らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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旋律の休日2~柊家での夕食会~

こなたの家に初めて訪れた俺は、そこでこなたのお父さんとご対面と相成り、初めは物凄い目で睨まれていたが、俺がそうじろうさんのファンであるという事がわかると、途端に上機嫌になり家の手伝いをすることと時折こなたの家へ来てもいいという事を認めてもらえた俺だった。

 

こなたの家で掃除をや片付けの手伝いをして、こなたの部屋でお互いの本心を打ち明けあいつつのんびりとした時間を過ごして俺はこなたの家から帰る事となったのだが、駅のホームで電車を待っているときにふいにかがみからの着信が入ってきたのだった。

 

とりあえず電話に出てみると

 

「もしもし、慶一くん?私よ、かがみ。」

「かがみか?少し慌ててるみたいだが何かあったのか?」

「実は今回の泊りがけの時に慶一くんの家に忘れ物しちゃってね、家にいるのならその忘れ物が残ってるのか確認して欲しいの。それでもしその忘れ物があるようだったら明日学校で渡して欲しいのよ。」

「忘れ物?それって一体なんなんだ?」

「それが、家でもよく使ってる勉強用のノートでさ。一応宿題は終わらせてあったけど、ないと物凄く明日困っちゃうからさ。提出も明日だしね。だから、迷惑かけちゃってごめん、なんだけどお願いできるかな?」

「なるほど、わかった。お前が使ってた部屋探せばいいかな?」

「うん、そこにおいてあると思うわ。本当にごめんね。」

「いいって、この位の事お安い御用さ。それじゃ明日学校でな。」

「うん、また明日ね。」

 

そう言って俺達は電話のやり取りを終えるのだった。

 

その後、電車に乗り込み家へと戻り、さっそくかがみの使ってた部屋へと赴いてみると、かがみの言っていたノートが見つかった。

 

かがみのノートを手にとり、ノートを見つめながら俺は少しの間考え事をしていたが、おもむろに俺は再び出かける準備をして自転車を出しに外へと出て行くのだった。

 

結局俺は、かがみの家にノートを届ける事にしたのだ。

 

自転車をこいで15分、鷹宮神社が見えてきたので、俺は神社の駐輪場に自転車を止めて柊家へと向かおうとした時、俺の背後からいきなり飛びついてくる人影があったのだがあまりにも不意を突かれた俺はまともな対処ができずにその人と一緒に倒れこむ形になった。

 

「あいたたた・・・一体なんなんだ?って、あなたは・・・」

 

俺は痛みをこらえつつ人影の方を見ると、そこには見知った顔がやはり痛みに顔を歪めつつ

 

「いったー・・・ちょっと勢いつきすぎちゃった・・・あはは、森村君ごめんねー?」

 

あまり反省していなさそうな顔でそう言う見知った人に俺は呆れながら

 

「ごめんねー、じゃないですよ。いきなり飛びついてきて何やってるんですか?まつりさん。」

 

まつりさんにとりあえずツッコミを入れておくと、まつりさんはばつの悪そうな顔で

 

「いやあ、神社で掃除してたんだけどさー、君の姿が見えたからつい嬉しくなってねー」

 

苦笑しながら言うまつりさんに俺もため息一つつきながら

 

「まったく、知り合いだったからよかったですけどそうじゃなかったらただの危ない人ですよ?まつりさんも大学生なんだし、もう少し節度のある行動をですね・・・」

 

そう言って軽く説教をすると、まつりさんはほおを膨らませながら

 

「言われなくてもそのくらいは分かってるわよ。それに知り合いじゃなかったらこんな風に飛びついたりはしないわよ。」

 

と、少し不機嫌になったまつりさんに俺は苦笑しながら

 

「まあ、わかってくれればそれで。それと挨拶が遅れました。こんにちは、まつりさん。」

 

結局挨拶がまだだったので、俺はまつりさんに挨拶をすると、まつりさんも笑いながら

 

「うん、こんにちは、森村君。今日は一体どうしたの?急に訪ねて来たりしてさ?」

 

俺はまつりさんの質問に

 

「実は、かがみが家に忘れ物をしたのでそれを届けにきたんですよ。かがみは家に居ますか?」

 

そう答えると、まつりさんも俺の答えに頷きつつ軽く考える仕草をして

 

「今はちょっと夕飯の買出しにつかさと一緒に行ってる所ね。かがみの忘れ物、預かっておく?」

 

と言うまつりさんの申し出に俺は頷きながら持っていた鞄からノートを取り出して

 

「なら、お願いできますか?このノートを返しておいて下さい。よろしくお願いしますね。」

 

そう言ってまつりさんにノートを差し出すと、まつりさんは俺からノートを受け取った後

 

「これね?分かったわ。ちゃんと返しておくから心配しないでね。っと・・・」

 

ノートを受け取って俺にそう言った後、まつりさんは少し考え込んでいたが、おもむろに顔を上げて俺に

 

「ねえ、森村君。よかったら今日の夕飯家で食べていかない?昨日の体育祭での勝利のお祝いも兼ねてさー。」

 

と言うまつりさんの提案に俺は驚きつつ

 

「ええ?でも、折角の休日なのに俺なんかがお邪魔しちゃかえって迷惑かけちゃいませんか?それに勝利っていっても結局うちのクラスは優勝もできてなかったですし。」

 

まつりさんの提案に恐縮しつつそう言うと、まつりさんは笑いながら

 

「いいのいいの。家は元々家族多いんだし、君一人増えた所でなんてこともないからさ。それに勝利のお祝いっていうのはかがみもそうだけど森村君のあの最後のリレーでの勝利って事だからさ。」

 

そんなまつりさんの言葉に俺は顔を赤くして照れながら

 

「あー・・・あれですか・・・あれも色々な偶然も重なっての勝利でもありますし、そう改まって言われてしまうと照れますよ。でも・・・まつりさん、お言葉に甘えさせてもらってもいいですかね?(楽しいんだよな・・・柊家で過ごす時間って・・・)」

 

とりあえず個人的な理由からも俺は、まつりさんの申し出を受けようと思い、そう答えると

 

「うんうん。それじゃちょっと待っててね。家の方に連絡入れてその後残った境内の掃除終わらせちゃうからさー。」

 

俺が申し出を受けたことを喜んだまつりさんはそう言うと、家の方へと電話をかけていたようだった。

 

俺はとりあえず、まつりさんの掃除を手伝おうと考えていたので、まつりさんの電話が終わるのを待ってまつりさんに

 

「まつりさん。折角お世話になるんですし、俺もまつりさんの掃除を手伝いますよ。」

 

そう声をかけると、まつりさんは少し驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔になって

 

「そう?いやー助かるなー。それじゃほうきが向こうにあるからちょっとお願いできるー?」

 

ほうきの置いてあるところを指差すまつりさんに俺は頷いて答えると、掃除道具を取りに行ってまつりさんとともに境内の掃除を始めるのだった。

 

しばらくして掃除を終えた俺達は道具を片付けて改めて2人で柊家へと戻る。

 

「ただいまー。お父さんお母さん、森村君連れて来たよー。」

 

まつりさんが家に入りながらただおさんとみきさんにそう声をかけると、2人が玄関まで出迎えに来てくれて

 

「やあ、森村君いらっしゃい。まつりから話は聞いてるよ、さあ上がりなさい。」

「森村君。よく来てくれたわね。歓迎するわよ?さあどうぞ。」

 

2人にそう促されて俺は照れながらも

 

「またお世話になります。それじゃお邪魔しますね。」

 

そう言って柊家へとお邪魔する俺だった。

 

「いのりももうすぐ会社から戻ってくるだろう。そうしたら夕御飯にしよう。森村君もそれまではゆっくりくつろいでいなさい。」

 

そうただおさんが言ってくれたのだが、俺は何もしないのも悪いかな?と思ったので

 

「いえいえ、おかまいなく。お気持ちはありがたいですが、俺も何か手伝う事あればやらせてもらえませんか?お世話になりっぱなしというのもなんですから。」

 

俺がそうもちかけると、着替えを終えて降りてきたまつりさんが俺に

 

「相変わらず生真面目よねえ、森村君も。それじゃちょっとお願いしようかな?買い物からまだ戻らないかがみとつかさを迎えに行ってきてくれないかな?森村君の分を買うのにたぶんまたスーパーに戻ってるはずだからさ。荷物持ちやってあげてよ。」

 

まつりさんがそう言って来たので俺はその言葉に頷きつつ

 

「わかりました。それじゃスーパーの場所教えてもらってもいいですか?」

 

そう言い、まつりさんの頼みを引き受けると同時に、かがみたちの行ってるスーパーの場所を教えてもらい、俺は

 

「まつりさんどうもありがとう。それじゃ迎えに行ってきますね。」

 

そう言って柊家を出て行く俺にまつりさんも「行ってらっしゃーい。気をつけてねー。」と言って送り出してくれたのだった。

 

かがみside

 

さかのぼる事2時間前・・・・・・

 

慶一くんに私の忘れ物を持ってきてもらうように電話でお願いしてから私とつかさはお母さんに夕飯の買い物を頼まれたので、自分の部屋の掃除等を済ませた後、私はつかさと共に少し遠い場所にあるスーパーに買い物に来ていたのだった。

 

「えーっと・・・これと、これと・・・後はこれね?」

 

私の割り当ての方を見て回り、商品を買い物篭へといれていきながら買い忘れた物がないかどうかをチェックしていた。

 

それから1時間程つかさと共に買い物をしてスーパーを後にして家まで半分くらいの所まで歩いた時に私の携帯にお母さんからの着信があったので電話に出た。

 

「もしもし、お母さん、どうしたの?何か頼み忘れでもあった?」

「あ、かがみ。まだスーパーにいるの?」

「もう買い物済ませて家まで後半分って所まで来てるわよ?」

「ごめんなさい、かがみ。悪いんだけどもう一度スーパーに戻って追加の買い物お願いできるかしら?」

「え?でも、お母さんから預かったお金もう残ってないわよ?」

「そうなの?かがみ、かがみ個人でお財布もってない?後で渡すから持っていたら立て替えお願いできるかしら?」

「そういう事ならなんとかなるわ。わかった、それじゃ追加分を買いに行くわね?」

「ごめんね?よろしく、かがみ。気をつけて帰って来るのよ?」

「分かったわ。それじゃ切るわね?」

「ええ、それじゃ。」

 

お母さんとのやり取りを終えるとつかさが私に

 

「おねえちゃん。お母さんから?」

 

という質問に私も頷いて

 

「そうよ。買い物の追加をお願い、ってさ。」

 

そう答えるとつかさも首を傾げながら

 

「何か足りない物でもあったのかな?」

 

そう言うつかさに私もさっきのやり取りで追加の品物をつかさに言うと

 

「う~ん?私たちで食べる夕食のおかずにしては多いよね?」

 

そう言ってくるつかさに私も心持ちそんな気がしていたがとりあえず

 

「まあ、何にしてももう一度スーパーに戻りましょ?足りない物買ってこなくっちゃね。」

「うん。それじゃもどろうか~。」

 

2人して頷きあって私たちはさっきのスーパーにもう一度戻って行くのだった。

 

その頃慶一くんが家に遊びに来ていて、私たちを迎えに行く為に家を出たことを知らないでいる私達だったけど。

 

そして、追加の買い物を終えた頃、私の携帯に今度はまつり姉さんから電話が入ったのだった。

 

「もしもし、かがみ?」

「まつり姉さん?どうしたの?」

「買い物終わった?今帰ってる?」

「買い物終えてこれからスーパーをでるとこよ?それがどうしたの?」

「なら、まだスーパーにいるのね?それじゃそこから動かずに森村君が迎えにくるのを待ってなよ。」

「え?姉さんいま森村君って言ったの?どうして慶一くんが?」

「森村君、あんたの忘れ物届けにわざわざ家まで来たの。それで境内の掃除とかも手伝ってもらっちゃったのもあったから夕飯に招待したんだよ。それでまだ買い物から戻らないあんた達を迎えに行ってもらったの。」

「慶一くん、わざわざそんな事してくれたんだ・・・学校で渡してくれてもよかったのに・・・わかったわ。ここで待ってる。」

「そうしなー?森村君に荷物持ってもらって帰ってきなよ?それじゃ後でね、かがみ。」

「うん。ありがとう、姉さん。」

 

そう言ってまつり姉さんとのやり取りを追えた私につかさが

 

「電話はまつりおねえちゃんから?まつりおねえちゃん、なんだって?」

 

というつかさの質問に私は

 

「姉さんが言うには慶一くんがもうすぐ迎えに来るからここで待ってな、ってさ。」

 

そう答える私につかさは驚きながら

 

「え?けいちゃんが迎えに?どうして?」

 

私は笑いながらつかさに

 

「私、慶一くんの家に忘れ物しちゃったんだけどさ、学校で渡してくれればいいって言ったんだけど慶一くんわざわざ家まで届けに来てくれたみたいなのよね。それで夕飯食べていく代わりに私たちを迎えによこしたって姉さんが言ってたのよ。」

 

私の答えにつかさも笑顔になりながら

 

「そうだったんだ~。やっぱりけいちゃんは優しいね~。」

 

そんなつかさの言葉に私も

 

「まあ、優しいというか世話焼きすぎというか、お人好しな所があるわよね?まあそう言う部分嫌いじゃないけど・・・」

 

最後の方は小声になっていたが、つかさにも同意はしていた私だった。

 

そして、少し待っていると慶一くんがやってきたのだった。

 

慶一side

 

まつりさんに教わった通りに俺はスーパーへとやってきた。

 

そして両手に荷物を持ったかがみとつかさの姿を見つけると俺は2人の元へと移動していく。

 

「かがみ、つかさ。待たせたか?」

 

俺は2人に声をかけると2人も俺に気付いて

 

「あ、慶一くん。来てくれたのね?わざわざありがとう。」

「けいちゃん。待ってたよ~?」

 

そんな2人に俺も笑いながら

 

「今晩は夕飯をご馳走になるんだし何かしらやらないとなんだか悪い気がしてさ。」

「ふふ。慶一くんらしいね。ほんとお人好しよね?」

「わたしはけいちゃんのそういう所好きだよ~?」

 

と、ここでつかさの天然爆弾が炸裂すると、俺とかがみは途端に顔を赤くして

 

「つ、つかさ、そういう事はさらっと言うな。対応に困る。」

「そ、そうよ。時折あんたのそのとんでも発言は私もどうしたらいいかわからなくなるわよ。」

 

2人してつかさに言うとつかさは案の定よく分かってないようで

 

「そんな事ってどんな事だろう?」

 

頭にハテナマークを浮かべて首を傾げるつかさに俺たちは苦笑するしかなかった。

 

とりあえず気を取り直して俺は2人に

 

「ともかく、俺は2人の荷物持ちとボディガードも兼ねてここ来たんだからその荷物を俺に渡してくれ。」

 

そう促すと2人は持っている荷物を俺に渡しながら

 

「じゃあ、お願いね。みんな待ってるだろうしそろそろ行きましょ?」

「けいちゃん、重くない?」

 

そう言ってくる2人に俺は笑いながら

 

「この程度軽い軽い。それじゃいくとしようか。」

 

俺がそう言うと2人とも頷いて一緒に歩き出したのだった。

 

歩いて戻る途中かがみが俺に

 

「でも、驚いたわよ?急に家の方へ来たって聞いたからさ。でも、来るのなら前もって来るっていってくれればよかったのに。」

 

そのかがみの言葉に俺も苦笑しながら

 

「ごめんごめん。かがみの忘れ物を手にとって考え事してたらなんとなく衝動的にね。けど、忘れ物届けてすぐに帰ろうと思ったんだよ。そうしたらまつりさんに捕まっちゃってさ。」

 

そう答えると、かがみはこめかみを抑えながらやれやれと軽いため息を一つついて

 

「姉さんが原因か・・・まったく困った物よね・・・それと慶一くん、注意した方がいいわよ?まつり姉さん慶一くんの事大分気に入ってるみたいだから襲われたりしないようにね?」

 

そんなかがみの物言いにつかさも苦笑しながら

 

「お、襲われるって、どんだけ~・・・」

 

その2人の言葉に俺も困惑の表情をしながら

 

「なあ、かがみ。それって普通逆だよな?俺が襲うから気をつけろってのなら分かるけどさ。」

 

そう返すとかがみは俺を一瞥してニヤリと笑うと

 

「あんたにそんな度胸があるとは思えないからよ。それにあんたは女の子が嫌がるような事をする人じゃないって分かるから・・・。」

 

そう言いつつも最後の方は顔を少し赤らめて俺から視線を外したかがみだった。

 

そしてつかさも俺を見ながらニコニコと笑って

 

「そうだね~。だからわたしもけいちゃんと居ても凄く安心できるんだ~。」

 

そう言う2人の言葉に俺は照れながら

 

「ありがとな、2人とも。俺をそこまで信頼してくれて。」

 

そんな俺に2人とも笑顔で

 

「それもあんたが今まで見せてくれた行動の結果よ。それだけあんたの誠実さがわかるからね。」

「けいちゃんはわたし達にいつも優しくしてくれる、そんなけいちゃんを見てきたもんね。」

 

そう言ってくれる2人にさらに顔を赤くしつつ、俺達は柊家へと戻った。

 

「ただいまー。買い物済ませてきたわよ。」

「ただいまー。けいちゃんのおかげで助かっちゃった。」

「ただいま戻りました。これにて任務完了って事でいいかな?」

 

俺達が帰ってくる頃、丁度いのりさんも帰ってきてて俺を出迎えてくれた。

 

「お帰り、かがみ、つかさ、森村君もいらっしゃい。今日はたくさん食べていってね?」

 

そう言ってくれるいのりさんに俺は

 

「ありがとうございます。それと他に俺のできる事ってありますか?」

 

そう聞くといのりさんは首を振って

 

「後は御飯ができるまではゆっくりしてて?お客さんなんだから遠慮は無用よ?」

 

いのりさんがそう言い終わると同時にかがみが

 

「そういう事。とりあえず慶一くん。私の部屋に行きましょ?ラノベとか読んで時間潰してればいいわよ。」

 

そう言ってくる2人に俺は

 

「分かりました。それじゃお言葉に甘えさせてもらいます、いのりさん。それじゃかがみ、部屋にお邪魔させてもらうな?」

 

2人に言うと、いのりさんは笑って頷いてくれ、かがみは

 

「それじゃ行きましょ?慶一くん」

 

と、俺に一緒に来るように言って来たので、俺も頷いてかがみの後についていくのだった。

 

かがみが着替えを済ます間、俺は部屋の外で静かに待っていた。

 

そして着替えを終えたかがみが俺に部屋に入ってくるように促したので、俺もそれに応じて部屋の中へと入った。

 

「はい、慶一くん。今回の新作よ?きっと面白いと思うから読んでみてね?」

 

そう言ってかがみのラノベを受け取り俺は適当な場所に座って読み始める。

 

かがみも俺と同じように読みかけのラノベを手にとり適当に腰掛けて読み始めていた。

 

気付くと俺は本の世界に入り込みすぎていたようだ。

 

何時の間にか俺の横に座って本を読んでいるかがみに気付かなかった俺は、それを見た瞬間に顔を赤くしていた。

 

幸いかがみには俺のその状態に気付かれずに済んだのだが、後で落ち着いて考えてみるとかがみの頬も少し赤かったような気がした。

 

その後夕食が出来たようなので俺たちは居間へと降りていく。

 

居間に入るとそこには凄いご馳走が並べられていた。

 

「おお・・・これはすごいな・・・」

 

思わず感想を述べる俺につかさもニコニコしながら

 

「お母さんと一緒にがんばってみたよ?遠慮なく食べてね~?」

 

つかさに俺は「ありがとう」と御礼を言い、所定の場所に座る。

 

程なくしてみんなが席につき、ジュースで乾杯をする事になった。

 

乾杯の音頭を取るのは俺をこの夕食に誘ったまつりさんだった。

 

「ではみなさん。かがみのパン食い競争1位と森村君のリレーぶっちぎりの1位を祝してかんぱーい!」

「「「「「「かんぱーい」」」」」」

 

俺は苦笑しながらもその乾杯に応じた。

 

そしてあの最後のレースを振り返ってみんなは

 

「それにしても最後のリレー、ほんとに凄かったよねー。私見てて大興奮だったよ。」

 

と、まつりさんが言うといのりさんもあの時を思い出しながら

 

「あれは私も鳥肌たったよ。あんなのを見たのは初めてかもね。」

 

笑いながらそう言ういのりさん。

 

「あの時は私も応援に思わず熱が篭っちゃったわ。」

 

微笑みながらそう言うみきさん。

 

「私は君なら出来ると思えたからね。あんな風に応援したよ。けど、君はそれに応える力を持っていたね。たいしたものだよ。」

 

感心しながら頷くただおさん。

 

「今考えても夢見てるみたいだったわよね・・・改めて凄い物見た気分ね。」

 

少し興奮気味に言うかがみ。

 

「けいちゃん、約束まもってくれたもんね。絶対諦めないって約束を。うれしかったな~。」

 

ニコニコしながら言うつかさ。

 

俺はそんなみんなの前でただただ照れて恐縮していた。

 

そうこうしながら楽しい夕食は続いていくのだが、時折まつりさんの暴走とそれを力づくで止めようとするかがみにみんなで苦笑していたりした。

 

もちろん惨事になってはまずいので俺がかがみの拳を受け続けて居た訳だけど・・・。

 

とりあえず今回は全部捌ききったので気絶の憂き目を見ずには済んだのだが。

 

そしてその時披露した体捌きを見てみんなにまた感心されたりもしたのだった。

 

そんな楽しい夕食を済ませて俺は、再びかがみの部屋へと食休みも兼ねて戻っていた。

 

かがみとつかさとしばらく談笑していたのだがふいにかがみが

 

「ところで、どうして慶一くんは今日私の家にわざわざ来たの?忘れ物なら学校で届けてくれてもよかったのにさ。」

 

そのかがみの疑問につかさも

 

「そういえばそうだよね?なんでなの?けいちゃん。」

 

俺はそんな2人の質問に少し考え込み、そして

 

「・・・前にも一度こうして柊家にお邪魔した事あったよな?」

 

俺の言葉に2人は「そうね。」「うん。」と言っていた。

 

「あの時も俺は夕食をご馳走になったわけだけど、その帰り道にさ、俺が気付かされた事があったんだ。」

 

その俺の答えにかがみは首を傾げて

 

「気付かされた事?それって?」

 

と言うかがみの言葉に頷きながらさらに言葉を続ける。

 

「俺には本当の両親はいない。そして育ての親はいるけれどその2人が居るのは都内だ。だから俺の家には今猫しかいない。そして、あの日の楽しい夕食を、家族ってやつを体験した時俺は今まで意識してこなかった孤独の寂しさを意識する事になったんだ。」

 

一呼吸置いてまた言葉を続ける

 

「それを感じた時俺は、みんなに俺の家の合鍵を渡して俺の家を好きに使ってもらおうと思った。常に誰かが出入りしている家ならば少なからず孤独を感じる事もないだろうと思ってさ。そうしてみんなが家に来てくれるようになったから最近は俺も寂しさを感じずにすんでいた。」

 

俺は一旦言葉を切り、飲み物を飲んでからまた言葉を続けた。

 

「俺の寂しさも大分解消されてはいたけれど、かがみの忘れ物のノートを見たときに俺は柊家にお邪魔した時の事を思い出してさ。なんとなくまた柊家に訪れて見たくなったってのが本当の所さ。まさかまつりさんに捕まって夕食ご馳走になるとは思わなかったけどさ。」

 

後頭部を掻きながら言う俺を見て笑うかがみとつかさだった。

 

「そういうことか。慶一くんも意外と寂しがりやなのね?」

 

ニヤニヤしながらかがみが言う。

 

「でもけいちゃんの寂しさが少しでも紛らわせられるのなら家を頼りにしてくれた事はうれしいかな?」

 

つかさもニコニコしながらそう言ってくれた。

 

俺は2人に顔を赤くしつつ

 

「かがみ。今更その部分は否定はしないよ。それとつかさ、そう言ってくれてありがたいよ。今後も遊びに来る事もあるかもだけどいいかな?」

 

そう2人に聞くと2人とも笑顔になりながら

 

「構わないわよ?でも今度は前もって言ってから来てよね?今日みたいな不意打ちは流石にびっくりするし。」

 

つかさも頷きながら

 

「わたしも歓迎かな?けいちゃんが来てくれる事もうれしいから。」

 

そう言ってくれるつかさに俺は御礼を言おうと口を開きかけた時、ふいにかがみの部屋のドアが開き

 

「私も歓迎よ?いつでも遊びにおいで。」

「私も大歓迎。森村君、私とつきあおうよー?」

 

俺たちの話を盗み聞きしていたっぽい、いのりさんとまつりさんが飛び込んできて俺にそう言った。

 

「ちょっと、姉さん達、いきなり飛び込んできてなんなのよ!」

「あはは、おねえちゃんたちどんだけ~・・・」

 

そして俺も苦笑しながらもそんな風に言ってくれる2人に心の中で感謝していたのだった。

 

柊家で残りの休日を過ごした俺は、柊一家に見送られて柊家を後にする。

 

その際にただおさんとみきさんもまた遊びにきなさいといってくれた事が嬉しかった。

 

明日からまた学校が始まる。

 

これからも俺は、こんな風に柊家に訪れてみたいと考えていた。

 

そんな幸せな事を考えていたからこそ、その数日後に俺たちの関係に影響を及ぼす事件の気配を感じる事はできなかった。

 

俺達の絆に訪れる危機の足音はすぐ側まで来ていた。

 


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