らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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揺らぐ旋律第3話~大切な人を取り戻す為に~

昨日の事を思い、悔し涙とそれに加えて眠れぬ夜を過ごした俺は、その日の朝、鏡に映る自分の姿を見て大きくため息をついていた。

 

目は腫れ上がり、目の下には隈もできていてかなり酷い姿になっていた。

 

あれから、俺の携帯には織部さんからの着信とこなたやみゆき、つかさ、こう、やまとからの着信も入って来ていた。

 

一応、織部さんからの着信には出はしたが、こなた達からの着信には出ないでいた。

 

そして、こなた達からの着信履歴を消すと、俺は重たい体を引きずりながら学校へと向かう。

 

玄関から外へ出たとき、一瞬だがあの日かがみとつかさが迎えに来てくれた時の幻を見たような気がした。

 

そして、俺に申し訳なさそうに謝りながら苦笑するあやのの姿や、俺に拝み倒して宿題を写させてもらいに来たみさおの姿も幻となって現れて消えた。

 

それを思い出した時かなり凹みもしたのだが、それでも今は、皆の為に・・・俺はそう自分に言い聞かせて家を出る。

 

俺はかがみとつかさが乗ってくる電車の時間帯をずらして、更には乗る車両も変えて電車に乗り込み学校へ向かった。

 

今のままで2人に会うのは俺にとっても辛い事だったからというのもある、そして、2人が俺の顔を見たらどんな表情をするのだろうか?それを考えたら怖くなったというのもあった。

 

これも一種の逃げなのかもしれない、そうも思ったがこのままでかがみ達に顔を合わせる事が辛かった。

 

今朝は織部さんには会わないまま学校へと辿り着く。

 

「おはよ、慶一君。私達が声をかけた理由、わかってるよね?」

 

昇降口で靴を履き替えていた時、俺はこなた達に捕まった。

 

俺はそのこなたの言葉に無言で頷きを返す。

 

そして時計を確かめてまだ時間に余裕があることを確認すると、俺はみんなに

 

「ここじゃ人目につき過ぎる。場所を移そう。」

 

俺の言葉に皆もうなずきで返した後、俺達は屋上へと向かった。

 

屋上についてとりあえず人目がない事を確認すると、こなた達は俺に聞きたかったであろう事を聞いてきた。

 

「昨日、かがみから電話があったよ。私達のクラスの織部由美子さんと付き合うことになったんだってかがみが言ってた。それは本当なの?」

 

その言葉に俺は俯きしばし無言でいたが、ゆっくりと顔を上げて

 

「・・・・・・ああ・・・本当だ・・・・・」

 

俺の肯定の言葉に皆は絶句していた。

 

ただ、こなたとみゆきは俺の真意を計っているかのような顔をしているように見えた。

 

「どうして、そのような事になったのですか?」

 

少し悲しげな表情でみゆきは俺に聞いてくる。

 

「・・・すまん・・・その理由を、お前らに話す事はできない・・・本当にすまん・・・」

 

悲痛な思いで俺はみゆきにそう返答すると、こうややまとは俺にくってかかってきた。

 

「どうして言えないんです!?先輩は言ったじゃないですか!相談事はなるべくお前らに話すようにするって!あの言葉は嘘だって言うんですか?」

「先輩はあの時私に約束したわよね!?私達の側にいてくれるって!その言葉も出まかせなの!?」

 

その2人の剣幕を見てつかさは涙を流しながら

 

「けいちゃん。おねえちゃん、泣いてたよ?けいちゃんが遠くに行っちゃうって、もうわたし達と笑いあえないって、けいちゃん、わたしやおねえちゃんにあげたプレゼントは嘘じゃないよね?わたしは信じてるよ?今でもけいちゃんの事信じてるんだよ?おねえちゃんだってそうだよ。日下部さんや、峰岸さんだって、きっとまだけいちゃんを信じてる。ねえ、これは悪い夢なんだよね?そうなんでしょ?けいちゃん・・・」

 

俺にくってかかるこうとやまと、そして涙ながらに訴えるつかさの気持ちが俺には痛いほど伝わってきた。

 

それでもなお、今の俺には何も出来ない。

 

このどうしようもない無力感に俺は押しつぶされそうになりつつもそれでも耐えていた。

 

「嫌です、先輩!私は先輩がいなくなるのはいやです!今までもずっと3人でやってきたじゃないですか!先輩、・・・やまとや私を悲しませないでください!」

「先輩、お願い!私達の側にいて!?私は・・・先輩がいなくなるのは嫌だ!お願いよ・・・先輩・・・」

 

涙を流しながら訴える2人。

 

「けいちゃん!おねえちゃんや私達の為にも一緒に居て!?私はおねえちゃんのあんな顔みたくないもん・・・」

 

つかさもなおも訴えかけてくる。

 

その3人を見ながらこなたとみゆきは無言で俺を見つめ続けていた。

 

そこへ、俺を探していた織部さんが現れた。

 

「あら?こんな所にいたのね?おはよう、慶一君。探したわよ?それじゃ行きましょ?」

 

皆の間に割って入り、俺の手を取って連れて行こうとする織部さんにこう達が声をあげた。

 

「待ってください!あなたが織部由美子先輩なんですね?お願いです!先輩を、連れて行かないで下さい!」

「織部先輩、慶一先輩を取らないで・・・」

「織部さん!けいちゃんは私達の大事な人なの!連れて行かないで!お願い!」

 

3人の言葉を受けながらも織部さんは余裕の表情を崩さずに

 

「・・・うるさいわね、慶一君はもう私と付き合ってるの。あなた達が何を言ってももう変わらないのよ?いい加減諦めたら?」

 

織部さんは俺のほうに向き直って

 

「ねえ?慶一君、あの子達に言ってやってよ。私達にはもう2度と係わらないでってね。」

 

俺は悔し涙がでそうになるのをこらえながら皆を見て

 

「・・・みんな、そういう事だから・・・悪いけど、もう口出しはしてこないで欲しい・・・」

 

その言葉にショックを受けて何も言葉を発せなくなる皆。

 

俺の言葉にそれまで無言で事の成り行きを見守っていたこなたが

 

「・・・慶一君・・・本当に・・・それで、いいんだね?」

 

その言葉に俺は、こなたの目を見据えながら俺の目に無言のメッセージを乗せてゆっくりと頷いた。

 

しばらく俺の顔を見つめていたこなたはふっと軽いため息をつくと、なおも何かを言おうとしているみんなに

 

「みんな、そういう事らしいから、私達は退散しようか。」

 

諦めともとれそうな表情を見せつつそう言うこなた。

 

その言葉にこなた以外の皆は言葉を失う。

 

皆はこなたなら何かを言ってくれる、と期待をしていたようだ。

 

けれど、こなたが発した言葉はそんな皆の期待を裏切るものであった。

 

そのこなたの言葉にみんなは

 

「泉先輩!いいんですか!?もう慶一先輩と話したりする事も出来なくなっちゃうかもしれないんですよ!?」

「泉先輩・・・あなたならこの現状を何とかしてくれると思ってたのに・・・失望したわ・・・」

「こなちゃん!いいの?このままでいいの?けいちゃん、いっちゃう。2度と帰ってこなくなっちゃうよ?」

 

その3人の言葉にみゆきも悲しそうな表情で

 

「これは私達が立ち入れる問題ではないようです。慶一さんがそれを選んだのなら・・・私達がそれにとやかく言う事はできません。悲しいことですが・・・」

 

そう言うとこなたも頷きながら

 

「そうだね、それに・・・今ここで騒いでも、慶一君は戻っては来ないよ。だからもう、私達に出来ることはないね。」

 

こなたの言葉に満足そうな表情で織部さんが

 

「ふふ。泉さんと高良さんはわかってるみたいね。そういう事よ。もうあきらめる事ね。それじゃ行きましょ?慶一君。」

 

織部さんの言葉に俺は頷いて一緒に屋上を出て行く。

 

つかさたちは悔しそうに涙を流していたが、こなたとみゆきは去っていく俺の後ろ姿を無言で見つめ続けていたらしい事を、背中につきささる2つの強い視線を感じた事で俺は気付く。

 

その視線を受けながら俺は、ただ無力感に打ちひしがれていたのだった。

 

こなたside

 

去っていく慶一君の後姿を見つめながら私も内心は物凄く悔しい気持ちで一杯だった。

 

けれど、これ以上騒ぐ事は慶一君にとってもよくないことになるかもしれないと思い、私は八坂さん達をあえて制したのだった。

 

落ち込みながら屋上を後にする八坂さん達を見送りつつ、私はこっそりみゆきさんに小声で声をかけたのだった。

 

『みゆきさん、ちょっといい?』

 

私のその言葉に気付き、振り向くみゆきさんに

 

「ねえ、みゆきさん。さっきのやり取りを見てどう思った?」

 

そう言うと、みゆきさんも少し考え込む仕草をしてから

 

「最初に話を聞いた時には驚きました。実際にこの目で見るまでは信用できなかったのですが・・・でも実際に目の当たりにした時、私は2人の間に何か不自然さを感じましたね・・・」

 

みゆきさんのその言葉に私はみゆきさんも見るべき所をちゃんと見ていたのだと思い

 

「やっぱりみゆきさんにもそう感じたんだね?私もそうだよ。慶一君、明らかに無理してるのが見て取れた。」

 

と、私が慶一君達を見て感じた事を口にすると、その私の言葉にみゆきさんも頷きながら自分が感じた事を口にする。

 

「そう思えた点がいくつかあります。まず1つ目ですが、慶一さんの表情です。確かに恋人ができたという事で私達に対する罪悪感があるとは思いますが、それでも好きな人と恋仲になれたのならば、私達に対する罪悪感は感じていても、その表情に喜色の色も見え隠れしてもおかしくないとおもいます。ですが、慶一さんにはそんな嬉しさの部分を感じる事ができませんでした。ただただ辛いだけ、そう思えたのが1つ目です。」

 

一旦言葉を切り、みゆきさんは一つ深呼吸をしてから言葉を続ける

 

「そして2つ目ですが、突然に恋人になったとしても、そのいきさつを話せないということはないはずだという事ですね。あの時の慶一さんは明らかにその事を話せないという態度でした。隠し事をする理由はないはずなのに、です。そして最後に、先程言った隠し事という事なのですが、慶一さんは私達に話せない何かを隠しているように見えました。慶一さんにはそれを言葉にできない理由があるように思えます。」

 

みゆきさんの言葉を聞いて、私もそこの点に引っ掛かりを覚えていたので

 

「さすがはみゆきさんだね。私もその部分が妙だと思ってたんだよね。それで、私はいくつかの仮説を立ててみたんだけど、今からそれを話すよ。」

 

一呼吸置いて私はみゆきさんに話し始めた。

 

「まず第1に慶一君と織部さんの関係についてだけど、どうもこの関係は自然じゃない。さっきの態度を見るにつけ、おそらくだけど無理やり付き合わされた感があるね。そして第2に私達に隠してる事だけど、これは慶一君が何らかの弱みを握られた可能性があるね。その弱みにつけこまれ、脅迫っぽい事をされたんじゃないかな?と思ってる。そしてそれはおそらくだけど・・・・・・」

 

私の言葉をみゆきさんがさらに補足する。

 

「私達に何らかの実害が出るかもしれない可能性があって、話してしまえば私達に迷惑をかけてしまうかもしれない、そういう事なのかもしれませんね・・・それを心配したからこそ慶一さんは私達に話す事ができなかったのではないでしょうか・・・?」

 

みゆきさんの言葉に私は大きく頷いて

 

「おそらくはみゆきさんの言う通りじゃないかな?って思ってる。そうなると次は、私達にも慶一君にも実害になりそうな可能性の摸索がいるねー・・・何にしても今この場だけじゃ思いつかないから放課後までに考えようよ、みゆきさん。そろそろ授業も始まるしね。」

 

私のその言葉にみゆきさんも頷いて

 

「そうですね。私もその可能性について考えてみようと思います。放課後までに纏まるようでしたらその時にまたお話しましょう。」

 

みゆきさんの答えに私も頷きで返しながら

 

「そうだね。それじゃとりあえず授業に戻ろう。・・・みゆきさん、ひょっとしたら今慶一君を助けられるのは私達かもしれないよ?だから、がんばってみよう。」

 

私の言葉にみゆきさんも頷いて

 

「そうですね。そのためにも頑張りましょう。慶一さんのあんな辛い顔を見てはいられませんから・・・慶一さんは明るく笑ってるほうがいいんですから・・・」

 

みゆきさんの言葉に私は大きく頷いて

 

「うん。そうだね。優しく笑う慶一君の顔が好きだから、私も頑張るよ。慶一君にあんな顔させるあの子を私は許さないからね。取り戻そう、慶一君をさ。」

 

私の決意にみゆきさんも笑って「はい!」と応えてくれたのを確認して私達は教室へと帰っていくのだった。

 

慶一side

 

つかさやこなた、みゆき、こう、やまとと顔を合わせ、その皆すら本位ではない拒絶をして俺は織部さんと教室へと帰っていった。

 

教室の前で別れ、俺は自分の教室へと入る。

 

そしてふと視線を巡らせた時かがみ達の姿が目に入った。

 

かがみ達も俺に一瞬気付いたようだったが、すぐに俺から視線をそらして俺の方を見ないようにしていた。

 

そんなかがみ達を見たとき、俺は3人にあげたプレゼントのペンダントやカチューシャが外されているのを目の当たりにすると、その途端に物凄く辛い気持ちになった。

 

結局俺は休み時間になるたび、その辛さから逃げるように教室から離れたのだった。

 

こなたside

 

みゆきさんと2人で屋上で話をしてから私は、授業中も慶一君が弱みを握られるとしたらどういう条件があるか、そしてその影響を及ぼす要因はなんなのかを考え続けていた。

 

みゆきさんも同じだったようで、私は授業中に注意を受ける珍しいみゆきさんの姿を見たのだった。

 

そして、私も同じようにノートに慶一君の一件に関する解決策を色々書き込んで摸索していた時、不意に私の頭上に拳骨が降ってきて

 

「泉~?今は世界史の授業中やぞ?何の落書きしとるんやお前は!」

 

私は黒井先生に注意されつつ、拳骨を貰った頭をさすりながら

 

「す、すみませんでした。以後気をつけます。」

 

と一応体裁を取り繕いつつ、再び考えに没頭し始めた。

 

そして放課後、つかさはかがみを気遣って先に帰ったのを見て、私はみゆきさんに声をかけた。

 

「さて、放課後になったわけだけど・・・みゆきさん、さっきの事に関する答えはでたかな?」

 

そうみゆきさんに訪ねると、みゆきさんも頷きながら

 

「はい。あれから色々と私の知っている情報を改めて洗い直してみたときに慶一さんが弱みを握られる要因とそれに関係する人物の名前に行き着きました。」

 

みゆきさんの答えに私は頷きつつ

 

「へえ?それは奇遇だねえ。私も色々と摸索してみたけどみゆきさんの言う要因と人物の目星がついたとこだよ。」

 

私のその答えにみゆきさんはにっこりと笑って頷きながら

 

「それでは泉さんの意見を聞かせてください。」

 

そう私に促すみゆきさんに私も頷いて

 

「うん。それじゃまずは要因についてだけど、これはおそらく私達だね。その理由としては慶一君は私達の事を大事に思っているから、私達に何らかの危害が加えられる事を恐れているって思うんだよね。だから、私達に実害を及ぼす要因を突きつけられたとき、慶一君は私達を守るために下手な真似ができなくなったんじゃないかな?って思うよ。」

 

その私の答えにみゆきさんも満足げに頷きながら

 

「そのとおりです。そして、これは私の意見なのですが、織部さんは私達に実害を及ぼせる相手の名前を知っていたのではないでしょうか?そして、その人物の名前を出す事で慶一さんが私達に危害を加えられる危険性を認識させられ、織部さんと付き合うことを拒めないようにした、というところでしょうか。」

 

そのみゆきさんの考えに私も大きく頷いて

 

「うん。そこらへんは私も行き着いた結論だよ。そして、その要因になった人物の名前だけど、1人だけ心当たりがあったよ。」

 

その言葉にみゆきさんも私を見て

 

「私もその人物の名前に行き着きました。それじゃ泉さん。2人同時にその人の名前をあげてみませんか?」

 

そう促すみゆきさんに私も頷いて

 

「いいよ?それじゃ言ってみようか。・・・せーの!」

 

そして2人同時に出た名前は「「成神章」」だった。

 

それを確認しあって私達2人は笑みをもらし、そして

 

「あはは。さすがだよ、みゆきさん。さて、これで慶一君が脅迫される要因と人物に行きついたわけだけど、これからの事考えないといけないね。」

 

その言葉にみゆきさんも頷いて

 

「そうですね。私達の推測はそこに行き着きましたが、実際の所は慶一さんに確認を取って私達の推測が正しいのかどうかを明確にしないといけませんね・・・」

 

みゆきさんは少し困惑したような表情で私にそう言ってきた。

 

「みゆきさん、その確認についてなんだけどさ。みゆきさんに頼む事できないかな?というかみゆきさんじゃないとできないかもしれない。」

 

そう私が言うとみゆきさんは少し首を傾げながら

 

「私じゃないと、ですか?それは一体どういう事なんですか?」

 

みゆきさんの困惑したような顔を見ながら私は

 

「みゆきさんは前に私に慶一君の事で相談してきた事あったの覚えてるよね?」

「はい。慶一さんと一緒にみなみちゃんのプレゼントを選びに行った帰りに氷室さん達と会い、慶一さんの過去に触れました。その時に泉さんに相談を持ちかけたんでしたね。」

「うん。そうだよ。そして私もその事に関しては知っていたけど、あの時慶一君と一緒に居たのはみゆきさんだけだったよね?」

 

私がその事を指摘するとみゆきさんはピンと来たようで

 

「なるほど・・・泉さん達は本来は知らない事になっている成神章さんの事を私はあの時に慶一さんの側で聞きました。つまり事情を知っている私なら・・・」

 

みゆきさんの言葉に私は頷いて

 

「そう。唯一一緒にいたみゆきさんなら慶一君は事情を話してくれるかもしれない。だからみゆきさん。なんとか慶一君と接触を取って慶一君に話しを聞いてきてもらえないかな。」

 

その私の言葉にみゆきさんも力強く頷いて

 

「分かりました。慶一さんへの接触は私がなんとかやってみます。それで、泉さんは事の詳細がはっきりしたらどうされるつもりなんですか?」

 

そのみゆきさんの問いに私は

 

「慶一君の事情がはっきりし次第私も牧村君に連絡をとって事情の裏付けを取るつもりだよ。そしてその後はその後の展開次第だね。」

 

私の答えにみゆきさんは少し考え込みながら

 

「・・・なるほど、分かりました。とにかくまずは慶一さんとの接触、そして事情の確認、ですね。」

 

改めて確認を取ってくるみゆきさんに私も頷いて

 

「うん。織部さんの監視も考えられない事もないから接触の際には十分注意してね。それと、結局大変な役目を押し付ける事になっちゃったね。私が知っていたら私が行ったんだけどさ。事情を知らない事になってるからね。」

 

自嘲の笑みを浮かべながらみゆきさんにそう言うとみゆきさんは首をフルフルと振って

 

「いえ、これも慶一さんを取り戻す為ですし、私の出来ることなら頑張ってみたいですから。だから泉さんも泉さんのできる事をお願いしますね。」

 

みゆきさんのその言葉に私も力強い頷きで応え

 

「わかってる。とにかく慶一君の方、お願いするよ。頑張って?みゆきさん。」

 

私の激励にみゆきさんも力強い頷きで返しながら

 

「はい、お互いにがんばりましょう。私達で慶一さんを・・・取り戻します!」

 

そうお互いに覚悟をしてから私達は行動を開始する事となった。

 

(慶一君。私達が君のためにきっとこの状況を乗り切るきっかけを作ってみせるから、だから、待っててね?)

 

私はそう心に誓いを立てたのだった。

 

慶一side

 

結局その日一日もまともに過ごせず、織部さんに振り回され俺は心も体もくたくたになりながら家へと戻ってきた。

 

極度に疲れていた事もあってか、俺は自分に何時の間にか自分の動向を見張る物がいる事に気付かなかった。

 

そして、知らないうちに俺の家の場所を知られ、織部さんは俺の家へと訪れるようになった。

 

未だにこの現状の打開策を見出せないまま2日が過ぎていった。

 

氷室の調査の結果が出るまであと3日、俺は色々な事と戦わなければならなかった。

 

そして俺は残り3日の1日目にある決断をしてもう一つ新しく買った携帯からみゆきの携帯へと電話をかけることを試みた。

 

この電話にみゆきが出てくれる事を祈りながら・・・・・・

 

 


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