らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

57 / 157
揺らぐ旋律第4話~真実の告白、動き出す旋律達~

みゆきside

 

泉さんと共に慶一さんが今の状況になったいきさつを推測し、慶一さんを助ける為になんとか慶一さんと接触する事を試みようとしてきましたが、そのタイミングを掴めないまま2日が経過してしまいました。

 

その間も慶一さんと織部さんは私達に見せ付けるかのように仲の良さそうな所をアピールし、その度に笑顔の失われていく慶一さんの姿を見るたびに私達は心が締め付けられるようでした。

 

そして3日目の土曜日、この日も慶一さんとうまく接触する事ができなかった私は、何かいい方法がないだろうかと頭を悩ませていました。

 

そうして悩んでいた時、不意に私の携帯が着信を告げました。

 

私は電話の主を確認するため携帯のディスプレイを見てみると、そこには知らない電話番号が表示されていました。

 

知らない人からの電話だし出なくてもいいだろう、一瞬そう頭で考えたのですが、何故か私はその電話に妙な予感めいたものを感じて慌ててその電話に出ました。

 

「もしもし?どなたでしょうか?私は高良みゆきといいますが、かけ間違えという事はありませんよね?」

 

念のため電話してきた人に確認するようにそう言うとそこから返って来た声は私のよく知る人の、大切な人の声でした。

 

「・・・よかった・・・出てくれて。俺だ、みゆき、慶一だ。しばらくだな。」

 

その声に私は慌てながら

 

「その声・・・慶一さんなんですね!?本当に・・・しばらくぶりですね・・・ですが、この電話番号は一体どうしたのですか?」

 

そう訪ねると慶一さんは少し疲れたような声で

 

「元の携帯は織部さんに監視されているんだ。だから、お前への連絡に元の携帯は使えない。だから新しい携帯を購入した。今お前が見てる番号は新しい方なのさ。」

 

という慶一さんの説明で合点がいった私は、慶一さんに電話の用件を聞いてみる事にしました。

 

「ところで慶一さん。今回は一体何の御用で私に電話を下さったのですか?」

 

その問いかけに慶一さんはしばらくの間無言でいましたが、やがて

 

「俺の今の状況をみゆきも知っているよな?そして俺はみんなを拒絶した。今の俺に何かを話す権利もないだろうという事は十分わかっている。だが、お前にだけは伝えたい事があるんだ。もしもまだ、俺の話を聞いてくれるというのなら会って話すことはできないか?」

 

私はその慶一さんの言葉を聞いてこれはチャンスだと思い

 

「わかりました。私も慶一さんとはお話したい事がありましたので。それで、どちらで待ち合わせますか?」

 

慶一さんに待ち合わせの希望を聞くと

 

「今日の夕方6時頃、場所は龍神道場で、俺はなんとか監視の目を欺いてそっちへ向かう。だからみゆきもその時間までには道場へと行っていてくれ。親父には話を通しておく、だからそっちは心配しなくていい。」

 

待ち合わせの時間と場所を伝えてきましたが、私は慶一さんから聞いた監視という言葉にうすら寒いものを覚えながらも

 

「龍神道場、ですね?わかりました。それと先程気になる言葉をおっしゃっていましたよね?監視、とか。」

 

私の問いに慶一さんは大きなため息をついて

 

「そうだ。織部さんは俺も気付かぬうちに何時の間にか俺への監視のための人間を雇っていたようなんだ。それで自宅の場所も知られてしまった。それからは織部さんは俺の家へと押しかけてくるようになったんだ。だから俺が自由に外に出るためには監視の目を欺く必要がある。そっちの方は何とかするつもりだから心配はいらない。みゆきは道場へ向かってくれ。」

 

慶一さんの現状を改めて考えるうちに私は怒りや悲しみが湧き上がってくるのを感じながらも

 

「・・・わかりました。くれぐれもお気をつけて・・・お会いできる事を祈っています。」

 

そう私が返事をすると、慶一さんもどこかほっとしたように息をつき

 

「ああ。それじゃ俺はこれから監視対策を取るからその後にそっちへ向かう。向かう際にはまたこの携帯で連絡を入れるから。」

「はい。それではまた。」

 

私もそれに短く答えて電話を終えたのでした。

 

慶一side

 

一縷の望みを託して思い切ってみゆきにかけた電話は、俺の祈りが通じたのか上手くみゆきへと繋がってくれた。

 

俺はみゆきと用件についてのやり取りを終えると、さっそく氷室に自分の監視のかく乱の策を取る為連絡を入れるのだった。

 

数回のコールの後氷室が電話に出た。

 

「もしもし、氷室か?俺だ。」

「おや?慶一君かい?折角電話してくれた所悪いけど、まだ調査はすんでないから君に結果を伝える事はできないよ?」

「いや、今回は調査結果を聞くために電話したわけじゃないんだ。それ以外に一つ頼みがある。」

「ほう?今回はどんな事だい?」

「俺と背格好や体つきの似てる人間がいたら俺の家によこして欲しいんだ。」

「君と背格好が似てる人間ね・・・でもなぜ人がいるんだい?」

「俺が成神と関係のあるかもしれない女と付き合わされてる事は知ってるよな?そいつが事もあろうに俺に動向の監視までつけてきてな・・・俺はみゆきにだけは真実を伝えたいから先程みゆきに電話して何とか連絡を取る事ができた。だが、俺がみゆきに会う為に出かけるには監視の目が邪魔になる。だから俺と背格好の似ている奴をおとりにして家を出たいと思ってな。どうだ?なんとかなりそうか?」

「なるほど、その子はそこまで君を縛り付けたいとみえる・・・分かった。とりあえず今の君の身長や体重、体型、髪型などを教えてくれるかい?それに近い人間を送るから。後はそっちで上手くやってくれればいいよ。」

「ああ、ありがとう。恩に着るよ。それじゃ送る人間が決まったら俺にそいつの名前を教えてくれ。」

「分かったよ。その折にはもう一度連絡をいれよう。それじゃ後ほど。」

「すまないな。」

 

そう言って氷室とのやり取りを終えた俺は、おとりに着せる服を選び始めたのだった。

 

程なくして氷室からおとりになる人間の名前とその人間をこちらに送った旨の連絡をくれたので、俺はそいつが来るまで自宅でじっとしていた。

 

1時間後くらいにそいつは俺の家にやってきた。

 

「こんにちはっす。氷室さんから言われてきました。森村さんっすね?おとり役、任せてください。」

「わざわざ呼びつけてすまないな。それじゃ早速俺の部屋に来てくれ、変装用の俺の服を選んでおいたからそれに着替えて欲しい。」

「わかりましたっす。それにしても・・・居ますね、監視の奴・・・女の愛情もここまで来たら異常ですよねえ・・・」

「そうかもしれないな・・・ともかく時間差で家を出よう、監視のひきつけは頼む。それを確認したら俺は裏口から出て行くから。」

「了解です。」

 

そんなやり取りの後、俺の姿をしたおとりは正面玄関から家を出ると、それを俺と勘違いした監視を上手い事別方向へと引っ張っていってくれた。

 

俺はそれを確認すると、そっと裏口から家を出る。そして、素早く自転車を準備すると、全力に近いスピードで駅に向かって自転車を飛ばした。

 

尾行がいない事を注意深く確認した後、俺は電車へと乗り込んで実家へと向かったのだった。

 

みゆきside

 

慶一さんとの電話のやり取りの後、私は慶一さんとの待ち合わせ場所と時間を再確認して出かける用意をすると頃合の時間を見計らい、家を出ました。

 

「・・・こんにちは・・・みゆきさん。大分慌てているみたいですが何かありましたか・・・?」

 

家の門の所で不意に私に声をかけられ私は驚いてそっちを見ると、そこにはチェリーちゃんを散歩させて丁度帰って来た所だったみなみちゃんが立っていました。

 

私はみなみちゃんに挨拶を返しつつ理由を話したのでした。

 

「こんにちは、みなみちゃん。これから私は慶一さんに会わなければならないんです。」

 

その私の言葉にみなみちゃんは何かを察したらしく

 

「・・・先輩、どうかしたんですか・・・?いつもならみゆきさんも先輩と会う時はそんな怖い顔をしないはずですよね・・・?」

 

みなみちゃんのその言葉に私はどうするべきか悩みましたが、とりあえずありのままを話す事にしました。

 

「実は今、慶一さんの周りで慶一さんにとってもよくない事が起きています。そのせいで慶一さんは私達と普通に会う事もままならなくなっているんです。その最中に私と会うきっかけを作ってくれました。私は慶一さんを救う為にも話を聞きにいかなければならないんです。」

 

私の言葉にみなみちゃんの表情に驚きの感情が見えました。

 

「・・・先輩、困っているんですか・・・?私も・・・私も先輩の力にはなれないでしょうか・・・?」

 

少し悲しげな表情でみなみちゃんは私に言いますが、私はそんなみなみちゃんの言葉に首を振り

 

「今は、みなみちゃんに出来る事はありません。残念ですが・・・いえ・・・一つだけありましたね・・・みなみちゃん。慶一さんの事は私と泉さんがなんとかしてみせます。みなみちゃんは・・・慶一さんの無事を祈っていてあげてください。全てが済んだら、みなみちゃんにもちゃんと説明しますから。だから今は私達を、慶一さんを信じて待っていてください。」

 

私の決意の言葉にみなみちゃんは少し考え込んでいましたが、ふっと顔を上げて私の目を見つめると

 

「・・・わかりました・・・みゆきさん。頑張ってください・・・全てが上手く行く事を・・・祈ってますから・・・」

 

みなみちゃんの言葉に力強く頷いて、私は龍神道場を目指して走り出したのでした。

 

やまとside

 

あの時から・・・先輩が織部さんと付き合っている、そして私達の前から消えようとしたのを見た時から私とこうはずっとその事を信じたくなくて落ち込んでいた。

 

こうと2人、いつもなら楽しい会話をしながら学校から帰っていたけれど、ここ最近はこうと話す事すらも辛くなっていたから一緒には帰っていたけどここ何日かはほとんど会話らしい会話をしなかった。

 

今日もまた、打ちひしがれながら家へとこうと2人で帰っていたが、私はその帰り道に思いつめた表情で走って先輩の家の方向へ行く高良先輩を見かけた。

 

私がこうに声をかけようとこうの方を向こうとした時、こうも高良先輩に気付いたようで私が声をかけるより先に私に

 

「ねえ、やまと。あれって高良先輩だよね?どうしたんだろう?あんなに慌てて。それにあの方向って確か・・・」

 

こうの指摘に私も頷きながら

 

「ええ。あの方向は慶一先輩の実家のある方向よね?・・・こう、私なんだか気になるわ。高良先輩の後を追ってみない?」

 

私の提案にこうも”にっ”といたずらっぽい笑みを浮かべると

 

「そうだね。ちょっと後つけてみようか。行こう、やまと。」

 

こうの言葉に私も頷いて私達は高良先輩に気付かれないように後を追っていった。

 

そして私達が思った通り、高良先輩は慶一先輩の実家へと辿り着き先輩の家へと入っていくのを見た私達は

 

「ねえ、やまと。どうする?高良先輩、慶一先輩の家に入っていったよ?」

「・・・そうね・・・高良先輩の行動が気にはなるけど・・・どうしよう・・・」

 

私達が2人してこの先をどうするべきか悩んでいた時、高良先輩が来た方向とは反対から今ここに居るはずのない人が走ってくるのが見えたのだった。

 

私達はそれに驚いて

 

「や、やまと、あれって慶一先輩じゃないの?」

「そんな・・・どうして先輩が・・・まさか高良先輩が慶一先輩の家に来た目的って先輩と会う為、だったの?」

 

その私の言葉にこうは困惑しつつ

 

「でも、おかしいよね?慶一先輩は織部先輩と付き合っているはず・・・私達の事を見限ったのなら、高良先輩と会う理由もないはずだよね?」

 

そう聞いてくるこうに私も頷きつつ

 

「そうね・・・あの時確かに先輩は確かに<悪いけど、もう口出しはしてこないで欲しい>と言っていたわ・・・。それなのにどうして今になって慶一先輩は高良先輩と会おうとしてるのかしら・・・?」

 

首を傾げつつそう言う私の言葉を聞きながら、こうは慶一先輩の家の方をじっと見すえつつ

 

「・・・やまと、行こうよ。こうなったら真実が知りたい。先輩の家に来た理由なんてどうとでもでっち上げて乗り込もうよ。」

 

こうのその言葉に私もこうと同じ気持ちになって

 

「ええ。いきましょう。このままじゃ納得なんてできないから、少しでも何かが得られるのなら私も行くわ。」

 

2人して頷きあって私達は先輩の家へと走り出した。

 

慶一side

 

氷室に用意してもらったおとりのおかげで俺はなんとか監視の目を欺いてみゆきの待つ実家へと向かう事が出来た。

 

多少のてこずりもあったがために時間に少し遅れた俺だったが、実家の最寄駅につくと俺はみゆきに再度連絡をとるのだった。

 

「もしもし?慶一さんですか?私は今待ち合わせの道場にいます。慶一さんはもうすぐこちらへ到着するのですか?」

「ああ。すまない、少し手間取ったおかげで待たす事になったな。俺ももう少しでつくから、みゆきはそのまま道場内で待っていてくれ。」

「わかりました。気をつけてこちらへいらしてください。待っていますから。」

「ああ、それじゃ後でな。」

「はい。それでは」

 

みゆきとのやり取りを終え、携帯をしまいながら俺は実家へと急いだ。

 

程なくして実家に辿り着くと、俺はみゆきの待つ道場へと向かった。

 

その時にもう2人の来客を知らないまま俺は道場へと上がると、そこには俺の顔をじっと見つめるみゆきが立っていたのだった。

 

「・・・みゆき、ありがとう・・・来てくれて・・・。」

 

俺はぎこちない笑顔でみゆきにそう言うと、みゆきはそんな俺を見て悲しそうな顔をしながら

 

「慶一さん・・・すっかりあの頃の笑顔が消えてしまっていますね・・・今のあなたが見せてくれた笑顔は私が見たくなかった笑顔です・・・。」

 

そんなみゆきの言葉に俺は力なく笑いながら

 

「あれから俺は・・・以前のように笑う事もできなくなっている・・・みんなを裏切った自責の念と織部さんと付き合う事の苦痛が俺から自然に笑うという行為を奪ってしまったようだ・・・。」

 

俺は目を伏せてしばらく考えこんだ後スッと目を開き

 

「みゆき、電話でも言ったと思うが、俺はお前にだけは真実を告げておきたいと思った。お前だけが唯一あの時に俺の過去に触れた人間だからだ。聞いてくれるな?みゆき。」

 

俺はみゆきにそう言うと、みゆきも黙って頷いてくれた。

 

そんなみゆきをしっかりと見据えて俺は、こなた達にも明かしていない胸の内をみゆきに話し始める。

 

みゆきside

 

慶一さんの言葉を私は黙って聞いていました。

 

私自身、慶一さんに聞きたい事もあったのですが、今は慶一さんの話を優先させるべきと考え、慶一さんの告げる真実を聞き逃さないようにその一言一言に神経を集中させる私でした。

 

やがて、慶一さんは一呼吸置いてからゆっくりと話し始めたのでした。

 

「俺は、織部さんからの交際の申し込みを断りに屋上へと出向いた。そして交際の申し込みを断った俺は屋上を後にしようとしたが、その際に彼女は俺にみゆき以外に知っているはずのない人間の名前を俺に言ってきた。みゆきも知っているだろう?”成神章”だ・・・。」

 

私は黙って頷き、そして一呼吸置いてさらに慶一さんは言葉を続けて

 

「彼女は俺が奴との因縁のある男である事を知っていた。そして、成神という男がどういう人間なのかもな。その上で彼女は俺に自分と付き合え、と迫ってきた。俺はうろたえていたのだが、さらにそこにだめ押しの言葉を乗せて来て、自分と付き合わなければ俺の仲間達が不幸になる、と脅しをかけてきた。」

 

(やはり、私達の推測どおりでしたか・・・)

 

そう心の中で思いつつ、次の慶一さんの言葉を待つ。

 

「その時の俺には彼女の出した名前、そしてその関係が真実であるかどうかの確証も持てず、かといってそれを無視する事も出来なかった俺は、仕方なく彼女の申し出を受け入れた。万が一、それを懸念した結果だ。そしてこの事を他の皆にばらせば成神と連絡をとる、そうなった時の皆の安全は保証できない、そう言ってきた。」

 

(皆さんや私を盾に取った脅迫、でしたか・・・なんて卑劣な・・・)

 

私は心の中で怒りを覚えつつも次の慶一さんの言葉に耳を傾けた。

 

「だから、かがみたちが保健室に乗り込んで来た時も、屋上でこうたちに説得されても何も言えなかった。言えばみんなに迷惑がかかる。それに知ってる者が少なければ皆にも余計な気遣いをさせずに済む。この事は俺の胸の中にだけ仕舞い込めばいい、そう考えた。俺一人が辛い思いをする事でみんなを守れるならそれでいいと思ったのさ。」

 

私は慶一さんの言葉を聞いて心の中を悲しみで一杯にしながら

 

「だから、私達に何も話さなかったのですね?私達を大切に思ってくれたから・・・」

 

私のその言葉に慶一さんは黙って頷いた。

 

その慶一さんの姿を見ながら私は、慶一さんに確認すべき事を聞く為に慶一さんに質問を投げかけたのだった。

 

「慶一さんのお話はわかりました。私から慶一さんに確認をとりたい事があります。よろしいでしょうか?」

 

私のその言葉に頷く慶一さん。

 

私はいくつかの確認事項を慶一さんになげかけて、簡単なやり取りを始めたのでした。

 

「それでは質問させてもらいますね?まず、織部さんとお付き合いする事になった事ですが、これは慶一さんの本意ではない、と言うことですね?」

「ああ、その通りだ。皆に危害が及ぶ事を恐れた俺の苦渋の決断だった。」

「わかりました。次に、ですが、慶一さんは私達を拒絶したわけではないのですね?」

「それは、俺がここに来ている事を考えてくれれば分かってくれると思う。」

「・・・次に、ですが、何故今私と接触を持とうとされたのですか?」

「俺の事情を知るお前に真実を告げたいという事と共に、聞いてもらいたかったんだと思う・・・俺の懺悔を・・・そして今の状況の打開に繋がる何かを得たかったんだと思う・・・。」

「なるほど・・・では、最後にお聞きします。今回の事に関してなにかしら慶一さんの方でこの事態を打開する為の行動はとられましたか?」

「ああ。織部さんに付き合うと言ったあの日に即座に氷室に彼女の身辺調査を依頼した。結果は後2日で出るはずだ。それまでは、俺もどうする事もできないが・・・」

「わかりました。ありがとうございます。それを聞けて安心しました。」

 

私は改めて慶一さんは今でも私達の側の人間なのだという事理解しました。

 

と同時にこれまでの慶一さんのご苦労を考えた時、私は自然に慶一さんの側に行き、気付けば涙を流しながら慶一さんを優しく抱きしめていました。

 

慶一side

 

みゆきからに俺の真実と懺悔を聞いてもらった後、みゆきからいくつかの質問を受けることとなり俺はとりあえずその全てに答えたのだった。

 

そして質疑応答を終えた後、みゆきは涙を流しながら俺の方へと近づいてきて俺を優しく抱きしめてくれた。

 

その抱擁とみゆきの体温を感じた時、俺は気付いたら滂沱のように涙を流していた。

 

「つらかったでしょう・・・苦しかったでしょう・・・あなたは、私達の為にがんばってくださいました。今私達があなたに出来ることがない事が悔しいです、悲しいです。今の私にはこうしてあなたを抱きしめる事しかできませんが、少しでも・・・少しでもいいですからあなたのその辛い心を分けてください。大丈夫です・・・きっとなんとかなりますから・・・だから・・・まだ辛い事が続くかもしれませんが、もう少しだけ頑張ってください、慶一さん・・・」

 

俺はみゆきの優しさとぬくもりに打たれながらしばらくの間涙を流しつづけていた。

 

そして気がつくと俺とみゆきを抱きしめて泣いている2人の後輩の姿が目に入ったのだった。

 

少し落ちつきを取り戻した俺とみゆきは驚きながら

 

「こ、こう、やまと、お前ら一体どこから・・・」

「八坂さん、永森さん、あなたたち、どうして・・・」

 

その俺たちの言葉にただただ涙を流している2人だった。

 

やまとside

 

先輩のお父さんから許可を貰って私達は、先輩達が行った方へとこっそりと近づいて物陰から2人の様子を伺っていた。

 

やがて、先輩達が語る驚愕の真実を耳にしてそして、高良先輩が慶一先輩を抱きしめた時、慶一先輩の目から涙が溢れ出したのを見た私達は気付いた時には私達も涙を流しながら2人に抱きついていた。

 

少し落ち着いた先輩達が私達がここに居る事に驚きを隠せないでいたが、私達はそれすらおかまいなしでしばらく先輩達に抱きついたままになっていた。

 

そして、私達も少し落ち着いた頃先輩に事情を説明したのだった。

 

慶一side

 

突然に現れたこうとやまとに驚いていた事もあったが、問題は俺たちの話を2人に聞かれた事だった。

 

俺は少し落ち着いた2人に

 

「お前ら、どうしてここに居たんだ?俺がみゆきと会う事は誰にも伝わっていないはずなんだが・・・」

 

俺が理由の説明を求めると2人はばつの悪そうな顔で

 

「実は私達が2人で家に帰ろうと歩いていたんですがその時に慶一先輩の家に走っていく高良先輩を見かけたんです。その後に慶一先輩が来るのを見かけてそれで・・・」

「あんな事があってから2人が接触するのはおかしいと感じたから私達は真実が知りたくなってここに来たのよ・・・」

 

2人の説明にみゆきも軽いため息をつきながら

 

「慶一さんとの事に頭を一杯にしていたせいで気付けなかったんですね・・・こういう時こそ慎重にならないといけないはずなのに・・・私はまだまだですね・・・」

 

と自分の不覚を反省していた。

 

2人は俺の方に向き直り真剣な顔で

 

「先輩、悪いと思いましたが話を聞かせていただきました。成神章、そいつが絡んでる事で今回こんな事になってたんですね・・・でも、よかったです。先輩は私達を見捨てたんじゃないってわかって・・・」

「もっと、先輩をよく見るべきだったわね・・・私は先輩の親友なのにその先輩の苦しみにも、私達を思う気持ちにも気付いてあげられなかった・・・ごめんなさい先輩・・・」

 

その2人の言葉に俺は嬉しく思いながらも

 

「本当はお前らには知られたくなかった。もちろんこなた達にもなんだがな・・・知れば皆に気を使わせる。俺はそれが嫌だったから今回の事も俺の胸一つに閉じ込めようとした。けど知られてしまった以上はお前らも巻き込む事になるかもしれない。すまない、こんな情けない先輩で・・・」

 

そう2人に詫びると2人は力強く首を振り

 

「そんな事はないですよ先輩。例え何があっても先輩が私達の側にいてくれるなら、私達も先輩と共に困難に立ち向かいますよ。ねえ、やまと?」

「そうよ?先輩。先輩の親友たる私達を見くびらないで欲しいわね。この程度で壊れてしまう程私達の絆は弱くないわ。そして、真実を知った今、私達は先輩の力になりたい、そう思ってるから・・・」

 

2人のその言葉に俺は再び涙を流しながら

 

「ありがとう、2人とも。お前らがそうしてくれるように、俺も絶対にお前らを守ってみせる。今回の事も乗り切って見せるからだから、俺を信じていてくれ。」

 

俺のその言葉に力強く頷いてくれる2人だった。

 

そして俺たちはここで一旦別れ、それぞれの帰路につく。

 

再び監視付きの家に戻った俺に試練がまっていたが、俺はこの状況の打開を最後まであきらないと心に誓った。

 

そして残りの2日を俺は希望を持って過ごすのだった。

 

みゆきside

 

3人と別れ、私は家に戻りながら泉さんへと今回の接触の結果報告の為連絡を入れた。

 

「もしもし?泉さんですか?」

「あ、みゆきさん。どうしたの?」

「先程慶一さんと接触が取れました。慶一さんの口から真実といくつかの質問の答えも聞いてきました。今からそれをお話しますね・・・・・・と言う事です」

「なるほど、やっぱり私達の推測は間違ってなかったね。ありがとうみゆきさん。こっちもすぐに裏付けを取るために牧村君に連絡するよ。こっちも結果がわかり次第連絡するからね?みゆきさん、がんばろう。」

「はい!絶対に解決しましょう。慶一さんの為に・・・」

「うん。それじゃ」

「ではまた学校で」

 

泉さんとのやり取りを終えた私は問題解決に力を尽くす事を改めて心に誓うのでした。

 

やまとside

 

先輩達の話を聞き、真実を知った私達はこれから私達が出来る事はなんだろうか?と、こうと話をしていたのだった。

 

「それにしても卑怯な先輩だよね・・・私ああいうのは許せないな・・・学校であったらぶん殴っちゃおうか?」

「それはだめよ?こう。そうすれば慶一先輩に不利になるわ。私達が今先輩の為に出来る事は泉先輩もいったように知っていても知らないふりをする事だけ・・・悔しいけど今はそれしかないわ。調査結果が出るまでは辛いけど我慢するのよ?こう。」

「うー・・・いまいち納得できないけどそれしかないんだね?はあ・・・これからの先輩を見かけるのはさらに辛いけどこれも先輩の為、だよね?」

「そういう事よ・・・今は先輩の為にも・・・」

 

先輩のために私達は泉先輩の言ったとおりにする事を改めて決意したのだった。

 

こなたside

 

みゆきさんから慶一君の方に関する話が聞けたので、私は牧村君に裏付け調査を頼む為牧村君の携帯に電話を入れた。

 

「もしもし?牧村君?私だよ、泉こなた。」

「おお?こなたちゃんか。あれから何か進展があったかい?」

「うん。その事なんだけどさ・・・・・・って言うわけなんだよ。牧村君、この事に関する裏付け調査をお願いできる?」

「なるほどな・・・分かった。こっちは任せてくれ、2.3日で結果が出せると思う。分かり次第君に連絡するよ。」

「お願いね。牧村君、それじゃまた今度」

「ああ、それじゃね。」

 

牧村君との連絡を終えた私はかがみ達の誤解をどう解こうかと思案していたのだった。

 

いよいよ各所での動きが始まる。

 

果たして真実は何なのか、そして、旋律は再び一つになれるのか、俺達の決着へ向けての戦いは加速を始めたのだった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。