らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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旋律達の夏休み1〜海へ、第五話〜

一昨日の事件による怪我のせいもあり、昨日は一日ゆっくりとする日として思い思いに過ごしてきた。

 

一日の最後に皆で見た花火大会は、俺達の思い出の1ページに刻まれる事となり、そして今日という日を迎える事となった。

 

俺はこの旅行を計画した本当の目的の実行を今日行おうと心に決めて、もう一度その覚悟を確かめるべくいつものように早起きをして海を見に外へと向かった。

 

海を見ながら静かに心を静めて心を落ち着けていると、早起きには縁のない珍しい3人組が現れたのだった。

 

こなたside

 

昨日の花火大会後、珍しく早めに私もみんなも体を休めた。

 

その所為か、いつもよりも早い時間に目が覚めて時計を確認すると丁度慶一君も起きている時間だと思ったので私はひょっとしたらまた海岸にいるかもと思い外へと向かったのだった。

 

その際にどういうわけかこれまた珍しくつかさとみさきちが起きていて私は2人と鉢合わせをすることになった。

 

事情を聞くと、2人もやはりいつもより早めに休んだ事によって少し早めに目が覚めたのだという。

 

もう一度寝るのもなんなので海を見に外に行く所だったのだと2人は私に言ったのだった。

 

目的地は結局一緒なので、私は2人に声をかけて海岸へと向かうと、海を見ながらただずむ慶一君の姿があったので、私達は慶一君に朝の挨拶も兼ねて声をかけることにした。

 

「おはよ、慶一君。相変わらず早いねえ」

 

私が挨拶するのに気付いたのだろう、つかさとみさきちも慶一君に朝の挨拶をしていた。

 

「あ、おはよ〜けいちゃん。いつも早いんだね〜」

「慶一、おはよー。なんだかいつもより早く目が覚めちゃったぜ」

 

それぞれ声をかけると慶一君は私達の方にゆっくり向き直って挨拶を返してくれたのだった。

 

慶一side

 

じっと海を見つめる俺の後ろから声をかけてくる3人がいた。

 

俺はゆっくりと振り向きその3人に挨拶を返す。

 

「おはよう。こなた、つかさ、みさお。3人とも珍しく早いんだな。」

 

そう声をかけると3人も

 

「なんだか早めに寝たらいつもより早く起きれたよ。みゆきさんもやっぱりこんな感じで起きてたのかな?」

「私もいつもは眠いはずなんだけどね~。なんだかすっきりしてるよ~。」

「不思議だけど私も起きれたぜ。でもたまには清々しくていいもんだな。」

 

3者3様に返してくる様子を見て俺も笑いながら

 

「これが習慣化すれば大分生活も変わるんじゃないか?この際努力してみたらどうだ?」

 

そう返すと3人とも苦笑しながら

 

「私は今回たまたまそうなっただけだし、ネトゲとか深夜アニメは捨てがたいからねえ」

「あはは・・・それでも朝苦手だし・・・」

「そうだよな、やっぱしゆっくり寝てえもんなあ・・・」

 

と、根性のない事言っているのを聞いて俺はため息一つついて呆れていたが、俺は気を取り直し、3人に話すべき事を話さないとと思い3人に声をかけた。

 

「3人とも、後で他のみんなにも話すけど今日はちょっと付き合って欲しい場所があるんだけどいいかな?」

 

俺の言葉に3人はハテナマークを頭にとばしつつ

 

「付き合って欲しい場所?それって?」

「みんなも連れて行かないといけないとこなの?」

「私は別に構わないけどな。」

 

そう答えると俺も真剣な顔になって

 

「うん。とても大事な事だから、みんなにも来てもらいたいんだ。」

 

そう伝えたのだった。

 

こなたside

 

突然慶一君がみんなにも付き合って欲しい場所があると話を振ってきた。

 

私達は戸惑いつつも返事していたが、ふいに見せた慶一君の真剣な表情を見てこれは何か大事な事なのかもと考え、それなら一緒に行こうと思い慶一君に

 

「わかったよ。なにか大切な事なんだね?私達でいいなら一緒に行くよ。」

 

そう返事をすると、つかさも真面目な顔になって頷きながら

 

「私もいくよ?私達がいないといけないことみたいだし」

 

そう、慶一君に返事をしていた。

 

みさきちはあまり深く考えずに

 

「来て欲しいっていうならついてくぜ?」

 

と言っていたが、その3人の返事を聞くと慶一君はどこか安心したような顔になって

 

「ありがとう。俺の我侭に付き合ってもらってすまないな。」

 

と言う慶一君に私は首を振って

 

「気にしなーい。私達の我侭に付き合ってもらう事もあるんだからこの位おやすい御用だよ。」

 

親指をびしっと立ててそう言うと慶一君は

 

「ありがとうな、みんな。」

 

と言ってくれた。

 

慶一side

 

目的はまだ明かしてはいなかったものの、俺の頼みを聞いてくれた3人に俺は感謝をしつつ、朝食後に集まって欲しい旨を伝えて俺達は朝食を取る為合宿所へと戻っていった。

 

朝食後に皆にさっきの話をすると、皆は少し不思議そうな顔をしていたが、それでも一緒に行くと言ってくれたのだった。

 

いくつかの準備を済ませて持ち物の最終確認をしていると、親父が俺の部屋に入ってきた。

 

「・・・慶一、覚悟はできたんだな?」

 

俺の背後から真剣な声で俺に問い掛けてくる親父に向き直り、俺もゆっくりと力強く頷いて

 

「ああ。俺は今日、自分の過去と向き合う。本当は逃げ出したいほど怖いけど、みんなも居てくれるから・・・みんなが俺に過去と向き合う勇気をくれたから・・・だから俺は・・・過去のしがらみに決着を付ける。」

 

俺の決意を聞いて親父は、瞳を閉じて腕を組みしばらく思案していたがやがて

 

「・・・わかった・・・私も見ていてやる。だからぶつかって来い、そして乗り越えろ。この先に進む為にな・・・」

 

そう激励してくれる親父に俺は、力強い頷きで返して皆の待つ外へと向かうのだった。

 

外に出ると皆は俺を待っていてくれたので俺は

 

「悪い、待たせちまった。それじゃ行こうか。」

 

そう皆に声をかけると皆も「それじゃ行こうよ。」と言い、合宿所を後にした。

 

俺は皆を引き連れて一昨日に登った山へと歩を進めて行く。

 

一昨日の事件の事もあり、山チームとして一緒に行ったかがみが俺の目的地があの山にある事に気付き、慌てながら俺に聞いてきた。

 

「け、慶一くん。目的地ってあの山にあるの?一昨日の事もあるし、危険じゃない?」

 

と言うかがみに俺は首を左右にゆっくりと振って

 

「大丈夫さ。今回は猪の襲撃もたまたまだったし、そこまで登るわけじゃないからね。みんなも心配しないでいいよ?」

 

そう言ったが、何人か、特に山チームの面々は緊張してるようだったので、俺はその緊張を解かせるため山チームの面々にそれぞれに安心するように言うと、山チームのメンバーは少し安心したようだった。

 

こなたside

 

慶一君の目的はあの山にあるようだったが、かがみたちはどうやらあの日あの山へ登ったらしくその時に起きた猪襲撃事件の事を思い出してか少し緊張気味だったようだ。

 

そんなかがみ達に慶一君が、皆を安心させる言葉を言ったことで皆の緊張が和らいだようだった。

 

「こなた、慶一君に一緒に来てくれって最初に言われたのあんたたちなのよね?目的地とか聞いてる?」

 

かがみの質問に私も困惑しつつも

 

「いや、私も慶一君には一緒についてきて欲しいとだけしか言われてなくてねー」

 

そう答えると、かがみは腕を組んで考え込んでいた。

 

「私も何も聞いてないんだよね。」

「私もだな。とりあえずついていくしかねーとおもうぜ?」

 

つかさとみさきちもそう答える。

 

「うーん。大切な事って先輩言ってたんだよね?岩崎さんわかる?」

 

ゆーちゃんが考え込みながらもみなみちゃんに話を振るとみなみちゃんも困惑しつつ

 

「・・・私にも検討がつかないかな・・・でも行ってみればはっきりするのなら行くしかないよ・・・」

 

そう答えるとひよりんも頷きながら

 

「とにかくついて行こうよ。そうすれば答えは出るはずだから。」

 

そうひよりんも言う。

 

八坂さんと永森さんも困惑の表情で

 

「先輩の事に関しての事なのかな。どう思う?やまと。」

「おそらくそうだと思うけど、まだはっきりとはわからないわね・・・」

 

そう話しているのが聞こえた。

 

これまで言葉を発さずにいたみゆきさんと峰岸さんが

 

「・・・実はさっき慶一さんの部屋の前を偶然通りかかった時に慶一さんのお父さんとの会話を聞いてしまったのですが、なんでも今回の事は慶一さんの過去に関係してる物らしいですね・・・」

 

「私も高良ちゃんと一緒に聞いていたから間違いないと思うわ。」

 

そう言う2人から出てきた過去、という言葉にみんなも色々憶測を飛び交わせて話をしていたが私は一人

 

(慶一君の過去、か・・・)

 

皆とその事について話しながら考えていた私だった。

 

そして、慶一君の過去の事について何も知らない黒井先生とゆいねーさんもその事を聞いてきたので私達が聞いてきた話を2人にして事情を説明した。

 

慶一side

 

一昨日の半分も登らないうちに途中でルートを変えて、俺はある場所へと皆を引き連れて向かっていた。

 

ここから先は上には登らないコースでもあり、皆も少しは楽だろうなと思いつつ目的地を目指した。

 

しばらく歩くと、少し開けた切り立った断崖に近い場所にぽつんと立っているお墓が見えてきた。

 

俺はお墓の前に立ち、皆の方を振り向いて

 

「みんな、ここが目的地だ。ちょっと色々する事あるから少し待っててくれるか?」

 

俺が皆にそう言うと、皆も頷いてくれたので、俺はお墓の周りを掃除したり花を換えたりといった事を始めた。

 

そんな俺の行動を見て皆も、お墓周りの掃除とかを手伝ってくれたりしてくれたのだった。

 

俺はそんな皆にお礼を言うと、お墓に向き直り線香に火をつけてお墓に添えて俺は手を合わせてしばらくそのままでいた。

 

こなたside

 

慶一君が連れてきてくれた所は切り立った崖の側にある小さなお墓だった。

 

あそこまで丁寧に掃除をしたりする所を見ると、そのお墓は慶一君にとっても大事な物だと思えた。

 

私達はお墓に手を合わせてしばらくじっとしている慶一君を後ろで見ながら小声で話をしていた。

 

『誰のお墓なんだろうね?』

『慶一くんにとって大事な人の、なのかも』

『ねえ、ゆきちゃん。お墓に書かれてる名前見えた?』

『ちょっとここからだと遠目でよくわかりませんね・・・』

『目的地はわかったけど結局大事な部分はまだわからないままね・・・』

『たぶんもうすぐはっきりするんじゃねえか?』

『なんとなくですけどさっき高良先輩達が言っていた慶一先輩の過去に関係あるんじゃないでしょうか?』

『・・・となると・・・何となく予想できる答えがありますね・・・』

『私にはさっぱりっスね・・・先輩との付き合いもまだ短いですし・・・』

『やまとはわかる?』

『なんとなく、だけどね・・・』

 

八坂さんの質問に答える永森さんの言葉にみなみちゃんが

 

『・・・永森先輩、先輩の予想ってやっぱり・・・』

 

永森さんにそう聞くと、永森さんもみなみちゃんに頷きながら

 

『ええ、多分あなたが考えている事と同じだと思うわ・・・』

 

そう答え、そして

 

『・・・先輩の・・・ご両親のお墓じゃないかしら・・・』

 

という永森さんの言葉にみなみちゃんもこくりと頷いていた。

 

私達はその答えに驚きながら、まだお墓に両手をあわせている慶一君の後ろ姿に目を戻したのだった。

 

そしてしばらく慶一君を見ていると、ぽつりぽつりと何かを話し始めたのを私達は黙って聞いていたのだった。

 

慶一side

 

お墓に両手を合わせながら今までの事を思い出し、自分の歩んできた道を振り返っていた。

 

改めて両親の眠るお墓を見て、そして、後ろに居るみんなの事を考えながら俺は気がつくとお墓に向かい語りかけ始めていた。

 

「父さん・・・母さん・・・ずいぶん時間かかっちゃったけど、俺ようやくここに来れたよ?つい最近まで俺は父さん達の事を知らずに生きてきた。そして本当の両親の、父さんと母さんの事を知らされて俺は困惑したよ・・・俺はずっと龍神の家の子だと思って生きてきたんだから今更俺に本当の両親がいる事を知らされてもその事実は俺にとっては受け入れがたいものだった。」

 

そこで一端言葉を切り一つため息をついてさらに言葉を続ける

 

「それを知った頃の俺は大分荒れたっけな・・・。そしてその結果、親友を再起不能に追い込む事までもやってしまった。けど、その親友に促されて俺は父さん達の事、龍神さん達の事を受け入れるためのきっかけを作ることができたんだ。そして何とか立ち直った俺は、中学時代に2人の年下の友人と知り合う事が出来た。その2人との出会いは俺のすさんでいた日常を変えるきっかけにもなってくれた。その後中学を卒業して父さん達と俺が暮らしていた本当の家に高校に上がる頃に移り住み、少しでも父さん達の事を知りたいと思い、俺はもう一度父さん達に向き合うきっかけを探していたよ。」

 

俺はみんなのほうに向き直ると左手を向けて

 

「さらにもう一歩勇気を欲しがっていた頃に俺は・・・見えるかい?父さん、母さん。俺はあの子達に出会ったんだ。あの子達との生活はとても楽しくて、俺はあの子達を大切に思った。そしてみんなも俺を大切に思ってくれた。それから、そんなみんなと過ごすうちに俺はもう一歩の勇気をみんなからもらう事ができたんだ。その勇気は仲間を守り、そして、こうして俺の過去と向き合う為の原動力にしてくれたんだ。」

 

そして俺は、またお墓の方に向き直り

 

「今日俺は父さんと母さんの事を受け入れるつもりで、過去を乗り越えるつもりでここに来たんだ。とても怖かったけどみんなが俺を後押ししてくれたからここに立つことが出来た。俺を生んですぐに居なくなってしまった父さん達の事を一時は恨みもしたけれど、今は凄く感謝してるんだ。俺をこの世に送り出してくれた事に、そして・・・みんなと出会わせてくれた事に・・・だから・・・ありがとう・・・父さん・・・母さん・・・俺を生んでくれて・・・ありがとう・・・」

 

最後の言葉を言い終えると同時に、俺はこみ上げてくるものを抑えられずに肩を震わせて泣いていた。

 

そんな俺の横に親父が立ってお墓に手を合わせながら親父もお墓に語りかけた。

 

「森村さん。心配しなくても大丈夫です。慶一は、あなた方の息子さんは立派になりましたよ?一時は自分の運命を呪いつつも、それでも希望を捨てる事をせずに、そして、私達の息子である事を受け入れて生きてきました。慶一を支えてくれる友人が出来た事で私自身も安心が出来るほどになりました。これからもあなた方の息子さんはあなた方の分もしっかりと生きていく事でしょう。私も慶一の支えになってやるつもりです。どうか安心してください。」

 

その親父の言葉に俺は立っていることが出来なくなり、両膝をついてお墓の前で泣きつづけていた。

 

そんな俺の側にみんなも泣きながら集まってきた。

 

こなたside

 

慶一君は自分の本当のご両親に自分の今までの思いをぶつけると、慶一君は感極まって泣き始め、龍神のお父さんの言葉はさらに慶一君の心に響いたようでその場に立っていることも出来なくなって慶一君はその場に両膝をついて涙を流しながらうつむいていた。

 

慶一君の言葉を聞いて私達もみんな慶一君の私達への思いを知り、みんなもその気持ちに打たれて泣き始めていた。

 

私達は泣きながらも慶一君の側へと駆け寄って行き、慶一君に私達の思いを言葉にしたのだった。

 

「慶一君、ありがとう。私達をそこまで思ってくれる気持ち、嬉しかったよ?」

 

「勇気をくれたのはあんたも同じよ。そうでなかったら私はあんたと話してこうして友人になる事だってなかったもの。」

 

「けいちゃんはわたしにも勇気をくれたんだよ?だからこうしてみんなと仲良くなれた。私の日常を変えるきっかけだったんだから。」

 

「私の世界観を変えてくれたのも慶一さんです。あなたとの出会いは私に新しい世界を教えてくれたんですから。」

 

「変わったのは慶ちゃんだけじゃないわ。私達もよ?みんなとつないでくれたのも慶ちゃんのおかげなんだから。」

 

「お前と話すこと、遊ぶ事は悪くねーって思えるゼ。それにお前が居なかったら私はここに遊びに来る事もなかったんだからな。このきっかけもお前が作ってくれたんだぜ?」

 

「私も先輩があの時助けてくれたから、今でもこうしてやまととつながっていられる。本当に感謝してるんですよ?」

 

「こうと私の仲を取り持ってくれたあの時から、私は先輩とこうといる事がより楽しくてかけがえのないものになったわ。その影響は私が目標にしていた高校を蹴らせるほどのものだった。そしてさらに私に新たな友人すらも与えてくれた。これも先輩が私を変えてくれた事でできた事なのよ?」

 

「私は先輩の居る高校を目指したけど、その目標を持ってる人は居ないって思ってた。でも先輩は同じ目標を持った岩崎さんを、田村さんを私に紹介してくれた。高校に上がったとしても仲良くやっていける友人を先輩がくれたんです。」

 

「・・・私は・・・高校に上がってからはみゆきさんだけを頼る事になるかもしれないと思っていました・・・けど、みゆきさんを通して先輩と知り合って、先輩はさらに同じ学校を目指す友人を私に紹介してくれました・・・高校に上がっても一人じゃない、そのきっかけは先輩がくれたものです・・・」

 

「先輩と私はまだ付き合いは短いっス。けど、こうちゃん先輩が森村先輩とつながってる事を知り、そしてそのつながりは泉先輩達も私の前に連れてきてくれました。そして同じ学校を目指す2人とも出会うきっかけを作ってくれたのは、先輩と私が秋葉腹での一件で出会えたからだって思ってます。私の転機にも先輩はかかわってくれたんっスよ。その事をすっごく感謝してるんですから。」

 

「森村ー、これからもこいつら大切にしてやらなあかんで?こいつらに悲しみの涙流させてみい、うちがきっちりしばいたるから覚悟しいや?」

 

「ゆたかを救ってくれたあの時からゆたかは少し変わったようだった。君には感謝してるんだよ?だから、これからもこなたやゆたかの事守ってやってね?」

 

そう言って皆で慶一君に声をかけると、慶一君は何度も頷きながら涙をこぼしつづけていた。

 

私達も慶一君が落ち着くまでの間一緒になって泣いていたのだった。

 

慶一side

 

俺は皆に自分の本音を語った。

 

そして、俺の本音を聞いた皆も自分が変わるきっかけを俺が与えたのだと言ってくれた。

 

その言葉がとても嬉しくて、そして人の出会いというきっかけはともすればそれに係わる人達の運命すらも変える力すらあるのだと言う事を改めて思い知った。

 

俺は皆と共に泣きながら、改めてこの場に皆とともに居られる幸せを感じながら両親へ再度心の中で(ありがとう)と言うのだった。

 

しばらくして落ち着いた俺達は、再びお墓の前に立ち、今度はみんなで手を合わせて心から両親への冥福を願った。

 

俺は皆に向き直ると

 

「・・・みんな、ありがとうな。改めて、これが俺の両親の眠っているお墓さ。両親の死後、親父達がお骨を預かってこの場所にお墓を建ててくれたらしいんだ。俺をなすりつけあい死んだ両親を罵倒する親戚達の所には安心しておいて置けないって気を使ってくれてな。ここの事を知ったのは一昨年の山篭りの為に合宿所を使った時、親父が俺に教えてくれたんだ。」

 

一端言葉を切り軽く深呼吸してさらに言葉を続ける

 

「その頃の俺は父さん達の事を知り、親父達の事を聞かされて俺自身不安定な時だったからな。結局その時はここに来ることも出来なかった。でもみんなと出会い一緒に過ごすうちに俺は俺の過去と向き合おうという気持ちが少しずつ膨らみ始めて来ていた。後もう一押し欲しいと思っていた所に勉強会でのこなたの一言が俺の背中を後押しする事になった。いいきっかけが出来たと思ったものの、やはりまだ不安のあった俺はその一押しの勇気を出したい一心でみんなを誘い、この旅行に連れて来た。」

 

目を伏せしばしの間を取り最後の締めの言葉を続ける

 

「・・・情けない話だけど一人で向き合う事が怖かった。だからみんなにも側にいてもらいたいと思った。だから本当の目的を隠したまま今日までみんなに付き合ってもらったんだ。みんなも側に居る、後は俺の勇気一つと思っていた時、一昨日の事件がおきてみんなを危険に晒しかけ、必死にみんなを守った時、俺はようやく今日の決意を固める事ができた。そして、みんなにも父さんと母さんに会って欲しいという思いがあったからここにみんなを連れてきたんだ。」

 

とりあえずの事情を話し終えて俺はみんなの顔を見ながら

 

「・・・結局は自分の目的の為にみんなを利用する形になったよな?ごめん、結局言い出せなかった。全てを終えてから告白してるんじゃみんなも呆れるよな・・・」

 

と言う俺の言葉にかがみは腕を組んで俺を睨みつけつつ

 

「・・・そうね、本当呆れるわね。私は、いえ、私達は慶一くんの事を信頼してきたわ。そして慶一くんも私達を信頼してくれてると思ってた。だからこそ私達に話して欲しかったわよ。あんたの決意を、目的をさ。」

 

そう言う。

 

その後に続き、こなたも少し不機嫌な表情で

 

「そんな私達が慶一君にこの事を相談されて嫌な顔すると思う?私達が信頼した慶一君の悩みだもん、話してくれたなら私達はちゃんとそれに応えてあげられたよ?」

 

そう言い、それに続いてつかさも

 

「わたしたちにできる事は大した事じゃないのかもしれないけど、いつもけいちゃんを頼ってきたわたしだから頼ってくれた時にはわたしはそれに応えてあげたいなって思うよ?」

 

そう言い、みゆきも厳しい表情で

 

「それとも慶一さんにとって私達はそんなにも頼りになりませんでしたか?相談する価値もないと思ったのですか?」

 

そう言って俺に問い詰めてくる。

 

みさおとあやのも少し怒ったような表情で

 

「私は慶ちゃんを信頼していたけど、慶ちゃんにとっては私への信頼ってその程度だったのかな?だとすると少し悲しいわ。」

「お前にとって私はそんなに信用ねーやつだったんか?私はお前の事信用してるのによー・・・」

 

と言う2人の言葉にも困惑していると、さらにこうとやまとも

 

「先輩、先輩に助けてもらった事を私は忘れていませんよ?あの時から私は何かあった時には先輩に応えたいと思って来たんです。」

「こうとの事、そして一昨日の命がけの行動に私はいつか先輩に恩返しが出来たらと思ってきたわ。そして今がその時だったなら先輩の胸の内、話して欲しかったわよ・・・」

 

そう強い口調で責めてくる。

 

そしてゆたかたちもそれぞれに

 

「先輩、私はあの時先輩に助けてもらった事、そして今回お友達を紹介してもらった事に恩を感じています。まだ同じ学校に通ってはいない私ですけどそんな先輩に応えてあげたいと言う気持ちはあるんですよ?」

「・・・小早川さんと田村さんと知り合うきっかけをくれたのも先輩です・・・私もその事には感謝しています・・・だからこそ先輩の悩みを少しでも軽くできるなら・・・私にも話して欲しかったです・・・」

「私もあの時助けてもらった事忘れていません。先輩とはもっとも付き合いの短い私ですがそれでも私に友達をくれた先輩の為に何かしてあげたいと言う思いはあるっスよ?」

 

自分達の思いをぶつけて来た。

 

そして最後にこなたが俺に

 

「ね?簡単な事だったんだよ。慶一君が勇気を振り絞って私達に一言相談してくれればよかったんだ。でももうわかったでしょ?私達の気持ちがさ。もしまたこんな事があるときはちゃんと相談してよね。君が私達を信頼してくれる限り、私達も君の信頼に応えるからさ。」

 

と言う言葉に俺は、自分の愚かさを悔いてこなた達に頭を下げて

 

「そうだな、そうだったんだよな・・・ごめん、そしてありがとう。今度はちゃんとみんなに言うよ。だから今回の事は許して欲しい・・・」

 

と言う俺の謝罪に、皆はさっきまでの不機嫌そうな顔はどこへやらでにっこりと笑って大きく頷いてくれたのだった。

 

そして、すべき事を終えた俺達はお墓を後にしたのだが、その時俺はもう一度お墓の方に振り返り心の中で(来年からは毎年来るからね。またな、父さん、母さん)そう呟いてから俺達は山を降りた。

 

俺は今日、自分の過去の一つと決着をつけた。

 

一つ大きな壁を乗り越えた俺は、ようやくここから先に進んでいけると言う思いを持てた。

 

その時には皆と共に進みたい。

 

そして、皆とならばどんな困難が来ても跳ね返せる、俺はそう思えたのだった。

 

この一件を通して俺達は、さらに強い信頼で結ばれる事になった。

 

 


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