真実の告白により、今の慶一の状況と心境を把握した旋律達は、慶一の力になる方法を探すべく奮闘を開始していた。
そしてさらに2日の時間が過ぎ、ついに調査結果がわかる時が来た。
俺には少なからずまだ味方がいてくれる、信じてくれる人がいてくれる。
その思いを力に変えて残りの日々を耐えてきた。
そしてようやく全てに決着をつける時が来たのだった。
こなたside
慶一君の依頼している調査よりも1日早く私の方の調査結果が出た。
私は部屋でネトゲをしつつその一方で調査結果の事で頭を一杯にしながら部屋でのんびりと過ごしていたが、そこについに牧村君からの連絡が入ったのだった。
私は慌てて電話に出て、牧村君とのやりとりを始める。
「もしもし?こなたちゃんかい?お待ちかねの調査結果が出たよ。」
「本当!?それでどうだったの?」
「うん。彼女は成神との接点は持ってない。そして知り合いがいると言っていた事に関してだけど、その知り合いは確かに成神の事は知っていたが、連絡を取り合ったりする仲ではないと言う事だね。」
「と、いうと?」
「その知り合いも成神の評判、そして慶一が成神を倒したという噂を知っていて、その事を話していた時、その場に織部由美子がいたんだそうだ。そして、その時に成神が慶一に恨みを持っている事も聞いていたらしい。だが、その知り合いも成神を良く思っていないし連絡を取り合おうとも思っていない、むしろ係わりたくないとさえ思っているらしい。ということだ。」
「ふーむ・・・つまり織部さんの言ってた事はすべて・・・」
「そう、慶一を繋ぎ止めたいが為の出任せ、真っ赤な嘘って事だね。」
「・・・なるほどね・・・それじゃ、その事を突きつけたとして織部さんには慶一君の心配してる私達への実害というものもありえない、という話なんだね?」
「そうなるね。この事に関してよーく裏づけ調査を行ったから間違いないよ。」
「そっか、わかったよ。牧村君ありがとう。今度御礼に何か奢るからさー。」
「ははは。楽しみにしてるよ、けどこなたちゃん。今回はこうだったからいいけど、それでもまだ成神章の脅威が消えたわけじゃない。やつの影が消えない限りはまだ本当には安心できないかもしれない事を心にとどめておいてね。」
「・・・うん、わかったよ。これからも情報関連はよろしくね。」
「ああ。任せてくれ。慶一や君達の為にも協力は惜しまないつもりだからまた何かあれば連絡してくれ。」
「うん、わかった。それじゃ今日はこれでー。」
「慶一を頼むよ?こなたちゃん。」
「まかせたまへー。この問題、私達で解決してみせるよ!」
そこまで話して私達のやり取りは終わったのだった。
事情の裏付けも取れたので、私はみゆきさんにこの結果の報告をするため電話を入れた。
「もしもし?みゆきさん?」
「泉さんですか?今日はどんな御用でしょう?」
「実はさっきこっちの調査結果がでたんだよ。」
「!?それは本当ですか?それでどうだったんですか?」
「うん、それがね・・・・・・というわけなんだよ。」
「そうですか・・・織部さんの嘘、だったと言う事なんですね?ならば私達は慶一さんを疑う理由ももはやなくなりましたね。」
「私達はね・・・けど、まだかがみ達の誤解が解けてないんだよね。だからこっちは私がなんとかするよ。」
「わかりました。では私の方も八坂さん達にこの事を伝えます。泉さん、ようやく慶一さんを取り戻せそうですね。」
「うん。でも最後まで気は抜けないよ?そして・・・全てが終わったら笑って慶一君を迎えてあげよう。」
「はい。必ず・・・それではこれで。泉さん、また皆で笑い会う日々を楽しみにしています。」
「うん、私も。それじゃ私はかがみ達と連絡とるからこれで。」
「はい、それでは。」
みゆきさんとのやり取りを終えた後、私は早速かがみ達への連絡を取る事にしたのだった。
かがみside
慶一くんがあの日、織部さんと付き合っているという衝撃の告白を受けてから数日、私は未だあの時の事で頭を悩ませていた。
慶一くんから貰ったプレゼントのペンダントを見るたび楽しかった思い出がよみがえり、私はその度にため息をつく日々が続いていた。
学校に行っても慶一くんの顔をまともに見れず、ふいに慶一くんと目が合ってもすぐさま目をそらしていたのだった。
明日もまた慶一くんとあってもそうなってしまうんだろうな、と今日も憂鬱な気分のまま部屋で天井を見上げながらぼんやりとしていた。
しばらくそうしていると私の携帯に着信が入る。
私は携帯を手に取り電話の主を確認した。
電話の主はこなただったので私は電話に出る。
「もしもし、こなた?」
「やふー、かがみん。元気してるかな?」
「・・・元気なわけないじゃない・・・あんな事があったのに・・・こなたは平気なの?あんな・・・あんな事・・・」
「あはは・・・その様子だと大分参ってるみたいだね・・・でもそんなかがみに朗報だよ。とりあえず全ての説明はみさきち達を集めてからするから、かがみはつかさを連れて神社まで出てきてくれる?」
「朗報・・・ね、まあ、どんな話かは分からないけどとりあえず行くわ。それじゃ、また後でね。」
「うん。それじゃ着いたらまた連絡するよ。」
そう言ってこなたとのやり取りを終えると、私はつかさの部屋につかさを呼びに行くのだった。
つかさの部屋の前に立ってノックをすると中から「どうぞ~?」と言う声が聞こえたので私はつかさに「入るわよ?」と一声告げてから部屋に入った。
「あれ?おねえちゃん。どうしたの?」
ふいの私の来訪に不思議そうな顔で聞いてくるつかさに私は、こなたからの電話の事を言う。
「さっきこなたから電話があってなにやら私達に話したいことがあるみたいなのよ。つかさも連れてきてくれ、との事だから悪いけど一緒に来てくれる?」
こなたからの電話の事を伝えると、つかさは少し首を傾げていたが
「こなちゃんからか・・・何の用なのかな?とりあえずわかったよ。それで、わたしはどうすればいい?」
そう聞き返してくるつかさに私は
「こっちに着いたらこなたから連絡入る事になってるわ。連絡が来たら神社へ出て行くという感じよ?」
その説明につかさも頷いて
「わかったよ、おねえちゃん。こなちゃんから電話が来たら教えて?」
と言うつかさに私も頷いて
「わかったわ。それじゃ後でね。」
と言う私の返事につかさも頷きを返してくれた。
そして、私が部屋に戻ってしばらくして、こなたから神社に着いたという電話を受けて私とつかさは神社へと出向いていった。
神社に行くと、そこにはこなた以外に日下部と峰岸の姿もあった。
「あ、かがみん、こっちこっちー。」
私を見つけたこなたが私をそう呼んだので私はいつもの乗りで
「かがみんいうな!!ったく・・・それで、こなた。皆も集めて一体なんだっていうの?」
そうこなたに質問すると日下部と峰岸も
「そうだぜ?ちびっ子。私らをここに呼んで一体何しようってんだ?」
「泉ちゃん、何か話したいことあるって言ってたわよね?もしかしてその事なのかな?」
それぞれにそう言い、更につかさも何が何だか分からないという風で
「こなちゃん。何の話なの?」
と、こなたに私達を呼び出した理由を尋ねる。
そのつかさの言葉にこなたは1つ頷くと、満を持してと言う感じで私達に話を始めた。
「うん、皆に集まってもらったのは他でもない。慶一君の事に関してだよ?」
こなたから出たその言葉に私達は一斉に不快の色を示して
「・・・今更話す事なんてなにもないわ・・・行きましょ?つかさ・・・」
「・・・何かと思えばそんなくだらねー事かよ・・・わりいな・・・もうその事に関しては話したい事なんてねえぜ?」
「今更もう話しても仕方のない事じゃない?それに、話す気にもなれないわ・・・私も帰るわね?」
「・・・もう帰ってこない人の事を話してもどうにもならないんじゃないかな・・・?こなちゃん・・・」
と、それぞれにこなたから出た件に関してはもはや誰もが諦めの態度だった。
その私達の態度を見つめるこなたはふっと真剣な顔になって
「・・・話の内容が、今回の慶一君の一件の真実だったとしても?」
こなたの真剣な言葉に、話を切り上げて帰ろうとする私達も思わず足を止めてこなたの方に向き直り
「・・・どういう事?真実って、ねえ?こなた。」
「どうやら真剣みてえだな・・・わかったよ。話くらいは聞いてやるぜ?」
「泉ちゃんは何かを知っているのね?わかったわ。話を聞かせて?」
「わたしも聞きたい!こなちゃん、話して?」
それぞれの私達の言葉にこなたは満足げに頷くと、私達を集めた事情を話し始めた。
「それじゃ話して進ぜよう。慶一君が織部さんに告白されて付き合うことになったあの時、慶一君はその告白を断れない事態になっていたんだよ。私が前にみんなに話した事が合ったよね?慶一君の過去に係わる因縁の人物”成神章”の事を。」
私達はこなたの言うその人物の事を教えられていたので、こなたのその説明に頷いてこなたの次の説明を待つ。
「織部さんはその時慶一君に、織部さんの知り合いには彼を知る人物がいる。そして、その人物に話して連絡を取る事ができる。彼に連絡されたら私達がどうなるかは保証しない、だからそうされたくなければ私と付き合え、っていう脅迫をされたんだよ。」
こなたのその言葉に私達全員が驚愕の表情に変わるのがわかった。
「そして、その時彼女に対して決定的な情報も持ち合わせていなかった慶一君は、万が一を考えて私達に危害が及ぶ事のないように彼女に従うという苦渋の選択を取った。」
こなたの言葉にショックを受けつつも私達は黙ってこなたの次の言葉を待った。
「さらに彼女は私達にもこの事を話すことがないように、話せば私達がどうなるかは保証しないと言って慶一君の口を封じた。だからかがみ達が慶一君に問い詰めた時も、つかさたちが説得を試みた時も慶一君は本当の事をいえなかったんだよ。言えば私達に実害が及ぶかもしれない事を、慶一君は恐れたから・・・私達を大事に思ってくれたから・・・例え私達と一緒に居られなくなったとしても、私達全員から拒絶されたとしても・・・それでも慶一君はそれを1人で抱え込む事を決めたんだ・・・。自分の為じゃない・・・私達の為に・・・私達を守るためだけに、ね・・・」
最後の言葉を言い終えるこなたは、気付いたら涙を流していた。
そして、私達もその慶一君の苦しみと悲しみを思った時、全員が涙を流していたのだった。
「そんな・・・そんな事だったなんて・・・慶一くん、どんな思いで・・・それを私は・・・慶一くんごめん・・・わかってあげられなくてごめんね・・・」
「くそ・・・なんだよ・・・やっぱし慶一は慶一だったんじゃねーか・・・今はあいつ自身はここにはいねーけどあいつの心は私達の側にあったんじゃねーか・・・」
「慶ちゃん・・・やっぱりあなたは信じられる人だった・・・ごめんなさい・・・あなたを疑って・・・」
「けいちゃんかわいそう・・・でも、わたしたちを忘れていなかったんだね・・・けいちゃん・・・しんじてたよ・・・?」
そんな風に慶一くんを疑った事をひとしきり涙を流し後悔して、少し落ち着いてきた頃こなたは
「これが慶一君の真実。そして慶一君も黙っては彼女の言いなりにはなってなかった。慶一君自身も即座に彼女の身辺に関する情報収集を始めてたんだよ。そして私もみゆきさんが慶一君から真実を聞いてきてくれたおかげでこの一件に対する裏付け調査を行う事ができたんだよ。そしてその結果を今日私も知ったんだ。慶一君に対する誤解を解きたかったから、今かがみ達に教えに来たんだよ。」
こなたのその言葉に私達は
「そうだったんだ・・・ありがとうこなた。私達はこのまま慶一くんを失ってしまう所だったわ。それにしても・・・許せないわ・・・織部由美子・・・慶一くんの弱みに付け込むなんて・・・」
「ああ。最低な女だ・・・慶一を傷つけた罪と私らを惑わせた罪はきっちりと償ってもらわねーとな・・・明日あいつに文句でも言ってやっかな・・・?」
「ねえ泉ちゃん。私達が慶ちゃんに出来る事ってないの?私は慶ちゃんの力になりたい」
「わたしも。こなちゃん、わたしたちに何か出来ないのかな?」
私達のその言葉にこなたは腕組みをして少し考え込んでいたが、やがて顔をあげて
「みんな。悔しい気持ち、織部さんを許せない気持ちはわかるよ?けど今の私達は慶一君とみゆきさんが知る情報を知らない事になってる。だから直接慶一君に対して力になる事はできないね、けど・・・」
こなたは自分の腕についている慶一くんから貰ったブレスレットを触りながら
「慶一君から貰ったこれをつけつづけて、私達は慶一君を信じている事をアピールして慶一君の力に変えてあげる。それが私達の出来る事かな。そして織部さんを許せない気持ちはあっても、その事を騒ぎ立てれば慶一君の不利になりかねないから、決着がつくまでは黙って見守る。無論、慶一君を信じてね。」
こなたの言葉にみんな考え込んでいたが私達は
「・・・わかったわ。今はそれが慶一くんの助けになるのなら・・・私はこなたの言うとおりにする。そして、心で慶一くんと一緒に織部さんと戦う。」
「悔しいけど、それしか出来る事がねーなら私もやってやる。慶一と共に」
「私もやるわ。そして、慶ちゃんにまた私達の前に戻って来てもらいたいから・・・」
「わたしも、がんばるよ。心の中で一杯けいちゃんを応援する!」
私達の決意を聞いたこなたは満足そうに頷いてそして、私達は笑いあったのだった。
(頑張ってね、慶一くん・・・そしてもう一度・・・私達の前に戻ってきて・・・私達の心はあんたと共にあるからね・・・)
そう心の中で私は慶一くんに呼びかけたのだった。
慶一side
こなた達のやりとりがあったその翌日、氷室から調査結果が出たという報告の電話があった。
そしてその結果は彼女は成神とは連絡をとりあえる訳じゃない、そして知り合いもまた成神を嫌悪しているがゆえに連絡をとりあうなどしたくないと思っているのとの事だった。
それを確認した俺は、今日中に彼女との仲にけりをつける事を心に決めて、学校に行く為に家をでた。
そして、学校についていつものように少しだけ憂鬱な気分で教室に入った俺の目に飛び込んできたのは、俺があげたプレゼントを再び身に付けてそして、俺に向かって何かを決意するような目を向けてくる3人の顔だった。
俺はその3人の突然の行為に驚きつつも、心の中に力がみなぎってくるのを感じていたのだった。
そして放課後、俺は織部由美子を屋上へと呼び出した。
しばらく待っていると、織部由美子は屋上へと現れた。
「私に改まって話ってなんなの?慶一君。」
俺は織部さんを見据えながら、今こそ全てに決着をつける戦いを始めるのだった。
「話って言うのはね。今日をもって君との事はなかった事にしてもらいたい、そういう事さ。」
その俺の言葉に目を見開き驚いている織部さんだったが、睨みつけるような目になって
「どういう事?私は言ったはずよね?私の言う事を拒めばどうなるかを・・・」
彼女のその言葉に俺は軽いため息を一つついて
「ああ、そうすれば君は成神章に連絡を取る、そしてみんなの安全は保証できない、そういう事だったね?」
その俺の答えに織部さんはニヤリと笑いながら
「わかってるじゃない・・・ならどうして今更そういう事を言うのかしら?」
俺はそんな織部さんを睨みつけながら
「君が成神と連絡を取り合える人間じゃない事、そしてその知り合いもそれをしたくない事がわかったからだよ。」
その言葉に織部さんの顔色が明らかに青くなっていくのがわかった。
俺はそれでも構わず、更に言葉を続ける
「君は俺と付き合いたいが為、そして俺を無理やり繋ぎ止めたいが為にそんな嘘をついたんだろう?おっと、否定をしたとしても無駄だよ。すでに調べはついてるからね。」
織部さんの顔が明らかに悔しそうに歪み、涙をこぼし始めるのが見て取れた。
そして織部さんは俺にぽつりぽつりと語り始めた。
「・・・・・・そうよ・・・あの日あなたに告白を断られた日、私はどうしてもあなたを手にいれたかった。あなたを本当に好きだったから・・・あなたは覚えていないかもしれないけれど、私はあなたと同じ中学の出身なのよ?そしてその時にあなたと成神の事を知り合いが話しているのを盗み聞きして知ったの。」
彼女は言葉を一端切り、一呼吸おいて再び話し始める
「その時から私は、あなたに少なからず興味を持っていた。そして、あの体育際で見せたあの走りを見て私はあなたの事が好きになったのよ。だから・・・告白を断られた時とっさにその時の事を思い出してあなたに脅しをかけた・・・そうすればあなたは私の側にいてくれる、そう思ったから・・・」
そこまで話し終えた時、突然彼女の後ろから声をかけてくる人がいた。
「だから・・・慶一さんにそんな嘘をついたのですね?慶一さんを自分の物にしておきたかったから・・・」
そう言いながら現れた人物は、みゆきだった。
織部さんは突然現れたみゆきに驚いて
「どうして、高良さんが・・・?」
彼女の言葉に俺はみゆきを見ながら
「みゆきも俺の過去に触れた事のある一人だからさ。彼女も成神章の事は知っていた。だから彼女には真実を話せたんだ。」
俺のその言葉にふっと俯いて彼女は肩を震わせながら更に言葉を続ける
「そう、だったのね・・・いいわ・・・話を続けるわね?その後は私はあなたに監視をつけるような真似もした。あなたの喜びそうな事も色々やってみた。けれど、あなたはそんな私に心を開いてくれる事はなかった。ずっとずっと辛い顔ばかりして・・・私はあなたの笑っている顔が好きだった。だから今はこんなでもいつかはあなたに笑顔になってもらいたい、そう思ってた。だけど、ようやくわかったわ・・・あなたにあの笑顔をさせられるのは私じゃないって・・・私には・・・絶対に出来ないんだって・・・それが、とても悔しかった・・・」
俺とみゆきは彼女の思いを黙って聞いていた。
更に彼女は言葉を続ける
「それでも諦めたくなかった・・・いつか必ず彼のあの笑顔を見たいと思ってた。でも、それももう終わりね・・・私は結局、慶一君に好きにはなってもらえなかったのだから・・・だから、もういいわ・・・慶一君、あなたを開放してあげる。」
彼女の言葉を黙って聞いていた俺は彼女に
「・・・嬉しかったよ、俺なんかに好意を持ってくれた事はさ・・・だからこそ君を憎む気にはなれない。もう少し俺たち、違った出会い方をしてたら恋人どうしにもなれてたのかもしれないよな・・・でも・・・今はこれが現実なんだ。いつか君に、俺よりももっといい人が見つかる事を祈っているよ。」
俺は彼女に最後にそう伝えてみゆきと頷きあい、屋上を後にしたのだった。
彼女が泣き崩れ大声で泣いている声を背中に受けながら、俺はようやくこの問題に決着をつけられた事を感じた。
教室に戻りながら俺はみゆきに
「・・・これでようやく終わったな・・・ありがとう、みゆき。お前にも心配かけたな。」
その俺の言葉を聞きながらみゆきは目に涙を溜めて俺に抱きついてきて
「よかった・・・本当によかったです・・・お疲れ様・・・慶一さん・・・本当に・・・」
俺はみゆきを受け止めながら黙って頷いてみゆきの背中をぽんぽんと優しく叩いていた。
そして教室に戻ってきた俺だったが教室の前の廊下で集まっているこなた達がいたのだった。
こなた達は俺に気付くと俺の側にやってきて
「「「「「「「おかえりなさい」」」」」」」
笑顔でそう言ってくれたのだった。
それを見た瞬間俺は今までの事を思い出し、涙を流してみんなのその言葉に頷いていたのだった。
かくして揺らぎ、離れそうになりかけた旋律達の絆はここに再び一つになった。
だが、それと同時に俺はみんなとの絆の強さはそう簡単にはびくともしないほどに強いものであるということもわかった。
今後も辛い出来事が起こるかもしれない、けれど皆とならそれすら乗り越える事も難しくないのかもしれないと改めて思う俺だった。
同時に、俺にはまだ成神章の影が未だついて回っている事も再度自覚する事となった。
いつかこの過去に向き合う時が来るだろう、と言う事を感じ、俺は心の中で改めて覚悟を決めたのだった。