らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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蘇る旋律~親友の復活そして、慶一の嘆き 前編~

昨日のサイフへの大打撃は俺にとっても苦しい物となった。

 

このままでは本当に次のバイト代が入る頃までには確実に食費は尽きると考えた俺は、今日の放課後に泣く泣く実家に頭を下げに行こうと思っていたのだった。

 

そして、今日の放課後になり、俺は明日が休みという事もあり、今日は実家に行くついでに泊まって来ようと思っていたのでかがみ達に

 

「かがみ。今日は俺実家に行って来るつもりだから、今日はたぶん家に戻らないと思う。明日休みだし、顔出しがてら一晩泊まってくるつもりからだからさ。」

 

そう声をかけるとかがみは俺の方を向いて

 

「あれ?そうだったんだ、わかったわ。でも明日は居るのよね?」

 

かがみのその言葉に俺は少し考えると

 

「帰りは夕方頃になるかもしれないな。でも早めに帰れるようなら連絡入れるよ。その時に何か用事があるようなら言ってくれればいいと思うから。」

 

かがみにそう伝えるとかがみは頷いて

 

「わかったわ。それじゃせいぜい親孝行でもしてきなさいよ?普段あんななんだからさ。」

 

俺は苦笑しながら

 

「まあ、親父とはどうかは知らないが、お袋には孝行してくるかな?」

 

かがみも俺の言葉に苦笑すると

 

「まったく、あんたの所は相変わらずよね。」

 

やれやれというジェスチャーをしながら呆れるかがみ。

 

「慶一、また実家へ行って来るんか?それじゃ猫達は私らで様子みといてやろうか?」

「そうね。慶ちゃん、猫達は私達にまかせて、安心していってらっしゃい。」

 

そう2人が言ってくれたので、俺はその言葉に甘える事にしたのだった。

 

「悪いな、2人とも。それじゃモモとミィの事任せたよ?向こうで美味い物でもお土産に買ってくるよ。と、言っても食べ飽きてる物しかないかもだが・・・」

 

その言葉にかがみも笑いながら

 

「別にいいわよ、そんな気を使わなくてもさ。それにあんたは私達に奢ってるんだし、大分財政難になってんじゃないの?だから無理しなくていいわよ。」

 

そのかがみの言葉に俺は苦笑するしかなかった。

 

そして俺は、そんなかがみ達と別れて、とりあえず学校を出るために昇降口に向かい靴を履き替えている時、俺の後ろから声をかけてくる2人に気付いた。

 

「先輩、今帰りですか?」

「こんな所で会うなんて珍しいわね。」

 

俺はその声の主に振り向き挨拶を返す。

 

「よう、こう、やまと。お前らも帰る所だったのか?」

 

俺の言葉に2人とも頷いて

 

「はい。とりあえず文化祭の準備の事があったんですが、資材が届かないので今日明日は出来そうにないのでとりあえず今日はおしまい、という事になりまして。」

「今回は資材の発注等に手間取りがでたせいもあるわね。まあ、今回のこれは、こうだけをを責められる事じゃないけれど・・・。」

 

その2人の答えに俺は、連携において生じたズレが影響しているようだな、と思いながら

 

「そうか、色々大変だな。とりあえず、今日は一緒に帰らないか?俺も行くとこあるしな。」

 

俺の言う、”行く所”というのが気になったのかこうは俺に

 

「行く所、ですか?一体どこへ行くんです?」

 

こうの質問に俺は笑いながら

 

「すぐにわかると思うぞ?それじゃ帰るとするか。」

 

そう2人に言って俺は学校を後にすると、俺の”行く所”に疑問をもちながらも

 

「待ってくださいよ先輩ー!」

「こう、早くしなさいよ。待って、先輩。」

 

そう言いながら俺についてきた。

 

俺達はバスに乗り込み、駅へとむかう。

 

そしていつもならばお互いに違うホームに行くはずだったが、今日は俺はこう達の居るホームに向かった。

 

その事に驚いた2人は

 

「せ、先輩?どうしたんです?先輩はいつもはこっちのホームじゃなかったはずですよね?」

「それとも、先輩がさっき言っていた”行く所”に関係しているの?」

 

そう聞いてきたので、俺はいたずらっぽく笑いながら

 

「あはは。まあ、そんなたいそうな事じゃないさ。俺の行く所は実家だからな。」

 

そう言うと2人は脱力しながら

 

「ちょ、先輩。意味深に言うからどこか特別な所なのかと思ったじゃないですかー。」

「まったく、人が悪いわね・・・」

 

そんな2人に俺も笑いながら

 

「はは、すまんすまん。まあ、そういう事さ。ちょっと用事でな。」

 

そう言うとこうは苦笑しながら

 

「またお父さんとケンカですか?」

 

と聞いてきたので俺は適当に

 

「まあ、それは選択肢の一つかな?」

 

そう答えると、やまとは呆れ顔で

 

「ほんと、相変わらずなのね、先輩の所は・・・」

 

そう言っていたのだった。

 

やがて電車が来たので、俺達は電車に乗り込み、実家の最寄駅に着くまでの間、俺達は雑談を交わす。

 

「そういえば中学校以来ですね、こうやって3人一緒に帰るのって。」

「そういえばそうだな・・・悪いな、2人とも・・・俺が実の両親と住んでいた家に入るって事になったから一緒に帰ったりも出来なくなっちゃったもんな・・・」

「・・・それも先輩が自分で選んだ事なのだから仕方がないわよ・・・」

「すまない、やまと。そう言って貰えると少しは気が楽になる。」

「まあ、それでも私達はちゃんと繋がっているんですから問題なしですよねー。」

「この縁は切れるもんじゃないなあ、とは思ってるがな。」

「そうね。そして先輩が受け入れてくれたから私も陵桜に通えているし、先輩やこうともこんな風に話せるのよね。」

「それもまた俺達の絆なのかもな。そういや2人とも覚えてるか?中学の頃よく俺達が利用したあの店。」

「あ、ひょっとしてあの喫茶店レゾンですか?」

「そうそう、その店だ。今もまだ残ってるんだよな?」

「ええ。今も私達もたまに利用してるから、今でも健在よ?でも、それがどうしたの?」

「あの一件が片付いた時俺が言ってた事を覚えてるか?」

「えーっと・・・確か世話になった礼に何か奢る、って言ってましたっけ。」

「そういえば先輩はそんな事を言ってたわよね?ひょっとして?」

「そういう事だ。なつかしのあの店でお前らに奢ろうかと思ってな。実家に行こうと思ったときに思い出したんだ。」

「いいですねー。あのチーズケーキがまた食べたいですね。」

「まあ、先輩のお財布事情を考慮してあげるわ。あそこで食べたパフェをお願いしようかしら?」

「ははは。よし、ならそういう事で、だな。今日は直で実家に行かなきゃならないから明日の休みでいいか?」

「かまいませんよー?」

「先輩、後で実家の方にお邪魔させてもらってもいいかしら?」

「ああ、それなら問題ないぞ?こうもよかったら来い。お袋がおそらく夕食をご馳走してくれるだろうからな。」

「ほんとですか?なら帰ったらやまとと一緒にお伺いしますね。」

「わかった。それじゃ来る時に連絡いれてくれ。」

「わかりました。」「わかったわ。」

 

そんな風に話してるうちに最寄駅へとついた俺は、後でこうとやまとが家に来る事再度確認した後、実家へと戻っていったのだった。

 

「ただいまー。お袋、帰ってきたよ。親父はくたばったか?」

 

そう声をかけるとお袋はいつものようにニコニコしながら

 

「お帰り、慶一。お父さんは相変わらずよ?とりあえず上がりなさい。」

 

そうお袋に促されて俺は、上がってとりあえず元自分の部屋に荷物を置いて着替えた後、下に行ってお袋に

 

「お袋、電話でも話したと思うんだけど実はさ・・・・・・と言う事で悪いんだけどお願いできるかな。」

 

俺がそう言うとおふくろは微笑みながら頷いて

 

「事情はわかったわ。とりあえずこれを足しにしなさい。」

 

そう言って俺にバイト代が入るまでの生活費を渡してくれた。

 

俺はお袋に礼を言うと、こうとやまとが家に来ることをお袋に伝えた後、俺は瞬のところに電話をかけた。

 

数回のコールの後、瞬が電話に出た。

 

「もしもし、瞬か?俺だ、慶一だ。」

「お?慶一か、珍しいな、お前が電話かけてくるなんてな。」

「・・・一応、お前に礼を言っておきたくてな。今回の俺の一件では世話になったようだからな。」

「ん?ということは、こなたちゃんお前に話しちゃったって事か。」

「まあな。それとさ、お前との誓いも果たせたからな。その事も報告しとこうと思ってな。」

「・・・そうか・・・じゃあ、お前らが海へ旅行に行ったあの日にって事なんだな?」

「ああ。俺に勇気をくれたみんなには感謝してる。そして、過去と向き合うきっかけをくれたお前にもな。」

「別に俺は大した事しちゃいないさ。乗り越える事ができたのはお前の強さだよ。」

「・・・まあ、とにかくだ。明日なんだが、お前予定空いてるか?」

「ん?なんだ?藪から棒に。」

「今回の事に対する感謝としては割に合わないかもしれないがお前に俺達の思い出の店で何か奢りたいと思ったからな。それで、どうだ?」

「思い出の店?・・・・・・レゾンの事か。そうだな、久しぶりに行ってみるのも悪くないか。」

「なら明日の1時頃に店で待ち合わせよう。」

「それはいいが他に誰か来るのか?喫茶店で野郎2人なんて色気も何もあったもんじゃないぞ?」

「それに関してはこうとやまとに声をかけてあるよ。久々の同窓会気分でいいんじゃないか?」

「へえ?なるほど、それもいいな。わかった、1時にレゾンだな?行かせて貰うよ。」

「ああ、待ってる。・・・・・・瞬、俺は過去を乗り越え、そして今回の事件を乗り越えてようやく自分を許してやれそうだ・・・もう一度・・・お前を親友と呼ばせてもらってもいいだろうか?」

「・・・ばーか・・・お前はあの頃からずっと俺の親友だ。それは今だって変わっちゃいないぞ?それを忘れんな!」

「・・・ありがとう・・・親友・・・。」

 

そして電話を切った俺は喜びの涙を流していた。

 

まだ乗り越えるべき事はある、それはわかってる。

 

けれど、俺は過去を乗り越え、今回の一件を乗り越えてようやく自分を許す事ができた。

 

そして、もういちどあいつを親友と呼べる日がきたことがこんなにも俺の心を歓喜で満たしてくれるとは思ってもみなかった。

 

俺は、あいつとずっと親友でいたい、いたかったんだと改めて思ったのだった。

 

そして、その後、こうとやまとが家にやってきてこの家での久々の賑やかな夕食が始まった。

 

俺は2人に夕食の後、先程の瞬とのやり取りを伝えた。

 

2人も俺と瞬との事を気にしていたからというのもあったが、それ以上に俺自身が嬉しかったのだと思う。

 

数年ぶりに復活した親友、そうあいつの事を呼べることが俺にはこの上なく嬉しかった。

 

2人もまた、俺の報告を聞いて嬉しそうな笑顔をしながら

 

「よかったですね、先輩。」

「一つ先輩の助けになれた事、嬉しく思うわ。これからも先輩の助けになりたい。」

 

そう言ってくれる2人に俺も、笑顔で頷いて応えたのだった。

 

そして、その日はこうとやまとと遅くまで話し込んでしまったので、俺は当然の如く2人を家に送っていった。

 

「すいません先輩。わざわざ送ってもらっちゃって。」

「ちょっと遅くなりすぎたわね・・・ごめんなさい、先輩。」

 

俺は申し訳なさそうにそう言う2人に笑いながら

 

「いいさ。俺も楽しかったからな。それよりも明日の1時レゾンでな。遅れるなよ?特にこう!」

「どうして私を強調するんですかー!酷いですよ、先輩。」

「まあ、普段の行いが原因と思う事ね。」

「やまとまで・・・わかりましたよ、ちゃんと行きますから。」

「ならよし!お?そろそろだな。それじゃ2人ともここで、じゃあな。」

「はい、ここまでありがとうございました先輩。」

「先輩も気をつけて帰りなさいよ?それじゃまた明日。」

「ああ、楽しみにしてるぞ。」

 

そういうやり取りをして別れると、俺は家へと急いだ。

 

家に着き、風呂に入って疲れを癒して明日のために早めに休んだ。

 

だが、この時俺は気付いていなかった。

 

次の日に待っている昨日以上の地獄があることを。

 

そして次の日の早朝、俺はいつもどおりの早起きをして軽く散歩をするために外に出る。

 

家の前で軽く柔軟体操をやっている時、ふいに後ろから声をかけられたのだった。

 

「・・・慶一先輩?・・・どうしてここにいるんですか・・・?」

 

その声に振り向くと、そこに立っていたのはみなみとゆたか、ひよりの3人だった。

 

「ん?みなみ?おはよう、それにゆたかにひよりも?お前ら一体なんで?」

 

俺の間の抜けた台詞にゆたかとひよりも

 

「おはようございます。慶一先輩。先輩こそどうしてここにいるんですか?」

「おはようございます先輩。こんな所でお会いするとは思ってなかったっスよ?」

 

そう挨拶してきたので、2人に俺は苦笑しながら

 

「どうして俺がここにいるのかというとだな、ここは俺の実家だから、というのが答えだな。お前らこそ3人揃って何してるんだよ?」

 

俺の問いかけに3人は笑いながら

 

「ここが先輩の実家だったんですね?初めて知りました。実は私と田村さんとみなみちゃんは時々こうやって受験勉強をするために集まってるんです。今日もたまたまそういう日だったんです。」

「はー・・・かなり大きな道場じゃないですか・・・ええ、小早川さんの言うとおりです。煮詰まったりした時はこうやって集まってお互いに頑張ってるんです。」

「・・・そして、この時間に居たのは昨晩から家に泊まってもらって・・・早朝のチェリーの散歩に来ていたから・・・です。先輩こそ・・・どうして実家に戻っていたんですか・・・?」

 

俺はみなみの説明に納得して

 

「なるほど、そういう事だったのか。まあ、ちょっと野暮用でね。今日にはまた埼玉の家に戻るつもりなのさ。」

 

俺の説明に納得したようだったが、みなみはふいに、少し心配そうな表情を俺に向けると

 

「・・・先輩、みゆきさんから聞きました・・・かなり大変だったみたいですね・・・。もう大丈夫なんですか・・・?」

 

そう言って来たので俺はその言葉に驚きながら

 

「みなみ、お前も知っているのか?俺が陥っていた状況の事を・・・」

 

そう訪ねるとみなみはコクリと頷いて

 

「・・・はい。凄く心配していました・・・。先輩が居なくなってしまったら・・・私の目標の一つが消えてしまう、そう考えたら・・・不安で・・・。」

 

そのみなみの言葉に続くようにゆたかとひよりも同じように不安げな表情を見せて

 

「私も、みなみちゃんから聞いた時には信じられませんでした。そして凄く悲しくなったんです。でももう大丈夫なんですよね?」

「正直、驚きましたっス。そんな事って漫画とかの世界の事と思ってましたっスからね。でも、今の先輩の顔を見たときに確信しました。大丈夫なんだと。」

 

そう言いつつも、最後にはほっとしたような表情を見せるひより。

 

俺はそんな2人の頭を軽くポンと叩きながら

 

「心配、かけちゃったみたいだな。ごめんな?けど、もう心配ない。きっちり決着つけてきたからな。」

 

そういうと3人とも”ほー”っと軽いため息をついた後緊張が解けたようだった。

 

「そうだ、3人とも今日の1時頃は空いてるか?」

 

俺の言葉に3人は顔を見合わせて相談していたが、やがてみなみが俺に

 

「・・・はい、大丈夫だと思います。それで・・・何かあるんですか・・・?」

 

みなみの言葉に頷いて

 

「ああ。今回の件で他の皆にも大分心配と迷惑かけちゃってたからな。そのお詫びで何か奢ろうと思ってな。それで今回俺の中学時代使っていたなじみの店に行こうと思ってさ。その時によかったらお前らもどうだ?と思ってね。」

 

みなみに説明すると、みなみは少し遠慮がちに

 

「・・・でも、私は・・・今回は何もしてません・・・ですから少し気が引けます・・・」

 

そんなみなみに俺は微笑みながら

 

「いいんだ。俺がそうしたいって思ってるんだから、そこらへんは気にしなくていいよ。心配させたんだからそのくらいはさせてくれ。」

 

俺がそう言うと、みなみは俯いて何事か考え込んでいたようだったが、やがて顔を上げると

 

「・・・なら、先輩のご好意に甘えさせてもらいます・・・待ち合わせはどうしますか・・・?」

 

俺の申し出を受けてくれたみなみに笑顔で頷くと

 

「12:30頃に俺の実家へ来てくれ。そこからみんなでその店へいこう。」

 

そう伝えるとみなみはコクリと頷いて

 

「・・・わかりました・・・12:30頃にこちらに伺いますね・・・それでは私達はチェリーの散歩の続きがあるのでこれで・・・。」

 

俺に軽くお辞儀をすると、ゆたか達と一緒にチェリーの散歩の再開をした。

 

その際にゆたかとひよりが俺に

 

「先輩。気を使ってくれてありがとうございます。みなみちゃんと一緒に行きますね?」

「先輩、ご馳走になります。3人でこちらに行きますから、よろしくっス。」

 

その2人の言葉に俺も頷いて、去っていく3人に手を振って見送ったのだった。

 

3人を見送った後、俺は自分の当初の目的だった散歩を済ませ、時間まで家でのんびりしていた。

 

時間が丁度11:00を回る頃、家に来客が来たので俺は応対にでたのだが、俺はそこで信じられないものを見たのだった。

 

「やふー、慶一君。遊びにきたよー」

 

皆を代表して挨拶してくるこなた。

 

そして、その後ろにはかがみ達ご一行が俺に向かって手を振っていたのだった。

 

俺はまたしても嫌な予感にとらわれつつも、とりあえず皆を出迎えたのだった。

 


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