出してみゆきに渡すと、みゆきは驚きながら

 

「え?これ、いただいもいいのですか?」

 

そう聞き返してくるみゆきに俺は頷きながら

 

「ああ。その為に選んだプレゼントだからな。気に入ってくれるといいけど。」

 

そう答えつつも少し照れてる俺だった。

 

「ありがとうございます、慶一さん。これ、開けてみてもいいですか?」

 

と言うみゆきに俺は頷くと、みゆきはプレゼントの包装を開いて中を見る

 

「わあ!これってストールですね。とても暖かそうです。ありがとうございます、慶一さん。とても嬉しいです。」

 

とても嬉しそうに、俺のあげたプレゼントを見ながらお礼を言うみゆきに、俺はさらに照れながら

 

「ま、まあ、喜んでくれたのなら選んだ甲斐もあったというものさ。これからまだまだ寒いからな、風邪だけは引くなよ?みゆき。」

 

そう言うとみゆきも頷きながら

 

「はい。私の体の事までお気遣いいただいて、とてもありがたく思います。これ、大事に使わせてもらいますね。」

 

満面の笑顔でそう言うみゆきに俺も笑顔で頷き返すのだった。

 

「慶一さん、お茶くらいは用意させてもらいますので一度家へどうぞ。」

 

何かお礼がしたいと思ったみゆきは俺にそう声をかけてきたのだが、俺はみゆきに悪いと思いながら首を振って

 

「その気持は嬉しいんだが、俺は他にもまだ行く所があるんだ。もしみゆきさえよければ今度また俺が遊びに来た時にでもお茶につきあわせて貰うよ。悪いな。」

 

そう言う俺にみゆきは少し残念そうな顔をしたが、再び笑顔に戻ると

 

「そうですか。それじゃ今度、私の方から誘わせてもらいますね。その時にまたゆっくりと。」

 

俺にそう伝えてくるみゆきに俺も頷いて

 

「ああ。その時にはゆっくりつき合わせて貰うよ。それじゃ今日はこれでな。」

 

そう告げてみゆきの家を後にしようとした時、俺はみゆきに大事な事を伝え忘れそうになった事を思い出して

 

「おっと、みゆき。言い忘れていた事がある。みゆき、今年1年お前や皆と出会えて楽しかった。それに海では俺の過去と向き合う為に俺に勇気もくれたよな。本当に感謝してる。ありがとう。来年も、こんな俺だが1年間仲良くやっていきたいと思ってる。俺はお前にそれを言いたかった。」

 

そうみゆきに告げると、みゆきも嬉しそうな、それでいて柔らかな微笑みを俺に向けながら

 

「それを言うなら私もですよ?慶一さん。今年になって慶一さんと出会いましたが、それは私にとっても大切な思い出となっています。それに、私だって慶一さんに勇気を頂きました。みんなと一緒に居れるように努力する、あの約束は私にとっても勇気のいる決断だったんです。けど、そんな私の言う事を慶一さんは受け止めてくれてそして、私との約束の為に動いてすら下さいました。とても、本当にとても嬉しかったんです。私の方こそ、来年も、いえ・・・それ以降もまた慶一さん達と過ごしたいと思っています。私こそよろしくお願いします、慶一さん。」

 

そう言ってにっこり笑うみゆきに俺も笑顔で返してみゆきと別れの挨拶を交わして、高良家を後にしたのだった。

 

みゆきside

 

慶一さんの訪問は予想していなかった事でもあったので、今日の突然の訪問には驚かされました。

 

けれど、慶一さんは私にとっても素敵なクリスマスプレゼントを下さいました。

 

そして、最後に私に言ってくださったあの言葉は私にとって凄く嬉しい言葉でもありました。

 

私は頂いたストールを改めて見ながら、慶一さんがこれを選んでいる時の苦労を想像して思わず微笑んでしまう私でした。

 

(苦労したのかもしれませんね。でも、驚きましたが、とても嬉しかったです・・・って、あああ!私、プレゼントを頂きましたが、慶一さんに何もお返しをしていません!何てことでしょう・・・と、とにかく私も慶一さんへのプレゼントを明日のアルバイトの帰りにでもお渡ししませんと・・・)

 

そう心の中で考えながら自分が慶一さんへのプレゼントをお返ししていない事に気付き、落ち込む私でした・・・。

 

慶一side

 

みなみに引き続き、みゆきにもクリスマスプレゼントを渡してきた俺だったが、こちらも喜んでくれたようだったのでほっと一安心した俺だった。

 

都内組みは後2人いるので、俺は早速2人の所へと向かったのだった。

 

とりあえず俺は、最初にこうの所に行ってみる事にした。

 

しばらく歩き、こうの自宅前に着くと俺はインターホンを押してみる。

 

少し待つとインターホンから「はい。どちら様でしょうか?」というこうの母親の声が聞こえたので

 

「いつもお世話になっています。森村慶一ですが、こうさんはいらっしゃいますか?」

 

そう訊ねるとこうの母親は

 

『まあ、慶ちゃん。いつもうちの娘と仲良くしてくれてありがとう。今こうは家にはいないのよ。やまとちゃんの家に遊びにいってるわ。そっちを訊ねて見るといいと思うわよ?』

 

そう教えてくれるこうのお母さんに「わかりました。ありがとうございます。」と告げた後、俺はやまとの家に向かったのだった。

 

しばらく歩くとやまとの家に到着したので、俺はやまとの家のインターホンを押そうとしたのだが、ふいに後ろから声をかけられたのだった。

 

「あら?先輩。私の家の前で何をしてるの?それにその帽子は・・・」

「あれ?先輩だ。どうしてこんな所にいるんです?というかいつこっちに戻ってたんですか?」

 

と言う声に振り向き、俺は2人に

 

「お?やまと、こう、メリークリスマス。今お前の家を訪ねようと思ってた所だったんだよ。それにしても、その荷物、買い物にでも行ってたみたいだな。あー・・・それとこっちには今日戻ってたんだ。けどすぐに自宅の方へ戻るけどな、埼玉のな。」

 

そう言うと2人は

 

「ふふ。メリークリスマス。とりあえず2人で形だけでもクリスマスしようか?って事でね。買出し行ってたのよ。と言う事は先輩は今日はゆっくりしていけないのね?」

「メリークリスマス、先輩。そうだったんですか。でもすぐ帰っちゃうんじゃ残念ですね。」

 

そう言いながらも俺がすぐに帰ってしまう事を気にして少し残念そうな顔をしていた2人だったが、俺は気を取り直して持っていた荷物から2人へのクリスマスプレゼントを取り出すと

 

「まあ、俺も今日はちょっと忙しくてな、申し訳ないんだが。やまと、こう。これは慶一サンタから2人へのクリスマスプレゼントだ。受け取ってくれるか?」

 

そう言って2人にプレゼントを渡すと、2人は驚いた表情で俺を見ていたが、やがてその表情が嬉しさに変わり

 

「ありがとう、先輩。突然で驚いたけど凄く嬉しいわ。でも、慶一サンタって自分で言ってて恥ずかしくない?」

「なるほど、それで先輩その帽子被ってたんですね。でも、プレゼント嬉しいです。慶一サンタは笑えますが。」

 

2人とも俺の言った事がおかしいようで笑いをこらえているのが見て取れた。

 

俺は少々不機嫌になりながら

 

「うるさいな。いいだろ?こういう時くらいはさ。そんなに笑うんなら今あげたプレゼント返せよ。」

 

少しむくれつつそう言うと2人は慌てて

 

「ご、ごめんなさい、先輩。プレゼントは本当に嬉しかったから、どうか取り上げるのだけは許して?」

「すいません、すいません。このとおりですからプレゼント下さい、お願いします。」

 

そう言って謝ってきたので俺は軽いため息を一つついてから

 

「まあ、わかればいいよ。ともあれこれからまだまだ寒いし、それつけて風邪ひかないようにな。」

 

俺がそう言うと2人は俺のあげたプレゼントを見て

 

「先輩、これあけてみてもいいかしら?」

「私も中身見ていいですか?」

 

そう言って来たので俺は頷いて

 

「ああ。見てみてくれ。一応デザインは俺なりにイメージして選んだつもりだけどさ。」

 

俺がそう言うと2人は早速プレゼントの包みを開いてみるのだった。

 

「わあ。毛糸の手袋とマフラー、それに毛糸の帽子まで・・・先輩、ありがとう。デザインもいいし気に入ったわ。ちょっとつけてみるから見てくれる?先輩。」

「へー。これはあったかそう。先輩ありがとうございます。とても嬉しいですよ。私もちょっと付けてみますね?」

 

そう言って2人は帽子とマフラー、手袋をつけて俺に見せてくれたのだった。

 

「うん、中々似合ってるぞ。俺のセンスも捨てた物じゃないな。」

 

その言葉に2人とも嬉しそうに

 

「こうのも中々あってるじゃない。私もこれは気に入ったわ。」

「やまとも中々いいよー?先輩のセンスも大した物ですよ。」

 

そう言って喜んでくれたのだった。

 

俺はそんな2人に向き直り

 

「2人とも、中学時代から俺の事を友人として見てくれただけでなく、いつも俺の側にいてくれた事を今でも嬉しく、そしてありがたく思ってる。このプレゼントもお前らのそんな気持に感謝したくて渡したんだ。今まで本当にどれほど心強かったか、そして過去を乗り越える事においてもどれほどの勇気をもらったか。どれだけ感謝の言葉を並べても足りないくらいだ。来年も俺たちは一緒に過ごしていく事だと思うけど、よろしくな、2人とも。」

 

俺がそう2人に告げると2人とも目に涙を浮かべながら

 

「私だって先輩にはあの頃から感謝しっぱなしなのよ?壊れかけた友情を修復してくれた事、その後も私達の力になってくれた事、私が陵桜を選んだ時だって先輩は私を黙って受け入れてくれた。それがどれほどにありがたくて嬉しかったか・・・さらにはこんなプレゼントまでも私にくれた。本当に嬉しいのよ・・・先輩・・・こちらこそ、来年も、それ以降も・・・よろしくね・・・」

 

最後には涙をこぼしながら言うやまと。

 

「あの時に先輩は私達をほおっておいても良かったのに先輩はそうしなかった。私とやまとの為に手を差し伸べてくれた。嬉しかったんです、本当に。あの時に私は先輩と友達になりたいと言いましたよね?あの言葉は先輩に本当に感謝をしていたから。私の偽りない本心をぶつけたんです。それを受け止めてくれた先輩の優しさに私の方こそ感謝を言いたいです。そして、これからも先輩には苦労かけてしまうかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。来年も、それ以降も・・・一緒に・・・先輩と皆と歩みたいですから。」

 

こうもまた、同じように涙をこぼしながら俺に言ってくれた。

 

俺も、涙が出そうになるのをこらえながら

 

「俺たちはこれからも一緒にいけるさ・・・俺たちがそう望んだんだからな・・・だろ?こう、やまと。」

 

無理やり笑顔を作りながらそう言う俺に、2人もまた無理やリ涙をとめて頷いて笑ってくれたのだった。

 

「それじゃ俺はまだこの後もやる事が残ってるからこれで行くよ。こう、やまと26日は派出にやろうな。」

 

そう告げると2人も

 

「そうですね、思い切り楽しみましょう。ついでに私達の忘年会と行きましょうよ。」

「忘年会って・・・まあ、学生の身でありながら働いてる私たちには違和感はないかもね。」

 

笑いながら言う2人に俺は

 

「違いないな。ま、とにかく風邪引くなよ?2人とも。そして笑って来年を迎えようぜ。」

 

俺の言葉に2人とも頷いてくれたのだった。

 

そして、俺は2人に別れの挨拶を交わして永森家を後にしたのだった。

 

こうside

 

クリスマスイブの24日はバイトもあったりして普通にイブは過ごせないだろうと思い、私はやまとと2人でイブを過ごそうと思い、やまとの家に来た。

 

とりあえず、足りない食材等があったから私達は買い物にでたのだけど、2人してやまとの家に帰り着いてみると、そこにはやまとの家を訪ねてきたサンタ帽を被った先輩がいたのだった。

 

そして、先輩は私達にとても嬉しいクリスマスプレゼントをくれたのだった。

 

「それにしても、まさか先輩に会うとは思わなかったわね。」

「うん。ちょっとびっくりだったよ。と言うか先輩がこっちに帰って来てた事すらしらなかったしね。」

「先輩、ひょっとしてみんなの所も回って歩くつもりなんじゃ・・・」

「確かに突貫で回ればいけそうかもだけど・・・タフだね、先輩は。」

 

そう言って2人して苦笑しながら軽いため息をついた後、私達はやまとの家に入っていった。

 

やまとの部屋に向かいながら私は

 

(でも、先輩からもらったこれ・・・嬉しかったな。あったかいしデザインもいいし。それに何より、私達の事を今でも考えていてくれる事が特に嬉しかった。来年も先輩と楽しくやりたいな。)

 

そう心の中で思っていた。

 

そしてやまとも

 

(先輩の突然の来訪には驚いたけど、誕生日プレゼントに続いてクリスマスプレゼントまでもらえるなんて思ってなかったわ。それに、最後に私達に言ってくれたあの言葉は本当に嬉しかった。来年も私は先輩と一緒に・・・いたいな・・・そう思う・・・)

 

そんな事を考えているのだった。

 

慶一side

 

都内組みを回り終えて、俺は都内を離れた。

 

そして残りの仲間達の元へと急ぐ。

 

クリスマスイブはまさにこれからが本番と言えるのだった。

 


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