らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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巡り会う旋律その2〜岩崎みなみ〜

新たな旋律となる可能性がある子との巡り会いから少し経ったある日、俺は連休前に再び実家の方から呼び出しを受けて俺は、龍神(たつかみ)の実家へと向かっていた。

 

俺は実家に寄り付く事に少々の抵抗感をかんじていたものの、長い休みに入る前等は一度顔を見せに来いと言う親父との約束があったため、仕方なく帰らざるをえなかった。

 

そこでもまた更なる旋律との巡り会いが待っていることを知らないままに、列車は実家の最寄駅へと走っていく。

 

実家に着いた俺は早速、親父とお袋に挨拶する為に家へと行った。

 

しかし、お袋は家の方にいたのだが親父の姿が見えなかったので、俺はお袋に親父の居場所を聞いた。

 

「お袋、親父はどこにいるんだ?一応約束だから顔出しにきたけどさ。」

 

と、俺は半ば面倒だと言わんばかりにお袋に聞くと

 

「あの人なら道場にいるはずよ?行って顔を見せてきなさい。そうすればあの人も安心するでしょうから。」

 

と、お袋はいつもと変わらず平然としながら俺にそう言い、親父の居場所も教えてくれた。

 

「わかったよ。お袋も相変わらずそうで安心したよ。あの親父はいつくたばっても構わないが・・・。」

 

と、いつものようにお袋に親父への毒を吐くとお袋は苦笑しながら

 

「相変わらずねあなたたちは。ほんとお互いに素直じゃない所は似てるわよね。」

 

そう言ってクスクスと笑っているお袋を見てとりあえずほっとした俺は、面倒では合ったが親父に会いに行く為に道場へと向かった。

 

道場に着くといつものように道場の理念を掲げた額縁を見上げて物思いにふけっている親父の姿を見つけたので、とりあえず顔を出しに来た事への報告をするのだった。

 

「親父、言われた通り顔見せにきたぞ!俺の顔を見れたからこれで安心して旅立てるな?」

 

と、親父に嫌味をぶつけると俺の声に気付いた親父は怒りの形相で

 

「旅立つとはどういう意味だ!?、私はまだまだ現役だぞ!!全く、口だけは達者になりおって・・・ともあれよく帰ってきたな。元気そうで安心したぞ。」

 

親父の怒声の後に父親らしい台詞がでてきたのを聞いて(俺も親父も素直にはなれないもんだ)と心の中で思いながら

 

「まあ、俺は達者でやってるよ。今回の事も約束だったからな。一応息子だし義理は果たすさ。」

 

そんな風に言う俺を親父は厳しい目つきで黙って見ていたが、何故か急にニヤつきだしながら

 

「今日は久しぶりに流派の型を復習していくといいだろう。この娘達にも久々にお前の演武を見せてやればいい。」

 

親父がそう言って道場の奥の方に向かって「こっちにきなさい」と声をかけると奥の方から見知った2人が顔を出したのを見て俺は驚いた。

 

そんな俺をみてニコニコと笑いながらその2人は俺に

 

「先輩、久しぶりにお邪魔しにきちゃいました。」

「中学校時代はよくここに来ていたと言うのに、今は別の所に住んでるなんて何だか不思議ね。」

 

と言って挨拶をしてくるのだった。

 

俺は大きなため息を一つついて

 

「こう、やまと、何故お前達がここにいるんだ?」

 

と、力なく2人にそう言うと、俺の言葉にこうが笑いながら

 

「先輩のお母さんに今日先輩が帰って来るから遊びにいらっしゃい。と言う連絡を受けまして。」

 

と、そう答えるのだった。

 

俺はその言葉に半ば脱力しつつ心の中で(お袋め、余計な真似を・・・。)と悪態をついたがだからといって2人をそのまま帰すというような無下な真似もできなかったので

 

「ふう、仕方ないな。少しばかり鍛錬する。退屈だろうけど俺の演武でも見ていてくれ。」

 

と、俺は2人にそう言う。

 

そして、親父に不機嫌な視線を向けながら

 

「親父も知ってやがったな?まったく小細工なんかしやがって・・・。」

 

そう言って悪態をつく俺を親父は一瞥したが、すぐに知らん顔をしていた。

 

そんな2人のやり取りをニコニコと見ながら2人は期待の眼差しを俺に向けて

 

「先輩が中学3年生の頃見せてもらって以来ですね。何だか楽しみです。」

「私はあの時は都合が悪くて見に行く事が出来なかったものね。先輩、じっくりと見せてもらうわよ?」

 

と言う2人の言葉に俺は苦笑しつつ

 

「まあ、たいしたもんじゃないがな。それじゃ、ちょっと胴着に着替えてくるからここで待っていてくれ。」

 

と、2人に伝えると、2人は俺に頷いて

 

「わかりました。それじゃ私達はここで待ちますね。」

「別に急いでいる訳でもないから、慌てなくてもいいわよ?先輩。」

 

と、言ってくれる2人に俺は頷くと、俺は2人を道場に残して早速胴着に着替える為に家へと戻ったのだった。

 

そして、胴着に着替えた俺は、2人の待つ道場へと戻って来る。

 

俺は2人に

 

「お待たせ。それじゃ、久々にやって見るかな?あまり大した物じゃないからそんなに期待はしないでくれよ?」

 

そう言って俺は龍神流の武術の構えを取り、緊張を漲らせた。

 

そして、一呼吸整えると同時に流れるように手足を動かし、時に力強く、時に繊細に拳を突き出し、蹴りを放ち、コンビネーションをつなげる体術を組み合わせたような演武をこなすのだった。

 

一通りの演武を終えて俺は息を切らしながら

 

「ふう、やっぱり少し鈍ってるな。久々だから息切れもしてる。これはちょっとみっともないなあ・・・。」

 

そう言って、俺は大分鈍ってしまった自分の体に少し凹んでいたが、俺の演武を見ていた2人から拍手と賞賛の声があがった。

 

「凄いです先輩。とても綺麗な動きでかっこよかったですよー?」

 

手を叩いて満面の笑みで俺を誉めてくれるこう。

 

やまとも同じように拍手をしながら

 

「初めて見るけど中々凄いのね。あの時にこうが先輩を誉めていたのもわかる気がするわ。」

 

そう言って同じように誉めてくれた。

 

その後練習を終えた俺は、家の方に戻って2人と雑談を交わしたりお茶を飲んでのんびりしたりしながら過ごし、頃合の時間になったので俺は帰る2人を送っていく事にした。

 

俺の送って行くという言葉に申し訳なさそうな顔を向けながら2人は

 

「すいません、先輩。わざわざ送ってもらっちゃって。」

「良かったの?私達に付き添っても。」

 

と、言って来たが、俺は笑いながら

 

「はは。近頃物騒だからな。女の子2人だとはいえ男の俺がいるのに女の子だけで帰らせる訳にはいかないからな。そうでなくてもお前らは俺にとっては大事な友人な訳だしな。」

 

2人にそう言うと、2人は少し顔を赤くして嬉しそうな顔で

 

「えへへ、何だか嬉しいですね。それじゃお世話になります、先輩。」

「頼りにしてもいいのよね?」

 

と言って来たので俺も2人に力強く頷いて

 

「ああ、まかせろ。」

 

と、そう返事をするのだった。

 

道中は特に危険な事もなく無事に2人を送り届けると、俺は一度龍神の家に顔を出してから帰ろうと思い、家へと歩みを進めていた。

 

しばらく歩いてると以前にみゆきを助けた場所にさしかかった。

 

俺は少し足を止めてその時の事を思い起こしていたが、すぐに後ろからきた何かに思考を遮られる事となった。

 

わう!わう!と俺の後ろから犬の吠え声が聞こえたと思った瞬間、俺は大きな白いハスキー犬にのしかかられていた。

 

その犬は俺を押し倒す形になり、俺は運悪くそこにあった水溜りに上半身が突っ込む形になった。

 

しかしその犬はそれすらもお構いなしですぐさま俺の顔をペろぺろと舐めまわし始めた。

 

俺は上半身びしょぬれになったが、犬は嫌いじゃなかったのでされるがままにされつつ犬の頭をなでていたが、その後ろからか細い声でその犬を止めようとしている少し背の高い、緑色の短い髪の毛が特徴の女の子?の姿を見た。

 

「・・・チ、チェリー・・・だめ・・・やめなさい・・・。」

 

その子はおろおろとしながらもなんとか犬を止めようとするが犬は静止を聞かずなおも俺の顔を舐めつづける。

 

俺はふうと一つため息をつくと、なおも顔を舐める犬を引き剥がしておもむろに立ち上がるとその子を落ち着かせようとつとめて優しい声で声をかけた。

 

「大丈夫だよ。そんなにおろおろとしなくても俺は別に怒ってはいないからさ。」

 

俺がそう声をかけるとその子は一瞬ビクッと体を震わせて俺におそるおそる

 

「・・・す、すみません・・・うちの子がとんだご迷惑を・・・。」

 

そう言って、その子はかなり落ち込みながら俺に謝ってきたが、俺は特になんとも思っていなかったのでその子をなだめるように

 

「ははは、これ位平気さ。それに俺は犬は好きだからね。」

 

と、その子に優しく微笑みながら俺がそう言うと、その子は少し安心したのか緊張を解いて

 

「・・・そう・・・ですか・・・あなたも犬が好きなんですね・・・?」

 

そう言うその子はまだ少し態度に怯えを残しているようだったが、それでも俺が怒っていないというのと犬が好きな人だと言うのが分かって安心したのだろう、さっきよりは柔らかい口調になったようだ。

 

俺は更にその子の緊張を解こうと思い

 

「ああ、ほかに猫も好きだな。うちでも飼ってるんだ。」

 

と、俺が笑顔で別の話題を振ってみるとその子もようやく笑顔を見せてくれて

 

「・・・猫、かわいいですか?私も猫もきらいではないです・・・。」

 

そう答えてくれたので俺は携帯を取り出して猫の写真をその子に見せる。

 

「ほら、こいつらさ。どうだ?かわいいだろう?」

 

俺が写真を指差しながらそう言うと写真にしばし見入っていたその子も

 

「・・・はい・・・とてもかわいいですね・・・。」

 

そう言って微笑んでいた。

 

その子がふと俺の方を見たとき俺が先程水溜りに突っ込んで上半身びしょ濡れになった事に気付いたようでまたも暗い顔になりながら

 

「・・・あ、あの、そのシャツうちの子の所為ですよね・・・?もしよろしければ家に寄って行ってもらえますか・・・?お詫びにそのシャツの洗濯をさせて欲しいので・・・。」

 

俺のシャツを指差しながら申し訳なさそうに言うその子に俺は言葉を返そうとしたら、更にまた後ろから俺の知っている声がかけられた。

 

「あら?みなみちゃんにチェリーちゃん。どうしたんですか?こんな所で。」

 

その声の正体はみゆき。

 

”みなみ”と呼ばれた子はみゆきに声をかけられ少し慌てた様子でみゆきに挨拶を返していた。

 

「・・・みゆきさん・・・こんにちは・・・私、チェリーの散歩をしてたんです・・・。」

 

そう答えるその子を見てみゆきも

 

「まあ、そうでしたか。今帰られるところだったんですか?・・・あら?」

 

そう、その子に言いながらふと、みゆきがこちらへと視線を巡らせた時、みゆきは俺の存在にも気付いたようで俺にも挨拶をしてきた。

 

「慶一さんじゃないですか。こんにちは。どうしたんですか?こんな所で?」

 

不思議そうに首をかしげながら俺に聞いてくるみゆき。

 

俺はここには実家の用事のついでで偶然来た事、この場所でさっきまで起きていた事を説明した。

 

事情を説明するとその子は少し顔を赤くしてうつむきながら申し訳なさそうにしていた。

 

俺の説明を聞いてみゆきは柔らかな笑顔を俺たちに向けながら

 

「まあ、そうだったんですか。それは大変でしたね・・・。」

 

頬に手をあてて首を少し傾げる仕草でそう言うみゆき。

 

そしてみゆきは何かを思い立って自分の横にいる女の子を一歩前に出させると、俺にその子の紹介を始めた。

 

「慶一さん、この子の事を紹介しますね。この子は”岩崎みなみ”ちゃんといいます。私の家の近所の子で幼馴染でもあり、私にとっては妹みたいなものなんですよ。」

 

と、みゆきが俺に岩崎さんを紹介すると、岩崎さんも俺におどおどとしながらも自己紹介をしてくれた。

 

「・・・岩崎みなみです・・・みゆきさんとは幼馴染です・・・よろしくお願いします・・・」

 

そう言った後更に自分の飼っている犬も紹介してくれるのだった。

 

「・・・この子はチェリーといいます・・・シベリアンハスキーの女の子なんですよ・・・」

 

その岩崎さんの言葉を受けて俺は犬の方に目をやると、犬も一声吠えて自己主張したようだった。

 

一通りみゆきsideの紹介が終わり、みゆきは今度は俺を岩崎さんに紹介してくれた。

 

「みなみちゃん、この人は私と同じ学校の生徒さんで森村慶一さんです。私のお友達なんですよ。」

 

みゆきが岩崎さんにそう言うと、そのみゆきの言葉に岩崎さんは何かを思い出したらしく

 

「・・・森村・・・慶一・・・さん?じゃあ、あの時にみゆきさんのお手伝いをしてくれた森村さんって・・・。」

 

と、そう言う岩崎さんにみゆきはにこりと笑って

 

「ええ、そうですよ?この人がその森村慶一さんなんです。」

 

そう言って微笑みながら岩崎さんにそう伝えるみゆき。

 

岩崎さんはみゆきの説明を聞いて俺の顔をしばらく凝視していたがやがて

 

「・・・と・・・言う事は・・・みゆきさんと同じ陵桜の生徒、って事ですよね・・・?」

 

俺におずおずとそう聞いてきたので俺はその言葉に頷いて

 

「ああ、そうだよ?俺は陵桜の所属さ。」

 

と、俺がそう答えると岩崎さんは感情の読み取り難い目を俺に向けて

 

「・・・私も、来年はそこを受けようと思っているんです・・・みゆきさんもいる陵桜を・・・。」

 

そう言って来たので俺は岩崎さんに笑顔を向けながら

 

「そうか。結構レベル高い学校だけど無事に合格するといいな?」

 

俺がそう言って軽く励ますと岩崎さんは顔を赤くしてうつむきながら

 

「ありがとう・・・ございます・・・みゆきさんは私の目標ですから、絶対に合格したいです・・・。」

 

それでも決意を秘めた瞳を俺に向けてそう言って来たので

 

「まだまだ時間はあるさ。目標があるならそれをモチベーションにしてやっていけばいい。そうすれば自分の実力を本番でも出し切れるようになるさ。」

 

そう言って岩崎さんに激励の言葉を投げかけた。

 

岩崎さんもそんな俺の言葉にうっすらと微笑みを見せると

 

「・・・励ましてくれてありがとうございます・・・。」

 

と、短くそう言いながらもどこか嬉しそうだった。

 

その後こっそりとみゆきに岩崎さんを励ました事を感謝され、とりあえずさっきびしょ濡れになったシャツの事を思い出し、どうしても洗濯するというみなみの頑固さに押し負けてみなみの希望通りにしてもらう事にしたが、みゆきが、「洗濯をするならば家に来てください。」という提案に岩崎さんも承諾してくれて、俺達はみゆきの家へと向かったのだった。

 

やがてみゆきの家について・・・・・・

 

「へえ?ここがみゆきの家か・・・?」

 

そう俺が感心しながら言うと、みゆきは自分の家の真向かいの家を指差して

 

「あそこがみなみちゃんの家ですよ?」

 

と言って岩崎さんの家を教えてくれた。

 

俺はその説明に岩崎さんの家ってすごく近いんだなあ、と納得しつつ、みなみと共にみゆきの家の玄関へと赴いた。

 

玄関を開けてみゆきが「ただいま帰りました。」と声をかけるとパタパタと軽い足音を響かせてみゆきにどこかそっくりな女の人が俺たちを出迎えてくれた。

 

「おかえりなさいみゆき。それとみなみちゃんいらっしゃい。」

 

そう言ってみゆきと岩崎さんを出迎えた後、俺の事に気がついたのかその女の人が俺に声をかけてきた。

 

「あら?あなたは誰だったかしら?みゆきのお友達?」

 

と、その女の人が俺に声をかけるとみゆきがすかざず

 

「はい、同じ学校の生徒さんで森村慶一さんというんですよ?お母さん。」

 

そう言って俺をその女の人に紹介してくれた。

 

だが、その時俺は、みゆきが発したワードに驚愕を覚えた。

 

その女の人は見た目にはどう見てもお母さんというよりはおねえさんにしか見えなかったからだ。

 

俺はその事に少し動揺しつつも

 

「は、初めまして。みゆきさんの友達の森村慶一です。よろしくお願いします。」

 

と、俺もみゆきのお母さんに挨拶を返すとみゆきのお母さんも俺ににこにことしながら俺に自己紹介をしてくれた。

 

「森村君ね?私はみゆきの母で高良ゆかりというの。よろしくね?」

 

そう言って人懐っこそうな、それでいて癒されそうな笑顔を俺に向けてくる。

 

俺にそう挨拶をした後、みゆきのお母さんはその視線をみゆきへと向けながら

 

「みゆき、みゆきが男の子を連れてきたからてっきり彼氏でも出来たのかと思ったじゃない?」

 

と、いきなりの爆弾発言にみゆきは真っ赤になって

 

「ち、違いますよ、慶一さんはまだ彼氏じゃなくて、お友達、ですから・・・。」

 

と、パニックになりながらもみゆきも何気に爆弾発言をしている事に俺と岩崎さんだけが気付いて、俺達は2人とも真っ赤になっていた。

 

とりあえずみゆきも気を取り直してゆかりさんに、俺がここに来た経緯を説明してくれた。

 

「そういう事だったのね?とりあえず上がって頂戴。洗濯が済むまではお父さんのシャツを代わりに着ててね?」

 

と言ってくれるみゆきのお母さんの言葉に俺は遠慮をしてはいたのだが、その見た目とは裏腹に押しの強いみゆきのお母さんの説得に負け、みゆきのお母さんに言われた通りにみゆきのお父さんのシャツを借り受け、そして、俺は自分の着ていたシャツをみゆきに預ける事となったのだった。

 

その後はただ洗濯が終わるのを待っているのもなんなので、リビングでお茶を頂きながら洗濯の終了までの時間つぶしの談笑をしていた。

 

俺は3人と話しながら、ここ最近あった出来事等を話題にする。

 

「・・・・・・って事があってですね。」

「そうなんですか。面白いですね。」

「慶一くんのお話って面白いわねえ。」

「・・・とても楽しいです。」

 

という感じでいろいろ話しながらも楽しい時間が過ぎていった。

 

やがてシャツの洗濯も済み、俺はそのシャツに着替えた後、お借りしたシャツを持って「お借りしたシャツは洗濯してお返ししますから。」と俺はそう言い、その後はみゆきとゆかりさんに見送られながら、岩崎さんと共に高良家を後にした。

 

高良家の家の前で俺は岩崎さんに笑いかけながら

 

「なんか色々とすまなかったな。わざわざ洗濯もしてもらっちゃったしな。」

 

と、俺がそう言うとみなみは顔を赤くしてうつむき

 

「・・・いえ、元はと言えば私が原因でしたから・・・チェリーの事もありますし・・・。」

 

と、恐縮しながら言う岩崎さん。

 

俺はそんな岩崎さんの頭を軽くぽんと叩いて

 

「その事なら気にしてないっていったろ?だから、あまり気にするな。」

 

俺が岩崎さんを安心させるように優しい声でそう言うと、岩崎さんは顔を上げて

 

「・・・ありがとうございます・・・ですが、やっぱり森村さんには何かお詫びをしたいです・・・。」

 

そう言う岩崎さんは俺の言葉を聞いてもまだ気にしてる風だったので、俺はどうしたものかと思案していたが一つ名案が浮かんだので岩崎さんに

 

「そうしないと気が済まないという岩崎さんの気持ちは分かった。なら、お詫びの代わりに一つ俺の頼みを聞いて欲しいんだが、いいかな?」

 

と、岩崎さんに言うと、岩崎さんは俺の言葉に首をかしげて俺を見つめて

 

「・・・頼み、ですか?」

 

と聞いてきたので俺は岩崎さんに俺の思いついた頼み事を話した。

 

「ああ。もし岩崎さんが陵桜に受かって学校に通う事になったらさ、是非友達になってやって欲しい子がいるんだ。」

 

俺がそう言うと岩崎さんは俺を見つめながら

 

「・・・友達・・・?その子は一体・・・?」

 

そう聞いてきたので俺は更に言葉を続けて

 

「実はな、その子も君と同じで陵桜を目指してる。そして、きっとその子には君みたいな子が友達として必要になると思う。」

 

俺は岩崎さんの目を見つめて言葉をつむぐ。

 

岩崎さんはそんな俺の言葉を反芻するように

 

「・・・私が・・・その子にとって、必要・・・?」

 

と言う岩崎さんのその言葉に俺は大きく頷いた。

 

俺は更に先を続けて

 

「できる事ならばその子の事を岩崎さんが助けてあげてくれないか?それが君の俺に対するお詫びの代わりのお願いだ。」

 

俺が話し終えると、岩崎さんは少し考え込んでから俺に頷いて

 

「・・・そういう事で・・・いいのでしたら・・・そのお願いを私は受けようと思います。」

 

そう言って岩崎さんは決意を秘めた瞳で俺にそう伝えてくる。

 

そして俺は、岩崎さんのその言葉に

 

「受けてくれるか?悪いな、こんな頼みごとで・・・。」

 

そう言って後頭部を掻きながら岩崎さんにそう言う。

 

岩崎さんはそんな俺を見てこくりと頷くと

 

「・・・それで、森村さんの言うその子の名前はなんというんでしょうか・・・?」

 

と、岩崎さんは俺に最後の確認をしてくる。

 

俺は岩崎さんのその言葉ににっこりと笑い、一度瞳を伏せてから再び岩崎さんの目を見て

 

「ああ、その子の名前はな・・・・・・・。」

 

そう言って俺は、岩崎さんにその子の名前を告げた後、岩崎さんと陵桜で再開する事を約束してそれぞれの帰路へとついた。

 

俺の思いつきでした約束ではあったが、俺は今日一日のあの子との事を思い出し、あの子ならきっと大丈夫だろうという確信を持つ。

 

きっと上手く行く。

 

俺は何故かその事を微塵も疑っていなかったのだった。

 

みなみside

 

自分の部屋でベットに転がりながら私は今日の出来事を思い出していた。

 

私の不注意で森村さんに迷惑をかけてしまった事、森村さんが動物好きであった事、そして、森村さんに頼み事をされた事等を思い出す。

 

(・・・あの人がみゆきさんの言っていた森村さんか。初めて会った時には迷惑をかけちゃったな・・・でも、その事を本人は気にもしないほどおおらかでなんか優しい人だったな・・・森村さんが私に頼んだ事、陵桜に合格できたなら森村さんのお願いに応えよう・・・その子も無事に陵桜に受かればいいな・・・そして、森村さんとも再会できたなら・・・先輩と呼ばせてもらわなきゃ・・・。がんばろう・・・そして私の新たな目標のために・・・。)

 

私はそう心の中で考えつつ、これからの目標に向かって決意を新たにすると同時に、もう1つ出来た目標が私のやる気を更に引き上げてくれるのを感じていた。

 

そのやる気に後押しをされて私は、今日はいつも以上に受験勉強がはかどった事を喜んだのだった。

 

慶一side

 

今回もまた、新たな出会いがあった。

 

俺はその出会いにゆたかの時と同じような予感を感じていた。

 

あの子ならきっと大丈夫だろう、と俺はそう心の中で感じつつ再び再会できるというその予感を全く疑わない自分に自分の事ながら驚きを感じていたのだった。

 

そして、その子もまた、旋律の1つとなる事にやはり、後になって気付かされる事となるのだが、それはまだまだ先の事でもあった。

 

 

 

旋律は旋律を呼び、それらは更なる旋律を呼び寄せる。

 

そしていつしかそれらは束ねられ大きくなって更に大きな旋律を生み出していく。

 

俺の作ったきっかけが更なる旋律を呼び込む事になる事を俺は知らない。

 

運命は確実に一つの場所に向かっている事を気付きもしないままに日常は過ぎて行くのだった。

 

 


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