らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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思い出を紡ぐ旋律、第6話~桜藤祭2日目、また一つ消える罪、前編~

桜藤祭も開催となり、俺達とこなた達は、お互いの喫茶店の売上勝負と何時の間にかなってしまったのだが、これもまた思い出の一幕だと思って楽しもうと心に決めて、俺は残り2日の日程を過ごすのだった。

 

今日からは一般客の来場もあるので、より一層クラスの手伝いは忙しくなりそうだった。

 

そして、この日、ちょっとした事件が起きる、その気配に気付くものはいなかった。

 

いつものように開店準備を手伝った俺は、今日は午前中が抜け番だったので、かがみ達に店を任せてまだ見回っていない展示物や出し物を見に行く為に教室を後にした。

 

しばらく1人で見回っていたのだが、俺の後ろから

 

「あ、先輩。どうしたんですか?こんな所で。1人でいるなんて珍しいですね。」

「他のみんなとはぐれでもしたのかしら?迷子の先輩。」

 

そう声をかけてくる2人に俺は向き直り

 

「あー、今は俺の抜け番なんだよ。だから1人だったんだがな。それとやまと、迷子はないんじゃないか?いくらなんでも自分の通う学校でそうそう迷子にはならないよ。」

 

事情を説明しつつ、やまとの皮肉に苦笑しながら答える俺だったが、こうとやまとは俺に

 

「そういう事だったんですね。先輩、昨日の会えたら一緒にまわろうって約束、早速実行しましょうよ。」

「そうね。丁度いいわよね。こうと2人だけだったし泉先輩達にも会えないから折角の機会だし一緒に行きましょ?」

 

そう言って来たので俺も頷いて

 

「ああ、俺が言い出したことでもあったっけな。それじゃまわってみるとするか。」

 

そう俺が言うと、2人は俺を真中に左右に並ぶ配置になり

 

「それじゃ出発しましょう。」

「ええ、時間までよろしくね?先輩。」

「そうだな、時間も限られてるから早速動くか。」

 

3人して頷きあいながら早速展示物や出し物、出店等を回って歩き出した。

 

「あ、先輩。あそこ面白そうですよ?」

「お?あれは腕相撲に挑戦ってやつか?変わった出し物だよな。」

「先輩、挑戦してみるの?」

 

やまとの言葉に俺は少し考え込んでいたが、何だか面白そうだったので

 

「よし、やってみるか。いくぞ?2人とも。」

 

そう言い、2人を伴って腕相撲に挑戦すべく、俺はそのクラスへと入って行き、受け付けの人に

 

「あのー。これに挑戦してみたいんですが。」

 

と告げると、受付の人は「1名様ご案内ー」と言って俺達を奥へと通してくれた。

 

そこには、数人のいかにも力持ちという感じの運動部系の生徒がいて、その生徒の側で待機していた子が俺にルールの説明をしてくれたのだった。

 

「えー、ルールを説明します。腕相撲に挑戦される方は左から順に5人の力自慢の運動部系の生徒と対戦していただき、勝った人数の場所に応じて景品を差し上げます。見事最後まで勝ち残ればあれに見える豪華景品のプレゼントとなりますので頑張ってください。」

 

そう言って豪華景品の置いてあるほうに掌を向ける生徒の先を見ると、そこには38型液晶テレビが置いてあった。

 

俺はそれをちらりと見た後、審判兼、司会進行役の生徒に

 

「ちなみにこれまであれに手が届いた人っているのか?」

 

そう訪ねると、その生徒は不敵な笑みを浮かべて

 

「ふふふ。残念ながらまだいませんねー。何しろ自慢の精鋭ですからね。せいぜいいけた人でも3人目止まりってとこですからねえ。」

 

その言葉に密かに闘志を燃やす俺だったが、こうとやまともあの生徒の物言いにはカチンときたようで

 

「先輩、5人抜きいっちゃいましょうよ?なんか頭来たし。」

「こう!あんまりたきつけないの!!先輩、無理はしないでよ?」

 

その2人の言葉に俺は頷いて

 

「まあ、やれるだけやってみるさ。それじゃ一人目よろしく。」

 

そう言うと、1人めの生徒がテーブルに着き、俺と腕を組み、静かにスタートを待つ。

 

「それでは一回戦目、レディ!ゴー!!」

 

という掛け声と同時に力を込める一人目の生徒に俺は、涼しい顔でそれを受け止めて、そしておもむろに捻りと力を加えて生徒の手の甲を机に張り付ける。

 

「それまで!森村君、一人抜き!」

 

俺の勝利宣言と共に俺に祝福の声をかける2人

 

「やった。先輩流石に余裕でしたね。」

「まあ、まだ一人目だしね。想定の範囲内よ。」

 

俺は2人に

 

「はは、ありがとな2人とも。それじゃ次行って見るか。」

 

俺のその宣言と同時に2人目の生徒がテーブルに着き、俺と腕を組んでスタートの合図を待つ。

 

審判は俺たちの両拳に触れて

 

「では、2回戦、レディー!ゴー!!」

 

という合図と同時に今度は俺から動いた。

 

一気に相手の力が乗る前に手首を捻り、相手の手の甲を机に叩きつける。

 

「それまで!森村君、2人抜き!」

 

2人目の生徒は手を振りながら元の位置へと戻って行く。

 

そして司会者の言っていた3人目の所まで来た。

 

「ここまでは順当に勝ってこられたみたいですが、次は甘くありませんよ?それでは3人目、準備を。」

 

司会者の声に答えてのそりと3人目がテーブルに着く。

 

それを見たこうたちは不安の声を上げていた。

 

「うわ、がっしりしてる腕・・・先輩、大丈夫かな・・・」

「流石にここからは甘くないって事ね?先輩!がんばって!!」

 

俺はやまとの声援に力強く頷いて答えると、3人目の生徒と腕を組み、スタートを待った。

 

そして今まで誰も抜けていない3回戦が始まる。

 

「いきますよ?レディー!ゴー!!」

 

今度は同時に力を込めて相手の力に対抗するが、今度はそう簡単にはびくともしないようだった。

 

互いに力を振り絞り、膠着が続く。

 

何時の間にかギャラリーが集まり始め、この勝負の行方を見ていたのだった。

 

そして俺と相対している3人目が俺に

 

「ふん、さっさと負けて楽になっちまえよ。お前は中々やるみたいだが、この程度では俺の後を勝ち進む事は到底できないからな。」

 

そう挑発してきたのだった。

 

俺はそんな3人目の言葉に不敵に笑うと

 

「ふうん?ならちょっとだけ本気、出して・・・いきますか・・・ねっと!!」

 

そう言い終わると同時に俺は、隠していた力を少しだけ解放し出すと、3人目の腕が徐々に押され始めたのだった。

 

その様子にざわめくギャラリー達。

 

慌てた3人目が俺の腕を押し返そうとするが、すでに返すには無理な位置まで押さえ込まれており、そこに俺の最後の一捻りを加えて勝負がついた。

 

「うおっ!?ばかな・・・」

 

それを少しほうけた顔で見ていた司会者が俺の勝利を確認すると

 

「そ、それまで!森村君、3人抜き!!」

 

と言うと同時に湧き上がるギャラリーだったが、そこに俺の知っている声が聞こえていたのを聞き逃さなかった俺は、3人に声をかけていたのだった。

 

「よう、ゆたか、みなみ、ひより。おまえらも桜藤祭に来てたんだな。ちょっと待ってろよ?後2人捻って終わらせるからな。」

 

俺の声に3人は前の方に来て

 

「先輩達、お久しぶりです。何だか騒がしい所あるなあと思ってみなみちゃん達と来て見たら先輩がいたんでびっくりしました。途中からですが見てましたよ?先輩、残りの2試合も頑張ってください。」

「・・・お久しぶりです、先輩。私達も応援してますから・・・頑張ってください・・・」

「先輩、しばらくっス。なんだか面白い展開になってますねー。あと2戦、じっくり拝ませてもらうっスよ?」

 

俺はその3人に

 

「おう。じっくりと見ていってくれな。それじゃ司会者さん、4人目、よろしく。」

 

俺の余裕発言にいらつきを見せる司会者と、明らかに俺に敵意を持った4人目だったが、司会者も本来の仕事をしなければと思ったようで

 

「え、えー。それでは気を取り直しまして、一体誰がこれを予測したでありましょうか!今まで超えられなかった3人目を超える初めての人間が現れました!ですが、ここから先は未知の領域!さて、この先へ進む事ができるのでしょうか!?それでは4人目、スタンバイを!」

 

闘志を燃やしながら席に着く4人目を見据えながら俺は、腕を組み開始を待つ。

 

緊張感が支配し、静寂に包まれる会場。

 

そして「それでは始めます。レディー!ゴー!!」

 

掛け声と同時に力を込めようとするが、今度は相手のほうが一瞬早く、俺は一気に劣勢になる。

 

そんな俺を見ながら余裕の笑みを向けつつ

 

「3人目を抜くとは見事だったけど、結局はこうなる運命だったな。お前はよくやったよ。このまま楽になっちまいな!!」

 

さらに力を込めようとする4人目の腕、迫る机。

 

誰もが俺の負けを確信し、見ていられなくなったものは目をつぶる。

 

だが、一向にテーブルに拳が叩きつけられる音が出なかった。

 

目をつぶった者がおそるおそる目を開けたとき、そこには信じられない光景があった。

 

「どうしたよ?俺を楽にしてくれるんじゃなかったのか?それともこれで限界なのかな?お前の力は」

 

机に触れる寸前の腕を押し戻し、逆に4人目を追い込んでいる俺の姿がそこにあった。

 

苦悶の表情を見せる4人目に俺はさらに信じられない事を言ってのける。

 

「おいおい、頼むぜ?俺はこれでも半分程度の力しか出してないんだ。もう少し楽しませてくれよな?あれだけの口叩いたんだからさ。」

 

その台詞と状況に唖然となる観客と司会者、そしてそれを厳しい目で見つめる5人目。

 

その状況に飽きた俺は、4人目の腕を机に叩き付けて勝負を決めたのだった。

 

司会者は信じられない物を見る目でこの勝負を見つめていたが、勝負がついたことに気付くと

 

「そ、それまで!森村君、4人抜き!!」

 

そう告げると同時にわっと歓声があがる。

 

それを見ていたこうたちも体を興奮で振るわせながら

 

「す、凄い、凄いです。先輩!思わず鳥肌立ちました!」

「何だか信じられない物を見ている気分ね・・・でもここまで来たら最後まで頑張って!!」

「すごいすごい!先輩すごい!かっこいいです!」

「・・・先輩の底力ってどれほどなのか・・・想像つきません・・・」

「ネタだ!これはいいネタだ!!先輩、最後も魅せて下さい!!」

 

そう声援を送っていたのだった。

 

興奮覚めやらぬ状況だったがいよいよ最後の5人目の登場となった。

 

「誰が・・・一体誰が、彼が5人目を引きずり出す事を想定したでしょうか!?私でさえ、それを想像できなかった!!しかし、もはや彼の快進撃もここまででしょう。何故ならこの5人目は我がクラスでも最強の力の持ち主でもあるからです!!その5人目にどこまで食い下がれるか、見せてもらいましょう!!それではどうぞ!!」

 

司会の紹介でついに出てきた最後の1人。

 

厳しい目のまま俺の前に座る最後の1人は、今までの連中とはまた違ったオーラを発していた。

 

緊張感の走る最中、2人はその腕を合わせると静かに最後の戦いの開始を待つのだった。

 

「泣いても笑ってもこれが最後の戦いです!それでは!レディ!ゴー!!」

 

その合図と同時に、一気に勝負を決めにいこうとして力を加える俺の腕を5人目はどっしりと受け止めながら

 

「ほう?言うだけの事はあるな、なかなかの力だ。だが俺も伊達に重量上げをやってるわけじゃないぞ?そおら!」

 

そう言いながらその腕に力を込めて、俺の腕をたたみに来る5人目の腕力に俺は少し焦りを感じていた。

 

「っく!さ、流石にきついな・・・重量上げか、確かに半端ない力だぜ・・・けどなっ!!」

 

とりあえず俺は、4人目を倒したときのように半分の力で受け止めていたが、さらに3割の力を乗せて押し返す。

 

押し返されるはずがないと思い、俺を少し侮っていた5人目の表情に焦りが見えたのを、俺は見逃さなかった。

 

「どうした?徐々に押されてるぜ?あんたの力はたいしたもんだけど、俺はまだ余力って奴を残してんだよっ!!」

 

そう言いながら俺はさらに腕をたたみにかかるが、ぎりぎりまで来てまたも動きが止まる俺達だった。

 

「くくく。楽しい事してくれるぜ、けど、これで勝ったと思うなよ!?そおらっ!!」

 

そう言いながらさらに俺の腕を押し返し始めたが、俺は押し返されかけた腕にさらに力を込める。

 

「やるねえ・・・けど、これで終わりにしようぜ!?うおぉっ!!」

 

俺はついに100%全開の力を腕に込めた。

 

そしてその腕をさらに押し返し徐々に机に近づけていく。

 

ギャラリーもこの攻防戦に興奮のるつぼとなっていた。

 

「先輩!いっちゃえー!!」

「もう少しよ!?先輩!!」

「がんばれー!先輩がんばれー!」

「・・・決めてください!・・・先輩!」

「おおお、凄いっス!盛りあがるっス!先輩ファイト!!」

 

というこう達を筆頭に森村コールが室内に響き渡る。

 

そしてついにこの戦いに決着がついた。

 

重苦しい音と共に5人目の手の甲が机に張り付くと、その時点で勝負が決まった。

 

その様子を呆然としながら見ていた司会者だったが、”はっ”と我に帰ると渋々ながら俺の勝利宣告をするのだった。

 

「そ、それまで・・・森村君脅威の5人抜きです・・・おめでとう・・・」

 

おそらくこの景品を取られる事なんて予想だにしていなかったのだろう、この出し物のクラスの面々は一様に暗い顔になっていた。

 

俺の勝利が告げられると同時に湧き上がる歓声、そして祝福の言葉、俺はそれを聞きながら心地よい疲れに身を任せていたのだった。

 

「やった!勝った!さすが先輩だー。景品の液晶テレビゲットですね!」

「まさか、5人本当に抜くなんてね・・・凄かったわ、先輩。」

「景品ってテレビだったんですか!?凄いです、先輩!」

「・・・素晴らしい勝負でした・・・おめでとうございます、先輩・・・」

「すごくいいネタ、ありがとうございます!それ以上に先輩の凄さって奴を改めて見た気分っスよ。」

「はは。皆、応援ありがとな。」

 

皆にお礼の言葉を返すと、皆は笑って頷いてくれた。

 

興奮も覚めやらぬままに俺は優勝商品の授与を受け、景品は家に宅配便で送ってもらう事になり、こう達とともに腕相撲の出し物のクラスを後にした。

 

「さてと、大分時間がたっちゃったな。そろそろ俺も自分のクラスの出し物に戻らないとな。」

「あ、もうそんな時間なんですか?それじゃ私達もこれから先輩のクラスにお邪魔してもいいですか?」

「そうね。先輩のクラスに遊びに行くつもりだったんだし、ケーキも楽しみだしね。先輩が戻るついでに一緒に行くわ。」

「構わないぞ?なら一緒に行くか。」

「先輩のクラスって何をやってるんですか?」

「うちはケーキと美味しい紅茶が自慢の喫茶店さ。みなみやひよりもよかったら来いよ。」

「・・・私達も・・・行ってもいいんですか・・・?」

「先輩の折角のお誘いですしお邪魔させてもらうっスよ?」

「是非とも遊びに来てくれよ。それじゃ行こう。」

 

最後にそう言って自分のクラスに向かって歩き出そうとした時、前の曲がり角付近で妙な殺気を感じた俺は、そこに行く前に念のため歩みを止めると同時に俺の目の前を何者かが飛びつく格好で曲がり角から飛び出し、そのままの勢いで壁に激突し、「むぎゅ」という情けない声を出してその場に倒れこんでいる人を見ていた。

 

俺はそれを半ば呆然と見ていたのだが、それが俺の知り合いだとわかると盛大にため息をついて

 

「・・・まつりさん、何やってるんですか・・・前にも言いましたよね?飛びつくのはやめてくださいって。」

 

俺がそう言うとまつりさんは激突して打って赤くした鼻をさすりながら

 

「うう、酷いよ森村君。避けるなんてさ。」

 

俺はそんなまつりさんに苦笑しながら

 

「今回の場合避けたと言うよりは事前回避というのが正しいですがね。」

 

やれやれというジェスチャーをしながら俺はまつりさんにそう言うと

 

「むうう・・・どうしてわかったのさ・・・」

 

何だか納得がいかない、という風で聞いてくるまつりさんに

 

「いや、あれだけ殺気出してたらある程度使える人になら察知されますって」

 

少し呆れつつ説明する俺に、なおも抗議の目を向けているまつりさんだったが、俺は挨拶をしとこうと思い

 

「何はともあれ、桜藤祭にようこそ、まつりさん。これから俺たちのクラスに戻りますんでまつりさんもうちのクラスの売上貢献よろしくです。」

 

そう挨拶するとまつりさんもようやく笑顔になって

 

「ケーキの店って話よね?かがみからも聞いてるよ?そういう事なら行ってみようかな。」

 

そう言ってくるまつりさんだったが、呆然とこのやり取りを見ていたこう達が俺に

 

「あ、あの先輩?そちらの人は一体どなたですか?」

「先輩の知り合い、なの?」

「よかったら紹介してください、先輩。」

「・・・どことなく誰かに似ている気がしますね・・・」

「そう言えば何となく・・・どこでかで見たような・・・」

 

そう言って来たので、俺はまつりさんを皆に紹介する事にしたのだった。

 

「みんな、この人は、柊まつりさん。かがみとつかさのお姉さんだよ。かがみの家にはもう1人お姉さんがいて、その人はいのりさんと言うんだ。」

 

俺の紹介にまつりさんは皆にぺこりと頭を下げて

 

「柊まつりです。うちのかがみやつかさがお世話になってるみたいね。2人に代わってお礼を言うわ。よろしくね。森村君、この子達、君の事先輩って呼んでたみたいだけど、この子達は君の後輩さんなの?」

 

そう聞いてくるまつりさんに俺は頷いて

 

「はい。右から順に八坂こう、永森やまと。その2人は中学時代からの後輩でその横の小早川ゆたか、岩崎みなみ、田村ひよりはうちの学校を受験しようとしている仮の後輩って感じですね。」

「八坂こうです。かがみ先輩やつかさ先輩にもお世話になっています。」

「永森やまとよ?私もお2人には大分お世話になったわ。」

「小早川ゆたかです。先輩達と知り合ったのは海へ行ったときです。」

「・・・岩崎みなみです・・・私もゆたかと同じで知り合ったのは海へ行ったときでした。」

「田村ひよりっス。私はその前に秋葉腹でお会いしていますね。何にしてもよろしくお願いするっス」

 

そうしてまつりさんとみんなは握手を交わし、連れ立って俺のクラスへと向かった。

 

クラスに戻ると、丁度かがみたちも休憩を終えて戻って来たところで、俺たちと鉢合わせる事となった。

 

「お帰り、慶一くん・・・って、またずいぶんぞろぞろと引き連れて来たわね・・・」

「お?小早川達もいるじゃん?よく来たなー。うちのクラスでゆっくりしていってくれよな。」

「あら?もう1人はひょっとしてまつりさん?いらっしゃいませ、ゆっくりしていってください。」

 

かがみの疲れたような顔とお客が増えた事で喜ぶ2人に苦笑しつつ

 

「まあ、戻る途中で会ったのとクラスの出し物見回ってるときに合流したのと、だけどな。とりあえず俺は先に中に入って準備済ませてくるからかがみ達はお客さんを中に案内してやってくれ。」

 

そう言って俺は、先に店内へと入って行くと、ゆたかたちはかがみ達に

 

「かがみ先輩お久しぶりです。今日は受験勉強の息抜きも兼ねてみなみちゃん達と遊びに来させてもらってます。」

「・・・お久しぶりです・・・今日は陵桜の文化祭の体験もしたかったので、お邪魔しにきました・・・。」

「先輩方、お久しぶりっス。私も今日の文化祭は見ておきたかったので小早川さん達と遊びにきました。」

「かがみ先輩。昨日の約束どおりお邪魔しにきましたよ。」

「先輩、ケーキセット楽しみだわ。売上貢献もさせてもらうわね。」

「かがみー?美味しいケーキ期待してるわよー?それじゃ早速案内よろしくね。」

 

そう挨拶してくる皆を引き連れて店内へと案内するかがみたちだった。

 

「いらっしゃいませ、6名様ですね?こちらの席へどうぞ。」

 

かがみは、ゆたかたちを6人が座れるテーブルへと案内した後、自分達も準備をするために控え室へ戻っていき、その入れ替えで準備を終えた俺が注文を取りにテーブルへと向かった。

 

「改めて、いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ?」

 

ウエイターの格好に着替えた俺が、こう達のテーブルへ行きうやうやしく頭を下げながら挨拶すると

 

「おおー!!先輩似合ってるー!!これは意外でした!!」

「こうってば興奮しすぎ。けど・・・中々いい感じね、そういう格好も意外と合うものね。」

「わあー・・・何だか新鮮ー。ねえ?みなみちゃん。」

「・・・うん。ちょっと驚きました・・・似合ってます、先輩・・・。」

「コスプレキター!!って違う、自重しろ、私ー!!」

「へー。さすが森村君、いいねー。」

 

それぞれの反応を苦笑しつつ受け止めながら

 

「こう、とりあえず落ち着け。やまと、ゆたか、みなみありがとな。ひより、視線集めてるぞ?お前・・・まつりさん、なんか照れますね。」

 

俺の照れ笑いにニヤニヤとした視線を送るこうとひよりにため息をつきつつも、みんなの注文を受けて俺はオーダーを届けに向かったのだった。

 

そして、こう達に注文の品を届けにテーブルのところへ行ったとき、また新たなお客が教室に入ってきたので、俺は

 

「いらっしゃいませ、何名様・・・ですか・・・?」

 

そう言ったのだが、最後の方は俺は上手く言葉にならなかった。

 

そこに現れた客は、かつての中学時代の同級生の集団だったからだ。

 

そして今また、俺の過去が再び俺の前に姿を見せたのだった。

 


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