らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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旋律達の夏休み3〜コミケへ行こう後編〜

こなたやかがみとコミケを楽しむ事に決めた俺は、会場への入場開始を今か今かと待っていた。

 

やがてAM10:00を時計が示すと、スタッフから「では、これより入場を開始します。焦らずゆっくりと前の人について会場入りしてください!!」という声がかかり、前列から徐々に会場へ向けて列が動き始めた。

 

「始まったね。」

 

列が動き出すのをみて呟くこなたに俺も頷いて

 

「ああ。さあて、いっちょ気合入れていきますか。かがみ、入る時は東館からになるから入ったらお前は右のエリアへ入り込むと言う形になる。俺とこなたは左側だ。」

 

一応方向の指示をかがみにしておく。

 

「入って右のエリアね?わかったわ。」

 

さらに俺は言葉を続けて

 

「わからなくなったらトランシーバーで現在位置等を連絡してくれ。エリア上部に掲げられている表示標と番号を教えてくれればある程度の位置はわかるからなんとかなる。」

 

そう言う俺にかがみは頷いて

 

「わかったわ。その時はよろしくね。」

 

そう言うかがみに俺も頷くと、列の様子を伺うため視線を戻した。

 

そして少しづつ俺達のいる列も動き始めたのだった。

 

「うーん、今回も楽しみだねー♪」

 

こなたは満面の笑顔で楽しそうにそう呟く。

 

俺は、そんなこなたを見ながら軽いため息を一つつきながらも

 

「なんだか嬉しそうだな、こなた。」

 

と言う俺の言葉にこなたは、親指をびしっと立てながら

 

「まあねー。だっていつもはお父さんが来れないときは私一人できてたんだもん。だけど今回は慶一君やかがみが一緒だからさ。一人じゃないって事が嬉しいんだー♪」

 

笑いながらそう言うこなたに俺は、こういうのは理解のある人がいないと結局は一緒に行ってくれる人は限られてるのだと言う事を改めて考えつつ

 

「そうか、確かにこういうのって理解してくれる友達とかいないと一緒になんて中々来てくれないよな・・・」

 

難しい顔をしている俺に、かがみがやれやれと両手をひろげつつ

 

「そんな中では慶一くんはこなたにとって理解者の一人だったのかしらね?」

 

と言うと、こなたはちっちっちっと人差し指を振りながら

 

「慶一君程でなくてもかがみもだよ?ある程度は私の事理解してくれる人だって思ってるから今回思いきって声をかけてみたのだよ。結果は私にとって満足のいくものになったけどねー」

 

と、にんまりとした顔で言うこなたに俺達は苦笑するしかなかった。

 

「まあ、友達ならその義理を果たすとしますか。」

 

こなたに笑顔を向けながらそう言うと、こなたも嬉しそうにしていた。

 

そうこうしているうちに東館エリアに入り込む俺達。

 

「建物の中もなかなかの広さね・・・」

 

中を見回しつつそう感想を呟くかがみにこなたは

 

「前の晴海会場も広かったけどここもなかなかだと思うよ?」

 

そう説明するとかがみは額に手を当てながら

 

「行った事もない会場の事を言われてもよくわかんないわよ・・・ともかく私は右側ね?それじゃ行ってくるわ。」

 

そう言いながら右側の会場へ突入していくかがみを見送り、俺とこなたも

 

「よし、それじゃ俺達も行動開始といきますか。」

「そうだね。それじゃ慶一君、作戦どおりによろしくね。」

「おう。それじゃ何かあればトランシーバーに連絡な。」

「わかったよー。それじゃがんばろうね。」

 

お互いに頷いて東館左エリアへと突入する俺達だった。

 

かがみside

 

2人に言われて私は会場の見取り図を見ながら、こなたに頼まれた本を置いてある場所を探して歩く。

 

その会場内もうんざりするような人の波で、私は早くも心がくじけそうになっていた。

 

それでも人ごみを掻き分け目的地を目指して進むと、まず最初の場所へついたので

 

「すいません、新刊3冊づつお願いします。」

 

そう言ってこなたからもらってあるお金を支払い受け取った本を見て私は思わず

 

「な、何よこれ!!」

 

とその場で顔を赤くして叫んでしまった。

 

周りの人が奇異の目で私を見て通り過ぎていく中、私は我に返り

 

(な、なんなのよ、なんなのよこれ、こんな本扱ってるなんて全然聞いてないじゃない!ひょっとして他に回る所もこんなのばっかりなの?こなため・・・後で覚えてなさいよ!?)

 

そう考えつつも、とりあえず果たすべき役割はきっちり果たしておこうと他の頼まれた場所を回る私だったが、その度に本を見ては赤面するを繰り返していた。

 

ほとほと疲れてきた頃、こなたから頼まれた所は何とか回り終えたので、私の目的の場所に向けて移動を開始した。

 

人垣を掻き分け、目的地に辿り着いてみると机の周りには私の知ってるラノベの挿絵を書いてる人の絵が飛び込んできた。

 

私はそれを見た瞬間嬉しくなり、その机の所へ行って売り子さんに

 

「あ、あのすいません。こちらの作品集ってまだありますか?」

 

おずおずと質問してみると

 

「ええ。まだ在庫はありますからどうぞ見ていってください。」

 

と言う売り子さんの言葉に甘えて、しばしその人の作品集とかを見ていた。

 

「えっと、これとこれを下さい。」

「ありがとうございます。全部で1800円になります。」

 

そう返事をしてくれる売り子さんにお金を渡して、私はお気に入りの絵師さんの作品集を手に入れたのだが、もう一つ気になっていることがあったので

 

「あ、あの、これを描いてらっしゃる方が来ているって事を友人に聞いてきたんですけど・・・」

 

と売り子さんに聞くと、売り子さんは

 

「○○さーん?ファンの子らしい人が会いたいらしいですよー?」

 

と絵師さんを呼んでくれたみたいで、奥からこの絵を描いた絵師さんが来てくれて

 

「やあ、こんにちは。僕を呼んだのは君かな?」

 

若くて人のよさそうな絵師さんらしい人が私に声をかけてきたので、私は緊張しながら

 

「あ、は、はい。その、私、あなたの描く絵のファンでして、ラノベの挿絵とかもかかれていますよね?」

 

と私がラノベの事を尋ねると

 

「うん、そこでも僕は描かせてもらってるね。そうか、嬉しいね、わざわざ訪ねて来てくれたなんて。」

 

○○さんは照れながら私にそう言う。

 

「あ、あの、お願いすればサインもいただけるとか友人に聞いてきたんですが・・・」

 

と言うと、○○さんも私の聞いた事ににっこりと笑って

 

「うん。まあこんな僕のサインでよければいいけど、それでどこにかくといいかな?」

 

と言って来たので私はさっき買った作品集にサインをしてもらおうと先程買った物を取り出して

 

「こ、これにお願いしてもいいですか?あの、できれば柊かがみさんへと入れてもらえると・・・」

 

そう言うと、○○さんは私から作品集を受け取り、その余白のページにサインをしてくれた。

 

「・・・・・・柊かがみさんへ、っとこれでいいかな?」

 

と言ってサインを描いた作品集を返してくれた。

 

「あ、ありがとうございます。これ、大事にしますね?これからもお仕事がんばってください。」

 

サインをもらえた事のお礼を伝えると○○さんは

 

「こちらこそ、わざわざ来てくれてありがとう。これからも応援してね?」

 

そう言う○○さんに「はい!」と返事をしてペこりと頭を下げてその場を立ち去ったのだった。

 

全ての用事を終えた私は、とりあえず人ごみから逃れられる場所へと向かい、こなた達に連絡を取るのだった。

 

こなたside

 

かがみと別れ慶一君とも分散して私は私の目指す目的地を回っていく事にしたのだった。

 

「ふむ、いい流れかもしれないね、今回は買いのがしは少なくて済みそうだよ。」

 

そう呟きながら目的地を次々と回っていく。

 

「これ3冊づつね。」

「はい、毎度ありー」

「こっちも新刊よろしくー」

「はい1500円です。」

「この限定グッズをお願いー」

「これは2000円になります」

 

矢継ぎ早に買い物を済ませて行き、私はいよいよメインの買い物をするべく、壁サークルへと足を運ぶ事にしたのだった。

 

「こちらが最後尾になりますー。4列でお願いしますー」

 

スタッフの声とともに列が形成されている場所へと行き、最後尾の札を持つ。

 

そしてすぐ後ろに人が並びその札を渡しながら私は順番を待つのだった。

 

順番を待ちながら私は2人に一応の連絡を入れるためトランシーバーを用意して連絡を試みる

 

《こちらこなた。慶一君か、かがみ、聞こえてたら応答してください、どうぞー?》

 

それからしばらくすると、かがみから連絡が入って来た。

 

《こちらかがみ。こなた、あんたの方はどうなの?》

《かがみ?私は今大手のサークルに並んでるとこだよ?そっちの用事は済んだ?》

《まあ、あんたに言われたところは大体ね。それとこなた、あんた私にこういう本扱ってる事言ってなかったでしょ?おかげでこっちはものすごく恥ずかしかったのよ?それに私達まだ18歳にもなってないのにこういう本買ってもいいわけ?》

 

私はかがみにこういう本を扱ってる事を伝えるの忘れていた事に気付き、少し焦ったが

 

《あはは、でも私が読むわけじゃないからさー、お父さんに頼まれたからついね。》

《ついでこんな本買わせようとするな!!それと、あんたの方はどのくらいかかりそうなのよ?》

《えーっと今大手のサークルのとこ並んだんだけどそこが後30分ほどかな?後一箇所あるんだけどそこが1時間程度で何とかなればいいんだけどね。》

《そんなに?私はどうしてればいいのよ?》

《とりあえず私の現在位置教えるからこっちに来る?それとも慶一君と合流しとく?》

《・・・とりあえず慶一くんの方にも聞いてみるわ。その上でどうするか決めたらまた連絡するわ。》

《わかったよー、それじゃあとでねーオーバー?》

 

そう言うやり取りをしているうちに、徐々に私の順番が近づいてきた。

 

(うーん、かがみに説明し忘れたから後で殴られるかもしれないなー(汗)でも向こうは何とかなったみたいだね。でも流石は大手、できる列は半端ないね・・・)

 

等という事を考えていると、ようやく私の番がきたので、私は新刊を購入して次の大手へと回りに行くのだった。

 

慶一side

 

かがみと別れ、こなたとの分散して俺は俺の担当を回っていた。

 

俺の方は時間のかからない中堅はあまりなく、大手の方に目標が集中する形になった。

 

手早く中堅を片付け大手サークルに並ぶ俺だったが、順番待ちをしている時かがみからの連絡が入った。

 

《こちらかがみ、慶一くん聞こえる?》

 

(ん?かがみから?とりあえずトランシーバーを・・・)そう考えながらトランシーバーを取り出す俺。

 

俺は、すぐさまかがみとの交信を始めるのだった。

 

《こちら慶一。かがみ、どうした?》

《あ、慶一くん?こっちは済んだからこれからどうしようかと思っててさ。さっきもこなたの方にも連絡はしたんだけどね。慶一くんの状況を見て決めようって思っててさ。》

《うーん・・・こなたはなんて?》

《大手に並んでるらしくて後1時間以上は戻れなさそうなのよ。》

《そうか、ならこなたの方へ行けばいい。俺の方が時間かかりそうだからな・・・ちょっと待ってろかがみ》

 

そう言って一旦かがみとの交信を切り、俺はこなたに連絡をいれる。

 

《こちら慶一、こなた聞こえてたら応答しろ、どうぞ?》

《ん?こちらこなた、聞こえてるよ?どうぞー》

《かがみから今連絡来たんだがそっちの状況はどうだ?》

《今私は自分の回るとこの最後の所並んでるよ?後30分弱かな。そっちは?》

《俺は残りを考えると2時間ちょいかかりそうだ。とりあえずかがみをそっちに向かわせる、現在位置を教えてくれ》

《わかったよー。今ねえ・・・・・・って所だよ。かがみを誘導して向かわせてー。》

《了解、それじゃそっちが済んだら待ち合わせ場所決めといてくれ。俺もそこへ向かう。》

《了解したよ。それじゃ後でねーオーバー?》

 

とりあえずこなたとの通信を終えて、俺は再びかがみを呼び出す。

 

《かがみ、聞こえるか?》

《うん、聞こえるよ慶一くん。それでどうなった?》

《今から誘導するからそこへ向かってくれ。こなたの用事の方が先に終わりそうだ。》

《わかったわ。指示お願いね。》

《了解、まず現在地を教えてくれ・・・・・・オーケー、そうしたら・・・・・・そのルートを通って・・・・・・そう、そうだ。でそこを行けば・・・・・・といわけだ。わかったか?》

《うん、わかった。それじゃ先に向かってるわね。慶一くんも必ず来てよね。》

《了解だ。それじゃ後でな。》

 

と言うやり取りを終える頃、一つ目の大手が終了した。

 

俺は次に並びながら、再び終わるのをひたすら待つのだった。

 

かがみside

 

慶一くんから教わったルートを通って私はこなたの元へと向かった。

 

私が指定された場所に辿り着くととりあえず用事を終えたこなたが私を待っていてくれたのだった。

 

「こなた、来たわよ。とりあえずあんたに頼まれてた物だけど・・・かなり恥ずかしかったんだからね?」

 

そうこなたに声をかけて買った物を渡すと、こなたはニマニマと笑いながら

 

「いやあ、ご苦労様かがみ。でもこういう物を見てそう言う反応、中々萌えるねえ。」

 

と言うこなたに私は顔を赤くしつつ

 

「も、萌えとか言うな!!それにこのこと説明しなかった事かなり頭にきてること忘れてないわよね?」

 

そう私が凄むと、こなたは途端に慌てだして

 

「い、いや、それは悪かったけどさ、とにかく目的の物はちゃんと手に入ったでしょ?だからそれで勘弁してよー。ね?お願いー」

 

手を合わせて上目使いで私を見ながらそう懇願するこなたに私は、こなたの頭に一発拳を落として

 

「これで勘弁しといてあげるわ。まったく、私には刺激が強すぎよ・・・」

 

そう言う私にこなたは頭を抑えて涙目になりながら

 

「うう、痛いよかがみ・・・何も殴る事ないじゃん・・・」

 

と言うこなたを再度睨みつけながら

 

「なんかいったか?それとももう一発欲しい?」

 

拳をちらつかせながらそう言うとこなたは小さくなって

 

「いえ、結構です。すんませんした・・・」

 

そう言って謝るこなたを横目で見つつ、ため息をつきながら慶一くんの帰りを待つ私達だった。

 

慶一side

 

かがみとの通信の後並ぶべき大手に並んでかなりの時間が経過していた。

 

俺は少し焦りを覚えつつも今回最後となるサークルに並んでいた。

 

おもむろに時計を確認すると午後1時30分を示していた。

 

(後少しだな・・・)という事を考えながら順番を待つ俺。

 

すると、ふいに俺の携帯に電話がかかってきたので電話に出ると、その主はこうだった。

 

「もしもし、先輩?私です。今日はここに来てるって聞いたんですけど、今どちらなんですか?」

「こうか?今はこなたに頼まれた最後のサークルに並んでるよ。それが済んだら適当に昼にしてその後そっちへ向かうつもりだ。」

「そうなんですか。それじゃこちらに来る頃に一度連絡をお願いしますね。」

「携帯つながったらな。今はたまたまつながったからいいが、ここじゃそっちの方が稀だ。」

「あはは、そうですね。とりあえず電話の方、挑戦してみてくださいよ。それでつながらなかったらこちらに直接来ちゃってください。」

「了解だ。それじゃ後でな。」

「はい。待ってますねー」

 

一連のやり取りを済まして電話を切ってから15分後、ようやく最後の本を購入する事ができた俺は、こなた達に連絡をいれてこなた達が待っている場所へと移動していくのだった。

 

人ごみを掻き分けて待ち合わせ場所へ行くと、談笑しているこなたとかがみを見つけたので俺は2人の所に向かっていき

 

「2人とも、待たせてすまん。流石に大きい所は時間かかるのが難点だよ」

 

そう声をかけると2人は俺の方を振り向いて

 

「あ、おかえりー慶一君。その様子だと戦果はあったみたいだね。」

「おかえり、慶一くん。ずいぶん待ったわよ?流石におなかすいたわ・・・」

 

そう言う2人に俺は苦笑しながら返事を返す。

 

「とりあえずミッションコンプリートかな、こなた。昼も結構過ぎてるしな。こうの所行く前に昼飯行っておくか。」

 

と言う俺の言葉に2人は頷いて、とりあえずその場から移動を開始する俺達だった。

 

東館の中央に出てエスカレーターを目指し歩く俺達。

 

上がった場所から右側に売店があるので、軽くそこで食べれる物を買うことにした。

 

「ほんと、凄い人よね・・・」

 

かがみは大分参ってるようで俺にそうこぼす。

 

俺はかがみの方を向きながら

 

「前に聞いた事あるけどさ、3日間の開催期間の間でのべ40万人ほどの人が来るらしいぞ?」

 

その数字にさらに凹むかがみ。

 

「40万人てどんだけよ・・・」

 

と言うかがみにこなたも人差し指を振りつつ

 

「まあ、確かに開催される度人数が増えてる気がしないでもないね?」

 

と言うこなたの説明に俺も苦笑するしかなかった。

 

「でもさ、すごい事だと思うぞ?たった3日の間にどれだけのお金が動いてるか想像すると半端ない。」

 

と言う俺の言葉にかがみは感心したような顔で

 

「まあ、言われてみれば確かにそうよね、一冊1000円の本を一人一冊買うだけでも相当のお金になるわね。」

 

と言うかがみにこなたも頷いて

 

「だから結構バカにもできないイベントでもあるわけなのだよ。経済効果って凄いと思うし。」

 

等という事を談笑しているうちに目的地の売店へと到達すると、俺達は適当に食べ物を買い込み休憩できる場所まで移動をした。

 

東館からこうたちのいる西館の間にあるちょっとしたスペースに休憩場所があるのでそこを目指す。

 

運良く座れる場所を見つけたので俺達はそこに腰を落ち着けた。

 

「運良く空いててラッキーだね。」

 

俺はこなたに頼まれた本を渡しながら食べ物も取り出しつつ

 

「そうだな。この時間、力つき始める人が増えてくる頃だし下手したらそういう連中でここらが埋まる可能性もあったわけだしな。」

 

と言う俺の言葉にかがみはほっと胸をなでおろしながら

 

「まさに不幸中の幸いともいえるわね。」

 

かがみの”不幸”という言葉に反応するこなた

 

「かがみー?不幸ってなにさー?」

 

と言うこなたの反論にかがみはやれやれというジェスチャーをしつつ

 

「何も知らないであんたにこんな所に連れてこられた事よ。」

 

かがみがそう言うと、こなたはむくれて

 

「その事ならさっきもあやまったじゃん。私も殴られたんだしもういいでしょー?」

 

と言う2人のやり取りをみながら俺は(やれやれ・・・)と心の中で思いつつ食事を終えた。

 

「さてと、こうのところに行く前にこなた、企業ブースには寄っていくのか?」

 

かがみと散々やりあっていたこなたが俺の声に振り向き

 

「うーん、今から行ってもどうせ何も手に入らないし、このまま八坂さんのサークル行っちゃおう。」

 

そのこなたの言葉に俺も同意して

 

「んじゃそうするか。ちょっとまっててくれ。」

 

そう言って俺は携帯電話をとりだしてこうに連絡を入れる。

 

しかし、この電波無法地帯では携帯はやはり役に立たないらしく、さっきつながったのが奇跡とさえ思えた。

 

「だめだな、仕方ない、直接いくぞ。こなた、かがみ、準備いいか?」

 

俺の確認に2人は

 

「いつでもオッケーだよ。」

「お昼も食べたし、少しは回復したわ。私もいけるわよ?」

 

と言う2人に俺も頷くと「よし、出発だ。行こう。」

 

そう言って2人を連れてこうのいる西館を目指すのだった。

 

西館へ向かうには一度下に下りる行程を踏まないといけないので俺達は一度下へと降りていく。

 

その後、西館へつながるエスカレーターに乗って上がっていくのだった。

 

そして、しばらくして西館到着と相成り、俺達はこうのいるサークルのテーブルを目指した。

 

「おおー、こっちはやっぱりあれ系の人達が多いね。」

 

周りを見渡しながらこなたはそう口にすると、かがみはそれに疑問をもったようでこなたに

 

「あれ系ってなによ?時折あんたの言うことがよくわからんわ・・・」

 

呆れつつもそう呟くかがみにこなたはサークルの一つを指差して

 

「ああいうのだよ。ちょっと見てみなよ。」

 

とこなたが指差す方をかがみが見に行ってみると、それを見た瞬間かがみが真っ赤になるのがわかった。

 

「な、ななな、これは一体・・・」

 

赤くなり呆然としながら呟くかがみに俺は苦笑していたが、こなたはニマニマとしつつ

 

「BL本、すなわちボーイズラブ系をおもに描く腐女子と呼ばれる人達なのだよ。こちらはそういう系が多い場所なんだよねー。」

 

と言うこなたの説明を聞いているのかいないのか、興味ありげなカップリングの本に顔を赤くしつつも見入っているかがみに売り子さんからの声がかかる。

 

「興味がおありでしたら一冊どうぞ。500円になりますが?」

 

と言う声にはっとしたかがみは

 

「い、いえ、私には刺激がー!!」

 

と言いながら俺たちのほうに顔を真っ赤にしながら逃げてきたのだった。

 

「はあ、はあ、び、びっくりした・・・八坂さんてこっちに来てるって話よね?ってことはまさか・・・」

 

かがみがかなり不安そうな顔で俺達に聞いてくると、俺達は重々しく頷いたのだった。

 

俺達2人の頷きを見たかがみは頭を抱えて「うううう」と終始うめいたままだったが、とりあえずこうの所へ行かなければと思い、かがみを正気に戻してから移動するのだった。

 

やがてサークル捜索すること数分後、ようやく俺達はこうのいるサークルへと辿り着いた。

 

「こう。連絡入れてみたけどやっぱりだめだったから直接来たよ。」

「八坂さんー来たよー。いいのあるー?」

「うう、疲れる・・・八坂さんこんにちは・・・」

 

俺達が3者3様の挨拶をすると、こうは俺たちに気づいて

 

「あ、先輩達。よく来てくださいましたー。待っていましたよ?泉先輩、とりあえずこちらに。慶一先輩とかがみ先輩もこれをどうぞ」

 

と言ってこなたを奥に呼び、俺達に飲み物をくれた。

 

「ありがとう。この暑さだからな、流石に水分は補給しないと厳しい。」

「あ、ありがとう。とりあえずいただくわね。」

 

俺達2人は早速もらった飲み物を飲んで喉を潤すと、こうのサークルを改めて見るのだった。

 

すると、そこに俺達の見知った顔がもう一人いた。

 

「森村先輩、かがみ先輩、旅行以来っスね。ひよりっス、覚えてますか?」

 

ひよりの声に俺は笑いながら

 

「あれから数日しかたってないのに忘れるかよ。元気そうだな、はいいが、受験勉強はいいのか?」

 

俺がひよりにそう言っていたが、すぐにかがみもひよりに挨拶を返していた。

 

「田村さん、旅行以来ね。元気そうじゃない。ところで、その様子だとあんたも手伝わされてるの?」

 

と言うかがみにひよりは笑いながら

 

「いえいえ、私がやりたくてやっている事ですし、それに私も作品だしてるんスよ。自分の作品も売るためにやってるっス。」

 

そのひよりの言葉を聞いて、かがみはひよりに

 

「田村さんの作品ってどれなの?ちょっと見せてよ。」

 

そう、かがみに言われてひよりは、一般向けっぽい同人誌を取り出してかがみに見せた。

 

「これっス。結構頑張ってるんスけどどうっスかね?」

 

俺もかがみに手渡された同人誌を横から見ながら

 

「へえ?結構上手い絵描くんだな。こうがアニ研の期待の新人というだけはあるな。」

「そうね。結構見やすいし面白さもあっていいかも・・・」

 

俺とかがみがひよりの作品に感心していると

 

「恐縮っス。お2人にそう言ってもらえると自信がつきます。」

 

照れながらひよりは答える。

 

「まあ、その前に陵桜に合格を果たす事をまずは目標にしないとな。」

 

そう突っ込みを入れる俺にひよりは

 

「わ、わかってるっス。これもやってますけど受験勉強も頑張ってますから。」

 

と言う答えに俺とかがみは顔を見合わせて頷いて

 

「なら、よし、だ。俺達以外にもお前には頑張ってほしいと願ってる奴の事も忘れるなよ?」

 

こうの方に視線を移しながら言う俺にひよりも頷いて

 

「もちろんわかってるっスよ。こうちゃん先輩のおかげでみんなとも出会えたんスからそれを無駄にするような事はしません。」

 

俺とひよりがそんな話をしている事など露とも知らずこうは俺達に気付き

 

「何の話してるんですか?」

 

そう俺達に聞いてくるこうに

 

「んー?ひよりに受験頑張れって言ってただけだよ。なあ、ひより。」

 

俺が話を振るとひよりも笑いをこらえながら

 

「そういう事っスよ。先輩に活いれられてました。」

 

そんな俺とひよりの言葉に頭にハテナマークを飛ばしながら俺達をみているこうだったが、そのうちにコ○ケの終了時間が来たのだった。

 

「以上を持ちまして第○○会コ○ックマーケットを終了いたします。」

 

という放送が入ると同時に沸きあがる拍手。

 

俺はこのシーンをなんとも複雑な表情で見つつも机などの片付けを手伝うのだった。

 

片付けを手伝いながらこなたは俺に

 

「今年の夏のコ○ケも終わったね。私はこの最後の瞬間はいつも寂しさに包まれるよ。」

 

そう言いながら少ししんみり気味のこなたにかがみも

 

「来て見たらものすごい人と広い会場、騒がしいイベントだなと思ったけど確かに終わった時のこの喧騒がなくなる感じはなんだか寂しいものがあるわね。」

 

どことなく寂しげに言う。

 

「一種のお祭りみたいなものですし、やっぱり祭りの終わりって物は何となくそう感じるものですよ。」

 

こうも心持ち表情は寂しさを見せている。

 

「でも、これで終わりじゃないっスよ?漫画がある限り、アニメがある限り、そしてそれらから本を作る人達が消えない限りはこのイベントはまだまだ続くっス。だから寂しくなんかないっスよ。次に向けて頑張るだけっス。」

 

一人、次に向けて張り切るひよりを見て俺は、軽いため息を一つつきながらもひよりの頭をぽんと叩いて

 

「張り切るのはいいけど、あまり暴走し過ぎないようにな。」

 

と言う俺の言葉にひよりは「わ、わかってるっスよ」と慌てながら言っているその姿を見て俺達は皆で笑っていたのだった。

 

とりあえず会場を後にしなければいけなかったので、俺達はこう達と共に水上バスを目指した。

 

そしてさらなる行列、待ち時間に翻弄され家に着いた頃にはくたくたになっていたのだった。

 

俺はこのイベントには二度と行くまいと思いつつも、また流されて行く羽目になるかもしれないと今からまた頭を痛めているのだった。

 

余談だが、かがみはラノベの挿絵の絵師さんの作品をそれはそれは大切に保管しているそうだ。

 

 


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