らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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旋律達の夏休み1〜海へ、第六話〜

両親の墓参りの後、俺達はさらに強い信頼で結ばれた事を確認して合宿所へと戻って行った。

 

その日の夜は食事を済ませた後は、皆で一つの部屋に集まり、ずっと夜が明けるまで皆でこれまでの事、これからの事、それ以外にもいろいろな事を語り明かした。

 

外が明るくなってくる頃、俺達は揃って夜明けを見ようということになり、皆で海岸へ赴いていた。

 

じっと水平線を見つめる俺達。

 

徐々に水平線から太陽が顔を出し始めるのを俺達は無言のまま見つめ続けていた。

 

「綺麗だね・・・」

 

昇ってくる朝日をみながら誰ともなく呟くその言葉にみんな揃って頷いていた。

 

こなたside

 

登ってくる朝日をみんなで見ながらも、ちらりと慶一君の横顔を皆が見ていたのを私も慶一君の顔を見たときに気付いた。

 

毅然と顔を上げて朝日を見つめる慶一君の顔は、どこか吹っ切れたような顔になっていて、以前まであった陰りのような表情が消えていたのを見て私は安心していた。

 

(一つ慶一君は乗り越えるべき事を乗り越えられたんだな・・・)

 

慶一君の顔を見ながらそう私は心の中で思っていたのだった。

 

慶一side

 

その後は一端合宿所に戻って午後から遊ぶ予定を立てて午前中は少し休む事になり、それぞれしばらく眠る事にした。

 

しばらくして目覚ましのアラームが鳴り、俺は出かける準備をする。

 

今日はまた海に行く事になってるので、その支度を終えた俺は荷物を持って部屋を出る。

 

玄関に来た時、あやのとみさおが丁度準備を終えて出てくる所だった。

 

「よう、2人とも。昨日は思わず徹夜になっちゃってたけど少しは休めたか?」

 

と、声をかけると、2人とも笑いながら

 

「あら、慶ちゃん。少しは眠ったから平気よ?慶ちゃんこそ大丈夫?」

「私はこれくらいなんてことねーぜ?とはいえちびっこ達はまだ起きてないっぽかったけどな。」

 

と言う言葉に俺も苦笑しつつみさおに

 

「こなたの他につかさもなのか?一応聞くけどさ。」

 

そう尋ねると、みさおも俺の言葉に頷きつつ

 

「柊妹もだったな。まあ、ちびっこはともかく、柊妹は今回の徹夜ってはじめての経験なんじゃねえか?まあ無理もないとおもうぜー?」

 

そう答えるみさおに俺は腕組みして考え込みつつ

 

「まあ、無理させてもいいって訳でもないしな・・・とりあえず俺達は先に行くか。」

 

俺が2人にそう促すと、2人も頷きながらも

 

「そうね。でも、柊ちゃんや高良ちゃん、それに小早川さん達のトリオもすでに先に向かったわよ?」

「そういやそうだっけな。けど八坂と永森はまだみたいだったな。先生達も遅れていくらしいから場所取りしとこうぜ?」

 

そう言っていて、他の数名が先に行っている事を知り俺も

 

「そうだな。みんなを待たせるのも悪いから行こうぜ?」

 

そう、2人に促すと「行きましょ?」「行くかー」と頷いて俺の後についてきた。

 

海岸につくとかがみたちがすでに準備を終えて俺達を待っていたようで、俺達に気付くと

 

「あ、慶一くんー、日下部ー、峰岸ー、遅いよー?ほらこっちこっちー」

 

そう大声で俺達を呼び、手を振っていた。

 

俺達は苦笑しつつもかがみたちの所へと向かいかがみに

 

「すまん遅れた。でもかがみやみゆきだけでなくゆたかたちも先に来てるとは思わなかったよ。」

 

そう言うとかがみも笑いながら

 

「昨日が昨日だったし、遊べるのも後1日しかないからね。時間がもったいないな、って思ったらつい急いで準備しちゃってたわ。」

 

かがみの言葉に俺は、今回の旅行の目的が遊びが本当は二の次だった事を思い出し、申し訳なさそうな顔で

 

「・・・ごめん、かがみ、みんな・・・本当はもっと楽しんでもらいたかったけど、結局は俺の都合の所為だよな・・・思い出を作るはずの旅行だったのに情けない話だ。その事ばかりを気にしてこの数日間、俺も本当の意味で楽しめてなかった・・・なのに、みんなまでもそんな俺の身勝手の所為であまり楽しめていないのでは?と思うと何か申し訳ない、って思うよ・・・」

 

落ち込みながら言う俺に、かがみは俺の頭に軽く拳を落として

 

「今更言っても始まらないわよ。それよりも残りの時間を楽しむ事を考えればいいじゃない。そして今回慶一くんがそんな風に私達に悪いって思ったのなら、今度はしがらみなしの旅行とか企画しなさいよね。」

 

呆れ顔をしつつも最後は笑顔で俺にそう言うかがみ。

 

「そうですよ?慶一さん。もう済んでしまった事は仕方のないことです。ですが、私達はまだここに居ますしここに居れる時間も残っています。今まで心から楽しめなかった分はここでぶつければいいんですよ。そして、慶一さんが言ったようにまたそうしたいと望んで実行すればいい事ですよ。私達には望むならそれが出来ると慶一さんが言ってくれたんですから。」

 

そんな風に、いつもの柔らかな微笑をたたえながら俺に言うみゆき。

 

他の皆も2人の物言いにうんうんと頷いて見せてくれた。

 

俺はしばらく2人の言葉を聞いて目を伏せて考え込んでいたがやがて

 

「そうだな・・・少し悪い方へ考えすぎてしまってるな、俺の悪い癖だなあ・・・よし、残りの時間、そして、また来年もみんなとどこかへ行きたいし、楽しみたいから今は過ぎた事は振り切って心からみんなと楽しむ、そう決めたよ。今からの俺は過ぎた事にはとらわれない俺として遊びたおす。」

 

そんな俺の決意に皆は笑って頷いてくれた。

 

皆との話を終えて俺は、とりあえず場所取りをしてしまおうと思い、拠点にすべき場所にビーチパラソルを立てて拠点を示した。

 

「よし、こんなもんだろう。」

 

と言いながら荷物をそこに降ろした時、黒井先生達と共にこなた達もようやく現れた。

 

まず先に来たのがこうとやまとの後輩コンビ。

 

「先輩、遅くなってすいません。」

「まったくよ。先輩を見かけたときには一緒に行こうって言ってたのにこれだもの」

 

そんな2人のやり取りに苦笑する俺だったが、その後に続いてこなた達もやってきた。

 

「やー、ちょっと遅れちゃったよー」

「おねえちゃん、けいちゃん、それにみんなもごめんね〜」

 

と、こちらは中々起きれなかった2人。

 

「森村、今回も場所取りすまんな。」

「荷物番はしてるから思い切り遊んでおいでー」

「私もお前達の動向には目を光らせておく、安心して楽しんで来い。」

 

大人チームが俺達にそう言っていたので、俺達はその言葉に甘える事にした。

 

「おーし、んじゃパーっといくかー、いくぞみんなー!!」

 

と言う俺の声にみんなも「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」という声と共に海へと突っ込んでいった。

 

「慶一さん、よろしければ泳ぎを教えていただけませんか?」

「慶一先輩、私もお願いします。」

 

泳ぎを教わりたいというみゆきとゆたかに俺は泳ぎを教える事になった。

 

「よし、みゆきは顔を水につけるのを怖がってたよな?なら顔を水につけずに泳げる平泳ぎのやり方を教えるか。ゆたかはあまり無理はしないようにな。みなみ、ゆたかのフォローを頼むよ。」

 

ゆたかが心配で一緒に来ていたみなみに声をかけると、みなみはコクリと頷いてゆたかの側について泳ぎの教えのフォローをしてくれた。

 

「そう、そうだ。みゆきもゆたかも中々飲み込み早いな。」

 

みゆきもゆたかも結構飲み込みが早くて、ちょっとコツを教えてやればすぐに泳げるようになった。

 

「はあ、はあ、こんな感じでいいんでしょうか?」

「これなら確かに息継ぎしないでも結構な距離泳げそうですよね。」

 

みゆきとゆたかは思いがけない成果に2人して顔を見合わせて笑いあっていた。

 

みなみもそんなゆたかたちを見てほっとしているようだった。

 

2人に泳ぎを教えた後は、再び少し深い方で浮き輪に乗ってゆったり浮いているこなた達の所へと泳いでいった。

 

「・・・でさー・・・なんだよねー。くさいよねー」

「くさいわよねー、それであれだけどさ・・・」

「こなちゃんそれは違うよ・・・という感じじゃない?」

 

何やら雑談を交わしている3人の近くまで泳いで行き声をかける。

 

「よっ。楽しそうだな。3人とも」

 

今回は脅かさないように近づいていたので3人とも普通に

 

「あ、慶一君いらっしゃーい。」

「みゆきとゆたかちゃんに泳ぎ教えてたみたいね。そっちは済んだの?」

 

と言うかがみの質問に俺は頷いて

 

「ああ。2人とも飲み込みが早かったからな。コツを教えてやったらあっという間だったよ。」

 

と、状況を説明すると、つかさも少し考える仕草をしながら

 

「わたしも少し自信ないから後で教わろうかな?」

 

と言っていたので俺は苦笑しながら

 

「それは構わないけど、少し苦労しそうかもしれないなあ。」

 

と言いにくそうに言うと、つかさはいきなり

 

「けいちゃんのくせにー!!」

 

と叫んで怒ってしまったので、俺は驚いて苦笑しながらも、つかさに平謝りしていた。

 

「ごめん、ごめんよつかさ。このとおり」

 

両手を合わせて頭を下げつつ、つかさに謝り倒しているとそんな俺達の様子を見ていたこなたが

 

「あはは。つかさ、どんまい。それにしても・・・」

 

そう言いながら俺の顔をじっと見てきたので、俺はなんだか照れくさくなってこなたから視線を外した。

 

「な、何だよ、俺の顔じっとみて。海藻でもくっついてるか?」

 

照れながらこなたにそう言うと、こなたはなんともいえない柔和な笑顔で

 

「ううん、そうじゃないよ。慶一君の顔がさ、今までと違って凄く明るくなったなって思ってさ。」

 

その言葉にかがみも続いて

 

「そうね。あのお墓参りの以前の慶一くんは普通にしてるようでどこか余裕がない感じがあったけど、今の慶一くんは心のつかえが取れたようなすっきりとした顔してるもんね。」

 

そう言うと、さっきまで怒ってたつかさも急ににっこりと笑顔になって

 

「うん。わたしもそう思うよ~。いまのけいちゃんはとっても優しい顔をしてるよ。」

 

と言う3人の言葉に俺は顔を赤くして

 

「ははは。そ、そうかな。でもあの事を終えてからは確かに俺の心は以前までに比べて大分すっきりした感じはあるよ。」

 

そう言った後、俺は皆に笑顔を向けながらさらに言葉を続けて

 

「それに、みんなの俺への信頼の程がわかったしね。だから今度は俺もみんなに言われたようにみんなを信頼して話せることはみんなに話して行きたいって改めて思ったから。」

 

と言う俺の言葉に、皆も笑顔を俺に返しながらも顔を少し赤らめていたようだった。

 

「その言葉、信じるからね?もし約束破ったら酷いよ?」

 

こなたが少し怒ったような表情をしつつ俺に言ってきた。

 

「約束するよ。俺を信じてくれるみんなに応えるためにさ。」

 

こなたのその言葉に力強い頷きと言葉で返事をする俺だった。

 

俺のその言葉にかがみとつかさも笑顔で頷いてくれ、その後は一端海岸に上がろうということになりこなたたちの浮き輪を引っ張りながら泳いで海岸へと戻って行った。

 

海岸へ戻ると、俺を待っていたのはビーチボールを片手に仁王立ちして俺が戻るのを待っていたみさおだった。

 

「戻ってきたか慶一。もう一度これやらねーか?」

 

みさおはビーチバレーをもう一度やりたいようで俺にそう持ちかけてきた。

 

初日の屈辱を思い出した俺はみさおの提案に頷いて。

 

「よおし、初日での屈辱は晴らしてみせる。今度は負けんぞ?みさお。」

 

そう応えるとみさおは満足そうに頷いて

 

「よーし、よく言ったー。あの時の二の舞にさせてやるぜー!」

 

という事でビーチバレー再びという事になり、今回はかがみ達や後輩組みも加わっての多人数戦となった。

 

じゃんけんでのチーム分けの結果

 

みさおチーム

 

みさお、つかさ、ひより、こう、みゆき、ゆたか

 

慶一チーム

 

慶一、あやの、かがみ、やまと、みなみ、こなた

 

となった。

 

俺はこの組み合わせに、思わずみさおに猛抗議をするのだった。

 

「おい!みさお、またその組み合わせなのかよ!陰謀か?これは何かの陰謀なのか!?」

 

その抗議にみさおは鼻で笑い飛ばしながら

 

「へえ?慶一、自信ないんだ?確かに一度負けたシチュだけどさ、男なら同じシチュでも乗り越えて勝ってみろよ。悔しかったらなー」

 

人を小ばかにしたように言うみさおに俺は自身の負けん気に火がついて

 

「・・・上等だ、やってやるぜ!あとで泣くんじゃねーぞ!」

 

挑発に乗ってしまう俺、そんな俺を見て他のみんなは苦笑を浮かべていたのだった。

 

かくしてビーチバレーリベンジ戦スタート。

 

今回はかがみたちのサポートもあって、みゆきやこうに惑わされかけつつもなんとか相手の攻撃を凌ぎつつポイントを重ねていく。

 

「うりゃっ」

 

みさおのアタックを上手く拾う俺。

 

「はい、柊ちゃん!」

 

あやのは俺のレシーブをトスしてかがみに託す

 

「ナイス峰岸、いっくわよー!」

 

強烈なアタックで相手のコートにボールを叩き込むかがみ。

 

みさおも奮闘するが、かがみとこなた、そして意外にもみなみの好活躍で俺達はかなり戦力的にもいい状態だった。

 

しかしみさおたちも負けておらず、要所要所で穴を突かれて一進一退の攻防になっていた。

 

後もう1ポイントで勝負が決するあたりになり、みゆきとこうを使った誘惑作戦が通じなくなってきた事を悟ったみさおはここでまさかの行動に出た。

 

みさおのレシーブからこうのトス、みゆきのアタックにつなげた瞬間みさおはみゆきの背後に回った。

 

かがみがレシーブして俺がトスをあげようとした瞬間それは起こった。

 

みゆきの背後に回ったみさおはみゆきのブラの紐を解いたのだった。

 

落ちるみゆきのブラ、そして止まる時間・・・・・・。

 

その間わずか数秒、みゆきの悲鳴、そして事態を把握した俺が速攻で顔を背けるのと同時に「みるなー!!」というかがみの絶叫とともに顔を背けた方からかがみの拳が飛んできて、もろにカウンター気味に俺の顔面に食い込むかがみの拳。

 

俺は盛大に鼻血を吹いて昏倒する。

 

かがみside

 

日下部が引き起こした事態にパニックになった私は思わず顔を背けた慶一くんの顔面に拳を打ち込んでしまった。

 

それがもろにカウンターになり、慶一くんが鼻血を吹いて昏倒するのを見て私は、我に返って慌てて慶一くんのところに駆け寄った。

 

「慶一くん、大丈夫!?しっかりして!!慶一くん!?」

 

大声で呼びかけつつ、慶一くんを揺すってみるがピクリとも動かない。

 

私はそんな慶一くんを見ながらただただ慌てていたが、水着を直して私たちの側に駆け寄ってきたみゆきが慶一くんを診てくれた。

 

「・・・軽い脳震盪を起こしているかもしれませんね、とりあえずは寝かせて様子を見るしかないですね。」

 

みゆきの言葉に一応安心する私だったが、みゆきの寝かせると言う言葉にこなたがニヤリといたずらっぽい笑みを浮かべているの見て

 

「・・・こなた、あんた何か企んでるでしょ?」

 

という私の言葉にこなたは

 

「まあ、見ててよ。とりあえず慶一くんをパラソルのある日陰まで運んでいこう。みんなちょっと手伝ってー」

 

こなたがみんなを呼ぶと八坂さんや日下部、岩崎さん、田村さんが慶一くんを運ぶのを手伝ってくれた。

 

パラソルの所まで慶一くんを運び、とりあえず鼻血の止血をして頭を冷やした後、こなたは日下部に手伝ってもらいながら慶一くんを砂に埋め始めた。

 

「ちょっとこなた、前それやって痛い目にあったの忘れてない?面白かったけどさ。」

 

と言う私の指摘にこなたはニヤリと笑いつつ

 

「今回は女体じゃないから大丈夫だよ。」

 

と言うこなたの言葉に初日でのあれを思い出して吹き出しながらも

 

「お、思い出させないでよ、って、それは・・・ぶふっ!」

 

またしても吹き出してしまう私達だった。

 

慶一side

 

かがみにノックアウトされてしばらくして、体にかかる重さに俺は目を覚ました。

 

すこしぼーっとする頭で自分の状況を見てみるとまたしても砂に埋められているようだった。

 

しかし今回はあの時とは様子が違うようだったのでよく見てみると、自分の体の上に墓石のように砂を固めらていてそこには”慶一君の墓”と言う文字が確認できた。

 

俺を見ながらクスクスと笑っているこなた達を見つけ

 

「こ〜な〜た〜!またお前かー!?」

 

と言うが早いか、今回はすぐさま這い出してこなた達を追い掛け回す

 

「やっほー、そう簡単には捕まらないよー!!」

「慶一、お気の毒だったなー!!」

「待ちやがれこらー!!」

 

そんな3人を他のみんなも笑いながら見ていた。

 

そして、2人を捕まえてデコピン(強)の刑を執行して、一騒動に区切りがついたのだった。

 

俺はかがみから受けたダメージが体に残っていたらしく、こなた達を捕まえたあと軽いめまいを起こして片膝をついた。

 

デコピンを食らって涙目だったこなた達だったが、俺の異変に気付いてすぐさま俺の側へと走り寄り

 

「大丈夫?慶一君。起きてすぐ無理したからだよ。」

「慶一、平気か?もう少し休んでろよ。」

 

と言う2人に俺も少し冷や汗をかきつつ

 

「無理させたのはどこのどいつだ、まったく。でも、これは、そうした方がよさそうだな。」

 

そう言いつつ、2人に支えてもらいながら再びパラソルの所まで戻ると、皆も

 

「慶一くん、ふらついてるのが見えたけど大丈夫?」

「顔色ちょっと悪いね~。もう少し休んでたほうがいいんじゃない?」

「一応脳震盪起こしていたんですからあまり無理はいけませんよ?」

「そうね、タオル冷やしてくるわ。ここで待ってて。」

 

「すまない、あやの。脳震盪起こしてたのか・・・しらなかったよ・・・」

 

かがみたちは俺を気遣ってくれ、あやのもタオルを冷やしに行ってくれたようだ。

 

そしてこうたちも

 

「先輩、大丈夫ですか?さっきも痛そうでしたし・・・」

「まあ、自業自得かもしれないわね・・・」

 

やまとはどこか不機嫌そうに言葉の槍を突き刺してくる。

 

「一応はもう少し休めばなんとかなるだろうさ。それと、やまと、さっきのは不可抗力だよ・・・」

 

いまだ不機嫌そうなやまとに弁解する俺だった。

 

「先輩、無理はしないでくださいね。」

「・・・もうすこし・・・休んでてください・・・」

「かがみ先輩の拳強烈そうでしたもんね・・・というか先輩が死んだかとおもったっス・・・」

 

ゆたかたちも心配をしてくれたが俺は無理に笑顔を浮かべつつ

 

「心配してくれてありがとう。けど大丈夫さ、だから俺の事は気にしないで残りの時間思いっきり楽しんできてくれよ。」

 

3人に心配させないようにそう元気な顔で言うと、3人とも安心してくれたようだった。

 

そしてまた残りの時間、俺は皆が楽しく遊びまわるのをパラソルの下から眺めていた。

 

日も大分傾いてきた頃、俺も大分体が回復してたので皆の所に行くと、皆はここで色々写真撮らない?という相談をしていたので、俺も混ざってみんなであちこちで写真を撮る事になった。

 

集合写真も撮ったけど、こなた達にはなぜかツーショットの写真も撮りたいと言われてみんなに付き合った。

 

かなり照れくさかった事はみんなには言えなかったが・・・・・・

 

そろそろいい時間になったので、俺達は合宿所に引き返してシャワーを浴びたり着替えたりとしながら夕食までの時間を過ごす事になった。

 

時間まではまだあるので、俺は近くの店まで買い物に出る事にした。

 

玄関で靴を履き、外へ行こうとしていると、ゆたか達がちょうど部屋から出てきていて、俺が外へ行こうとしてる姿を見つけて声をかけてきた。

 

「あ、先輩。どこかへお出かけですか?」

 

そう聞いてくるゆたかに俺は笑いながら

 

「ああ。ちょっと近くの店に買い物に行こうと思ってさ。」

 

そう答えると、ゆたかも興味をもったのか

 

「何を買うつもりなんですか?」

 

と聞き返してきたので

 

「花火を買おうって思ってね。」

 

そう答えるとゆたかは

 

「なら私達も一緒にいってもいいですか?ね?岩崎さん、田村さん。」

 

俺にそう言った後2人に声をかけるとみなみとひよりも

 

「・・・小早川さんが行くのなら私もご一緒します・・・」

「私もお手伝いするっス」

 

そう答えたので俺は3人に

 

「わかった。それじゃ3人とも用意してくれ。」

 

と言う事で、一緒に花火を買いに行く事になった。

 

店への道中にゆたかが

 

「慶一先輩、今回は色々ありましたけど、この旅行に誘ってもらって本当にありがとうございます。」

 

俺に対して改まったお礼を言ってきたが、俺はその言葉に

 

「どうしたんだ?急に。改まって言われると照れるよ。それに、今回はあの時も言ったように、俺の私用が真の目的だったから本当の意味でみんなが楽しめていただろうかって所が気になってるからね・・・」

 

複雑そうな表情で俺がそう答えると、ゆたかは笑顔になって

 

「そんな事ないですよ。確かに先輩の用事がメインだったのかもしれませんけど、それでも私達は楽しんでいますから。本当に楽しかったんですよ?明日帰るのが残念なくらいに。それに受験のストレス解消にもなりました。だから本当に感謝してるんです。」

 

それに続いてみなみも俺に頭を下げつつ

 

「・・・小早川さんの言うとおりです。私も受験で煮詰まりかけていた所でしたから・・・今回のお誘い、とても嬉しかったんです。それに新しいお友達もできました・・・」

 

ひよりもそれに続いて

 

「2人のいうとおりっス。私もかなり壁にぶち当たっていましたからそんな時にこうちゃん先輩を通してですが先輩が私の同行を許可してくださった時は凄く嬉しかったんですから。それに友達も作れました。先輩のおかげっス。」

 

俺はそんな3人の言葉に照れながら

 

「そっか、ありがとう。3にんとも。かがみにも言われたけどさ、今度はしがらみなしの本当に心から楽しめる旅行を企画するから次も来てくれたなら今度は気兼ねなしに楽しもう。」

 

俺がそう言うと3人とも笑顔で「はい!」と答えてくれたのを見て俺も頷き返したのだった。

 

そんな事を話しているうちに店に着き、俺達は早速花火を選び始めた。

 

「先輩、こんなのどうですか?」

 

ゆたかが選んできたのはファミリー用の花火だった。

 

「それは買っておくか。あとはこれとこれと・・・」

 

ゆたかの選んだ花火を買い物かごに入れながら俺は、ドラゴンやら打ち上げ花火やらの派手な物を手にとって買い物かごにつっこむ。

 

「・・・先輩、そのファミリー用花火にも少しは入っていますがもう少しこれを入れたいです・・・」

 

みなみはそう言って線香花火を持ってきた。

 

「確かにこの中のだけじゃちょっと足りないな。よしそれもいれよう。」

 

そう言って俺は、みなみの持ってきた花火をかごにいれる。

 

「先輩、こんなのはどうっスか?」

 

ひよりはロケット花火を持ってきた。

 

「面白そうだな。よしそれも追加だ。」

 

ロケット花火も買い物かごに入れて、一通り選別を終わらせて支払いを済ませて戻る事にした。

 

合宿所に帰ると丁度夕食の準備が出来ていて、食事をしながら俺達はみんなに花火の事を伝えた。

 

夕食が終わり、俺達は浜辺へ後始末用のバケツ等を持って花火をしに出かけた。

 

ファミリー用の花火をみんなに配り早速花火を始める俺達だった。

 

「うわー、綺麗だね。」

「こなちゃん、こっちも綺麗だよ〜」

 

こなたとつかさはお互いに花火を見せ合いながら楽しんでいる。

 

「これもいいですね。」

「高良ちゃんのはいい感じね。私のは黄色い色が出てる花火よ?」

「あやのも高良のも綺麗じゃん。私はなんといってもこれだなー。」

 

みゆき、あやの、みさおもそれぞれに楽しんでいるが、みさおは俺が買ったドラゴンを連続点火していた。

 

「まったく・・・あいつは少しは加減ってものを知って欲しいとこよね・・・」

「あはは、かがみ先輩の苦労も何となくわかる気がします。」

「・・・小早川さん、こっち終わりそう・・・」

「かがみ先輩、次は何をやるっスか?」

 

かがみを筆頭に、後輩組みが固まって花火をやっていた。

 

「私は派出にこれをやってみるかな。行くよ?やまとー」

「こう、ちゃんと真上に飛ばしなさいよ?間違っても人に向けるんじゃないわよ?」

 

こう、やまとの2人組みはロケット花火を打ち上げて楽しんでいたようだ。

 

「おーし、でかいのに火をつけるぞーみんな注ー目ー」

 

と言う俺の言葉にみんな一斉に俺の方を見ると、俺はそれを見計らい大きな打ち上げ花火に火をつけた。

 

ドーンと派手な音を響かせ、空に咲く花を俺達は見つめていた。

 

そして線香花火をやっているときかがみが俺の側に来て

 

「慶一くん、昼間はごめんね?私も慌てちゃったからついあんなことを・・・痛かったでしょ?」

 

昼間のあの一件の事を気に病んでいたようだ。

 

「不可抗力だし、仕方ないよ。別に気にしてないからさ、そんな顔するなよ。」

 

かがみに笑顔でそう言うと、かがみは心持ち安心したような顔になって

 

「よかった・・・ずっと気にしてたからさ・・・ありがと、そんな風に言ってくれて・・・」

 

俺はそんなかがみの頭をなでながら

 

「そういう事もまた、俺達の楽しい思い出の一ページになるさ。明日は帰る日だけどさ、最後まで楽しく行こう。」

 

そう言うとかがみも笑顔になって

 

「明日は最後だからもう一度みんなで写真撮ったりしたいわね。・・・ねえ、慶一くん。今後もこういうのがある時はまた連れて行って欲しいな。」

 

と言うかがみの言葉に俺は力強く頷いて見せるのだった。

 

そんな2人の会話を耳にしたのか皆も集まってきて

 

「私もまた連れて行ってもらうからね。置いて行くのはなしだよ?」

「わたしも一緒に行きたいな~。みんなとなら楽しいよね~。」

「私も出来る限りご一緒したいです。みなさんともっともっと思い出を作って行きたいですから。」

「私もみんなとの思い出をこれからもつくりたいな。行く時は声かけてくれなきゃいやよ?」

「楽しい事は大歓迎だぜー。慶一、当然私も誘ってくれるよな?」

「私は受験終えるまでは厳しいですけど、もし陵桜に合格できてみなさんと一緒になれたらまた行きたいです。」

「・・・私も小早川さんやみなさんと・・・また色々な事をしてみたいです・・・その時にはまた誘ってもらえたら嬉しいです・・・。」

「私もがんばるっスよ?そしてまたこのメンバーで楽しみたいっス。」

「ひよりん、がんばれ、だね。私も凄く楽しかったからまた皆さんとご一緒したいですね。」

「先輩、また迷惑をかけてしまうかもだけど、私も誘ってほしい。楽しかったから・・・今回の旅行。」

 

そんな風に言ってくる皆に俺は笑いながら

 

「よーし、ならまとめて面倒みてやるさ。今回以上に楽しむとしようか。その時にはまた声をかけるからな。」

 

と言う俺の言葉に皆はにっこり笑って頷いてくれた。

 

最後の花火を終え、後始末をして俺達は合宿所へと戻っていく。

 

俺達の夏休み旅行も後1日で最後を迎える事になるが、これからもこのメンバーで旅行したりと言う事もあるだろう。

 

今度こそは、なんのしがらみもない心から楽しめる旅行を企画しないとな、と心に誓う俺だった。

 

余談だが、昼間の浜辺において俺を無防備状態からのカウンターで見事に沈めたかがみを親父がえらく気に入ったらしく、道場にスカウトしていたのを後から知ったのだった。

 


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