らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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旋律達との約束〜柊姉妹の誕生日〜

雨季もまだ抜けきらない7月。

 

その月は2人の旋律の誕生日がある月でもあった。

 

俺はここの所、色々と物入りが多くなってきたのと、柊姉妹の誕生日も近い事もあってそれらに対処するために6月の中旬以降から緊急のバイトを始めたのだった。

 

今回の誕生日会はまた家に押しかけられるのかと思っていたのだが、今回は珍しく柊家でやると言う事になった。

 

柊家にはまだお邪魔した事のない俺だったが、かがみから家の地図を書いてもらい、当日はその地図を参考にして柊家へと向かう手筈となった。

 

そして、誕生日会まで後3日と迫ったある日の昼休み、いつものように昼食を取っている最中こなたが俺の方を向いて

 

「慶一君ー。今回の誕生日会はかがみの家でやる事になったからね?」

 

こなたのその言葉に俺はちょっと意外だと言う顔をしながら

 

「そうなのか?今回も家に押しかけられるかも、と思って一応覚悟はしてたんだがな。」

 

と、ちょっと嫌味を含ませながらこなたに言うと、こなたは少し頬を膨らませながら

 

「むう、私だって毎回慶一君に迷惑かけるわけじゃないよ。」

 

そう言って少し怒ったようだったので、俺は噴出しつつもこなたをなだめるように

 

「冗談だよ。遊びに来てくれること事態は迷惑だとは思ってないさ。」

 

そう答えたが、それでもこなたはまだ少し不満顔で

 

「ほんとなのかねえ・・・。」

 

と呟いていた。

 

それを見ていたかがみはすかさず

 

「あんたが毎回変な行動するから、慶一くんにも警戒心ができちゃってるんじゃないの?」

 

そう突っ込みを入れるとこなたは両手を上げて

 

「変なってなにさー!そんなに変な事なんてしてないじゃん、かがみの意地悪ー!」

 

そう言って激しく抗議をするこなたの反論を軽く受け流しつつ、かがみは俺の方を向くと

 

「はいはい。まあ、そういう事だからさ。慶一くん、家にはまだ来た事なかったよね?これ渡しておくから。」

 

そう言って俺に自宅の行き方が書かれた地図を俺にくれたのだった。

 

「お?そうか、わざわざ悪いな。」

 

と言う俺の言葉にかがみ軽く笑みを浮かべて頷く。

 

それと同時につかさも俺に

 

「当日は楽しみにしてるから、けいちゃんも遊びにきてね?」

 

ほんわかとした笑顔でそう言ってくるつかさに俺は頷いて

 

「ああ、その時はちゃんとプレゼントも用意してお邪魔させてもらうよ。」

 

と、つかさに笑顔を返しながら答えるのだった。

 

そんなやり取りを見ながらみゆきもいつもの柔らかい笑顔で

 

「当日は楽しみですね。私もなにか用意させていただきますから。」

 

みゆきがそう言うとかがみは照れながら

 

「い、いいわよ。そんなに気を使ってもらわなくたってさ。その気持ちだけでもうれしいから。」

 

俺はそんな2人を見ながらかがみにふと、頭に浮かんだ事を尋ねた。

 

「なあ?かがみ。みさおとあやのも呼ぶのか?今回の誕生日会。」

 

そう質問してみるとかがみは俺の言葉に苦笑しながら

 

「ええ。とはいえ、日下部がかなり乗り気だったからね。前回のこなたの誕生日の時の雪辱戦をするんだって息巻いてたわよ。」

 

俺はその時の様子を頭に思い浮かべながら

 

「またあれやる事になるのかねえ・・・。」

 

と、少し疲れたように呟く俺だった。

 

その言葉を聞いていたこなたはおもむろに立ち上がり

 

「ふっふっふっ、今回は私が勝って前回の雪辱をしてみせる!」

 

と、拳を握り締めて宣言するのだった。

 

俺はそんなこなたの言葉に苦笑しながら

 

「まあ、せいぜいがんばれ、こなた。」

 

と、声をかけてやるのだった。

 

そしてその日の放課後・・・・・・

 

「それじゃ今日もバイトだから私先に行くねー。みんなまた明日ー。」

 

そう言って俺達のクラスに挨拶にきた後、ダッシュでバイト先へ向かうこなたを見送りながら

 

「あいつのバイト先ってどこなのかしらね?」

 

と、顎に手を当て考え込む仕草をしながらかがみが言う。

 

俺もかがみと同じように腕組みしつつ

 

「そういや俺も聞いてないな・・・あ、かがみ、俺もバイトだから先に行くよ。また明日な。」

 

そう言ってかがみに挨拶をして教室を出る時、かがみも

 

「うん、バイト頑張ってね。当日は楽しみにしてるから。それじゃまた明日ね。」

 

そう言って俺に声をかけてくれたかがみに手を振ってバイト先へ向かおうとしたが、その前に一度アニ研へ顔を出しに行っておく事にした。

 

部室前に着き俺はドアをノックして

 

「入るぞー。」

 

と言いながら入室すると、他の部員と活動をしているこうとやまとが居たので俺はとりあえず2人に声をかける。

 

「こう、やまと。一度顔出してからバイト行こうと思ってな。とりあえず来てみたがここのところはどうだ?」

 

そう声をかけると2人とも俺の方に顔を向けて

 

「あ、先輩、ちはーです。ええ、今の所は特に問題はないですよ?」

 

そう言うと、俺に気付いたやまとも軽くため息をつきながら

 

「先輩、今日もバイトなの?大変ね・・・。」

 

と答えてくれた。

 

俺はそんな2人に聞いてみることがあったので

 

「こう、やまと7月7日は予定空いてるか?」

 

2人にそう声をかけてみると、2人とも少し考える仕草をした後

 

「特に予定はないですね。何かあるんですか?」

「私も特には・・・何かイベントでもあったかしら?」

 

と言っていたので、俺は2人の言葉に頷くと

 

「ああ、実はな、その日はかがみとつかさの誕生日なんだよ。こなたの時もお前達も呼んで誕生日会やったし、そうでなくても俺達は仲間みたいなもんだからな。今回も参加してくれればと思ったんだ。」

 

そう言って誕生日会の事を伝える俺。

 

2人は俺の言葉に頷くと

 

「柊先輩達の誕生日会ですか。分かりました。参加しますよー?」

「私もかまわないわ。当日は行かせてもらうわね。」

(また先輩のお人好しがでたのね・・・)

 

そんな2人の言葉を聞いている最中、やまとが何か呟いていたような気がしたので

 

「ありがとう、2人とも。ところでやまと、さっき何か言ってたか?」

 

一応聞いてみるとやまとはそっぽを向きながら

 

「別に何も言ってないわ・・・。」

 

と、素っ気無く答えるのだった。

 

俺はそんなやまとの態度に頭にハテナマークを飛ばしつつも

 

「じゃあ、当日はこの地図の場所へ来てくれ。2人に渡しておくから。」

 

そう言って携帯に取り込んだ柊家の地図を2人の携帯に送信した。

 

それをやりとりしながらこうは俺に

 

「今回は先輩の家じゃないんですね?」

 

そう聞いて来たので俺は頷くと、やまともそんな俺の様子を見ながら

 

「柊先輩の家でやるのね?泉先輩あたりが、慶一先輩の家でまたやろうとか言い出しそうな感じあるけれど・・・。」

 

そう言いつつ2人は地図を確認しながら俺に言う。

 

俺はその言葉に苦笑しながら

 

「まあ、流石に何度もじゃ迷惑かもというかがみの気遣いかもしれないけどな。」

 

俺がそう説明すると2人とも納得したようで「「なるほど」」と呟いていた。

 

「まあ、そんなわけだから当日はよろしくな。俺はそろそろバイト行かなきゃならないからこれで行くよ。みんな、活動がんばれよ?」

 

俺はそう言いつつ教室を後にしようとすると、こうたちが

 

「分かりました。バイト頑張ってくださいね。それとこっちは任せてください。」

「早く行かないと遅刻するわよ?こっちは大丈夫だから急いで。」

 

と言って見送ってくれた。

 

俺は2人に手を振りながら教室を後にしてバイト先へと向かった。

 

俺のバイト先は自分の腕力を生かした引越し業者手伝いのバイトだ。

 

手っ取り早くいいバイトがないだろうかと探している時に親父の知人からの紹介を受けたのだ。

 

日給も中々良かったので鈍った体を鍛える目的も兼ねてこのバイトを受けることにしたのだった。

 

「・・・・・・すいません、ちょっと遅れました。」

 

「おう、待ってたよ。今日はここだから、頑張ってくれな。」

 

「はい、それじゃさっさと行ってきちゃいますね?」

 

仕事場の予定表を貰い、運転手さんと助手さんの3人で車に乗り込み出発する。

 

やがて現場に到着すると早速仕事が始まった。

 

家具を運び、食器類を運び、冷蔵庫やその他の電化製品を運び、夜中10:30頃にはすべてが終了した。

 

「お疲れ様でしたー。」

 

「おう、またよろしくな。今日はゆっくり休めよー?」

 

「はい、それじゃまたー。」

 

今日の分のバイト代を受け取り、俺は上司に挨拶を返して家へと戻っていった。

 

「明日はこれで、これまで貯めた分もあわせてプレゼント買えるな。当日もまた楽しい誕生日会になるといいけどな・・・。」

 

家に戻る道すがら俺は誕生日会の事に想いを巡らせながらそう呟くのだった。

 

しかし、当日にまさかの事態が起こる事になるのををこの時の俺は予想すらできなかった。

 

誕生日前日の放課後、俺はかがみとつかさのプレゼントを買うために、とあるデパートへとやって来ていた。

 

以前から目をつけていた2人へのプレゼントの品を決めていたので、あとはお金が貯まるのを待っていたのだった。

 

俺は2人にプレゼントを買い、プレゼントには店員に頼んでリボンをかけてもらった。

 

品物を受け取り、俺は明日の事を考えながら意気揚揚と自宅へと引き上げていくのだった。

 

家に着いてリビングでのんびりしていると、俺の携帯に着信が入ったので電話に出ると

 

「やっほー慶一くん、私だよー?明日の準備はばっちりかな?」

 

そんな元気な声の電話の主はこなただった。

 

「ああ。今日はプレゼントも買ってきたところだよ。こなたもきっちり準備してあるんだろうな?」

 

俺はこなたにそう返すとこなたも

 

「もちろん、私に抜かりはないよ。まあ、後は当日にって事で。明日は楽しもうねー?」

 

明るい声で言うこなたに俺も笑いながら

 

「ああ、わかった。俺も楽しみだしな。それじゃ明日、かがみの家でな。」

 

「うん、それじゃ明日ね。ばいばいー♪」

 

そう言ってこなたとの電話のやりとりを終える。

 

こなたとの電話からしばらくしてまたも携帯に着信が入った。

 

俺は再び電話を取ると

 

「もしもし、慶一くん?私よ、かがみ。」

 

電話の主は今度はかがみだった。

 

「おう、かがみか。どうしたんだ?」

「うん。明日の事なんだけどさ、一応2人邪魔が入るかもしれないから注意してね、って言っておこうと思って。」

 

注意というかがみの言葉に首を傾げつつ俺はかがみに

 

「2人?注意?どういう事なんだ?」

 

そう聞いてみると、かがみは少し言いづらそうに

 

「実は私の家には私達以外に2人の姉がいるのよ。それで2人にうっかり明日の誕生日会に慶一くんが来るって事言っちゃってさ、そしたらものすごい質問攻めされて、明日、慶一くんの顔を拝ませてもらうから、って言い出して、聞かなくってね・・・。」

 

少し疲れたような声でそう言ってくるかがみに

 

「かがみの所にはまだ2人のお姉さんがいたのか・・・。しかもその口ぶりだと相当・・・。」

 

苦笑しながら言う俺にかがみも呆れたような声で

 

「まあ、苦労してる・・・。だから明日変な事になったらごめんね、って言っておきたくてさ・・・。」

 

「そっか、わかった。とりあえず注意しとくよ。わざわざありがとな。」

 

そう言って、かがみの苦労をねぎらうかのように優しい声で俺はかがみに言う。

 

そんな俺の言葉にかがみは少し安心したのか

 

「あはは。ともあれ、明日は楽しめるといいわね。私も明日は楽しみにしてるから。」

 

少し楽な感じでそう返事してきた。

 

「ああ、楽しい1日になるといいな。それじゃ明日行くからさ、時間も遅いし今日はこれでな。」

 

俺もそんなかがみにそう返す。

 

とりあえずの用件を終えたので俺達は

 

「うん、それじゃお休みなさい。」

「お休み、かがみ。」

 

そう言って2人とも挨拶を交し合って電話を終えた。

 

俺も今日は早めに休む事にしてやるべき事を済ませ、プレゼントもしっかりと確認した後眠りにつくのだった。

 

そして迎えた当日・・・・・・

 

2人の誕生日会へ行く為に準備をしていた俺だったが、いざ出発すると言うところで俺の携帯が着信を告げた。

 

俺は携帯のディスプレイに出ている電話の主を確認すると、とりあえず電話を取った。

 

「もしもし、森村君か?私だ。」

 

それはバイト先の上司からだった。

 

「はい、そうですが、どうかしたんですか?急に電話なんて。」

 

上司は言いにくそうに少し間を置いていたがやがて

 

「うん、実は昨日の仕事でチームの一人が作業中に怪我をしてしまってな。急遽この欠員を埋める人員を探したんだが抜けれるものがいなくてな・・・。君にとって今日が大切な日だと言う事は百も承知なのだが・・・頼む、今回だけでいいから力を貸してもらえないだろうか?もちろんバイト代は上乗せする。もはや頼めるのは君しかいないんだ・・・。」

 

上司のそんな悲痛な声を聞いた俺はしばらく電話口で考え込んでいたが、親父の知人の紹介で貰ったバイトでもある事、何よりいままで世話になってきた事を考えた時、俺の中のお人好しの血が俺を突き動かすのを感じたのだった。

 

「・・・・・・わかりました。すぐに向かいます。場所はどこですか?」

 

俺は気がつくと上司にそう返事をしていたのだった。

 

「そうか!助かる!すぐに会社の方へ来てくれ。現場へと送るから。」

 

上司は喜びと安堵の声で俺にそう言うと、会社へと来て欲しい旨を俺に告げた。

 

俺はすぐさま仕事できるラフな格好に着替えて家を飛び出していった。

 

途中、かがみの所に自分が遅れて行く旨を伝えるために電話をいれる事にした。

 

「もしもし、かがみか?悪いんだけどバイト先でトラブルが起きたんだ。それで少し遅れそうだから誕生日会先に始めていてくれ。」

 

俺が用件を伝えるとかがみは心配そうな声で

 

「トラブル?大丈夫なの?とりあえず分かったわ。でも、絶対来てよね?待ってるからさ。」

 

そう言ってくれたかがみに俺は

 

「済まない、こんな大事な日にこんな事になってさ。こなた達にもよろしく伝えておいてくれな。」

 

そう言って、心からかがみに悪いと謝るのだった。

 

かがみはそんな俺を励ましてくれるように

 

「わかったわ。バイトがんばってね。こなた達には私から伝えておくから、安心して行ってきて。」

 

そう言ってくれたので、俺もかがみに

 

「ああ、バイトさっさと片付けてそっち行くから、待っててくれよな。」

 

そう返事をすると、かがみも

 

「うん。それじゃ後でね。」

 

そう言い、挨拶を交わして電話を切り、俺はバイト先へと急いだ。

 

かがみside

 

楽しみにしていた誕生日会。

 

思わぬ慶一くんのアクシデントが起きて私は内心気が気でなかったが、こなたたちも家に集合してきたので、慶一くんの言うとおり先に始めている事にしたのだった。

 

「けいちゃん急なバイトなんだよね?大変だよね~・・・。」

 

つかさが心持ち元気がない顔で言う。

 

「うーん、不可抗力だけどそれでも仕事場に義理立てするあたり、慶一君らしいかな。」

 

と、苦笑しながら言うこなた。

 

「まあ、そこが慶一さんのいい所でもあるんでしょうね。残った私達は慶一さんが来た時にすぐに楽しんでいただけるような雰囲気を作っておく事が大事ですね。」

 

と、みんなの顔を見回しながら言うみゆき。

 

「大丈夫よ。ちょっと遅れてるだけなんだし、慶ちゃんが来るまで私達で盛り上がってましょう?」

 

ニコニコと柔らかい笑顔で言う峰岸。

 

「そうだなー。慶一が来た時の為に前哨戦でもやっておこうゼ?みんな。」

 

こちらも太陽のような笑顔を振り撒きながら言う日下部。

 

「先輩ならちゃっちゃと切り上げて戻ってきますよ。それまでは楽しみましょうー。」

 

そういいつつも同じく笑顔な八坂さん。

 

「かがみ先輩とつかさ先輩は主役なんだからそんな顔してたらいけないわ。きっとみんな揃うから大丈夫・・・。」

 

そう、私とつかさを元気付けるように言う永森さん。

 

そんなみんなの言葉を受けて私は一度深呼吸すると

 

「そうね。あいつは来るっていったんだから先に楽しんじゃおう。さあ、始めるわよー?」

 

かがみの一声で全員が「おー!!」と掛け声をかけてパーティが始まったのだった。

 

慶一side

 

誕生日会当日に突如呼び出しを受け、誕生日会に遅れて行くことになってしまった訳だが、俺は早く仕事を終わらせて誕生日会に行きたい思いを持ちながらも上司に言われた現場へと来ていた。

 

現場は何時も以上の大変な場所だったのと、どうやらやる現場はここだけではないらしく俺自身もどれだけの時間がかかるか予想も出来ない状態でいた。

 

「すまんな、突然呼び出す事になって・・・。」

 

バイトの同僚が俺に申し訳なさそうな顔で俺に声をかけてきた。

 

「いえ、困った時はお互い様ですし気にしないで下さい。それよりもさっさとけりをつけてしまいましょう。」

 

俺が同僚を励ますように言うと

 

「そうだな、それじゃとっとと片付けよう。森村、たのんだぞ?」

 

そう言ってくる同僚に俺は

 

「分かりました。それじゃ行きますよー。」

 

そう返事をして作業を始めるのだった。

 

作業を始めてから数時間が過ぎたので時計を確認してみると午後の3時を回った所だった。

 

しかしこの時間になってもまだ一つ目の現場作業が終わっていなかった。

 

中々進まない作業に俺も次第に焦りを感じるようになってきた。

 

そして午後5時、ようやく一つ目の現場が終わった。

 

かがみside

 

あれから私達は慶一くんがいつ来ても楽しめるようにと何とか場を盛り上げていたのだが、気がつくと時間は5時を回っていた。

 

私達はいつまでたっても現れない慶一くんが次第に心配になってきていて、この時間になるとみんなも大分元気がなくなってるように思えた。

 

「慶一君来ないね・・・。何かあったのかなあ・・・?連絡も来ないみたいだし・・・。」

「そうね・・・流石に連絡もないって言うのはちょっと心配かも・・・。」

「けいちゃん大丈夫なのかな?」

「おそらく大分てこずられているのではないでしょうか・・・。ひょっとしたら作業の切れ目も出来ずに、連絡する余裕もないのかもしれませんね・・・。」

「大丈夫、柊ちゃん。慶ちゃんはきっと来てくれるよ。こういう日を大事にしてくれる人だから。」

「そうさ。あいつは友達との約束は何があっても守るやつなんだから。」

「大丈夫です、柊先輩。きっと来ますよ。私達の時だって遅れてきたことあったけれど、ちゃんと駆けつけてくれましたから。」

「そうよ?柊先輩。だから私はそんな先輩を信頼して来たのだから・・・。」

 

不安になる私達に中学時代からの付き合いである後輩2人と日下部と峰岸もあいつの事を信じているようだった。

 

私も何故かあいつは信じるに値する人だと思えたから、私は気を取り直し、こなた達に励ますように

 

「私達は陵桜に入ってから慶一くんと知り合ったけど、それでも彼は信頼できる人だっていう事は分かったわ。だから、私達も慶一くんを信じましょ?こなた、つかさ、みゆき。」

 

私の言葉に3人は私の方を見つめて何かを考えていたようだったが、やがて3人とも頷きながら

 

「そうだね。私だって信じるよ。」「わたしも信じる。」「私もです。」

 

口々にそう言ってくれた。

 

私達はお互いに頷きあいながら、ぎりぎりの所まで慶一くんを待ってみる事にしたのだった。

 

慶一side

 

最初の現場でてこずりすぎた俺たちは、いそいで次の現場へと赴いていた。

 

そして、現場に到着し、午後6時30分、今日の最後の現場の作業が始まったのだった。

 

「さあ、ここを終わらせられれば何とかなる。森村、もう一頑張り頼むぞ?」

 

同僚の言葉に俺も返事をした。

 

「分かりました。さあ、片付けましょう。」

 

そう言って俺たちは作業を再開した。

 

そしてしばらく作業を続けること数時間、時計を確認してみると時間は午後10時30分を回っていた。

 

俺は時計を確認して愕然となったと同時に、かがみたちへの罪悪感で一杯になっていた。

 

誕生日会に行けなかった事を悔やみながら俺は、残りの作業を片付けたのだった。

 

午後11:00、すべての作業を終えて俺は自宅へと戻ってきていた。

 

家に帰り、2人へのプレゼントを手にとって俺はどうしたものだろうかと思案に暮れていたが、時計を見て、かがみの家の地図を確認した俺は、おもむろに携帯を手に取りかがみにメールを飛ばした。

 

かがみにメールを飛ばした後、俺は2人へのプレゼントを引っつかみ、家を飛び出したのだった。

 

かがみside

 

結局あれからみんなが帰る頃になっても慶一くんは戻ってこなかった。

 

みんなも最後まで慶一くんが来る事を期待していたがその期待も空しく終わったのだった。

 

それぞれ浮かない顔で今日の誕生日会はお開きになった。

 

私とつかさは後片付けをしながら今日の事を振り返りため息をついていた。

 

それと同時に私の2人の姉に散々期待してたのに来なかったじゃないか、と文句を言われ、二重に凹んでいたのだった。

 

「慶一くん、結局来なかったな・・・。」

 

自分の部屋に戻って落ち着いてから天井を見上げながら私はそう呟いていた。

 

そうして凄く残念な思いで後もう数分で私とつかさの誕生日が終わる時間が近づいてきた頃、私の携帯にメールが飛び込んできたのだった。

 

私は慶一くんからのメールを確認する為に慌てて携帯を開く。

 

FROM:慶一

 

かがみ、今日は本当に済まなかった。

 

午後11時30分家に着いたところだ。

 

連絡もする暇がなくてみんなをがっかりさせちゃったよな。

 

約束したのに俺は最低な奴だな、ごめん。

 

お詫びついでと言ってはなんだけど、俺は今お前の家に向かってる。

 

せめて用意したプレゼントを日付が変わる前に渡したいからだ。

 

11:55分までにはつけると思うからもしプレゼント受け取ってくれるのなら外に出ていて欲しい。

 

P.Sもしつかさが眠ってしまっていたらかがみから後で渡してやって欲しい。

 

「慶一くん・・・。」

 

私はそう呟きながらメールを受け取って確認後すぐさま時計を見た。

 

時計は11:53分を示していたので私は慌てて1階へと降りていき、玄関の前で慶一くんを待ったのだった。

 

慶一side

 

こんな時間だから電車も当然ない。

 

だが、かがみの家は隣町だったのが幸いした。

 

俺は地図を頼りにかがみの家へとひた走りに走っていた。

 

「はあ、はあ、はあ、約束・・・守れなかったんだから・・・せめて・・・これくらい・・・は・・・しなきゃ・・・男じゃ・・・ないからな・・・」

 

さっきまでの労働で体も大分参っているはずだった。

 

けれど今日の約束を果たす、その事だけを考えて俺はかがみの家へ向かった。

 

目的を果たせれば後はどうとでもなれという気持ちが俺を突き動かしていたのだった。

 

やがて時間は11:55分になる頃、俺はかがみの家の前に辿り着いたのだった。

 

俺は乱れた息を整えながらかがみの家の玄関前を凝視した。

 

そこにはパジャマ姿のかがみが俺のメールに答えてくれて俺を待っていてくれたのだった。

 

俺はゆっくりとかがみの側に近づきかがみに声をかけた。

 

「はあ、はあ、ぜえ、ぜえ、か、かが・・・み、ごめん・・・遅く・・・なった・・・。」

 

俺の息も絶え絶えな呼びかけにかがみは俺の方を振り向いて俺の側へやってきて俺を睨みつけながら

 

「・・・・・・本当よ・・・ばか・・・みんなあんたの事信じて待っててくれたのよ?なのに、連絡の一つもよこさないで・・・私も、皆も・・・あんたの事、心配・・・したんだからね?」

 

俺はようやく息を整えてかがみにプレゼントを差し出して

 

「ごめん、本当に。でもこれだけは日付が変わってしまう前に渡したかったからさ。受け取ってくれるかな?」

 

俺の差し出したプレゼントを受け取り、顔を赤らめつつ大事そうにそれを胸に抱え込むかがみ。

 

そして、かがみは俺を上目使いで見ながら

 

「あ、ありがとう。開けてみてもいいかな?」

 

おずおずとそう言う、そんなかがみの言葉に俺は頷いて

 

「ああ、気に入ってくれるといいんだけどね。」

 

そう言うと、かがみは俺の言葉に頷いてプレゼントの包みを開け始めた。

 

中に入っていたのは、かがみに似合いそうな、かがみの髪の色とおそろいで星の模様が一つついたリボンと、太陽をかたどったペンダントだった。

 

かがみは特にペンダントの方に驚きつつ

 

「わあ!リボンはともかく、こっちはいいの?こんな高価そうな物・・・。」

 

そう言いつつ、どことなく悪いと思っている、そんな表情を見せるかがみ。

 

俺はそんなかがみに笑いかけながら

 

「ああ、俺が送りたいって思った物だからな。だから貰ってくれると嬉しい。ちなみにつかさにも月をかたどったペンダントを買ったよ。」

 

かがみはそんな俺の言葉に首をかしげながら

 

「月?私は太陽・・・何か意味があるの?」

 

そう質問をしてきたので俺はその言葉に頷くと

 

「うん。太陽も月もどちらも必要な物、どちらかがかけても輝かない。かがみとつかさは両方がいるから両方ともに輝ける。だから2人の象徴の意味を込めたんだ。」

 

そう説明すると、かがみはペンダントをまじまじと見たあと俺に笑顔を向けて

 

「太陽、か、ありがとう慶一くん。とても素敵なプレゼント、とっても嬉しかった。これ大事にするね?」

 

俺もかがみのその言葉に応えるように

 

「そう言ってくれてよかったよ。それと改めて誕生日おめでとう。かがみ。」

 

俺が、かがみにそう告げた時、かがみも俺に返事をしようとしていたが、その瞬間かがみの後ろから

 

「けいちゃん、わたしにはおめでとうって言ってくれないの?」

 

そう言うつかさの声に俺とかがみは驚いて

 

「つ、つかさ?あんた眠ってたんじゃないの?どうしてここにいるのよ?」

 

そう言って、この場に居るはずのない妹の存在に驚いているようだった。

 

俺もまた、いきなり現れたつかさに慌てながら

 

「つかさ、お前が寝てると思ったから俺はお前の分のプレゼントもかがみに託したとこだったんだよ。」

 

そう説明するとつかさはかがみに

 

「おねえちゃん、私のはどれなの?」

 

そう聞かれ、かがみは俺から受け取っていたつかさの分のプレゼントを渡した。

 

「ほら、これよ?リボンとペンダント。あんたのは月だってさ。」

 

つかさはプレゼントを受け取るとペンダントを早速つけて俺に向き直って

 

「ねえ、にあってるかな?けいちゃん。」

 

にこにこしながらそう聞いてきたので、俺もその言葉に大きく頷いて

 

「ああ、よく似合ってるよ。俺も選んだ甲斐があったもんだ。」

 

そう、つかさに正直な感想を言うと、つかさは俺の言葉に満面の笑みを浮かべ

 

「えへへ、うれしいな。ありがとうけいちゃん。」

 

そう、お礼を言って来たので、俺はつかさにも言うべき事を言わなくちゃな、と思い

 

「誕生日おめでとう、つかさ。」

 

そう言いながら頭をなでてやると、つかさは嬉しそうな顔をしていたのだった。

 

あれから大分時間が過ぎたようだったので、俺は携帯を取り出して時間を確認したら日付がとっくに変わっていた事に気付き、俺は2人に

 

「かがみ、つかさ、もう遅い時間だ。特につかさは寝ておかないと明日つらいだろ?そろそろ俺も帰るからさ。」

 

俺がそう告げると2人はそれぞれに

 

「そうね、そろそろ寝ないとまずいわよね・・・。それじゃ今日はここまでね。」

「ふああ、すごく眠いよ・・・。おねえちゃん私そろそろ家に入るね?」

 

つかさはあくびをしながらそう言うと、俺達を残して先に家に戻っていった。

 

俺はそんなつかさを苦笑しつつ見送った後、かがみに挨拶をして帰る事にした。

 

「かがみ、俺はそろそろ帰るよ。今日はほんとうにごめんな。また明日学校でな。」

 

俺がそう言うとかがみも首を左右にふって

 

「ううん、日付変わる前に来てくれただけでも嬉しいから。でもまた走って帰るわけ?大変じゃない?」

 

俺をそう言って気にかけてくれる、そんなかがみの心配を笑い飛ばしながら

 

「ははは、大丈夫さ。これでも鍛えてるしな。修行での親父のしごきに比べたらこの程度なんて事ないさ。」

 

俺がそう応えると、かがみは呆れたような顔で

 

「どんな親父さんよ、あんたのとこは・・・。でも気をつけて帰ってね?」

 

そう言いつつ、最後には俺を心配してくれたかがみだった。

 

俺はそんなかがみに手を振りながら柊家を後にした。

 

去り際にかがみが俺に

 

「慶一くん、今日は一緒に盛り上がれなかったけど、すごく嬉しい誕生日だったよ。私、今日の事わすれないからね?」

 

そう声をかけてくれた。

 

俺はそんなかがみの言葉に頷いて、何とかかがみとの約束を果たせた事を安堵しながら自宅へ向かって走っていくのだった。

 

自宅に帰り着き時間を見るとすでに夜中の2時近くになっていた。

 

俺は明日は学校での居眠りに注意しなけりゃなと思いながら疲れた体をなるべく休ませるのだった。

 

かがみside

 

最低の誕生日会になると思った今日、慶一くんからの一本のメールは私に忘れられない誕生日をくれた。

 

私は慶一くんから貰ったプレゼントを改めて眺めた後、体を休める為に布団に入った。

 

布団に入りながら私は、今日の事を振り返る。

 

(今日の誕生日会は一緒に出来なかったけど、慶一くん最後の最後に来てくれた。すごく嬉しかったな。みんなは約束を守る人だと言ってたけど改めてそれを知れたわね・・・。私はこれからも彼を信頼できそうだな・・・。それと同時に・・・なんだろう、この気持ち・・・少しだけ胸があたたかくなるような、そんな気持ち・・・嬉しい、っていうのもあるけど、なんだろう?よく分からないな・・・まあ、いっか・・・とにかく明日からもまた楽しくやっていこう。みんなと、そして、彼が側に居るならきっとこれからの日々も楽しいと思えるから・・・。)

 

そう考えながら私の意識は闇に落ちていったのだった。

 

慶一side

 

旋律達との約束。

 

トラブルもあったけど、何とか果たす事が出来た俺はすごくほっとしていた。

 

これからも色々な局面に於いて旋律達との様々な約束はなされていくかもしれない。

 

けれど俺は、友との約束はこれからも大事にしていきたいと心に誓うのだった。

 

余談だが、この日、日付が変わるまで体を酷使した結果、翌日の学校では大変に悲惨な状態になって(主に筋肉痛とか)その日1日苦しみまくった俺は、何事も無茶はいけない、程々が一番だと心の底からそう思ったのだった。

 


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