らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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第9章 旋律達の崩壊の危機編
揺らぐ旋律第1話~衝撃の名前~


こなたの家で掃除を手伝い、かがみの家で夕食をご馳走になり、俺はそれなりに充実した休日を過ごす事ができた。

 

そして日付も変わって翌日からまた学校が始まるわけなのだが、ここに来て3度目のサプライズを見る事になろうとは思わずに、俺は何も知らないまま朝を迎えようとしていた。

 

ふと、俺の横になにやら柔らかな気配を感じて目を覚まし、何気に横に首を向けたとき俺は思わず絶句してしまった。

 

何故ならそこには、俺の腕を抱きしめて眠っている制服姿のみゆきが居たからだ。

 

俺はそれを見て一瞬フリーズ状態になっていたが、はっ、と我に返ると、大慌てでみゆきに声をかける

 

「み、みゆき、起きろ!どうしてお前がここに居る!頼むから起きてくれ!」

 

みゆきを揺さぶりつつ起こそうとする俺だったが、みゆきは寝ぼけながらなおきつく俺の腕を抱きしめてきて俺はさらに慌てつつ

 

「みゆき、おーい!頼むから起きてくれ、このままじゃ理性が持たなくなるから!頼む、みゆきー!」

 

という俺の必死の呼び声にようやく目を覚ますみゆきは、俺の方を寝ぼけ眼でしばらく見つめていたがようやく意識が回復したみゆきは顔を真っ赤にしながら大慌てで

 

「あ、あああ、あの・・・すいませえええええん!私ったらつい・・・本当にすいません!」

 

そう言いながら俺の腕を離してベットから出るみゆきはいまだ顔を真っ赤にしながら慌てていた。

 

俺はそんなみゆきを落ち着かせようと努めて冷静な声でみゆきに呼びかけた。

 

「・・・とりあえず落ち着け、みゆき。落ち着いたら何でこんな事になってるのか説明してくれるか?」

 

その冷静な指摘にみゆきはようやく自分を取り戻したようで

 

「本当にごめんなさい。私、かがみさんや泉さんがやった朝慶一さんをお迎えに来るという事を私も一度やってみたいって思いまして・・・それで、その、予定よりも早く着きすぎてしまったものですから、とりあえず朝食の準備をして、慶一さんを起こそうと思い慶一さんの部屋へと来たんです。」

 

そういいながらみゆきは自分の頬に手をあて首を軽く傾げつつ、困ったような表情でさらに言葉を続けながら

 

「それで、最初はまだ時間もあるみたいでしたので慶一さんのお布団を直してそれで私は一旦外へ出て時間まで待とうって思ったんですが、私もまだ眠かったらしく、慶一さんの気持ちよさそうな寝顔とお布団の誘惑に耐えられなくなって、その・・・」

 

そう言って顔を真っ赤にして俯くみゆきに俺は

 

「俺の布団に潜り込んで一緒に寝た、と・・・」

 

最後を俺が補足すると、みゆきは真っ赤な顔のままコクンと頷くのだった。

 

そのみゆきの様子を見て俺は大きなため息を一つついて

 

「事情はわかったよ。けど、まさか俺を起こす所までやろうとしてたのは驚きだったな。」

 

苦笑しつつそう言う俺にみゆきは更に申し訳なさそうな顔で

 

「本当にすみません・・・驚かすつもりはあってもこういう事で驚かそうと思った訳ではないということだけは信じてください。ただ、泉さん達が羨ましかったもので、つい・・・」

 

悲しそうな顔でそう言うみゆきの頭を俺は軽くぽんと叩くと

 

「そんな顔するなよ。驚きはしたけど嫌だったり迷惑だったわけじゃないからさ。それに、朝食も作ってくれたんだろ?ならさっさと準備して食べちゃわないとな。」

 

俺はみゆきに優しく微笑みながらそう言うと、みゆきも安心したのか表情を和らげた。

 

「とりあえず準備して下に行くから下で待っててくれるか?」

 

俺はみゆきにそう促すと、みゆきは俺にいつもの微笑みを向けながらコクリと頷いて下に降りていったのだった。

 

みゆきが部屋から出て行くのを確認して俺は制服へと着替えを始める。

 

程なくして準備が出来た俺は鞄を持ってキッチンへと向かうのだった。

 

「みゆき、お待たせ。おお、これは美味そうだな。みゆき、がんばったなあ。」

 

みゆきの用意してくれた朝食は和風だったが、それでもみゆきなりにがんばったのが見て取れたので、俺は感じたままを素直にみゆきに伝えると、みゆきも顔を赤くして

 

「そ、そう言っていただけると嬉しいです。それじゃ食べてしまいましょう?」

 

赤い顔のまま微笑みつつそう言うみゆきに俺も頷いて席につくと「いただきまーす。」の声と共に朝食を取る俺たちだった。

 

朝食を終えて俺はみゆきに

 

「みゆき、結構美味かったよ。ありがとな、わざわざこんな事までやってもらってさ。」

 

素直に感謝の気持ちを言うと、みゆきも嬉しそうな顔で

 

「いえ。いつもお世話になっている慶一さんに少しでも何か出来たら、と思っただけですから。でもそう言っていただけたら嬉しいです。」

 

そう言って笑顔を向けるみゆきに俺も笑顔で頷いて返すと

 

「そろそろ時間だな。みゆき、学校行こうか。」

 

頃合の時間になったので俺はみゆきにそう促すとみゆきも頷いて

 

「そうですね。洗い物も済みましたし、そろそろでましょう。」

 

2人して頷きあって家を出て、今回も自転車を使用して駅へと向かう俺たちだった。

 

その際にみゆきを自転車の後ろに乗せていたが、俺もみゆきもなんだか照れくさくなって2人して顔を赤くしながら駅に辿り着いた。

 

駅で自転車を預けて俺は、いつもかがみたちが乗っている車両の出入り口付近に行き、そこで電車を待つ。

 

やがて電車が来て俺とみゆきは乗り込んでいくと、いつものようにかがみとつかさが居たので俺は2人に挨拶をするのだった。

 

「おはよう、かがみ、つかさ。昨日はありがとな。料理美味かったし楽しかったよ。」

 

2人に挨拶をすると2人とも笑顔で俺に

 

「おはよう、慶一くん。楽しんでくれたんならよかったわ。」

「おはよう、けいちゃん。昨日はがんばったから喜んでくれたのならうれしいな。」

 

互いに挨拶を交わす中、みゆきもかがみ達に挨拶をする。

 

「かがみさん、つかささん、おはようございます。今日も良い一日になればいいですね。」

 

というみゆきの声に気付いてかがみ達は驚いてみゆきの方を見て

 

「おはよう、みゆき。はいいんだけど、なんであんた慶一くんや私達の乗る電車に乗ってるのよ?」

「あ、ゆきちゃんおはよ~って、そういえばどうしてなの?」

 

そんな2人の疑問にみゆきは苦笑しながらも事のいきさつを説明するのだった。

 

みゆきの説明を聞いてかがみは呆れたような顔になり、つかさはただただ苦笑していた。

 

「まったく、みゆきもよくやるわね。あんたもこなたの行動力を羨ましく思ってたみたいだけど、あんたも負けてないと思うわよ?」

「そうだよねえ・・・わたしもやってみようかなあ・・・」

「あんたには無理じゃない?そもそも慶一くんが起きる時間に起きれるの?まずはそこが出来てからいいなさいよね。」

「うう、おねえちゃんの意地悪・・・」

 

2人のやり取りを見守っていたみゆきがつかさのフォローに入る。

 

「つかささん、強い意志でがんばってみればきっとつかささんにもできると思いますよ?だからあまり落ち込まないで下さい。」

 

そう言ってつかさを慰めるみゆきを俺とかがみは苦笑しながら見守っていたのだった。

 

やがてこなたが乗ってくる駅に着くとこなたが乗り込んできて俺たちに挨拶をした。

 

「おはよー、慶一くん。昨日は色々助かっちゃったよ。おとーさんもまた自分の作品に対する感想を聞きたいって言ってたからまた何かの折には遊びにきてよね。」

 

笑顔で俺にそう説明するこなたに俺は

 

「そっか。それじゃそうじろうさんに伝えといてくれよ。また何かの時にお邪魔させてもらいます、ってさ。」

 

その俺の答えに「うん、わかったー。」と言って頷いた後、かがみとつかさにも挨拶をする。

 

「かがみとつかさもおはよー。今日も揃い踏みだねー。」

「おはよう、こなた。今日は元気そうね。」

「こなちゃんおはよー。」

「うんうん、みんな元気で何よりだね・・・ってあれ?」

 

そう言いながらこなたは今日の俺たちの集団に違和感を覚えたようだが、すぐにその違和感に気付いて驚きながらみゆきに声をかけていた。

 

「あれ?みゆきさんが何でみんなと一緒に同じ電車に乗ってるの?」

「おはようございます。泉さん、実はですね・・・・・・」

 

そのこなたの疑問にみゆきは今朝の事をこなたに説明するとこなたは顎に手を当てながら

 

「ふーむ、まさかみゆきさんもやってしまうとは・・・みゆきさんの行動力も侮れないねえ・・・」

 

そう呟くこなたにみゆきも顔を赤らめつつ

 

「いえ、その、なんといいますか・・・恐縮です・・・」

 

と、こなたの呟きに困惑しつつ答えていた。

 

俺はその様子を苦笑しながら見守っていたが、降りる駅が近づいてきたのでみんなに

 

「みんな、そろそろつくぞ。降りる準備しないと。」

 

そう声をかけるとみんなもそれぞれに降りる準備をするのだった。

 

バスに乗り学校に着くと、何か体育祭前とは俺の周りの雰囲気が違うように感じていた。

 

俺達が昇降口に行くまでに複数の女生徒から声をかけられたり、なにやら手紙を渡されたりした。

 

そして昇降口で下駄箱を開けるとそこにも手紙が相当数詰め込まれている事態になっていた。

 

それを見たかがみたちは

 

「へえ、慶一くんって結構モテるのねえ・・・それだけの手紙を貰ったんじゃさぞや嬉しいでしょうねえ?」

 

朝の笑顔はどこへやら、途端に不機嫌オーラを発するかがみ。

 

「なんだか急にけいちゃんの周りが変化したみたいだよ・・・不安だなあ・・・」

 

やはり少し不機嫌になりつつも不安な顔をするつかさ。

 

「うーん。ゲームやアニメとかではありそうなシチュを実際に目の当たりにするなんてね・・・慶一君、ギャルゲの主人公みたいだよ。」

 

口ではそういいつつもやはりどことなく不機嫌なこなた。

 

「慶一さん?くれぐれも軽率な行動は控えてくださいね?」

 

顔は笑いながら恐ろしいほどの黒いオーラを発しているみゆきに俺は怯えつつ

 

「は、はは、大丈夫だって。こんなの貰ったって誰かと付き合うとか考えてないからさ。」

 

みんなにそう言うとみんな心なしかほっとしたような顔になっていた。

 

「でも、その手紙どうするの?返事するの?」

 

こなたが手紙の処遇について聞いてきたので俺は

 

「とりあえず手紙の主には会ってくる。その上で全て断ってくるつもりさ。」

 

俺の意思をみんなに言うとかがみが少し心配そうに

 

「大丈夫なの?ちゃんと断れるの?慶一くん優しいから流されちゃって断りきれなくなる事が心配なんだけど・・・」

 

つかさも心配そうな顔で

 

「それにけいちゃんに思いを寄せてる子にそういう事はっきり言える?まがりなりにもけいちゃんを思ってる子を傷つける事にもなっちゃうよ?」

 

つかさの言葉にみゆきも複雑な表情で

 

「慶一さん、それでも断りきる事ができますか?」

 

そのみんなの心配を受けながらも俺はみんなに

 

「大丈夫さ。その気もないのに期待させてしまう事のほうがかえって相手を傷つける事になるからね。こういう事ははっきりと断るのがいいんだ。それで相手を傷つける事になったとしても恨まれるのは俺だけだ。その思いを俺が背負えばいいだけの話さ。・・・少なくとも今の俺にはそれを背負う覚悟はある。」

 

その俺の思いを見せると、皆は俺に視線を向けてはいたものの、それ以上は何も言ってこなかった。

 

そして、こなた達と別れてかがみと共に教室に入ると、そこでも同じクラスの女子からも声をかけられたり挨拶されたりしていた。

 

その様子を見ていたみさおとあやのは俺たちの方に来て

 

「すげえな、慶一。一昨日の体育祭以降、ヒーロー扱いじゃん。モテるようになって嬉しいか?なあ慶一?」

「慶ちゃん、大人気ね。これから苦労しそうね。」

 

という2人に俺も苦笑しながら

 

「やっぱりあれで目立ったのが原因か。まあ、男たる者一度はそういう事を夢見るもんだけど今の俺には十分すぎる仲間が居るからな。これ以上は贅沢ってもんだ。」

 

そんな俺の言葉にかがみとみさおとあやのは驚きの表情になっていたが、すぐに嬉しそうな顔になって

 

「まあ、慶一くんは私達の側にいてくれる人だって信じてるからね。これ以上の心配も無用かな。」

「やっぱ慶一は私達の仲間だよなー。今の言葉何気に嬉しかったゼ?」

「ふふ。私達も慶ちゃんの仲間なのね。とっても嬉しいわ。」

 

という3人に俺も照れつつ後頭部を掻いていた。

 

その後も休み時間のたびに各クラスの女子に追いかけられたりしつつも、そのことごとくを振り切って俺はみゆきに会うために待ち合わせをした。

 

屋上の給水タンクの陰で隠れて俺はみゆきを待つ。

 

やがて、こっそりとみゆきがやってきたので俺はみゆきに小声で声をかけるのだった。

 

『みゆき、こっちだ』

 

声をかけつつ手招きをすると、みゆきもそれに気付いて一応後方の確認をしながらこちらにやってきた。

 

「お待たせしました、慶一さん。それで私に何かご用ですか?」

 

みゆきの言葉に俺は、持っていた物をみゆきに手渡して

 

「これ、みなみの誕生日プレゼントだ。みなみの誕生日って明日だったろ?だからあの時の約束どおりにみなみに届けてくれ。こなた達にもゆうべメールを飛ばしておいたから後でみゆきに託しに行くと思う。そっちも頼むな。」

 

そうみゆきに言付けるとみゆきも頷いて

 

「わかりました。それじゃこれはお預かりしていきますね。みなみちゃんにちゃんと責任を持って渡しておきますから安心してください。みなみちゃんからの言付けがあったら必ずお伝えしますから。慶一さんも大変でしょうけどがんばってくださいね。」

 

心配そうな顔で俺を見るみゆきに俺は笑顔で頷いて

 

「ああ、今回は心配かけてるな。けど、乗り切って見せるから心配しないでくれ。」

 

そう俺が力強く答えると、みゆきも安心したようで笑顔で俺に頷きながら「わかりました。」といった後、尾行に気をつけつつ屋上を後にするみゆきを給水タンクの裏から見送った後、俺も適当に時間を潰しつつ休み時間ぎりぎりに教室に戻るという感じで女生徒の追及をなんとか乗り切っていた。

 

そして次の日も同じように乗り切りつつ、今日はアニ研の部室へと逃げ込んでいた俺だった。

 

「ふう、こう、やまと。かくまってくれてありがとな。まったくあのエネルギーはどこから来るのやら・・・」

 

少し疲れ気味にそう言うとこうとやまとは

 

「やっぱりリレーで目立っちゃったのが原因なんですね。まあ、あの活躍っぷりを見たら女の子はしびれちゃいますよ。」

「確かにあの時の先輩がかっこよかったっていうのは認めるけど、でもこの騒ぎっぷりは少し異常じゃないかしら?」

 

という2人の言葉に俺も苦笑しつつ

 

「やっぱし目立ちすぎだったんだな・・・やれやれ、さてどうしたものやら・・・はいいけどこう、やまと、みなみの誕生日プレゼントちゃんとみゆきに託したんだろうな?」

 

一応確認の為聞いてみると2人とも頷いて

 

「ばっちりですよ。今回は遅れずに準備できましたし、受け渡しもやまとに立ち会ってもらいましたから。」

「今回は抜かりなく、ね。だから安心していいわよ?お人好しの先輩。」

 

最後に痛烈な皮肉をぶつけてくるやまとに俺は困惑しつつ

 

「今回はちゃんとやったみたいだな、こう。それと、なあ、やまと。俺、お前になんかしたか?最近お前の言葉の槍がきついんだが・・・」

 

その言葉にやまとは俺を一瞥すると

 

「・・・別に?私のこの言葉のきつさは先輩だって知ってるはずじゃない。」

 

そんな俺とやまとのやり取りを見ていたこうは

 

「やまと、最近先輩がモテはじめたからやきもちでも焼いてるんじゃないの?最近特に不機嫌じゃない。」

 

というこうの指摘にやまとは顔を真っ赤にして

 

「な、何いってるのよ!こう、そんなわけないじゃない、勝手な想像で物を言わないでよ!」

 

というやまとにこうはニヤニヤしつつ

 

「ふーん?それじゃやまとは先輩の事はなんとも思っていないんだ?それじゃやまとが不機嫌になる理由も今私が言ったことに対して怒る理由もないはずだよねえ?」

 

更にツッコムこうにやまとは更に顔を赤くして

 

「・・・そ、それは・・・その・・・ううっ・・・」

 

もはやかなりの混乱をきたしたやまとは何も言えず、ただ黙って赤い顔をして俯くだけだった。

 

俺はそんな2人のやり取りを見てため息を一つつくと

 

「こう、それくらいにしといてやれ。やまと、悪かったな。俺のせいでお前にはいらない心配かけてたようだ。元はといえば俺の撒いた種でもあるし、何とかするよ。それじゃ俺はそろそろ行くから・・・ごめんな?やまと。」

 

そうやまとに言い残して俺は部室を慎重に出て行く。

 

そして最後の言葉を聞いたやまとはハッと我に帰ると慌てて

 

「先輩、待って!、その言葉は、先輩っ!」

 

俺を引きとめようとしていたがすでに俺は部室を離れた後だった。

 

やまとside

 

先輩が部室を出る際に私に言ったあの言葉は、私が見た夢の中で私に背を向けて去っていく先輩が言っていた言葉だった。

 

その言葉を聞いた時私は物凄く嫌な予感に包まれ、思わず先輩を呼び止めようとしたのだが、先輩はすでに部室から去った後だった。

 

私の様子がおかしい事に気付いたこうが心配そうに

 

「やまと、どうしたの?急にあんなに取り乱して先輩を呼びとめようとして。」

 

そのこうの言葉に私はどうしようかと悩んでいたのだが、結局こうに打ち明ける事にしたのだった。

 

「こう、実はね・・・・・・というわけなの。それで今先輩が言った言葉がその時とまったく一緒だったから私不安になって・・・」

 

私の説明を黙って聞いていたこうだったが私の目を見て

 

「なるほどね?やまとの気になっていた事はそういう事だったか。大丈夫だよやまと。私達はこれまでも3人でちゃんとやってきたじゃない。それに、今でも先輩の事は信じてるんでしょ?だったら、その気持ちを強く持ち続けなきゃだめだよ。それが先輩と私達の絆なんだしさ。」

 

こうのその言葉を聞いた時、私は先輩と私達の原点を思い出したような気がした。

 

「そうね。私達が信じなきゃだめよね。ありがとう、こう。少し気持ちが楽になったわ。」

 

その私の言葉にこうも笑って応えてくれたのだった。

 

慶一side

 

女生徒との追いかけっこの3日目を超えてとりあえずは俺の周りの騒ぎも沈静化しはじめてきた。

 

それでもまだ俺宛に下駄箱などに入ってくる手紙は未だに来ていた。

 

以前よりは大分数も減ったけど、それでも2.3枚の手紙はまだ来ているようだった。

 

そして、俺はその手紙の主に付き合う意思のない事を伝えて断りを入れるため、今日も2人に断りを入れた後最後の1人に断りを入れに行く為屋上へと向かった。

 

そこで手紙の主を待っていると、息を切らせて屋上にやってきた女生徒が現れた。

 

「君が織部由美子さん?この手紙の人だよね?」

 

俺がその女生徒に声をかけるとその子も俺に

 

「ええ、私が織部由美子よ。どうやら手紙読んでくれたみたいね?ならここに呼び出した理由もわかるわよね?」

 

そう俺に言ってくる織部さんに俺は

 

「ああ。俺に付き合って欲しいっていうんだろ?その気持ちは嬉しいけど残念ながら俺は君の気持ちには応えられない。悪いね。」

 

俺を悔しさの混じる瞳で見据える織部さんは

 

「あなたの周りにいる泉さんや柊さん、高良さん達がそんなに大事なの?他の子と付き合おうとしないのも・・・そうやって他の子達も断ってきたのね?」

 

その言葉に俺は織部さんの目をまっすぐ見据えて

 

「俺にその気がなかったのも理由だけど、君がそう思うのならそう思ってくれてもいい。だけど恨むなら俺を恨んでくれ、あの子達には何の関係もない事だ。付き合う事を拒むのは俺の意思だからね。」

 

そんな風に答える俺を見つめながら織部さんは何かを考えているようだったが、不意に

 

「・・・・・・成神章って知ってるわよね・・・・・・?」

 

俺はその出てくるはずのない名前に驚愕し、そして織部さんを見て

 

「・・・何故君が、その名前を知っている!?」

 

俺は彼女に強い口調で叫んでいた。

 

彼女から告げられたその名前に大きな不安を感じながら・・・・・・


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