旋律達と共に夏の風物詩の一つである夏祭りへとやってきた俺たちだったが、祭りを巡ってる最中に迷子の発覚があったため急遽捜索部隊を編成して迷子捜索へ向かった俺達。
帰り際に少し楽しんでくるという寄り道もあったのだが、無事みゆきを保護して俺達は皆の待つ集合場所へと戻ったのだった。
その際にかがみから、少し遅かった事への追求もあったのだが、とりあえず今は迷子の捜索を優先させるべく、次の編成を行って捜索を再開させる俺達だった。
「よし、みゆきは無事保護できた。次はつかさのところへ向かうか。それじゃかがみ、第2陣出発といこう。」
俺がそう声をかけると、かがみも俺の言葉に頷き
「そうね。つかさも向こうで待ってると思うし、あの子一人きりじゃ心細くなってる頃だと思うからすぐに向かわないとね。いきましょ?慶一くん。」
そう答えるのだった。
俺は、こなたたちに集合場所の確保を頼むと、かがみと共に出発するのだった。
移動中俺は、かがみにはぐれてしまわないように俺のシャツを掴むように言うと、かがみは俺のシャツの裾を握りながら
「とりあえずこれでいいわよね?慶一くん。」
そう、俺に確認をしてきたので俺もかがみに頷くと
「ああ、それでいい。しっかりと握って離さないようにな。」
そうして少しずつ人ごみを掻き分けながらつかさの元へと急ぐ俺達だった。
途中人ごみに揉まれる際にかがみが俺のシャツから手を離しかけたので、俺は慌ててかがみの手を握り、離れないようにかがみの手を引く形で歩き出した。
そんな俺のとっさの行動にかがみは驚いて「あっ・・・。」と小さく声を上げる。
かがみの声に気付き、俺はふとかがみの方へと視線を向けると、かがみはなんだか顔を赤らめているように見えた。
俺はかがみのその態度に頭にハテナマークを浮かべ、そんなかがみの心に気付く事もなく、ただ無意識にかがみの手を引っ張りつつ、迷子であるつかさの居場所へと意識を向けていた。
しばらく歩いていると、いくつかの出店が見えて来ていた。
その店のいくつかをみながらかがみは俺に
「ねえ、慶一くん。こなた達とも楽しんできたのよね?なら私達もつかさを迎えに行った後は少し楽しんでもいいわよね?」
と、聞いてきたので、俺はその質問に苦笑しながら
「こなた達も楽しませてきたしな、かがみ達が楽しむ事に対して俺はどうこう言える立場じゃないさ。つかさと合流したらそんなに遅くならない程度に出店巡りながら帰ればいい。」
と、最初に楽しんできた手前かがみ達にも文句は言えないので、俺はそれをかがみの希望を汲むつもりだった。
「じゃあ、つかさと合流したら少しだけね。」
「了解だ。ともかくつかさのところへ急ごう。」
「そうね。いきましょ。」
そんな軽いやり取りをしつつ、つかさの所へと向かう途中、手ぶらで行くのも何だしと思った俺は、綿飴の出店で一袋購入して、待たせてるお詫びも兼ねたお土産にするのだった。
むろんかがみにもリンゴ飴を買ってあげた。
その際にかがみが小声で
『買ってくれたのは嬉しいけどそろそろダイエットしようかな?と考えてたのよね・・・まあいいか、明日からがんばろ・・・。』
そう言っていたのを聞いてしまった俺は心の中で
(かがみ、ダイエットするつもりだったのか・・・。けどここで妥協しちゃうあたりかがみも弱いな・・・。)
そうかがみの顔を見ながら考えていると、かがみは俺の視線に気付き
「慶一くん、今、何か失礼な事考えてなかった?」
と妙に鋭い突っ込みがきたが、俺は適当に
「いや、何も考えてないぞ?」
と言ってごまかしておく。
そうこうしているうちにつかさとの合流地点へと近づいてきた俺達だったが、目的地に近づくにつれて何か妙な胸騒ぎを覚える俺達だった。
かがみが俺の方を見ながら少し心配げに
「ねえ、慶一くん。つかさ、ちゃんと待ち合わせ場所で待ってるかな?」
そう聞いてきたが、俺はその質問に確信を持って答えることができず
「・・・・・・待ち合わせ場所にはいると思うけど・・・なんだろう、妙な不安があるな・・・。」
少し歯切れの悪い答え方になってしまった俺の言葉にかがみも少し不安を覚えたようだった。
2人して妙な不安に駆られながらもとりあえず目的地に辿り着くと俺達はつかさの姿を探した。
その時・・・・・・
つかさside
わたしは、おねえちゃんが迎えに来てくれるという事もあり、待ち合わせ場所で大人しくおねえちゃんが来るのを待ってたんだけど、そのうちに知らない男の人達が私をナンパして連れて行こうとしてきたので、わたしはおねえちゃんが来るまでここにいなきゃいけなかったから、男の人の誘いを断った。
でも、男の人達はわたしの言葉を聞いてくれなくて
「・・・・・・なさい。知り合いと待ち合わせしてるから・・・一緒にはいけないの・・・。」
わたしは怖かったけど、勇気をふりしぼって男の人達にそう言ったけど、そんなわたしの言葉を無視して
「いいじゃん、結構待たされてるんでしょ?そこまで待ってもこないんじゃ君、見捨てられたんだよ。そんな薄情な連中なんてほおっておいてさ、俺たちと遊ぼうぜ?」
なおもわたしを連れ出そうと迫ってくる。
わたしは男の人達が怖い事もあったけど、それ以上におねえちゃん達に対する男の人達の物言いに少し熱くなって
「そんな、見捨てられてなんかないもん!おねえちゃんはきっと来てくれるよ!おねえちゃんの事知りもしないで勝手な事いわないで!」
と、いつもの私からは考えられない程の大声でそう抗議した。
「ちっ・・・めんどくせえな・・・いいから来いよ、おらっ!」
そう言いつつ、中々いう事を聞かないわたしに男の人達が痺れを切らしたのか、無理やりわたしの手を引いて連れて行こうとしたのだった。
わたしは途端に怖くなって
「や、やめてよ・・・手を、手を離して~!」
そう叫びつつ、必死に抵抗を試みるわたしだったけど、男の人の力に敵うはずもなく
「うるせえな!いいから来るんだよ、おらっ!」
男の人はそう怒鳴りつつ、まさに連れて行かれようとしたその時、わたしの手を引く男の人の腕を握り締める人が現れたのだった。
「待てよ。その子をどうするつもりなんだ?」
わたしはその声と姿を見た瞬間思わずその人に声をかけていたのだった。
「けいちゃん!来てくれたの!?」
そう言うわたしに、けいちゃんはいつもの優しい笑みを見せる。
けいちゃんの姿を見たわたしは、心から安心感につつまれたのだった。
慶一side
俺が声のする方を振り向くと、つかさが今まさに男達に無理やり連れて行かれる寸前だった。
慌てて俺は男達とつかさの元へ進み、つかさの手を引いていく男の腕を掴んで
「待てよ。その子をどうするつもりなんだ?」
と、握り締める相手の腕に力を込めながら相手を睨みつける。
相手はそんな俺の姿を見て動揺しながらも
「な、なんだよお前は、この子の知り合いかなんかなのかよ?」
そう言いつつ握られた腕を振り解こうとしながら俺に問い掛けてくる男に俺は
「その子は俺の連れだ。悪いがナンパなら他を当たってくれないか?それでも、どうしてもその子を連れて行く、って言うなら、こちらとしても穏便に済ます訳にはいかなくなるが?」
と、男に凄みを含ませた声で返答する俺に怯えたのか男達は
「わ、わかった。お前の言うとおり他を当たるから勘弁してくれ。」
「ちっ、行こうぜ。しらけちまったよ・・・」
そう言いながらつかさを開放して、そそくさと去っていく男達を見送りながら俺はたたずんでいた。
かがみはつかさの元へ駆け寄り
「つかさ、大丈夫?変な事されてない?ごめんね、来るの遅れちゃって。」
男達から開放されて少し放心状態のつかさだったが、かがみの呼びかけに緊張の糸が切れたのか堰を切ったように泣き出して
「お、おねえちゃん怖かったよ~!わたし、どうなるのかとおもったよ~!でも来てくれて嬉しかったよ~!」
かがみの胸の中で泣きじゃくりながら怖さを訴えるつかさを、かがみは優しく頭をなでながら慰めていた。
「ばかね。私があんたの事見捨てるわけないわよ。まったくあいつらは好き勝手な事ばかり言ってくれちゃって・・・一発ぶん殴ってやればよかったかしらね?」
男達の物言いの一部始終をかがみも聞いていたので、そんな事を言っているかがみに俺も苦笑する。
つかさの泣く姿を見た俺は、ものすごい罪悪感を覚えてつかさに
「つかさ、来るの遅くなってごめんな?怖かったろ。ほんとうにごめん・・・。」
そうつかさに謝ると、つかさは顔を上げて俺の方を見て、涙で濡れた顔ではあったがにっこりと笑って
「ううん。来てくれて、助けてくれて嬉しかったよ。ありがとうけいちゃん。」
そんな風に言ってくれるつかさにますますの罪悪感を覚える俺だった。
ひとしきり泣いた後はつかさもようやく落ち着いたようで、俺たちにいつもの笑顔を見せてくれるつかさに戻っていた。
俺は、つかさにここに来るまでにお土産として買っておいた綿飴をつかさに渡した。
「ほら。つかさこれお土産だ。それと、さっきの迷惑かけた分はみんなの所に戻りがてら出店で何か奢るということで俺の償いとさせて欲しい。」
そう言う俺から綿飴を受け取ってつかさはにっこり笑いながら
「ありがとう~。私これ大好きなんだ。さっきの事なら助けてくれただけで十分だしあまり気をつかわなくていいよ~?」
と、つかさがそう言うが、かがみはそんなつかさの言葉にあまり納得がいっていないようで
「つかさ、こういう時は甘えちゃっていいのよ?元々遅れた原因は慶一くんにもあるんだからね。」
そう突っ込んでくるかがみの衝撃の一言に、俺のハートにかなり太い槍が突き刺さるの感じながら
「う・・・それを言われると余計に罪悪感が・・・。」
そう呟きつつ、罪悪感で押しつぶされて凹んでる俺を見ながらかがみはしてやったりな笑顔をしていたのだった。
いつまでもこうしていても仕方ないと思った俺は、2人に
「まあ、いつまでもこうしてるわけにもいかないしそろそろ行きますか。」
そう声をかけると2人とも
「そうね。そろそろ行きましょ。それじゃ慶一くんエスコートお願いね?」
「うん、行こうか。けいちゃん今度ははぐれないようにするからよろしくね~。」
そう言いながら俺の手を握る2人だった。
「ああ、わかったよ。って!?」
俺はさっき無意識ながらかがみの手を握り締めていた事を思い出し、かつ今ここで、今度ははっきりと意識する形で2人に手を握られている状態に思わず顔を真っ赤にしながらも
「じゃ、じゃあ行こうか。」
と、言いつつもかなり動揺しながら2人の手を引いて、集合場所への帰り道を辿る俺達なのだった。
帰る途中で今度はかがみとつかさはチョコバナナの店に立ち寄り
「これ美味しいね。慶一くんありがとね。」
「ほんとにいいの?でも美味しいね~。」
「ああ、遠慮せずに食ってくれ。罪滅ぼしには足りないけどさ」
2人に奢りながらもさっきの一件をいまだ引きずっている俺だった。
そして次に立ち寄った店は金魚すくいの店だった。
「金魚かー。ちょっとやってみようかな?慶一くん、いいかな?」
「おねえちゃんがんばって~。上手く取れるといいね~?」
金魚すくいの屋台を見ながら言う2人に俺も頷いて
「ああ、やってみろよ。俺もやってみるから」
そう言うと、早速お金を払ってポイを店のおじさんから貰って金魚を狙うかがみだったが、何故か金魚にことごとく避けられるようでかがみが金魚をすくおうと陣取るたびに金魚たちは逃げていくのだった。
そんな光景を俺とつかさは苦笑交じりに見守っていた。
かがみは少し凹み気味なっていたが、それでも諦めずに偶然側にきた一匹を狙った。
「とりゃっ!」
ポイを突っ込みすくおうとしたが逃げられてしまうかがみ。
唯一のチャンスを逃したことでさらに凹んでいた。
俺はそんなかがみの姿を見てられなくなり、かわりに金魚すくいをやる事にしたのだった。
「かがみ、俺がやってみるよ。」
金魚の動きに集中して心を静めながら狙いを定める俺にかがみとつかさも不安げに
「大丈夫?がんばってね慶一くん。」
「けいちゃんがんばれ~。」
2人して応援してくれたのでこれは何としてもすくわねば男じゃないなと思いながら狙いをつけた金魚に流れるようにポイを動かした。
「それ!」
気合の掛け声と共に俺は2匹の金魚をすくった。
2人は俺の成果に賞賛の声をかけてくれたのだった。
「慶一くんすごい!2匹も取ったよ!」
「けいちゃんうまいね。わたしにはちょっと無理だね~。」
その言葉に俺も照れつつも
「ははは。ありがとな、それとちょっと待っててな。」
そう2人に言うと、金魚すくいの親父さんに袋を2つ作ってもらいそれぞれに金魚をいれてもらって
「はい、かがみ、つかさ。これお前らにだ。」
と言ってそれぞれに金魚を渡すと、2人とも驚いたような顔をしていたが、すごく喜んでくれて
「ありがとう慶一くん。本当に貰っちゃっていいの?」
(この子は大事にしようっと)
「けいちゃんありがとう。大事にするからね~。」
(せっかくもらえたんだしちゃんとお世話しようっと)
そう言ってくれる2人に俺は笑いながら
「ああ。家には猫がいるし、おそらくは食われかねないしさ。だったら家に置いておくより、かがみたちにお願いした方がより安全な気がするからな。」
猫の事は口実ではあったが、そう説明をすると、2人は何となく納得したようで
「そういえばそうだったわね。でも本当にありがとう。」
「ねこちゃんに食べらちゃったらかわいそうだもんね。」
そう言ってくれたので、俺もその言葉に頷いて
「まあ、そんなわけさ。こんな物ですまないけどな。」
俺が照れ隠しにそう言うと、2人ともにっこりと笑ってくれたのだった。
「さて、戻るとしようか。もう大分いい時間だ。」
そう声をかけると2人とも頷いて
「そうね。そろそろいきましょ。」
「うん。みんな心配してるかな~?」
そう言う2人に俺も頷きで答えると
「多分な。それじゃ行こう。」
そう2人に改めて声をかけて、集合場所へと向かう俺達だった。
帰りの途中でいくつかの食べ物の出店でかがみの胃袋を満たす事になったが、まあこれもつかさを迎えに行くのが遅くなった罰だと自分自身に言い聞かせて納得した。
集合場所に近づいてきた時かがみとつかさが俺に
「慶一くん。つかさを助けてくれてありがとう。改めてお礼を言わせて?それと色々ご馳走様。金魚も嬉しかったわ。これ大事にするからね。」
「けいちゃん、迷子になって迷惑かけてごめんね?助けてくれた事嬉しかったよ?それに、金魚もありがとう、わたし、これ大事に育てるからね~?」
そう言ってくる2人に俺は照れながら
「いいさ。つかさの事は俺にも責任あったしな。それに2人とも俺にとってはかけがえのない大事な人だし、そんな大事な人を守る為なら体だって張ってみせるさ。まあ、今回はこんな事になってしまったけどさ、またこういう機会があった時には今回みたいな事がないように気をつけつつ楽しもうぜ。」
俺のその言葉に2人とも顔を赤くしながらも笑顔で頷いてくれた。
そんな2人に俺も少しだけ顔を赤くしつつ笑顔で返しながら歩いていると、そのうちに集合場所へと帰りついたのだった。
「ただいま。ようやく戻れたよ。つかさもこの通り無事だったよ。」
そう皆に報告するとこなたは
「ふうーん?その割には大分お楽しみだったようですねえ?」
かがみたちの持っている金魚を見て俺に視線を戻しながらニヤニヤとした顔で言ってくるこなたに俺は慌てつつ
「お、俺達だって寄り道してきたんだからその事をどうこう言えないだろ?」
そう言うと、そこにかがみも俺に助け舟を出してくれて
「そ、そうよ?こなた達も楽しんできたんだから人の事は言えないわよ?」
2人してこなたに反論するとこなたはぺろりと舌を出して
「まあ、確かにそうだね・・・うっかりやぶへびだったよ。」
苦笑しながら墓穴を掘るこなたにみゆきはいつもの柔らかい微笑みを向けてつかさは苦笑しながら
「どんだけ~・・・。」
と言うのだった。
そんな俺達の側にやってきたあやのが
「慶ちゃん。とりあえず次の捜索の用意をしましょ?」
そう言って、俺に次の編成を促してきた。
「そうだな。さて次は・・・・・・。」
そう言って俺はあやのの言葉に頷きつつ、次の捜索に意識を向ける。
こなたたちがわいわいと騒ぎ、あやのがこの場にいないみさおの事を心配するような表情を見せるそんな中、やまとは意外にも落ち着いていた様子だった。