らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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旋律の休日1~泉家初訪問~

波乱と激闘の体育祭が終わり、俺達は日をまたいでの大打ち上げ会を行った。

 

体育祭の次の日に日曜日を設定してあるので、体育祭の疲れを癒す為に貰った休日だった。

 

午前中のきりのいい時間、こなた以外のみんなが家へと帰ったのだが、こなただけは打ち上げで散らかった部屋を片付けるのを手伝うと言って最後まで残ったのだった。

 

一通り片付けを済ませてこなたも帰ると言ったので、俺はこなたを送って駅まで一緒に行く。

 

「何か悪いな。最後まで残って片付け手伝ってもらっちゃってさ。」

 

自転車の後ろにこなたを乗せて走りながら俺は、こなたに打ち上げの片付けの事に対する礼を言うと

 

「いいんだよ。私がやるって言ったんだし、それにいつも慶一君の家使わせてもらっちゃってるしね。たまには役にたたないとねー。」

 

こなたは笑いながら俺にそう言う。

 

俺はなんともありがたい気持ちになりつつ

 

「こなたは今日はこれからどうするんだ?どこかへ出かけるのか?」

 

一応こなたにこの後の行動について訪ねると

 

「うーん、これから家に帰って少し家の事やろうと思ってるよ。ここの所泊りがけが続いてたしおとーさんに家の事まかせっきりだったからさ。」

 

俺はそのこなたの答えに、こなたの所は母親がおらず、父親と2人で今までやってきたのだという事を思い出していた。

 

その事に考えが巡った時、俺はこなたに一つの提案を持ちかけていた。

 

「なあ、こなた。家事とかやるっていってたよな?それ、俺も手伝ったらだめか?考えてみりゃ俺はいつもお前にそういう面で世話になりっぱなしだ。たまにはお前に何かしてやりたい、って思うからな。」

 

駅に着き自転車を降りたこなたに俺はそう声をかけると、こなたはそんな俺の言葉に少し嬉しそうな顔を見せたが、そのすぐ後その場で考え込み始めた。

 

少しの間考え事をしていたこなただったが、ふと顔を上げると

 

「その慶一君の申し出はありがたいんだけどさ。昨日のおとーさんの剣幕見たでしょ?それに、昨日の今日だから家にきたら慶一君絶対ただじゃすまないと思うよ?それでもいいの?」

 

俺に確認するように聞いてくるこなたに俺は軽く笑いかけながら

 

「どの道何らかの用事でいつかはこなたの家にもお邪魔する事になるかもしれない、と思ってたんだ。それが今日であるか後日であるかの違いしかないのなら今行ったって状況は変わんないと思うぞ?」

 

そうこなたに言うと、こなたはまた少し考えるそぶりをしたが再び俺を見ると

 

「なら、慶一君の気持ちに甘えちゃおうかな?とりあえずはおとーさんの事は覚悟しといてねー?」

 

いたずらっぽく笑いながら言うこなたに俺も頷き、2人で電車に乗り込みこなたの家へと向かったのだった。

 

こなたの最寄駅に着き、改めて駅の名前を確認すると、その駅もまた俺の住む町の隣町だという事がわかった。

 

「幸手駅ね・・・俺の住んでる場所ってこなたやかがみのところの中心にあるのかもしれないな・・・」

 

何気にそう呟いていた俺だが、その呟きに気付いたこなたも

 

「どうやらそうみたいだね。みゆきさん所とかとは離れちゃってるけどさ。なんとなく不思議な感じだよねー?」

 

そう返してくれるこなたに俺も頷きで返してこなたの道案内の元、俺は泉家へとこなたと共に向かった。

 

こなたの家は駅からはさほど離れていない場所にあり、程なくして俺たちは泉家の前に辿り着く。

 

家の前で一旦立ち止まりこなたは俺の方を見上げながら

 

「さあ、着いたよ?ここが私の家。慶一君、覚悟はいいかな?」

 

不敵な笑みを浮かべながら俺にそう言ってくるこなたに俺は

 

「ああ。どんとこい、だ。でも・・・2人で暮らすには少し広い家かもしれないな。」

 

こなたの家に対する俺の感じたままの感想を言うと、こなたは軽く微笑みながら

 

「やっぱりそう思うよね?でもまあ、おとーさんと2人で10数年も一緒に暮らしてるからね。もう慣れっこになってるよ。」

 

そう言いつつも最後の方は少しだけ寂しそうな表情が見て取れた。

 

俺はそんなこなたの頭を軽くぽんと叩くと

 

「お前が望み、お前のお父さんが認めてくれるのならいつだって遊びに来てやるよ。」

 

軽く微笑みながら俺もこなたにそう返すとこなたはそんな俺を見て顔を赤くしていたが、すぐに我に返ると

 

「そ、そうだね。そうなると嬉しいけど・・・でも、おとーさんに認めてもらうのは大変だよー?難攻不落といってもいいくらいだからね。そもそも男友達を作る事すら許さないとか言ってるおとーさんだしね。慶一君はそんなおとーさんを攻略できるかなー?」

 

そう言いながらニヤニヤとした視線を俺に向けてくるこなたに俺も軽いため息を一つつきながら

 

「まさに攻略難易度高めだな・・・ま、とりあえずは当たって砕けろ、かな?」

 

苦笑しながらそう言う俺をこなたは笑って見ていたのだった。

 

そしていざ心を決めて俺はこなたの後について泉家へと入っていく。

 

「ただいまー。今帰ってきたよー?」

 

玄関に入り、こなたがそう声をかけると同時に、奥の方から物凄い勢いでやってくる人が見えた。

 

「こなたー!おかえりー!お父さん、寂しかったぞー!?って、お前はあの時のこなたをたぶらかす悪い虫だなー!?」

 

こなたを激しく抱きしめながら俺の存在に気付いたこなたのお父さんが俺を睨みつけながらそう怒鳴りつけてきたが、俺はとりあえずきちんと挨拶はしておこうと思い

 

「あの時はどうもです・・・改めまして、こなたさんのクラスメートの森村慶一といいます。一度ちゃんとご挨拶をしたいと思いまして、今回こなたさんと共にこちらへとお伺いさせていただきました次第です。」

 

こなたのお父さんに挨拶をすると、こなたは抱きついたこなたのお父さんを引き剥がし、そんなこなたの態度に少し寂しげな顔をしてから俺の方に向き直り、俺を鋭い目で睨みながら

 

「森村君、といったね?一応の礼儀はできているようだ。そこの所は認めよう。それで?今日は一体家に何の用があってきたんだ!」

 

俺はそんな風に言うこなたのお父さんの目を見据えながら

 

「俺はいつもこなたさんには色々な事でお世話になってきました。けど俺自身はこなたさんに対してお世話になった事に対する恩返しをしていないと思ったんです。それで今回、こなたさんが家の事をするということでしたので、俺はお世話になってきた恩を少しでも返す意味でも今日はこなたさんのお手伝いをしたいと思いましてこちらへとお邪魔させていただいたんです。」

 

そんな俺にこなたもフォローするように

 

「まあ、そういう事なんだよ。おとーさん。私は悪いからいいっていったんだけどさ。慶一君がどうしても、っていうから、じゃあお願いしようかな?って事になった訳なのだよ。」

 

こなたの説明を聞きつつも、未だ不信感を拭えないといったような目つきで俺を見るこなたのお父さんはしばしの沈黙の後

 

「・・・・・・いいだろう。その心がけは認めてやろう。だが、少しでも娘に妙な真似をしたらお前を叩き出すからそのつもりでな。」

 

渋々、本当に渋々と俺がこなたを手伝う事への許可を出してくれたのだった。

 

俺はこなたのお父さんに許可をもらった事へのお礼を言って家へとお邪魔させてもらった。

 

「ありがとうございます。それじゃお邪魔させていただきますね?」

 

そう言って家に上がらせてもらった俺は、こなたに何をすればいいのかを聞いてみることにした。

 

「こなた。とりあえず俺は何をすればいい?」

 

こなたにそう訪ねると、こなたは少し考える仕草をしてから

 

「とりあえず私も着替えたりしてくるから居間で待っててくれるかな?詳しい事はそれからって事で。」

 

こなたの言葉に俺も頷いて

 

「わかった。それじゃ居間で待ってるからな。準備は急がなくていいぞ?」

 

そう返すとこなたも「わかったよー。」と返事をして2階へと上がっていった。

 

俺はとりあえず、こなたに言われたとおり、居間へと移動して適当に腰掛けてくつろぎつつこなたを待つ事にした。

 

そうこうしてるうちにこなたのお父さんもなにやらノートパソコンを持って俺のいる居間へとやってくると、手元の資料のような物を見ながら俺に監視の視線を送りつつなにやら作業を始めた。

 

テーブルに広げられている資料を何気に横目で見ながら、何をしているのだろう?と心の中で思いつつふと1枚の資料に書かれている名前を見て驚いた。

 

そこには”泉宗二朗”の名前があったからだ。

 

俺はその名前を見た時、ほとんど反射的にその事をこなたのお父さんに質問していた。

 

「あ、あの、こなたのお父さん。その資料に書かれている名前ですが、泉宗二朗ってまさかこなたのお父さんの事なんですか?」

 

俺の質問に訝しげな視線を送りながら

 

「そうだけど、それがどうかしたのかい?」

 

不機嫌そうにそう答えるこなたのお父さんに俺は

 

「それが本当ならこなたのお父さんは小説家って事ですよね?泉宗二朗先生、なんですか?」

 

そう俺が質問をすると、こなたのお父さんは少し驚いたような表情になって

 

「君は、俺の事を知っているのかい?」

 

その答えに俺は喜びと興奮が一気にやってきたような感じになり

 

「はい!何しろ俺が尊敬している小説家さんのお名前ですから!まさか、こんな場所で会えるなんて思いもしませんでした!」

 

そんな俺の言葉にこなたのお父さんは急に機嫌がよくなって

 

「そうかそうかー。君みたいな若者にも読んでもらえているとは光栄だね。ところで俺の作品のどれが好きかな?」

 

そう聞いてくるこなたのお父さんに俺は

 

「・・・・・・等ですね。「運命の星の中で」は自分の中でもかなりお気に入りですよ。」

 

俺は、自分の知っているこなたのお父さんの書いた作品を列挙して、最後に俺のお気に入りを言うと、こなたのお父さんは喜々とした表情で

 

「おお、なかなか見る目があるね、君。この作品はねー・・・・・・」

 

そう言いながら俺に作品の説明をしてくれるこなたのお父さんと楽しく談笑しながらこなたを待つのだった。

 

こなたside

 

慶一君に居間で待っていて欲しいと告げて、私は自分の部屋に荷物等を置いて着替えをすませてしまおうと思い部屋へと向かって2階へ上がった。

 

部屋に戻り自分の部屋の状態を見ながら

 

「・・・うーん・・・ちょっと散らかってるかなー?ここも掃除手伝ってもらっちゃおうかな?」

 

そう呟きながら私は慶一君に手を借りたい場所を考えながら着替えを始める。

 

そして着替えをしながら先程のおとーさんと慶一君とのやり取りを思い出しながら

 

「慶一君一人下に残してきたけど、下には確かおとーさんいたよね・・・大丈夫かなあ?慶一君、ひどい事言われてなければいいけど・・・」

 

そう考えているうちに着替えも済んだので、私は部屋を出て1階におそるおそる戻ろうとしたのだが、私の予想に反して下からおとーさんと慶一君の楽しそうに笑う声が聞こえてきたので、私は不思議に思いながらもとりあえず居間まで向かうのだった。

 

そして居間へと戻るとそこには私が思っていた事とは逆の展開が起こっていたのだった。

 

「慶一君、おまたせー・・・ってあれ?おとーさんも楽しそうに話してるけどなんかあった?」

 

そう私が声をかけと2人とも笑顔のまま私の方に向き直った。

 

慶一side

 

そうじろうさんと<話しているうちに本名がわかった>談笑していると準備を済ませたこなたが2階から戻って来て俺たちに声をかけてきた。

 

まずそうじろうさんがそれに反応して

 

「おお、こなたか。いやー、こちらの慶一君、中々話せる子じゃないか。最初は気に入らなければすぐにでもたたき出してやろうと思っていたけどな、話を聞いてみると彼はお父さんの小説のファンなんだそうだ。それでお父さんの作品の事でいろいろ話をしてて盛り上がってててな。」

 

というそうじろうさんの答えにこなたは目を丸くして驚いていた。

 

「こなたも早く俺に教えてくれればよかったのに。俺、そうじろうさんのファンなんだぞ?こんな所で会えると分かってたらサイン色紙でも持って来たのになあ・・・」

 

さらに俺の答えにも呆然としながら俺を見ているこなた。

 

「こなた。折角彼が手伝いをしてくれるって申し出てくれてるんだ。彼の好意に甘えさせてもらいなさい。俺は部屋に戻って執筆を続けてるよ。それじゃ森村君。こなたの助けになってやってくれ。」

 

そう言ってくるそうじろうさんに俺も大きく頷いて

 

「分かりました。自分の出来る事ならばがんばらせていただきますのでこちらはご心配なく。新作を期待していますからがんばってくださいね?宗二朗先生。」

 

そう返事を返すとそうじろうさんは照れ笑いをしながら

 

「いやあ、先生なんて呼ばれたらむずがゆいねえ。ともかく俺の作品を期待してくれる読者の為にもがんばるかー」

 

そう言いながら自分の部屋に戻っていくそうじろうさんを見送るとまだ呆然としているこなたに声をかける。

 

「おーい、こなたー?大丈夫かー?戻ってこーい。」

 

軽くこなたの方を揺すってやるとハッと我に返ったこなたが俺に

 

「ね、ねえ、慶一君、一体どうなってるの?なんでおとーさんあんなに上機嫌に・・・それに慶一君、おとーさんの作品を知ってるの?」

 

そのこなたの質問に頷きながら

 

「ああ、知ってるさ。なにせファンだからな。それにそうじろうさん、俺がファンだと知ったとたんに上機嫌になったんだよな、それからは意気投合しちゃったというわけなんだが。それとこなたは自分のお父さんの作品を知らないのか?」

 

俺の答えに前半部分は納得したようだったが後半部分は

 

「そういう事だったんだ・・・えっと、私活字系苦手なものだからお父さんの小説って読んだ事ないんだよねえ・・・ラノベですら読まないしさ」

 

そう説明していた。

 

俺はこなたの説明を聞きながら苦笑していたが

 

「こなた、今すぐでなくてもいいから一度くらいはお父さんの作品を読んでやれよな。お父さんもきっといつかは目を通してほしいって思っているはずだからな。」

 

そんな俺の言葉にこなも頷きながら

 

「そうだね・・・いつかはそうしてみるつもりだよ。ともあれ、なんとかおとーさんに認められたみたいだね、一応ミッションクリアーかな?」

 

笑顔でそう言うこなたに俺は

 

「いーや、まだまださ。それにお前を手伝う為に来たんだしそれも済ませなきゃ真のミッションクリアーにはならないってもんだ。そうだろ?」

 

そう言うとこなたはぺろっと舌を出して

 

「そういえばそうだったね。それじゃ慶一君。手伝って欲しい所なんだけどさ・・・・・・」

 

こなたは俺に手伝って欲しい場所の説明をすると俺に掃除用具を渡して

 

「それじゃ、指定の場所をお願い。私も洗濯とかそっち方面を片付けちゃうからさー。」

 

そう言って風呂場のほうへと向かおうとするこなたに俺も

 

「わかった。それじゃ言われた場所をやっておくよ。何かあったら呼んでくれよー?」

 

遠ざかっていくこなたにそう声をかけるとこなたも「わかったよー。」と言って再び風呂場へと向かったのだった。

 

俺はまずこの居間から始める事にして掃除機をセットすると、変な物を吸い込んでしまわないように注意しながら慎重に掃除機をかけていく。

 

だが、以外にもそんなに汚れてはいなかったようで、そんなに時間をかけないまま掃除機がけが済んだ。

 

俺はそんな意外に綺麗な部屋の状況を見ながら

 

(こなたがこうやって家事やれるようになるまではそうじろうさんがやってたんだって言ってたよな・・・なんだかんだでそうじろうさんもこなたがいない時でもきっちりとやってる人なんだなあ・・・)

 

そう心の中で感心しつつも俺は次の部屋へと掃除しに向かうのだった。

 

こなたの家は2人暮しであるがゆえに部屋数もそれなりにはあるようだった。

 

そして、その中でこなたに割り当てられた部屋の掃除をこなしながら、最後に辿り着いたのはこなたの部屋だった。

 

俺が丁度こなたの部屋へと辿り着く頃、こなたも自分のするべきことを終えて戻ってきてたようで、こなたの部屋の前で鉢合わせる形になった。

 

「お?こなた。そっちは済んだのか?俺の方も後はこの部屋を残すのみだけどさ。」

 

俺がそう言うとこなたも

 

「うん。こっちはあらかた完了だよ?後は私の部屋を手伝ってもらうからそのつもりでね。それじゃどうぞー?」

 

そう言って部屋のドアを開けるこなたに俺は、困惑の表情をしながら

 

「ええ?最後の部屋はこなたの部屋だったのか?けどいいのか?俺がこなたの部屋の掃除手伝ったりしても。」

 

俺がそう言うとこなたは頷きながら

 

「うん。それも私が考えていた事だからねー。まあとりあえず入って入って。」

 

俺の背中を押しながらそう言うこなたの勢いに押され、俺はこなたの部屋へと入る。

 

部屋に入るとそこには所狭しとアニメポスターや漫画、フィギュアなどが並んでいたのだった。

 

俺はそんなこなたの部屋を物珍しげに見回していたが、こなたがその横で俺のわき腹を肘でチョンチョンとつつきながら

 

「ちょっと散らかってて恥ずかしいからあまり見ないで欲しいなあ・・・まあ、とりあえず私が指示するからその通りに動いてくれる?」

 

部屋の状況を見られて少し顔を赤くしているこなたにそう言われ、俺はとりあえずこなたの指示通りに作業をこなしていった。

 

「あ、それここにしまってー?」

「そう、それはそこでいいよー?」

「あ、それはね・・・」

「それじゃそっちから掃除機がけお願いー。」

 

とりあえずてきぱきとこなしていく俺。

 

色々奮闘しているうちに掃除は終了とあいなった。

 

道具を片付けて俺はこなたに部屋に戻っててくれる?と言われたので掃除用具を片付けた後、俺はこなたの部屋へと戻っていた。

 

部屋を改めて見回してみると、こなたの机の上には今回の旅行で撮ったツーショット写真が飾ってあった。

 

それをみた俺は少し顔を赤くしつつも、とりあえず意識しないようにとこなたの持っている漫画本へと目を移したのだった。

 

そうしているうちにお茶とお茶菓子を持ったこなたが部屋に戻ってきた。

 

「慶一君、今日はお疲れ様。手伝ってくれたおかげで助かったよ。ありがとうね。」

 

改めて御礼を言われた俺は少し照れながら

 

「いや、そもそも俺が手伝いたいって申し出たんだから改まって御礼を言われる事じゃあないさ。」

 

そう謙遜しながらこなたに答えると、こなたはクスクスと笑いながら

 

「あはは。やっぱり慶一君は控えめだよねえ。変に自慢したりえらそうになったりしない所が慶一君のいい所でもあるよねー。」

 

そう言いながらこなたはふと机の上の写真立てを見て

 

「慶一君と出会ってからもう半年くらいたつんだね。ねえ?覚えてる?初めて会った時の事。」

 

俺に視線を戻しながらそう言うこなたに俺は

 

「ああ、ちゃんと覚えてるよ。食堂で俺が買ったコロネをお前にあげたんだよな。」

 

あの頃の事を思い出しながらこなたに言うと、こなたも懐かしそうに目を細めて

 

「そうだよねー。あれがあったから私達、友達になれたようなものだよね。」

 

そう言いながらも何事か考え込んでいるこなただったが、不意に俺の方を向くと

 

「決めた。私正直に言うよ。実はさ、あの時チョココロネを貰った日にさ、私、君に興味を持ったんだよね。同じクラスではあったけど話した事はなかった君だった。だからあの時までは名前すらもうっかり忘れている有様だったんだよねえ・・・」

 

後頭部をぽりぽりと掻きながら言うこなたの言葉を俺は黙って聞いている。

 

こなたはさらに言葉を続けて

 

「けど、あの時君に自己紹介されてから君の事を思い出して、君からチョココロネを貰うっていうイベントがあってからさ、もう一度君に会えたなら今度こそは友達になろうよ、って言うつもりだったんだ。そしてそれは君が八坂さん達を連れて2人の合格祝いをしている時に偶然にも再会して実現した。また会えた事が嬉しかったんだよね。」

 

一旦言葉を切るこなた、一呼吸置いてさらに言葉を続ける

 

「私は、あの3人と話している時も自分の趣味の事も話していたりしたから、君が私をどんな風に思っているのかが気になったよ。私があの3人と話している内容も君の耳にも入るだろうと思っていたしね。私はこんなだからさ。そして、友達になって欲しいと言った時に引かれるかもしれないとさえ覚悟してたよ。でも君はそんな私の葛藤さえあっさりと蹴散らして私の思いに応えてくれた。本当に驚きだったんだよ?ねえ慶一君。今だから聞きたいんだけどさ。どうして私のその申し出を受けてくれたの?」

 

俺を見つめながらそういうこなたに俺も、こなたが自分の心情を正直に語ってくれた事に敬意を表しながら俺も、俺の思っていた事を正直に話すことにした。

 

「こなたがその時に思っていた事はよく分かったよ。それじゃ俺もお前の気持に応える為に正直に言う事にする。実を言うとな、あのチョココロネのイベントがある前から俺はお前ら4人の事は知っていたんだ。お前らが楽しそうに話す姿をいつからか見かけるようになり、俺は気付けばお前らの事を目で追うようになっていたんだ。そうしてお前らの姿を目にするたび、俺もあの輪の中に入れたら楽しそうだなあと思っていた。あの頃の俺はきっかけが欲しかったんだよな。みんなと知り合うきっかけがさ。」

 

一旦言葉を切り一呼吸置いて再び話し始める俺

 

「そうしてもやもやとしながら気付けば1年が過ぎようとしていた。結局きっかけがつかめないままにもう諦めるしかないかなあ?と思っていた時、こなたと話す機会ができた。あのイベントだな。あの時は俺はお前ががっかりしてる姿に罪悪感を覚えていた、と同時にチャンスだとも考えていた。そして思い切ってコロネをだしにお前に声をかけたんだ。結果は、お前と話すことが出来たと同時に、コロネをお前に渡す事できっかけにすることができた。けど、あれからしばらくはまたお前に接触する機会もなくて再びどうするべきか悩んでいた時に、かがみたちとも仲良くなるためのきっかけがそれぞれに出来ていたんだよ。あくまでもきっかけだけだったけどな、あの時は。」

 

お茶を一杯すすりながら再び話を続ける

 

「けどそんな折、こうからの誘いで2人の合格祝いをすることになった時、再びお前と出会えた。俺はあの時はお前に、お前が俺に言ってくれた”友達にならない?”って言葉を言いたかった。けどすぐにその言葉を出せなかった時に、お前が俺に友達になろうよって言ってくれた。って訳だったんだ。そして、お前の申し出を受けたのは俺もお前と同じ気持ちだったからだな。出来ることなら友達になりたい、ってさ。」

 

俺の話を聞いたこなたは俺の方をじっと見つめていた。

 

「面白いもんだね。結局お互いに気付けば友達になりたいって思ってたんだね。私はさ、君と今友達でいる事が嬉しいよ。君はどうかな?」

 

こなたがそう俺に言う。

 

俺はその言葉に迷わず

 

「それを改めて聞くか?俺の答えは言うまでもないさ。こなたと一緒なんだからな、俺の気持ちもさ。」

 

そう言いながらさらに言葉を続けて

 

「それに、お前には感謝してるんだぞ?旅行の事もそうだけど、かがみ達とも仲間になれたのはお前が取り持ってくれたおかげなんだからな。2年生になった時、あの日にお前がみんなを紹介してくれたから今がある。俺にとってはかけがえのない思い出でありきっかけさ。」

 

そうこなたに伝えると、こなたも嬉しそうに笑ってくれた。

 

「そう言ってもらえると嬉しいかなー。まさに君を友達にした甲斐があるってもんだよね。」

 

俺もまたこなたに笑い返した。

 

「俺も同じさ。そしてこれからもよろしくな、こなた。」

「うん。こちらこそだよ。私の方こそよろしく。」

 

そう言ってこなたは満面の笑みを見せたのだった。

 

その後もいろいろな事を話ながらゆったりとした時間を過ごした。

 

しばらくして頃合の時間になり俺は泉家を後にすることになった。

 

そして帰る頃には俺は、上機嫌なそうじろうさんにより、泉家への出入りは許可されたも同然になったのだった。

 

今日、俺はこなたと心の中にある真実を暴露しあったが、その事でさらにお互いの距離が縮まり、絆も深まったような気がした。

 

そして、次に来る時までには今度はサイン色紙を忘れずに来ようと誓う俺だった。

 

それから、こなたと別れて家に帰る途中、俺の携帯にかがみからの着信が入ったのだった。

 


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