思いがけない2人の旋律との巡り会いから数日後、世間ではゴールデンウィークに入っていた。
その初日、こなたからの提案もあり四重奏と共に俺は、秋葉腹へと来ていたのだった。
「こなた、とりあえず聞くが、わざわざゴールデンウィークの初日にここに来る理由は?」
と、俺は少し呆れ気味にこなたに聞くと、かがみも何だか疲れたような顔で
「まったくよ・・・せっかくの大型連休なのに初日からどうしてこんな濃い場所に来なきゃならないわけ?」
そう言って不機嫌そうな顔でこなたに嫌味をぶつける。
そんなかがみにつかさも苦笑しながら
「まあまあ、おねえちゃん。折角みんなで来たんだからとりあえず楽しもうよ?」
そう言いながらかがみをなだめるつかさを微笑ましそうに見て、いつもの微笑みを浮かべているみゆきも
「そうですよ?かがみさん。来た場所はその・・・こういう場所ではありますけど、みなさんこうして集まれたのですし。」
そう言いながらとりあえずかがみにフォローをいれつつなだめていた。
そんな様子を見ていたこなたは少し不満そうな口調で
「いいじゃん、一度みんなと来てみたかったんだよ。それにかがみもそう言ってる割にはまんざらでもなさそうに見えるけど?・・・新刊、買いたいんでしょ?」
こなたがぼそりと突っ込むとかがみは途端に顔を真っ赤にしてこなたにくってかかり
「う、うるさいな!とりあえず欲しいものが無い訳じゃないんだし別にいいじゃないのよ!」
そう声を荒げるかがみにいつものニヤニヤ顔を見せつつ
「はいはい、そうですねー。まったく、本当にかがみは素直じゃないんだから♪」
そう言ってかがみを軽くあしらう。
そんなかがみはまたもこなたのペースに乗せられると
「こ、こなたあー!」
と、激昂してこなたを殴ろうと拳をふりあげるかがみ。
こなたはそんなかがみから逃げるようにつかさとみゆきの背後へと走って行く。
そんな2人を俺は大きな溜息をつきつつ苦笑し、つかさとみゆきもまた、困ったような笑みを浮かべていたのだった。
このままじゃ先にも進まないなと思った俺は、とりあえず2人を止めにいった。
「2人ともそれくらいにしとけ。そろそろ動いとかないと買い物する時間もなくなるぞ?」
俺がそう言いながら2人に近づくとこなたとかがみは、はっと我に返り
「おっと、そうだね、そろそろいかないと。とりあえずかがみの欲しい物もある本屋を中心に責めようかー♪」
そう言っていきなり素に戻ったこなたに調子を崩されたかがみは大分戸惑ってるようだったが、とりあえずこなたの言う事に同意を示した。
「・・・こなた、後で覚えておきなさいよ?とはいえ、確かにそろそろ動かないと時間もなくなりそうよね。とりあえずこなた、あんたが言い出しっぺなんだから私達をちゃんと先導しなさいよ?じゃあ、行きましょ?つかさ、みゆき、慶一くん。」
「うん、行こうか、おねえちゃん。」
「そうですね。行きましょう、みなさん。」
「そうだな、とりあえずお前の方が詳しいんだろうから付いて行くぞ?」
そう俺たちがそれぞれ返事をすると、こなたは無い胸を張って親指をびしっと立てて
「まかせたまへー♪じゃあ、ちゃんとついてきてね?それでは出発しようではないか皆の衆ー!」
そう言って歩き出すこなたに俺たちは付いて行くのだった。
そうしてついた場所は・・・・・・
「やっぱし、○二メ○ト・・・。」
俺は店内を見回しつつ、疲れたような声でそう呟いた。
そんな呟きを目ざとく聞きのがさなかったこなたが俺に
「○二メ○トを馬鹿にしちゃいけないよ?これほどまでにグッズや漫画、ゲーム等が充実してる所なんてそうはないんだからね?」
人差し指を立てて俺に力説するこなたに気圧され苦笑しながら俺は店内で不穏な気配一瞬感じたのだが(気のせいだな)と心の中で思いつつ、その気配の事を否定するのだった。
その後、みんなが各々自分の目的の場所へと向かう事になった。
俺はとりあえずゲームを購入するべくその売り場へと向かい、こなたと漫画を買いたいつかさは一緒に行動して、かがみはラノベコーナーへと移動してみゆきもそれについていくという感じで別れた。
こなたside
皆と別れ別れになりそれぞれのコーナーへと散っていったのだけど、私とつかさは漫画のコーナーに用事があったので、そこに2人で連れ立ってやって来た。
私はつかさの動向に注意しつつも自分の求める漫画を物色しながら歩く。
「うーん、今月はあまり新刊でてないっぽいね・・・とはいえ、これとこれははずせないよねー♪」
そう言って手にとった漫画はハルヒの新刊<漫画の方>とコードギアス。
自分の欲しい漫画を手にとりつつ、私はつかさの方へと視線を向けると、つかさは自分が好きだと言っていたケロロ軍曹を手にとっていた。
「やっぱりこれ、面白いしかわいいから好きだな~。」
つかさは私に満面の笑みを浮かべてそう言ってくる。
その言葉に私も笑顔を返しながら
「つかさはそれ好きだよねー?私も結構好きなんだけどさ。」
つかさにそう言うと、つかさもうんうんと頷きつつ
「うん、なんか凄く気に入ってるの~。」
と、無邪気な笑顔でそう返してくるつかさに私はここに皆を連れて来た本当の目的の実行の為につかさに
「じゃあ、つかさはそれを買うんだね?ねえつかさ、お願いがあるんだけどさ。」
そう声をかけると、つかさも私の方を振り向いて不思議そうに首をかしげながら
「うん?なあに?こなちゃんお願いって。」
私は心の中でニヤリとしながら
「つかさの買う漫画の買い物分のポイント、私に頂戴?」
その事を頼むと、つかさは特に気にした様子もなくにっこりと笑って
「いいよ~?そんな事くらいならおやすい御用だよ~。」
と言ってくれたので、私はつかさにお礼を言いつつ心の中でニヤリと笑いながら(計画通り!)と思いながら自分の分の漫画とつかさの分の漫画の会計をしてポイントをゲットするのだった。
「さて、これでいいかな?それじゃ他の皆のとこいこっかー。つかさ、ちゃんと付いて来ないとだめだよー?」
私がつかさにそう促すとつかさも少々慌てながらも
「う、うん、わかったよ~。」
と返事をしながら付いて来るのだった。
かがみside
こなたに散々からかわれながらもとりあえず私も欲しい物があったのでこなたに付き合ってここに来た。
(ここは店の雰囲気とかに目をつぶれば品揃えは確かにそれなりだったから、私も何だかんだいいながら利用している事は否定はしないのだけど・・・こなたに付き合うようになってから何だか自分も普通の感覚って奴を忘れそうになるなあ・・・。)
などと言う事を考えながらみゆきとともに自分が好きなラノベのコーナーへとやってきた。
(そういえば慶一くんもこういうのは特に嫌いなわけじゃないって言ってたわよね?私が読むようなこういうものも好きかなあ?)
という事を考えながら目的の新刊を物色していく。
みゆきも興味深そうにきょろきょろと私が探しているラノベのコーナーを見ていた。
私はふと、みゆきはこういう物は興味あるのだろうか?と思い、みゆきに聞いてみることにした。
「ねえ、みゆき?私と一緒にラノベのコーナーに付いて来たけどみゆきも少しはこういうものに興味あるの?」
みゆきに尋ねてみるとみゆきは頬に手を添えつつにっこりと笑いながら
「そうですね・・・私は主には普通の小説なんかをよく読んだりしますけど、こういうものもある、という事には興味を惹かれますね。」
そう答えるみゆきの言葉に私は目を輝かせて
「そう?ならさ、みゆきもちょっとこういうの読んでみない?私の周りってこういうの好きな人いなくってさ、少しがっかりしてたとこなのよ。」
みゆきがラノベに興味を持ってくれそうな事が嬉しかったのか、ついみゆきに詰め寄りまくし立ててしまった。
そんな私の行動に苦笑しながらもみゆきは
「それなら、かがみさんのお勧めを今度お借りしてもよろしいでしょうか?」
そう言ってくれる。
みゆきのその言葉に私は嬉しくなって
「分かったわ。今度みゆきには私のお勧めを持っていくから後で是非感想を聞かせてね?」
私が嬉しそうな顔でそう言うと、みゆきはにっこり笑って頷いて
「はい。楽しみにしていますね?」
そう言ってくれた。
私はそんなみゆきに同じように笑顔を返しながら
「うん。楽しみにしてて?」
そう返事を返すと、とりあえず私はフルメタとそれ以外のいくつかの新刊を手に取り買い物を済ませる為にみゆきを伴ってレジへ向かおうとした。
すると私の横から
「かがみん!やっと見つけた!!ねえ、その手に持ってる本の支払いってもう済ませちゃった?」
そう言いながら私に声をかけてきたのは、自分の買い物を済ませ私たちを捜し歩いていたらしいこなただった。
私はそんなこなたに反射的に突っ込みを入れていた。
「かがみんいうな!これの支払いはこれからよ?でもそれがどうしたの?」
私がこなたにそう尋ねると、こなたはキラリと目を光らせて
「ねえ、かがみ、その買い物の分のポイント私に頂戴?」
と懇願してきた。
私はこなたのお願いに呆れつつもとりあえずポイントは集めたりはしてなかったので
「いいわよ。それじゃ一緒に来なさいよ。ポイントカードはちゃんとあんたが出すんだからね?」
私がそう言うとこなたは物凄く喜んで
「やたー♪かがみんありがとうー♪」
物凄くいい笑顔で言っていた。
私はそれをみて軽くため息を一つついてやれやれと心の中で言っていたが、とりあえず一つだけやる事が出来たのでそれを実行した。
「こなた、かがみん言うな!」
そう突っ込みを入れたがこなたはポイントをゲットしてほくほくした顔をしていてまるで堪えていないようだった。
私達はそれぞれの支払いと用事を済ませると、こなた達と一緒に最後に慶一くんを探す事にした。
とりあえずこなたに
「こなた、慶一くん探しましょ?後は彼だけだしね。」
私がそう提案するとみんなも
「そうだねー。慶一君も何か買い物あるようだったから慶一君の分のポイントももらわなくっちゃ♪」
「わたしも買い物済ませたし、けいちゃん一人っきりで回ってるみたいだもんね?」
「わかりました。慶一さんを探しましょうか。あ、それと、泉さん、かがみさん、つかささん。慶一さんと合流した後はどこかで休んでいきませんか?」
そう言う2人の言葉に頷き、最後に言ったみゆきの提案に私達はそれぞれに
「そうだね。すぐに帰るのもなんだし、店を出たら少し公園辺りで休んでいこうかー。」
「まあ、確かにちょっと疲れたかも。」
「賛成~。わたしもなんだか喉かわいちゃった。」
そう言って同意すると、私達は慶一くんを探す為に動き出したのだった。
慶一side
俺はみんなと離れて一人探しているゲームを求めてソフト販売のコーナーへとやってきていた。
そこに辿り着いた時、再び不穏な気配を感じたのでとりあえず周りを見回してみると赤いサンバイザーを被り、真っ赤なエプロンを身につけた怪しい人物が立っていた。
怪しい人は俺と目が会うと物凄い勢いで俺の側へやってきて
「君!ちょっといいか!?君はあの伝説の少女Aと知り合いなのかっ!?」
と、何だか訳の分からない事を言ってくる。
俺はその言葉に頭にハテナマークを浮かべて
「伝説の少女A、ですか?誰の事です、それ?」
そう返事を返すとその人は俺の両肩をがっしりと掴み
「君と一緒にこの店に来た青い髪の少女の事だよ!!それでどうなんだ!?君はあの子の知り合いなのかっ!!?」
俺の方をぶんぶんとゆすりながら聞いてくる怪しい人。
俺は困惑しながらも
「一応、知り合いですよ。今日もあの子に付き合ってここに来たんですがね。」
俺がそう言うとその人は途端に笑顔になり
「そうか、そうか!!伝説の少女Aと知り合いの君はやはり特別な存在なのかも知れないな!!ならば君を今日から伝説の少年Aと呼ぼう!!」
俺をびしぃ!!っと指差して言う怪しい人。
俺は更に困惑しながら
「なんなんですか?それは、それに貴方は一体誰なんです?」
と、俺がその人の素性を問うとその人は激しく自分の自己紹介を始めるのだった。
「おおっと!自己紹介が遅れたな!!俺は兄沢命威斗!!通称アニメ店長だ!!よろしくな少年!!」
そう言いながら握手を求めてくるアニメ店長の勢いに押されながら俺もとりあえず握手を返した。
「は、はあ・・・よろしくお願いします・・・。」
お互いの自己紹介が終わるとアニメ店長は俺に
「少年よ!君はこの店のポイントカードを持っているか!?ないのであれば新しく作ってあげよう!!それに、ポイントカードは色々お得な特典もついているぞ!?」
と、ポイントカードを薦めてくる店長だったが俺は特に断る理由もなかったので
「なら、お願いします。それと、これを下さい。」
俺は探していたゲームを見つけたのでそれを買う為に支払いを済まそうとしていたが、そこに俺を見つけたこなた達が足早にやってきて
「慶一くん、その支払いちょっとまったー!」
そう言って俺の支払いをストップさせるのだった。
俺は突然のその声に驚いて振り向き、俺はこなたに
「こなた?買い物はもう済んだのか?は、いいとして、何故俺の支払いを止めようとしたのか説明してもらおうか?」
こなたにジト目を向けながらそう言うと、こなたは俺の方に近づいて俺に自分のポイントカードを差し出しながら
「慶一くんの買い物のポイントを私に頂戴?」
と、言いながら自分のポイントカードを差し出しつつ物凄くいい笑顔を俺に向けてきた。
俺はこなたのその言葉に大きな溜息を1つついた後、改めてこなたを見る。
そこには期待の眼差しを俺に向けるこなたの顔があった。
その顔に俺はたじろぎつつも、ポイント自体には特にこだわりは持っていなかったので俺はこなたの申し出に頷き
「わかったよ、ちょっと待ってろ。店長、俺のポイントをこいつにあげてください。俺は次回からでいいですから。」
そう言って俺の買い物ポイントをこなたに入れてくれるよう店長に頼むと、店長も了承してくれ、こなたもかなり喜んでいて、再び満面の笑顔で俺に礼を言ってきた。
「ありがとう、慶一くん。おかげで目標にまた一歩近づいたよ。このお礼は今度必ずするからね♪」
そんな笑顔のこなたに俺は
「じゃあ、少し期待させてもらうかな?」
そう言って俺もこなたに笑顔を返すのだった。
その後でかがみ達が
「・・・まったく、こなたの奴は・・・ごめんね?慶一くん。この馬鹿の我侭聞いてもらっちゃって・・・。」
「でも、なんだかんだで断らないけいちゃんはやっぱりやさしいね~。」
「友達思いの慶一さんの行動、見せていただきましたよ?」
そう言って来る3人に俺は照れくさくなり、照れ隠しにぽりぽりと後頭部を掻くのだった。
それぞれの買い物が終わって俺たちは全員で店を後にし、みゆきの提案もあって近くの公園でとりあえずの休憩を取る為移動をしていた。
その際に俺は、喉が渇いていたので缶コーヒーを一本買い込んで喉を潤しながら歩いていた。
5人で談笑しながら歩いていて公園の近くに差し掛かった時、ふいに誰かが言い争うような声が聞こえてきた。
「・・・・・・と謝ったでしょ!?いいかげんしつこいよ!?」
「うるせえ!そんなんじゃ俺らの気が済まないんだよ!!」
どうやら一人は女の子ともう一人・・・いや、数人の男達と言い争いになっているようだ。
だが俺は、その時聞いた女の子の方の声に聞き覚えがあった。
こなたとかがみも何となく気付いたらしく俺に
「ねえ、慶一くん、この声ってどこかで聞いた事ない?」
「私も聞き覚えがあるんだけど、この声ってやっぱり・・・。」
2人が俺に緊張した面持ちでそう言ってくる。
俺もそんな2人の言葉に頷きつつ
「ああ、確かにこの声は俺の知っている声だな。よし、様子見に行って見よう。」
俺は4人にそう言うと、こっそりと未だに言い争う声の聞こえている公園の影から中を覗き込んだ。
すると、数人の男達に囲まれて怯える見知った女の子とその女の子がかばうようにして後ろに隠しているもう一人の女の子の姿が確認できた。
男達は業を煮やしたのかついに女の子達に手を上げようと動き出した。
俺以外の4人はその光景に小さな悲鳴をあげた。
だが俺は、男達が手を上げ襲い掛かるその瞬間に「させるか!」と呟きつつ男達の側へと一瞬で移動してその手を捻り上げていた。
こなたside
秋葉腹でみんなとア○メ○トで買い物を楽しみ、私達は近くの公園で休憩しようという話になったのだけど、そこへと差し掛かった瞬間、公園内で何やら言い争うような声が聞こえてきた。
私達はその声を聞いて、何事だろう?と思い、顔を見合わせたのだが、その時に聞こえた女の子の声に私とかがみ、そして慶一君は聞き覚えがあると言い合っていた。
私達は公園内の様子が気になり、影からなかの様子を伺ったのだけど、そこには私達の知っている女の子ともう1人、その女の子の影に隠れるようにして怯えたような表情を見せるもう1人の女の子の姿をとらえたのだった。
女の子の抵抗に業を煮やした男達は、ついに女の子に危害を加えようとその手を振り上げる。
私達はその光景に思わず小さく悲鳴を上げたのだが、その次の瞬間、何時の間にか女の子達の方へ移動した慶一君が男の腕を取って捻りあげていたのだった。
その一瞬の早業に私達は驚愕して
「あ、あれ?慶一君、いつの間にあんな所に?」
「え?え?ちょ、ちょっと待ってよ!慶一くん、ついさっきまでここに居たわよね?」
「ど、どうなってるの?ねえ、おねえちゃん~」
「う、動きが全然見えませんでした・・・いったいどうやって?」
と、それぞれに今の一瞬で起きた出来事に混乱していたのだった。
いきなりの出来事に混乱する私達だったが、混乱しながらも私達は慶一君達の方を心配そうに見つめていた。
そんな中、かがみ達は
「ね、ねえ・・・警察とか呼んだ方がいいかな?」
「けいちゃん、大丈夫かなあ・・・」
「・・・かがみさんの言うとおり、通報した方がいいかもしれませんね・・・」
と3人はそう言っていたが、私はそんな3人に
「待って、とりあえず少し様子を見よう。それで、本当に危なくなりそうだったら通報しようよ。」
と、言うと、3人は私の言葉に不安を顔に滲ませつつもとりあえずは様子を見る事にしたようだった。
その後、結果から言うと、私達の心配は杞憂に終わる事となったのだが。
慶一side
店を出て公園へと一休みする為に移動していた俺達だったが、公園の側にさしかかった時、公園内から何やら言い争うような声が聞こえてくる。
その声の中には女の子の声も混じっており、俺はその声を耳にした時、その声の持ち主に思い当たる。
とりあえず様子を見ようと俺達は公園内を覗き込むと、そこにはやはり俺の知っている女の子の姿があった。
その女の子は自分の背にもう1人の女の子を庇うようにして男達と相対していたが、女の子の態度に業を煮やした男は女の子に危害を加える為に手を振り上げた。
俺はその瞬間、自分がやっている武術の歩法を駆使して男達の所へと一瞬で移動すると、男の腕を取って捻りあげたのだった。
俺は男の腕を捻りあげながら後ろにいる女の子に声をかける。
「大丈夫か?こう、間一髪だったな。」
俺がこうに安心させるように優しく声をかけるとこうは自分達を助けに入ってくれた人が俺だと気付いたらしく驚きながら
「せ、先輩!?どうしてここに?」
おそるおそる俺に聞いてくるこうに俺は
「話は後だ。とりあえずこの状況をなんとかしなくっちゃな。」
そう言って男の腕を捻りあげつつ、男達を睨みつけながら俺はこうにそう言うと連中のリーダー格っぽい男が
「てめえ!何のつもりだ!?誰かは知らないが邪魔するつもりなら潰すぞ!?」
ドスの効いた声でそう怒鳴ってくるリーダー格に俺は余裕の表情を見せながら
「この子は俺の知り合いなんでな、見過ごすわけにはいかないさ。」
静かに、しかし力強い声でそう返す。
そして俺はこなた達を呼んだ。
「こなた!この2人を頼む!」
俺がこなたにそう言うとこなたは俺の近くへやってきて
「分かったよ。けど、大丈夫なの?」
心配そうな顔で俺に聞いてくる。
こうもやはり心配なのか
「先輩、本当に大丈夫ですか?」
そう言ってきたが、その声はどこか不安げだ。
俺は2人に安心させるように
「大丈夫。今回も一撃で十分片がつくから。こうも俺が強いって事知ってるだろ?」
俺は自信ありげに2人にそう言うと、2人とも少し安心したのか
「そういえば慶一君は武術やってるんだったね。なら少し安心かな?八坂さんともう一人の女の子の事は任せてよ♪」
親指を立ててそう言うこなた。
こうもまた、昔の俺の事を思い出したのだろう
「あまり相手に無茶させないでくださいよ?」
そう言って2人ともかがみたちの方へと避難した。
俺は腕を捻りあげていた男を他の仲間のいる方へ突き飛ばしてリーダー格の男を見据えると、リーダー格の男は俺が一撃で決めると言ってた言葉を聞いていたのだろう、激昂しながら
「俺に、俺達に対して一撃で決めるとは大きくでたじゃねえか!本当にそんな事が出来るのなら見せてもらいたいもんだぜ!」
そう恫喝すると、下っ端連中の下卑た笑いが公園内に響き渡る。
俺は連中を静かに見つめ左手で先程飲んでいたコーヒーの缶<スチール製>を持て遊びながらリーダー格に答えた。
「ああ、お前ら程度なら一撃で十分。今証拠を見せてやるよ、っ!」
俺はそう言い終わると同時に自分が持っていたコーヒーの缶をリーダー格の男の顔めがけて投げつけると同時に飛んでいく缶を追いかけ、リーダー格との間合いを詰めた。
投げられた缶に気付いたリーダー格は顔に向かう缶をぎりぎりのところで避けたがその時には俺も間合いに入っていて、リーダー格の顔すれすれに飛んでいく缶に拳を合わせて缶を縦に潰した。
リーダー格のすぐ後ろには壁があり顔すれすれを飛んで行く缶と唸りを上げる拳を耳元で感じ、なおかつすぐ後ろでグシャリと缶のつぶれる音を聞かされたリーダー格は顔面が蒼白になってへなへなとその場に座り込んだ。
周りにいるその男の仲間たちもあまりの早業と缶を縦に潰した俺の力を見て言葉を失っていた。
俺は潰した缶を拾い上げリーダー格の目の前でそれをちらつかせながら、更に追い討ちの言葉をかけた。
「おっと、外しちまったか。運がいいな、お前。」
そして更に周りの男達を睨みつけながら恐怖を心に刻み込ませるように
「なあ、まだやるか?まだやりあうって言うのなら、今度はお前らの顔面がこうなると思えよ?」
俺がとどめの一言を言うと男達は短い悲鳴をあげてリーダー格の男を見捨てて散り散りに逃げていった。
リーダー格も正気を取り戻し、慌てて俺たちの前から姿を消した。
連中が去ったのを確認して俺はみんなを呼んだ。
「おーい、終わったぞ。もう大丈夫だ。」
俺がそう声をかけると6人はおそるおそる周りを見渡しながらも俺の方へと集まってきた。
こなたとこうは俺の事が心配だったのだろう、俺が無事な事を確認すると安堵の表情で俺に
「いやー、本当に一撃で決めちゃうとは思わなかったよ。武術やってるとは聞いてたけど、かなり凄いねえ。」
「さすが先輩です。とはいえちょっと心配しましたけど・・・。」
2人がそう言うとかがみたちも俺を心配してくれていたようで
「本当に大丈夫?缶を拳で潰してたし、痛めたりしてない?」
「とっても怖かったよ~。けど、無事でよかったよ~。」
「慶一さんの腕、かなりのものだと思いましたが、それでもあまり無茶はしないでください・・・。」
そんな3人に俺は心配させた事の罪悪感もあって苦笑しながら
「ははは、心配かけて済まない。でもこの通り大丈夫だからさ。」
俺が返事をするとみんな安心したようで先程のような緊張した顔ではなくなっていた。
そうやって安心した頃、俺はこうがかばっていた女の子の存在を思い出してこうにその事を聞くと、こうはその子の紹介をしてくれた。
「先輩、この子が以前に私が先輩に言っていた我がアニ研の期待の新人になるかもしれない子です。さ、ひよりん、挨拶して?」
こうがその子に挨拶を促すとその子はおずおずとしながら俺の前に来て
「田村ひよりっス。森村慶一先輩でいいんですよね?先程は私達を救って頂いて感謝っス。先輩ってかなり強い人なんですね?」
俺は田村さんの言葉に苦笑しながら
「俺の事知ってたんだ?まあ一応名のある道場で鍛えられたからな。それよりも怪我とかしてないか?」
と、田村さんを気遣うように俺が言うと田村さんは頷いて
「はい。こうちゃん先輩から森村先輩の話聞いてましたから。怪我に関してはこうちゃん先輩も庇ってくれましたし、森村先輩も助けてくれましたからそっちの心配はないっス。」
そう答えると田村さんは俺の方を見ながら
「森村先輩はアニ研の立ち上げに尽力してくださったのだとこうちゃん先輩から伺ってるっス。つまり、森村先輩が初代部長と言う事でいいんでしょうか?」
そう言ってアニ研の現状を聞いてくる田村さんに俺は笑いながら
「まあ、実際形だけの部長だからな。実質的なことはすべてこうに一任してるよ。」
俺がそう答えると田村さんは嬉しそうな顔で
「先輩、私もこうちゃん先輩に勧誘されて陵桜を目指す事にしましたっス。森村先輩とは初対面になりますがなんだかとても楽しそうな活動ができそうで今からとっても期待してるっスよ。」
そう言い、田村さんは更に言葉を続けて
「私が陵桜に合格できた時はまた色々と指導してもらえるとうれしいっス。その時にはよろしくお願いしますね?森村先輩、こうちゃん先輩」
俺はそんな田村さんの言葉に笑顔で
「ああ、とはいえ、部活はほとんどこう任せだ、俺はあまり顔出さないかも知れないがな。その頃には3年だし進路決めてそれに向かって頑張ってる頃だろうしさ。」
こうも俺を見て笑いながら
「大丈夫だよ、ひよりん。何だかんだいって先輩は私達の助けになってくれるからさ。」
こうのその言葉にみんなが顔を見合わせて笑っていた。
俺もまた、おそらくそうなるかもしれないなあと心の中で自分の人の良すぎる性格に問題を感じながらも苦笑するしかなかった。
俺は一つ思い出した事があったので田村さんに
「田村さん、そこにいるこなたもこうと似たようなタイプだから話が合うと思うぞ?」
そう言って俺がこなたの事を紹介すると、田村さんは目を輝かせ、こなたも田村さんを気に入ったのか2人して色々な話をしていた。
そこにこうも加わって行ったのは必然だったが。
そんな3人を見てかがみは更に頭を痛めてるようでその姿を見ていたつかさとみゆきもただ苦笑するのみだった。
その後は何事もなく、7人は談笑しながらその日を過ごし駅で別れる時、田村さんが俺たちとの再会を誓ってそれぞれの帰路についたのだった。
賑やかになっていく旋律の調べ。
これから先この旋律はどんな音楽を奏でていくのだろうか。
俺は更に騒がしくなりそうな日々を思いながらも心のどこかでそんな日々を少しだけ期待している自分に気付いたのだった。