食堂での泉こなたとの出会いがあり、その後しばらくして俺は更なる四重奏の一人と出会うこととなる。
それはある日の学校帰りの事だった・・・・・・
「ふう、今日も一日授業は面倒だったな・・・」
そう呟きながら今日の学校での授業を思い出す。
けれど、思い出せば出すほどに気分が落ち込み、思わず
「・・・はあ、やめよう、余計に疲れるだけだな・・・」
そう呟きつつ曲がり角の所に差し掛かった時、曲がり角の向こうから
「困ったわね・・・ここにもないか・・・。」
と独り言のように呟く声が聞こえたので何事かと思い、声の方へ視線を巡らせてみると・・・・・・
特徴のある紫の髪をツインテールにしている女生徒が何かを探しているかのように辺りをきょろきょろと見回していた。
その様子を見た俺は、困り果て、落ち込む表情を見せるその女生徒をほおっておけなくなり、とりあえず声をかけてみる事にした。
「えーっと、君、どうしたの?何か探してるみたいだけど?」
俺に声をかけられて、一瞬ビクリと反応し、女生徒は俺の方を見て
「あんた誰?っていうか、あんたには関係ない事だからほっといてよ!」
女生徒はいらつくような感じで俺を睨みつけつつそう言う。
俺は、そんな女生徒の視線に少し気押されつつも、自分の事を伝えようと思い、女生徒に
「あ、えっと、俺は泉さんと同じクラスの森村慶一だ。君は確か柊さんで合ってるよね?」
そう自己紹介をしつつ彼女の事を確かめると、女生徒はそんな俺をなおも訝しがりつつも
「そうだけど、なんであんたが私の事知ってる訳?」
そう言い、俺を睨む柊さんの目には明らかに警戒の色が浮かんでいた。
そこで俺はもう少し詳しい事情を柊さんに話して警戒を解こうと思い
「いつもうちのクラスに来て泉さんや他に2人の子とお昼食べてたよね?だからかな、知ってたのは。」
柊さんを知っている理由を話すと、柊さんは俺の事をじっと見つめつつ
「あ、そういえば・・・あんたはこなたのクラスの人だったわね・・・ん?森村?」
そう言いながら突然俺の名字を呼んだかと思うと何かを考え始め、そして何かを思い出したのか、ぽんと手の平を打つと
「ああ、そうか。あんたがこなたが言ってた食堂でこなたにチョココロネあげた人か。」
そう言いつつうんうんと1人納得しているような仕草を見せる柊さんを見て、俺は泉にコロネをあげた時のことを思い出しながら
「ああ・・・そんな事もあったっけなあ・・・」
と、その指摘に少し照れつつ俺は、左手で頭を掻きつつ答える。
それを見た柊さんは俺の方をニヤリとした目で見つつ俺に
「こなた、あんたにコロネもらえた事結構喜んでたわよ?」
と言った柊さんの顔から警戒心が薄らぐのが見て取れた。
俺はそんな柊さんの言葉に苦笑しつつ
「あの時は、俺が買った後に泉さんがコロネ買いに来たんだけど丁度売り切れになってしまってさ、泉さん、結構楽しみにしてたっぽいから、なんか気の毒になってね。それに俺が買った後で売り切れになったみたいで後味悪かったし・・・。」
と柊さんにあの時の事を説明した。
それを聞いていた柊さんは俺の方をじっと見ると
「まあ、悪い人じゃなさそうね・・・」
少し安心したようにぼそりと呟くのを聞いたのだった。
「ははは。まあそれはともかく、俺は柊さんが何か探しものをしてるっぽい感じだったから、どうしたのかなと思ってさ。つい声をかけちゃったんだけど、もしよかったらだけど、探し物手伝おうか?」
俺はとりあえず当初の目的を果たす為に柊さんに提案を持ちかけた。
柊さんは複雑そうな表情で俺を見て
「え?でもなんか悪いわよ。あんたも学校の帰りなんでしょ?」
柊さんは手を貸してもらうのはなんか悪いな、という感じで俺にそう言ってきたが俺は声をかけた時点で手伝うつもりだったので
「困ったときはお互い様ってやつかな。性分なもんでね、そういうの見るとほおっておけなくなるんだよな。」
そう言って苦笑する。
柊さんは俺の言葉に少し俯きつつ何かを考えこんでいたが、やがて俯かせていた顔を上げて俺を見ると
「じゃあ、悪いけど手伝ってくれる?実は携帯電話を気がつかないうちに落としちゃったみたいでね・・・。」
そう俺に事情を説明しつつ表情を曇らせる柊さん。
俺も柊さんの説明に眉をひそめて
「携帯電話か・・・それはさすがに落としちゃまずい物だよな・・・。」
そう言った後柊さんにこれまでの自分の行動を確認してみたのかを聞いてみた。
「柊さん、自分が行動した場所や立ち寄った場所とかは巡ってみた?」
俺がそう問い掛けると柊さんは自分の取った行動を思い出すように考え込みながら
「うん。今日行った場所や通った場所を追いかけながらここまで来たのよ。後はここから学校までの道と教室かな?」
とりあえずこの時点まで取った行動を教えてくれた。
俺は(なら後はここから後の行動を辿ればいいかな?)と心の中で考えながら柊さんに捜索活動の再開を促して
「なるほど。じゃあ、一緒に行ってみよう。」
そう声をかけると、柊さんも俺の言葉に頷いて
「わかったわ。悪いけどお願い。」
そう言う柊さんの言葉に俺も頷くと、2人して早速捜索活動を開始したのだった。
「うーん、ここにはないな・・・」
柊さんが通ったという場所を進みつつ周りを見渡すが、それらしいものも見つけられず俺は小さく呟いた。
柊さんも心底困ったような顔で
「そうね、どうしよう・・・」
と、俺と同じように周りを見渡しながら答える。
俺は気持ちを切り替えるように再び柊さんに
「まだ探してない所もあるんだし、諦めずに行こうよ?」
そう励ますように言うと柊さんは申し訳なさそうに
「そうね。なんかごめんね?付き合わせる事になっちゃって・・・」
自分の不注意で付き合わせた事を悪いと思っているのだろう、少し沈んだ顔で俺にそう言った。
俺はそんな柊さんの暗い気持ちを少しでも吹き飛ばそうと思い
「いいって。さっきも言ったろ?困った時はお互い様ってね。」
軽く微笑みながら柊さんに言う。
すると、柊さんは少し顔を赤らめて照れたようになって
「あ、ありがと・・・。」
と、小さく呟いた。
俺は柊さんが言ったその言葉がよく聞き取れなかったので頭にハテナマークを浮かべて柊さんを見ていたがそのうちに学校へと到着した。
後の捜索ポイントは教室に至るまでの廊下と教室だったので、俺達は残りの捜索場所を総当りで当たる事にした。
柊さんにも焦りが見え始めたのか余裕のなくなったような声で
「と、とにかく、後は学校の中。教室へいってみましょ?」
俺にそう促すと俺も頷いて
「そうだな。後は探すとしたら、そこか・・・」
そう答えつつ、教室へ移動中周りに注意しつつ携帯を探したが結局携帯を見つけられなかった・・・。
俺は最悪の事態も想像しつつ
「うーん、誰かに拾われちゃったのかな?」
そう、自分の考えを口にすると柊さんも半ば諦め気味になって
「後は、警察に届けるしかないのかなあ・・・」
落ち込みつつもどうしようかな?と考え込む柊さんを見ながら後は他に何か見つける手だてはないだろうかと思案しているとその時俺は一つ試して見たい方法を思いついた。
その方法を試すためにまずは柊さんに確認を取って見る事にした。
「柊さん、携帯電話はマナーモード?それとも着信音鳴るように設定してある?」
俺は柊さんの携帯の設定がどうなってるのかを確認する為柊さんに聞いてみた。柊さんは何かを思い出すように少し思案して
「一応、着信音鳴るように設定戻してあるはずだけど・・・」
自分のしてある設定を思い出したようなので俺にその事を伝えてきた。
俺はそれを確認するとさっき思いついた方法を試す為に柊さんの携帯番号を聞いてみることにした。
「柊さん、ちょっと試してみたい事があるんだ。悪いんだけど、君の携帯の電話番号教えてくれないか?」
そう言う俺の突然の申し出に柊さんは困惑して
「え?何よ突然、何で私の電話番号を初対面のあんたに教えなきゃいけないのよ?」
柊さんは俺が言っている意味が分からないという風に俺に強い口調で言う。
俺はそんな柊さんの警戒を解く為に
「もしかしたら携帯の着信音で落ちてる場所とかが分かるかもしれない。」
そう伝えると柊さんも俺がやろうとしてる事に気がついたようで自分の定期入れを取り出すとそこから予備で自分の携帯番号を書き込んだ紙を取り出して
「そういう事ね・・・ちょっと待ってね・・・はいこれ。」
俺に携帯番号を渡してくる。
それを受け取った俺はさっそく番号を入力し発信してみる。
すると・・・・・・
”ピピピピ”と携帯の着信音が鳴り出した。
それも柊さんの鞄の中から音が聞こえている。
慌てて柊さんが鞄を開くとそこには着信音を鳴らしつづける柊さんの携帯が入っていたのだった。
2人して顔を見合わせる事数十秒
「ぷっ」
「くくく」
「「あはははははは」」
2人して大笑いしたのだった。
そしてひとしきり笑った後柊さんはばつが悪そうに俺に
「ごめんね?こんな間抜けな事に突き合わせちゃってさ。」
と恥ずかしそうに俺に言ったが、俺は笑って
「いいさ。とりあえず見つかってよかったな?大事にならなくて何よりだ。」
手伝った事なんてなんてことないよ?という風に柊さんに伝えると柊さんは顔を赤くして
「うん。ありがとう・・・。」
と俺に短くお礼を言ってきた。
俺は携帯を見つけるために柊さんの携帯番号を自分の携帯に入力していた事を思い出し、番号はこのままじゃまずいだろうと思った俺は
「あ、そういえば、俺の携帯に柊さんの携帯番号入ったままだね。ちゃんと消しとくから安心して?」
柊さんを安心させる為にそう言った。
柊さんは俺の言葉に少し戸惑いながら
「そ、そう?ならいいけど・・・」
と言いいながらも柊さんの顔が少し寂しげに見えた気もしたけどたぶん気のせいだろうと俺は思う事にした。
一連の捜索活動も終了して柊さんと校門前まで一緒に来てそこで俺達は別れる事になり
「じゃあ、私はここで、携帯一緒に探してくれてありがとね。それじゃー」
そう言って去っていく柊さんを見て俺は今日は少しいいことできたなあとしみじみ思うのだった。
そして、柊さんが去った後女の子1人で帰らせた事にはっと気がついた俺は
「あ、駅まで送っていってあげればよかったかな?たはは・・・。」
そう呟きながら最後の最後で間抜けな俺だった・・・。
かがみside
帰宅途中にて
(あれがこなたが言ってた森村君か。なんか携帯電話一緒に探してくれたり、思ったよりいい人だったな・・・ああいう人なら友達になるのも悪くないかも・・・でも私から声はかけにくいわよね・・・なんかきっかけがないかなー・・・)
自宅に到着
「ただいまー、今帰ったよー。」
「お帰りおねえちゃん。あれ?何かいい事あった?妙に嬉しそうな感じだけど?」
「うん実は、今日の帰りさー・・・・・・。」
2つ目の旋律がつながっていく