らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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後の後輩組との出会いです。



巡り会う旋律その1〜小早川ゆたか〜

四重奏達の突然の自宅訪問から数日。

 

ゴールデンウィークを間近に控えたある日の休日、俺はここで新たな旋律との巡り会いを果たすのだった。

 

俺は久しぶりに騒がしい旋律達の誰とも係わらずに1人きりののんびりとした休日を過ごしていた。

 

近場への買い物の用事もあったので、そこでの買い物を済ませて家に帰ろうと道を急いでいたら、俺の数メートル前で少しふらつきながら歩く赤い短めの髪をツインテールにした、見た目には小学生のような女の子を目にする。

 

俺はなんとなくその女の子の挙動が気になり、自分のペースを落としてその子の様子を見ながら歩いていると、その子は突然その場にうずくまるように座り込んだのを見て俺は、慌ててその子の元へ駆けつけた。

 

その子を見ると真っ青な顔をして苦しそうにしていたので、俺はとりあえずその子の容態の確認の為その子に声をかけてみた。

 

「君、大分具合が悪そうだけど、大丈夫かい?」

 

そう、俺がその子に尋ねてみると、その子は弱々しい表情で俺を見上げ、けど強がりとも取れる態度で

 

「ヘ、平気です。少し気分が悪くなっただけですから、気にしないで下さい・・・。」

 

と、苦しそうに俺に返事してくるその子を見て俺は(全然平気に見えないぞ?)と心の中で思いつつ

 

「とてもそうは見えないよ。とりあえずここにいつまでも居るわけにはいかないな。」

 

と、その子に俺はそう言いいつつ手を差し出して

 

「ほら、立てるかい?」

 

と、促すと女の子は俺を見て怯えたような困惑したような表情をしながら

 

「いえ、大丈夫ですから。すぐに具合はよくなりますから心配しないで下さい・・・。」

 

それでも俺に対して迷惑をかけるかもしれない事を嫌がっているのか中々俺の差し出した手を掴もうとしない。

 

俺はこのままじゃまずいかもしれない、と心の中で思いながらもとりあえず無理にでも女の子を休ませなければと考え、強行手段に打って出た。

 

「ちょっとごめんよ?」

 

「えっ!?きゃっ!!」

 

女の子は短い悲鳴をあげたが俺は女の子を無理やりお姫様抱っこで抱えあげるとその女の子をあまり刺激しないように注意しながら近くにあった公園のベンチへと連れて行く事にした。

 

始めのうちはその体制が恥ずかしかったのか弱々しいながらも抵抗をしていた女の子だったのだが、そのうちに意識を失ったらしく、俺はそれを確認しながらもそーっと女の子を運んでいった。

 

俺は背中が痛くならないように先程購入してきたタオルを取り出してベンチに引くと、そこに女の子をそっと寝かせてハンドタオルを濡らすのと水を確保するために自販機と水道に向かった。

 

水を確保しタオルを濡らして戻ってくると女の子の顔色は幾分か良くなってきていた。

 

俺は女の子の額に濡らしたタオルを当ててそのまま様子を見ることにした。

 

そうしてどのくらいの時間がたったのだろうか?俺も女の子の傍らで気がついたら寝息を立てていたのだが、女の子がもぞりと動くのを感じた俺ははっと目を醒ました。

 

女の子の方を見るとどうやら意識が戻ったらしく、上半身を起こして少しぼーっとしながら俺の方を見つめていたが自分の状態に気付いたのか慌てて

 

「え?あれ?ここは?私一体どうしてここで寝てたんだろう?」

 

と、半ばパニックになりながら頭にたくさんのハテナマークを飛ばして困惑する女の子に俺はクスリと笑いながら声をかけた。

 

「気分はどうかな?君を見かけた時、少し具合が悪そうだったし、無理をさせる訳にもいかなかったから、悪いとは思ったけどここに君を運ばせてもらったよ。様子を見ていて更に容態が悪くなるようなら救急車を呼ぼうとも思いはしたんだけどね。」

 

そう、俺が事情を話すと、パニックになっていた女の子ははっと我に返り、俺の方に目を向ける。

 

俺の存在に気付いたその子は俺をまだ少し怯えるような瞳で見つめつつ

 

「そ、そうだったんですか・・・私、またやっちゃったんだ・・・あの、迷惑かけてごめんなさい。」

 

そう言って俺に謝りつつ落ち込む。

 

俺はその子を苦笑しつつ見つめながら

 

「また、ってしょっちゅうこんな風になるのかい?」

 

そう、俺が女の子に聞くと、女の子もばつが悪そうな顔で

 

「はい、私、昔から体弱くて・・・いつもいろんな人に迷惑かけちゃうんです・・・。」

 

そう言ってさらに暗い顔になる女の子を見て、何だか気の毒だなと思いながらも俺は

 

「そうなんだ。大変だな、そういうのも。」

 

と、かける言葉が月並みになってしまってるのを自覚しながらもそう言う事しか言えない自分がもどかしかったが

 

「とりあえず体は大丈夫?まだ気分悪いかい?」

 

そう言って俺はこの暗い雰囲気をどうにかしようと思い、話題そらしの為女の子の体の具合を聞いてみることにした。

 

女の子も俺に頷きながら

 

「はい、もう大丈夫です。ごめんなさい、お兄さんは私を助けてくれたんですよね?」

 

まだ俺に対しての警戒心を残してはいるようだがそれでも目の前の人が自分を助けてくれたのだろうと理解した女の子はぺこりとお辞儀をしながら俺にお礼を言ってきた。

 

俺はそんな女の子の様子を見てほっと一息つくと安堵して

 

「まあ、一応そういう事かな。急に倒れたときには驚いたけど、何事もないならなによりさ。」

 

俺は女の子に優しく笑いながらそう言うと女の子は顔を赤くして

 

「ありがとうございます。お兄さん、ご心配をおかけしました。えと・・・もし良かったら名前を教えていただけませんか?」

 

女の子は俺に名前を聞いてきたので俺は軽い自己紹介をする事にした。

 

「いいよ?俺は森村慶一、陵桜学園の2年生。よろしくな。」

 

俺がそう挨拶すると女の子も俺に名前を教えてくれた。

 

「私は小早川ゆたかといいます。森村さんは陵桜学園といいましたよね?実は来年私もそこを受けるつもりなんですよ。」

 

小早川さんは俺ににっこりと笑いかけながら自分が陵桜を受験する事を伝えた。

 

俺は最初それを聞いて小早川さんに普通に

 

「へえ、君も陵桜をね、ふーん?そっかそっか・・・・・・え?えええ!?ちょっ、ちょっと待って?君、今いくつなの?」

 

そう返したのだが、最後の方では小早川さんの高校を受験するという言葉に驚き、俺は目の前の小早川さんの容姿を改めて見てまだ中学生でもないだろうと思い込んでいたために小早川さんの陵桜を受けると言う言葉に、目の前の小早川さんがもう高校受験をする年齢であるという事に気がつかなかった。

 

というか、それに気がつかなかった俺を誰か責められるだろうか?

 

俺のそんなリアクションを見ていた小早川さんは何だか落ち込んで

 

「一応これでも中学3年生ですよ?まあ、私のこの容姿じゃ、みんなそうは見てくれませんけど・・・。」

 

と、再び暗い顔になりながら俺に言う小早川さん。

 

俺はそんな小早川さんを見て慌てつつも苦笑するしかなかった。

 

それでも、小早川さんを傷つけたかもしれないなと思った俺は小早川さんにさっきの事を謝ろうと思い

 

「ごめん、小早川さん。見た目で君の事をそんな風に判断してしまった。本当にごめんよ?」

 

俺が申し訳なさそうに謝ると小早川さんは両手を振って

 

「いえ、いいんですよ。実際中学3年生、ましてや受験生だなんて見てもらえる体じゃないですし。」

 

そう言いながらもまた少し落ち込む小早川さんに俺はなんとか元気付けてあげようと思い

 

「大丈夫だよ小早川さん。まだまだ成長期なんだから希望は捨てないで。なんたって人間は25歳までは成長を続けるものなんだしさ。」

 

俺がそう言って励ましの言葉をかけると小早川さんも少し元気を取り戻して

 

「そうですよね?まだまだこれからですよね?森村さんの言うように希望を捨てずにがんばりますね?」

 

そう言って笑ってくれた。

 

俺はそんな小早川さんの笑顔をみて少しほっとしていたがそこに突然後ろから怒気を帯びた声をかけられた。

 

「君、うちのゆたかに何をしているのかな?場合によってはこの場で逮捕するよ?」

 

その声に驚いて振り向くとそこには婦人警官が立っていた。

 

その人は俺を鋭い視線で射抜くように見つめながら俺の近くにいた小早川さんに声をかけた。

 

「ゆたか、大丈夫かい?変な事されてない?」

 

その人は小早川さんに無事を確認するように言うと小早川さんは慌てて

 

「ち、違うよ、ゆいおねーちゃん。この人は、森村さんは具合が悪くなって倒れた私を介抱してくれたんだよ。」

 

と、”ゆい”さんと呼ばれた人に事情を説明してくれた。

 

それを聞いたゆいさんはさっきまでの鋭い視線を解いて俺の方を向いて何だかすまなそうな顔をしながら

 

「そうだったんだー。ごめんね?早とちりしちゃってさー。ゆたかは私の大事な妹だから、つい本気になっちゃった。ごめんねー?えっと、森村君でよかった?」

 

そう言って早口でまくし立てながらも謝ってきたので俺はほっと、安堵のため息をつきながら

 

「いえ、誤解が解けたのならそれでいいですよ。改めまして、森村慶一です。小早川さんのお姉さんだそうで。」

 

俺がそう尋ねると小早川さんのお姉さんも俺に自己紹介をしてくれた。

 

「うん。そうだよ?私は小早川ゆい。そこに居るゆたかのおねーさんなのさ!最も6月には結婚するから私の性は成実になるんだけどね。それと見ての通り交通課に勤務する警察官でもあるのさー♪」

 

びしっと親指を立ててはじけるような笑顔で自己紹介しつつ更にはこちらが尋ねてすらいない情報までも口走る成実さん。

 

俺はそんな成実さんに気圧され苦笑しながらも

 

「そうなんですか。おめでとうございます。幸せになってくださいね。それと、警察官やってるなんて凄いですね。身内に警察官がいるのなら、小早川さんとしてもかなり心強いでしょうね。」

 

そう俺が素直に祝福の言葉と素直な感想を述べると成実さんもにこにこしながら

 

「ありがとうー。森村君はいいやつだねー。それと、改めてお礼をいうよー。ゆたかを助けてくれてありがとうね?」

 

成実さんがそう言うと、小早川さんも俺に笑顔を向けつつ

 

「森村さん。私を介抱してくれてありがとうございます。とても助かりました。」

 

2人してお礼を言って来たので俺も照れながら

 

「いえ、俺は俺の信念に基づいた行動を取ったまでですから、特にたいしたことをしたわけじゃありませんよ。」

 

と、俺は恐縮しながらも2人にそう返すと2人ともにっこりと笑ってくれた。

 

俺の言葉に成実さんが

 

「森村君の信念?それってなんなの?」

 

と首を傾げつつそう聞いてくるを受けて俺は成実さんの言葉に頷いて

 

「あー・・・えっと・・・少し照れくさいのですがその信念ってやつについて答えますと・・・その・・・困ってる人や、弱ってる人をほおって置けない、余計なお世話になるかもしれないけど、それでも手を差し伸べずにいられない、ってやつですかねー・・・あはは。」

 

と、少し照れつつもそう言うと、成実さんと小早川さんは俺の言葉にしきりと関心しているようだった。

 

それから少しの間3人で談笑をしていたが、大分時間も経ったようなので俺はおもむろに携帯を取り出し時間を確認する。

 

俺は、それを確認するとそろそろ戻らなければならない時間になっていた事に気付き

 

「すいません。小早川さん、成実さん。俺そろそろ戻らないといけないんで。」

 

俺が2人にそう言うと、成実さんは

 

「そっかー。残念だけどここでお別れだねー。ゆたかの事ありがとうね?森村君。」

 

俺にそう言い、小早川さんも俺に頭を下げながら

 

「森村さん。今日は本当にありがとうございました。さっきの話なんですが、森村さんて陵桜の人なんですよね?」

 

そう尋ねてきたので俺も小早川さんに

 

「ああ、そうだよ?それがどうかしたの?」

 

と、返事を返すと、小早川さんは下を向いてもじもじとしながらも意を決して顔をあげると俺に決意を秘めたような目を向けて

 

「もし私が陵桜の受験に合格して陵桜に行く事になったら、私とも・・・あの・・・お友達になってもらえませんか?」

 

顔を赤くしながらも俺に勇気を出してそう言ってくる小早川さんに俺も笑顔で

 

「ああ、いいよ?俺でよければね。」

 

そう答えると小早川さんは凄く喜んで

 

「ありがとうございます。私がんばりますから、だから、陵桜で待っていて下さいね?森村さん。いえ、その時には、慶一先輩って呼ばせもらいますね?だから、その、私の事も、その時には私の事を名字ではなくて名前で呼んで欲しいです。」

 

小早川さんが俺にすごくいい笑顔でそう言ってきた。

 

俺はそんな小早川さんの気持ちに応えるため

 

「ああ、これからも色々大変だろうけど自分の体に負けないようにがんばれ。そして陵桜に無事合格する事を祈ってるよ?その時までがんばれよ?・・・ゆたか。」

 

そう言って励ましつつ、最後に小早川さんの事を名前で呼ぶと、小早川さんは目を見開いて驚いていたが、やがてその顔は笑顔へと変わった。

 

俺は、その笑顔に安堵しつつ、小早川さんに伝えるべき事を伝えた後

 

「それじゃ、俺はそろそろ行くよ。受験勉強、しっかりな。」

 

そう言って2人に手を振ると2人も俺に

 

「はい!勉強がんばりますね!本当に今日はありがとうございました!!」

「君も何か困った事があったら、おねーさんに言ってきなさい!私の出来る事でなら力になってあげるからねー!!」

 

それぞれそう言葉をかけつつ、手を振って見送ってくれたのだった。

 

その2人に一度だけ振り返りつつ、俺は家路へとつくのだった。

 

また一人巡り会った旋律。

 

俺は何故かは分からないが他にもこんな風に出会う旋律があるようなそんな予感を感じ取っていた。

 

ゆたかside

 

今日はいつもよりは体の調子が良いと思い、私は自分の用事を済ませるために出かけた。

 

しかし、その途中でまたも気分を悪くしてしまい、道端にへたり込む事となった。

 

そんな時に私に声をかけてくれた男の人がいて、その人は意識を失いかけていた私を介抱してくれたのだった。

 

その人の名前は森村慶一さん。

 

森村さんは私が意識を取り戻すまでの間、ずっと側についていてくれたのだった。

 

そして、意識を取り戻した私は森村さんと色々話しをすると、森村さんは私が受験の目標としている学校の生徒である事もわかった。

 

ここで森村さんと出会えた事に何かの意味があるような、そんな気がした私は、何故か今日出会ったばかりの森村さんとお友達になりたいと思い、もしも受験が上手くいって陵桜へと入学できたならお友達になって欲しい、と思わず森村さんに言うのだった。

 

森村さんもまた、そんな私の言葉に笑って頷いてくれて、更には私の陵桜に行ったら名前で呼んで欲しいという希望にその場で応えてくれた。

 

私はその森村さんの言葉がすごく嬉しくて、絶対に入学試験を突破するのだ、と心に決めるのだった。

 

その後、そろそろ帰らないと、と言う森村さんをここで偶然出会ったゆいおねーちゃんと共に見送った私はこの場でゆいおねーちゃんと少しのやりとりをするのだった。

 

「いい人に助けてもらえてよかったね?ゆたか」

 

ゆいおねーちゃんが笑顔で私ににそう言ってくる。

 

そんなゆいおねーちゃんの言葉に私も、今日の事を思い出して自然と笑顔になって

 

「うん。優しい人だったよ。ああいう人に出会えたのは運が良かったのかもしれないね。」

 

そう、ゆいおねーちゃんに返事を返しながら高校受験に向けて更なるやる気が出るのを感じていた。

 

(絶対に受験に成功して陵桜に行って、森村さんの事先輩って呼びたいから、私、がんばる!)

 

私は心の中でそう誓い、ゆいおねーちゃんに自分の決意を口にする。

 

「ゆいおねーちゃん、私、俄然やるきでてきたよ。受験頑張るから、応援してね?」

 

そんな私の決意を受け取ったのか、ゆいおねーちゃんも私に笑顔で

 

「おねーさんにまかせなさい!絶対に応援するから、受験がんばろう!」

 

そう言って親指をびしっと立てて、私を励ましてくれるおねーちゃんだった。

 

私は、ゆいおねーちゃんの言葉に笑顔で頷きながら、この受験が何だか上手く行きそうな、そんな予感を感じるのだった。

 

慶一side

 

今日、俺は1人の女の子と出会った。

 

いつものように困っている人を見過ごせず手を差し伸べた俺だったが、その子がまさか陵桜を受験しようとしている子だとは思わず、それを聞いた時にはかなり驚いた。

 

と、同時に、何故かこの出会いに俺は、何らかの予感を覚えたのだった。

 

今はまだそれを俺達に加わる旋律の1人と認識できてはいなかったが、それでも俺の脳裏には陵桜の制服に身を包み、俺達と楽しく過ごすあの子のイメージが浮かぶ。

 

そして、俺は、そのイメージが浮かぶと同時に、その子の受験の成功を強く願う。

 

俺の脳裏に浮かんだ映像が現実になりますように、との祈りも込めて。

 

それが新たな旋律との邂逅だったのだと気付くのはもう少し後の事だった。

 

 

次々と現れ物語を織り成す旋律達。

 

それはこれからどんな音楽を奏でていくのだろうか。

 

旋律達との出会いはまだ終わらない・・・・・・

 

 


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