らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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思い出を紡ぐ旋律、最終話~文化祭最終日~

文化祭の2日目、俺にとって新たに罪を消すための機会があった。

 

それは、あの中学3年生の頃に起きた給食費盗難事件の被害者の生徒達が、あの日に俺に詫びれなかった事を悔やみ、そして改めてその事を詫びる為に来てくれた事だった。

 

その後、彼らと和解した俺は、また一つ自分の中の罪が消えていった事を実感していたのだった。

 

そして、迎えた高校2年での桜藤祭最終日、何時の間にか始まっていた売上勝負の決着をつける事となったのだった。

 

最終日の俺の抜け番は午後からだったので、午前中は接客にいそしむ事となったのだった。

 

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか。」

「ご注文を承ります。」

「お待たせしました、ご注文の品、以上でよろしかったでしょうか。」

「ありがとうございました、引き続き桜藤祭をお楽しみ下さい。」

 

矢継ぎ早に案内、注文受け付け、品物のお届けと業務をこなしていく。

 

そして売上勝負の最中だというのに今日もまた俺達のクラスに顔を出してこなた達はケーキを食べて行った。

 

「売上勝負とか言っといて勝つ気あるのか?あいつは・・・」

 

来てくれた事を喜びつつも、こなたの行動にため息をつきつつそう呟く俺だった。

 

そして、程なくして俺の抜け番が来たので、丁度交代の為に戻ってきたかがみ達に

 

「おかえり、かがみ、みさお、あやの。そろそろ俺の抜け番だから俺が戻るまでは頼むよ。」

 

そう伝えるとかがみ達も頷きながら

 

「わかったわ。行ってらっしゃい慶一くん。後でまたよろしくね。」

「楽しんで来いよ?慶一ー。」

「こっちは任せてね。それじゃ息抜き行ってらっしゃい。

 

そう言ってくれる3人に俺は手を振って、学校の制服に着替え直したあと店を出た。

 

今日はぶらぶらと1人で回りつつ、とりあえずアニ研に顔を出してみようと思い、俺は部室の方へ歩いていく。

 

そしてアニ研部室の側に来た時曲がり角から飛び出してきた女の子と衝突したのだった。

 

「いたた・・・あ、あの、大丈夫ですか?」

 

お互いに尻餅をついたため、女の子も自分のお尻をさすりながら申し訳なさそうに俺にそう聞いてきた。

 

俺は取り立てて問題なかったので

 

「ああ、俺は大丈夫だよ。君こそ平気か?」

 

相手の子にそう訪ねるとその子は苦笑しつつ

 

「はい、ちょっとお尻打っちゃいましたけど、大丈夫です。それでは急いでますのでこれで。」

 

何やら急いでいたようでその子は慌てて立ち上がると、俺にぺこりと頭を下げ、そのままその場を走り去ってしまった。

 

俺は(気をつけないとだめだな)と心の中で思いつつ、その場を後にしようとしたのだが、ふと女の子のいた場所に何かが落ちているのを見つけると、俺は落し物を拾い上げたのだった。

 

それは学生証のようだった。

 

一応それを確認してみると、”若瀬いずみ”と名前が書かれていた。

 

俺は心の中で(あー・・・こりゃあの子、慌てるだろうなあ・・・けど、走り去ってしまった後だし、この人数の中を捜すのは容易じゃないし・・・困ったなあ・・・)

 

そう考えつつも、もう一度出会える事を祈りながらとりあえずその場を後にしたのだった。

 

そしてアニ研前まで来た時、今度は何やら言い合いをしている姉妹らしき人達を見かけた。

 

「ちょっと!おねえちゃん、約束が違うじゃない!ここに来て色々食べようっておねえちゃんが言ったんだよ!?なのに、どうしてその分のお金が同人誌に化けるのよ!!」

「だってぇ~・・・まさかこんな所で見つけられると思わなかったんですもの~見つけた以上は買うのが使命というものよぅ~?」

「いっつもいっつもおねえちゃんはそうやって私達の食費までそういうものにつぎ込んじゃうんでしょ!?どうするの?また塩粥なんていやだよ!!」

「心配ないわよぅ。またバイト増やすから~。ね?ひかげちゃん。」

「そういう問題じゃないわよ!もう知らない、勝手にすればいいのよ!!」

 

小さい方の子がそうお姉さんらしき人に気持を叩きつけると、そのままどこかへ走り去っていった。

 

その子の後姿を見送ったお姉さんらしき人は、頬に手を当てて困ったような顔をしてその場に立ち尽くしていたのだが、俺はなんとなく見てしまった以上は無視する事も出来なかったので、おそるおそるお姉さんらしき人に声をかけてみた。

 

「あ、あのー・・・いいんですか?妹さんらしい人、どこかへ行ってしまったみたいですが・・・」

 

俺の言葉に気付いたお姉さんらしき人は俺の方を向いてにっこりと笑うと

 

「いいのよ。この学園内にいるのなら探す事は出来るから。騒がせてごめんね~?」

 

俺にそう言いつつ、その場から立ち去ろうとしたお姉さんらしき人に俺は

 

「あの、もし俺の自由時間範囲内でその子を見つけられたら校門前に行くように伝えましょうか?そこで待ち合わせするのが良いのではないかと思うので。」

 

そう言うとその人は俺に

 

「そう?ならお願いできるかしら~。あの子の名前は宮河ひかげっていうのよ。そして私は宮河ひなた。もしあの子を見つけたら私が校門で待ってると言っていたって伝えておいてくれる~?」

 

俺はそのひなたさんの言葉に頷いて

 

「わかりました。伝えておきます。それじゃ俺はこれで。」

 

ひなたさんにそう言うと、俺はその場を立ち去り、当初の目的だったアニ研部室へと足を運ぶ。

 

アニ研の部室に入り、俺はこう達に挨拶をするのだった。

 

「こう、やまと。また遊びにきたぞ?ここも結構盛況だな。」

 

俺の声に気付いた2人は

 

「あ、先輩。今は抜け番なんですか?」

「今日は先輩1人なの?珍しいわね、他の人と抜け番が被らないのも。」

 

そう挨拶を返してきたので俺は頷きながら

 

「うん、何故か今日は誰とも被らなかったんだよな。まあ、そういう事もあるって事で。」

 

俺の言葉に納得しつつ、さっきの姉妹の騒ぐ声が聞こえていたのだろう、こうは俺に

 

「先輩。先程部室前で騒いでいる姉妹っぽい人いませんでしたか?」

 

こうの言葉に頷きながら

 

「ああ、姉妹ゲンカだったようだ。この大人数が集まる最中に妹は姉を置いてどこかへ走り去ったみたいでな。ぶらつきがてらその子を見かけるようだったら言伝をするつもりなんだがな。」

 

その言葉にやまとは

 

「また何やら引き受けたのね?先輩もほんと人が良すぎるわよ・・・いつか誰かに利用されたりしても知らないわよ?」

 

その言葉に俺は苦笑しつつ

 

「ははは、大丈夫さ。そのくらいの判断はつくよ。俺だって誰彼ってわけじゃないからな。」

 

俺の答えにこうとやまとは苦笑を俺に向けていたのだが、ふいに後ろから声をかけられた俺は驚いてその声の方に向き直った。

 

「森村、ご苦労様だな。お前の店のケーキ食べさせてもらった。中々美味かったぞ?」

 

その声の主に俺は笑顔を向けつつ

 

「はは、喜んでもらえたならよかったですよ、桜庭先生。とはいえ先生は俺のクラスの担任なんだし、こっちももう少し見てもらいたかったですけどね。」

 

軽く皮肉を混ぜて返すと

 

「まあ、こっちの方が忙しかったからな。それに向こうはお前や柊がいるんだから問題なかろう?」

 

しれっとそう返してくる先生に俺は苦笑しながら

 

「信頼してくれるのは嬉しいですが、最後くらいは様子見にきてやってくださいよ?」

 

そう言うと桜庭先生は手をパタパタと振って

 

「分かった分かった。後で顔出してやるからもうその話はおしまいだ。ともかく、楽しむ為に来たのだろう?ゆっくりしてけ。」

 

そうしてやり取りを終えた終えた俺は、その言葉に頷いてしばらくの間アニ研でたむろっていたのだった。

 

そして、頃合の時間で俺は部室を後にしたのだが、その入り口付近で何かを探しながら歩いているっぽい、先程俺とぶつかった女の子がいた。

 

いずみside

 

アニ研の部室から立ち去り、急いでお兄ちゃんと合流するつもりで走っていた時、私は曲がり角から現れたこの学校の男子生徒とぶつかってしまった。

 

その時に私はここに入場する為に必要だった学生証をうっかり落としてしまい、ここまで探しに戻って来ていた。

 

「うーん・・・ないなー・・・どこで落としちゃったのかな・・・」

 

そう呟きながらアニ研部室側まで来た私は部室から出てきた男子生徒を見て驚いたのだった。

 

(あれ?あの人はさっきの・・・そうだ!?あの人が何か知らないか聞いてみよう!)

 

そう心の中で考えた後、私はその男子生徒に声をかけたのだった。

 

「あの、先程はすいません。ちょっとお聞きしたい事があるのですが・・・」

 

そう声をかけると男子生徒は私の声に反応してくれた。

 

慶一side

 

先程部室前で会ったあの子が何かを探しているような感じでここまでやってきて、俺に気付いたあの子は

 

「あの、先程はすいません。ちょっとお聞きしたい事があるのですが・・・」

 

そう声をかけてきたので俺は

 

「聞きたい事?何かな?」

 

そう答えると、その子はばつが悪そうな顔で

 

「先程私とぶつかった時に私、何か落とさなかったでしょうか?実はあの時に大事な物をなくしてしまったらしくて、ここまで探しに戻ってきたんです。」

 

そう聞いてくるその子に俺は懐から先程拾った生徒手帳を取り出して

 

「もしかして、これの事かな?」

 

生徒手帳をその子に見せると途端に喜びの表情になって

 

「そうです!これです!ありがとうございました。本当に助かります。」

 

そう言って笑顔で俺に礼を言って来たので俺は謙遜しながら

 

「いやいや。すぐに気付いたから拾っといたんだけどさ、よかったね、見つかって。」

 

生徒手帳を返しながらそう言うとその子も再び頭を下げながら

 

「はい。お手数をおかけしてすいませんでした。あの、もしよろしければお名前を教えていただけませんか?今はすぐに帰らなければなりませんのでちゃんとしたお礼ができませんが、私はここを来年受験する予定ですので私が入学した折にお会いできたならお礼をしたいですから。」

 

その言葉に俺は

 

「いや、俺は別にたいしたことをしたわけじゃないから恐縮しちゃうな。俺は森村慶一、この学校の2年生さ。ここを受験するって事は君は俺の後輩になるかもしれないって事か。」

 

お礼に対して謙遜しつつも名前を教えるとその子も俺に

 

「森村先輩、ですね?私は若瀬いずみといいます。お名前、覚えさせてもらいますね。それでは私は急ぎますから今日の所はこれで、本当にありがとうございました。」

 

そう答えつつも急いでいるようだったので、その子が自分の名前を告げてその場から立ち去るのを俺は見送りながら

 

「今度は落とさないように気をつけるんだよー!?」

 

そう声をかけた後、その場を後にした俺だった。

 

そして、食べ物屋周辺を歩いている時、先程ひなたさんと言い合いをしていた妹のひかげちゃんの姿を食べ物屋の前で店の中をうらやましそうに見つめている姿を見つけた俺は、さっきのひなたさんの伝言を伝えるべくひかげちゃんの側へと行く。

 

そして、ひかげちゃんを脅かさないようにしながらそっと声をかける。

 

「こんにちは。君は宮河ひかげちゃんだよね?俺はこの学校の生徒で2年生の森村慶一というんだ。」

 

俺の声に気付いたひかげちゃんは俺のほうに顔を向けると、不機嫌そうな表情になって

 

「何よ、あんた!何で私の名前知ってるのよ?それに、私はあんたなんか知らないわよ!」

 

その言葉に苦笑しながらも俺は

 

「そりゃまあ、今初めてこうして話をしたわけだから無理はないけどね、とりあえず君のお姉さん、宮河ひなたさんから伝言を預かってきてるからそれを伝えておこうと思ってね。」

 

俺の口から出たひなたさんの名前に訝しげな表情を俺に向けて

 

「おねえちゃんから?あんたおねえちゃんの事知ってるの?」

 

そう聞いてきたので、俺は先程のひなたさんとのやり取りを簡単に説明すると、まだ完全ではないにしろ納得はしたようで

 

「そっか・・・わざわざありがとう。私に教えに来てくれて。」

 

一応俺に礼を言ってくるひかげちゃんに俺は

 

「とりあえずケンカをほおって置けなかったからね、おせっかいかとおもったけど伝えさせてもらったよ。それと、ひかげちゃん。お姉さんの所戻る前に俺のクラスのおいで。ケーキを食べさせてあげるからさ。それを食べた後ひなたさんの所へ行けばいいさ。」

 

俺のケーキという言葉にひかげちゃんの表情がぱあっと明るくなるのが見て取れた。

 

「ほんと!?ケーキ、食べさせてもらえるの!?あ・・・でも私・・・お金ないよ?」

 

途端に暗くなるひかげちゃんに俺は

 

「それは心配しなくていいよ。ケーキは俺のおごりだ。だから食べたいだけ食べるといいよ。」

 

そう言うと暗くなっていたひかげちゃんの表情が再び明るくなり

 

「ほんとに!?ありがとう、おにいちゃん。でもどうして私にケーキご馳走してくれるの?」

 

そう訪ねてくるひかげちゃんに俺は心の中で

 

(塩粥生活とか言う話聞いたら気の毒すぎたからとか言えないよなあ・・・)

 

そう考えながら俺は苦笑しつつも

 

「おなか空かせてるんじゃないかなって思ったからね。とりあえずおいで?」

 

適当に誤魔化しながら俺はひかげちゃんについてくるように促すと、ひかげちゃんは俺の態度に訝しげな視線を向けつつも喜々として俺の後についてきたのだった。

 

ひかげちゃんを連れて自分のクラスに戻る途中に俺に声をかけてきた人がいた。

 

「森村君、こんにちは。君のクラスにいくつもりだったんだけど迷っちゃってね。よければ一緒に連れてってくれないかな?」

 

その声に振り向き俺は挨拶をした。

 

「こんにちは、いのりさん。まさか来てるとは思いませんでしたよ。丁度俺も自分のクラスに戻る所だったので一緒に行くとしましょうか。」

 

そう答えるといのりさんはにっこりと笑って

 

「ありがとう。ところで、一緒にいるその子は誰?まさか森村君にそんな趣味があるわけじゃないわよね?」

 

俺の側にいるひかげちゃんに気付いたいのりさんが俺にそう質問を投げかけてきたので、俺は素直に答えた。

 

「実はですね・・・・・・というわけでして、うちのクラスの店でケーキをご馳走しようと思い連れて来た訳ですよ。それに、ちょっといいですか?お耳を拝借。」

 

そう言うと、いのりさんも俺に耳を向けてきたのでもう一つの理由をこっそりと説明すると、いのりさんはひかげちゃんを見て同情の眼差しを向けると

 

「・・・なるほどね・・・ねえ、ひかげちゃん。ケーキは私がご馳走してあげるわ。だから一緒に行きましょ?」

 

いのりさんがひかげちゃんにそう声をかけると、ひかげちゃんは驚いた顔をしていたがおずおずと

 

「いいの?いのりおねえちゃん。」

 

いのりさんにそう訪ねるといのりさんも笑顔で

 

「もちろん!おなか一杯食べなさいね?」

 

そう言うとひかげちゃんは満面の笑みを浮かべて

 

「ありがとう、いのりおねえちゃん。」

 

そう言っていのりさんと手をつないで、一緒に俺たちのクラスへと戻っていったのだった。

 

やがて俺達のクラスに辿り着くと俺は2人に

 

「ちょっと待っててくださいね。先に中へ入ります。」

 

そう言って俺は中に入っていき、かがみの所へ行って

 

「かがみ、ちょっと頼みがあるんだが。」

 

そうかがみに言うと俺の声に気付いたかがみは俺の方を見て

 

「あら、慶一くん、交代まではまだ時間あるわよね?どうしたの?それに頼みって?」

 

首を傾げつつそう聞いてくるかがみに俺は

 

「うん、実はな・・・・・・と言う訳でな。2人を頼みたいんだが、いいかな?」

 

事情を説明するとかがみは複雑そうな表情で

 

「姉さんと、その子ね・・・?わかったわ。面倒みとくから心配しないで。」

 

了承してくれたかがみに俺は

 

「すまないな。もう少ししたら戻ってくるからひかげちゃんには改めてお姉さんからの伝言を帰る際に伝えておいてくれ。それじゃ俺は一端出るから、また後でな。」

 

そう伝え、かがみが頷いてくれたのを確認して俺は再び教室を後にする。

 

その際に2人には事情を説明して俺はこなたのクラスへと向かったのだった。

 

が、そこで何やら怪しい人影を見つけたので俺はその人影をよーく観察してみると、カメラを隠し持っているそうじろうさんがそこにいたのだった。

 

俺は軽いため息をつきつつもそうじろうさんに声をかけた。

 

「こんにちは、そうじろうさん。何してるんですか?こんな所で」

 

俺の言葉に驚きながらそうじろうさんが

 

「う、うわっ!お、驚いた。なんだ、森村君じゃないか。しばらくだね。いやあ、実は娘が文化祭の出し物でコスプレ喫茶をやっていると聞いてね。これは是非その姿をカメラに収めねばと思ってねえ。」

 

何となく予想してた答えだったが流石に予想通りすぎる答えに軽いため息をつきつつも

 

「事情はわかりましたが、確か撮影は禁止だったはずですよ?残念ですが・・・」

 

その事をそうじろうさんに伝えるとショックだったのか何やら落ち込むそうじろうさんだったが気を取り直すと

 

「ううむ、ならば写真を取れないのならこの目に娘の晴れ姿を焼き付けるのみ!!」

 

と気合を入れて店の中に入っていくそうじろうさんをやれやれというジェスチャーをしながら見送る俺だったが、とりあえず俺も店の中へと入っていくのだった。

 

「お帰りなさいませご主人様。」

 

という声と共に迎えられた俺は、適当な席について注文をしようとメイドさんを呼ぶと、みゆきが俺のところにやってきた。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?ご主人様。」

 

というみゆきにとりあえず注文をした後俺は小声で

 

『みゆき、桜藤祭が終わった後会う事はできるか?』

 

そう訪ねるとみゆきは少し考え込む仕草をしていたが

 

『片付けの終わった教室でなら会えると思います。一応携帯に連絡してください。』

 

そのみゆきの返事に俺は頷きで答えると、みゆきはオーダーを持って奥へと戻っていった。

 

そして、注文の品を食べながら店内を見回してみると、父親への応対を嫌な顔をしながらやっているこなたの姿を見つけて俺は苦笑していた。

 

そろそろ時間が来たので俺は店から出て、自分達のクラスへと戻ると、すぐさま着替えを終えて俺は残りの時間接客業をがんばるのだった。

 

そしてついに今年の桜藤祭も終了の時を迎える事となった。

 

体育館にて閉会式を行い、俺達は各々のクラスに戻って今回の売上勝負の結果を見ることにした。

 

2-D side

 

「みんな、お疲れ様。この3日間はかなり売上も出たわ。これもみんなの協力のおかげよ?それと残ったケーキ等は持ち帰ってもいいそうだから好きなようにね。」

 

チームリーダーのかがみの挨拶による締めでひとまずの解散と相成ったのだった。

 

だが、俺達はこなた達のクラスの結果を聞くのもあって、教室に残っていた。

 

「みんなおつかれさん。結構忙しかったから売上は期待できるみたいだな。後はこなた達の結果待ちだな。」

「向こうも結構入っていたもんね・・・侮れなかったわ・・・」

「何にしてもどうなるかが楽しみだよなー。」

「何時の間にかに勝ち負けにこだわっちゃたわよね。今となってはどちらが勝っても負けてもどうでもいいかなあ・・・」

「まあ、あやのの言うとおりかもな。俺達は精一杯やったんだし、結果がどうあれ文句はないさ。」

「ふふ。まあ、それもそうね。でも今年は楽しかったな。」

「私も楽しかった。久々に充実した文化祭だった気がするぜ。」

「そうね。私もそう思うわ。後1年あるけれど、最後の桜藤祭も悔いなくやりたいわよね。」

「今度はみんなで、かな・・・」

 

最後に俺が呟いた言葉の意味に気付く者がいなかったのは、皆疲れていたというのもあったのだと思う。

 

そうこうしてやり取りしてるうちに、こなた達が俺のクラスにやってきたのだった。

 

2-B side

 

「みなさん、お疲れ様でした。皆さんのご協力のおかげで売上もかなりいい感じになったようです。片付けの方は後日となりますので今日は皆さんお体を休めてください。それでは解散です。」

 

みゆきさんの挨拶と共に私達以外のクラスの面々はそれぞれに疲れた表情をしながら帰っていった。

 

そして残った私達は

 

「いやー、終わったねー。以外にも結構受けてたから驚きだったね。」

「最初はどうなるかと思ったよ~。でも、成功してよかったね。こなちゃん、ゆきちゃん。」

「そうですね。私も結構楽しめたと思います。この服も気に入りましたし。」

「おお!?それじゃみゆきさん、今度は別の服でコスプレしてよー。みゆきさんなら何着ても似合うと思うからさー。」

「そ、そうですね。考えておきます。」

「ねえ、こなちゃん。私も可愛いのがあれば着てみたいな~。」

「ほほう?つかさもついにコスプレに目覚めたのかな?よろしい。いくつかみつくろってしんぜようではないか。」

「ほんと?ありがとう、こなちゃん。」

「ふふふ。それはともかく、この結果を持って慶一さんのクラスへと行きましょう。皆さんきっと待っていらっしゃるかと思いますから。」

「おっと、そうだね。すっかり忘れてたよ。それじゃつかさ、みゆきさん、行こうかー。」

「うん、行こう、こなちゃん、ゆきちゃん。」

「では、参りましょう。」

 

そう言って私達は慶一君のクラスへと向かうのだった。

 

慶一side

 

こなた達の持ってきた結果とうちの結果を照らしあわせて見ると、なんと、メイド喫茶の勝利となった。しかもかなりの差をつけられていた事に俺達は驚きを隠せなかったのだが、実際に数字が出てしまっている以上は素直に敗北を認めるしかなかった。

 

「まさかの結果だな・・・うちも大分客来てたと思ったんだがな。」

「・・・納得いかないわね・・・」

「ちびっこのとこ結構凄かったんだな・・・なんか悔しいゼ・・・」

「いい勝負してると思ったけど・・・確かにちょっと悔しいかもしれないわね・・・」

「ふふふ。どうだい?私達の実力を持ってすればこれくらいは軽いって事だよ!」

「でも、ちょっとびっくりかな~?」

「私もこれは意外でしたね・・・コスプレ喫茶、侮れませんね。」

「まあ、何にしても、3日間お疲れ様だ。軽くみんなで打ち上げでもしようぜ?ケーキまだ残ってるからな。」

 

最後の俺の言葉に皆も頷いて軽い打ち上げをする俺達だった。

 

そして最後の戸締りを済ませた後、みゆきから連絡が入ったので俺は電話に出ると

 

「もしもし、みゆきか。今どこにいるんだ?」

「慶一さん、私は今屋上に来ています。慶一さんも来れますか?」

「屋上か、わかった。すぐ行くからそこにいてくれ。」

「分かりました。お待ちしています。」

「ああ、それじゃな。」

 

そう言って電話のやり取りを終えて俺は屋上へと向かった。

 

屋上に出るとそこには一人ただずむみゆきの姿があったので俺は

 

「お待たせ、みゆき。ところで、みんなからはもう受け取ったのか?」

 

俺は気になっていた事をみゆきに尋ねてみるとみゆきは笑顔で俺に

 

「はい。まさかみなさんからお誕生日のプレゼントをいただけるとは思いませんでした。すごく嬉しかったです。」

 

そう言ってくれたのを見て俺も、自分の鞄の中からみゆきへのプレゼントを取り出すと、みゆきに手渡して

 

「これは俺からだ。悪いな、みゆき。丁度文化祭ともお前の誕生日が重なったから誕生パーティもしてやれなかったからな。せめて日にちは過ぎてしまったが、プレゼントだけでも渡したかったからな。」

 

そう言う俺からプレゼントを受け取ったみゆきは嬉しそうな顔をしながら

 

「ありがとうございます。お誕生日の事にも気を使っていただいて嬉しいです。これ、開けてみてもいいでしょうか?」

 

というみゆきの言葉に俺は頷いて

 

「ああ。お前に合うかもと思って買ってみたけど、気に入ってくれればいいけどな。」

 

そう返事をするとみゆきはプレゼントの袋を開いて中身を確認する。

 

そこには涙のような形をした石の中に星の模様が入ったイヤリングが入っていた。

 

「これは・・・いいんですか?こんな高そうな物をいただいてしまって・・・」

 

驚きの表情でそう言ってくるみゆきに俺は

 

「そのために買った物だからな。ちょっとつけてみてくれよ。」

 

そう言うとみゆきは少し顔を赤くしつつもイヤリングを身に付けて俺に見せてくれた。

 

「どう・・・でしょうか?」

 

イヤリングをつけ、おずおずと俺に聞いてくるみゆきに

 

「うん。イメージ通りかな。よく似合ってるよ。」

 

そう感想を言うとみゆきは顔をますます赤くして

 

「あ、ありがとうございます。これ、大事にさせてもらいますね?」

 

顔は赤かったが笑顔でそう言ってくれたので俺も照れつつ

 

「気に入ってくれてよかったよ。また来年もひょっとしたらまた文化祭でつぶれちゃうかもしれないけどさ、それでもまたこうやってお祝いするよ。みゆきさえよければね。」

 

そう言うとみゆきは嬉しそうな顔で

 

「ありがとうございます、慶一さん。慶一さん、今年の文化祭はとても楽しかったです。出来る事なら来年はこなたさんやつかささん達だけではなく、慶一さんやかがみさん、日下部さん、峰岸さんと共に一緒の事をやれたらいいなあと思っています。」

 

しみじみとそう言うみゆきに俺は

 

「そうだな。俺もそう考えているよ。みゆき、あの時お前とした約束覚えてるか?」

 

そうみゆきに聞くと、みゆきは頷いて

 

「はい。私達が一緒にいられるように努力しよう、って言った事ですよね?」

 

その答えに俺は頷いて

 

「そうだ。そして、俺はそのためにできる努力を偶然もあったけど、一つやったよ。」

 

その言葉に驚きの表情を見せつつみゆきは

 

「え?そ、それは一体どういう事ですか?」

 

困惑するみゆきに俺は笑いながら

 

「あの日学校に不審者が侵入し、撃退した次の日に俺は校長に呼び出されてな。セキュリティ関連に穴があった事を公表される事を恐れた校長は俺に口止めをしてきた。だから俺はその時にある条件を飲んでもらう事でその口止めを受け入れると言ったのさ。そしてそれは・・・・・・というわけさ。」

 

俺の言った言葉に喜びの表情を浮かべたみゆきは

 

「そうだったんですか・・・それじゃ来年は・・・」

 

そのみゆきの言葉に笑顔で頷く俺に、みゆきもにっこりと笑顔を向けてくれたのだった。

 

今日、俺達2年生での文化祭は終わりを告げた。

 

それぞれに充実した時間を過ごせた俺達は、今日までの事も思い出に紡ぐ事が出来たと思う。

 

そして、来年はもっともっと楽しい思い出を作ることができるだろう、と俺は心の中で考えていた。

 

その時に向かって俺達はさらに騒がしく、楽しい日々を送って行きたいと願うのだった。

 


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