らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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広がり始める雑音(ノイズ)~飛び火しはじめる風邪~

遊園地での一時を過ごし、ゴールデンウィークでまた1つ思い出を作った俺達は、再び始まった学校生活へと戻っていた。

 

そんな中、いつもの雑談の最中にこなたとみゆきがくしゃみをしていたのを見ていたが、それは、この後に起きる事態への始まりの合図にもなったのだった。

 

そして、次の日の朝、食事当番であるにもかかわらず姿を見せなかったみゆきを珍しいな、と思いつつ、やまとにみゆきを迎えに行ってもらったのだが、みゆきは意外にも風邪で寝込むという事態になっていた。

 

とりあえず俺はみゆきを休ませつつ、朝食の当番を代わりに引き受けてその場は凌いだが、その頃、こなたの方でも異変が起きていた。

 

いつもの電車に乗り、いつものメンバーが集まる時間だったにもかかわらずその場にこなたの姿がない事を不思議に思い、俺はゆたかに事情を聞いてみたが、こなたもまた風邪に倒れたとの事。

 

俺達はとりあえず放課後に、こなたのお見舞いをしようと考え、放課後に集まるという話をした後で一端はそれぞれの教室へと向かうのだった。

 

そして、その日の放課後・・・・・・

 

「お待たせしました。」

「・・・HRが長引いた所為でお待たせしてしまいました・・・すみません・・・」

「お待たせしましたっス。私たちで最後ですよね?」

「私がもたついた所為かもですね・・・ごめんね?3人共。」

「若瀬さんの所為じゃないよ。」

「・・・そうだね。だから気にしないで・・・」

「委員長はしっかりやってるっスから、大丈夫っスよ。」

「あ、ありがとう。3人共。」

 

と、息を切らせつつゆたか達が最後に待ち合わせ場所へと現れつつそう話すのを見て、俺達は4人に

 

「ああ、大丈夫だ。俺達もそんなに待ってた訳じゃないからな。」

「そうよ?だから気にしないで。」

「急いでる訳じゃないから慌てなくても大丈夫だよ~?」

「まあ、そういう事だゼ?とりあえずこれで全員だよな?」

「そうね。2年生の子達も来てるし、全員集合ね。」

 

と、ゆたか達を安心させるように言う3年生組。

 

「お見舞いだし、焦る事もないしね。」

「とりあえずは、同意かしらね。」

「私達もあまり変わらない時間で集まってるから、気にしないで。」

「そうそう。とりあえずは全員集まった事だし、出発しようよ。」

 

そう言う2年生組の言葉に、ゆたか達もほっとしている様子が見て取れた。

 

そして、たまきの言葉の通り出発しようとしていた俺達なのだが、俺はある事を思い出したので皆に

 

「あ、すまん。皆、悪いんだけど先に行っててくれないか?俺は家に忘れ物を思い出したからそれを取ってから行くからさ。こなたにはそう伝えておいてくれないか?」

 

そう言うと、俺の言葉にかがみが

 

「忘れ物?何を忘れたって言うのよ?まあ、いいわ。そういう事なら私たちは先に行ってるから、忘れ物を取ったらこっちに来なさいよ?」

 

そう言ったので、俺はその言葉に頷いて

 

「ああ。わかってる。それじゃ皆、一応はこなたも病人なんだし、あまり騒がしくはしないようにな。」

 

そう伝えると、他の皆も苦笑しつつも頷いて、俺以外の全員はこなたのお見舞いへと出発したのだった。

 

とりあえずは一緒に駅まで行って、こなたの家の最寄駅に向かう電車で別れて俺は、1人自宅へと戻った。

 

俺は鞄を部屋に置き、押し入れの中を漁り始める。

 

しばらくして、俺はその中にある1つの箱から、小瓶を取り出してその中身を確認してから部屋を出た。

 

そして、俺は今朝寄って来なかったみゆきの部屋へと赴く。

 

みゆきが寝ている事も頭におきつつも部屋をノックし、俺はみゆきに声をかけた。

 

「みゆき、俺だ。入ってもいいか?」

 

そう声をかけたが、部屋の中からは反応が返ってこない。

 

俺は、みゆきが寝ているのかもしれないと判断し、そっとみゆきの部屋のドアを開き、中を伺う。

 

すると、ベットで寝息を立てるみゆきの姿を見つけ、俺はとりあえずはおかしな場面に遭遇せずに済んだ事を安堵しつつ、部屋へとそっと足を踏み入れた。

 

なるべくみゆきを起こさないように気をつけながらみゆきの側まで近づいたが、どうやら部屋に入って来た人の気配に気付いたのか、みゆきが目を覚ましたようだった。

 

「・・・う・・・うーん・・・あ?」

 

そう声を出しつつ俺の姿を確認したみゆきは、俺に声をかけてきた。

 

「あ、慶一さん。お帰りでしたか・・・こほっ!こほ!す、すみません・・・こんな姿で・・・」

 

そう言うみゆきに俺は、軽いため息をつきつつ首を左右に振ると

 

「いや、気にするな。それよりも悪かったな。今朝も今朝で様子見には来れなかったし、今もお前を起こしちゃったみたいだしな。」

 

そう言うと、みゆきは苦笑しつつ

 

「いえ、突然の事でしたから仕方がありませんよ。それに、今起きてしまった事も偶然ですから気にしないで下さい。それはそうと、慶一さんだけなのですか?皆さんはまだお帰りではないのですか?」

 

そう尋ねてくるみゆきに俺は頷いて

 

「ああ。実はお前と同じようにこなたも風邪を引いて学校を休んでしまったみたいでな。皆は今そっちへ見舞いに行っているんだ。俺は家に忘れ物を思い出したからそれを取りに戻って来たって所さ。それと、お前にこれを渡して行きたかったのもあるんだが。」

 

そう言って俺は、先程部屋から探してきた小瓶の蓋を開け、中から丸薬を取り出してみゆきに手渡しながら

 

「これさ。龍神家に伝わる滋養強壮薬でな、名を龍真丹(りゅうしんたん)と言うんだ。肉体疲労や風邪を引いた時などにこれを飲む事でその症状を回復させる効果がある。そこらへんにある栄養剤や風邪薬よりはよっぽど効果がある代物だから、お前に飲ませたくて持って来たのさ。」

 

そう説明すると、みゆきは俺から受け取った龍真丹をまじまじと見つめながら

 

「龍神家にはこのようなものもあるのですね?ですが、慶一さんも以前に風邪を引かれた事がありましたが、その時にはこのお薬の事は私にも伝えていませんでしたよね?」

 

そう指摘するみゆきに俺は、バツの悪そうな顔になりつつ

 

「あー・・・その事なんだが、あの時は急に風邪を引いた事とそれによる発熱で頭がぼーっとなってたらしくてな。その薬の事を思い出せなかったんだ。結局風邪が治ってからそれに気付いて俺も軽く落ち込んだって所だったからな・・・」

 

そう説明する俺にみゆきも苦笑を見せていたが、それでも用意してあった水でそれを飲み込んで

 

「ふう・・・とりあえず飲ませていただきました。これで私の風邪もよくなるでしょうか?」

 

そう聞いて来るみゆきに俺も頷きで応えつつ

 

「ああ。その薬の効き目はばっちりだ。恐らく明日には熱も引くだろうさ。さてと、それじゃ俺はこれをこなたにも届けに行かなきゃならないから、そろそろ行くよ。みゆき、後でまた様子見に来てやるからゆっくり寝とくんだぞ?」

 

そう言うと、みゆきも申し訳なさそうな顔で

 

「は、はい。慶一さん、色々とご迷惑をおかけしてすみません。それと、私の為にこのような事をしていただけた事はとてもうれしかったです。ありがとうございました。」

 

そう言ってくるみゆきの言葉に照れながら俺は、頬をぽりぽりと掻きながら

 

「い、いや、俺の時だってお前には世話になってるんだから、この位はしなきゃお前への借りも返せないしな。それに・・・やっぱり元気な姿の方がみゆきらしいし・・・あ、いや、その・・・」

 

思わず口走ってしまった言葉にさらに照れる俺だったが、その言葉を聞いたみゆきもまた、顔を赤くしながら

 

「あ、ありがとうございます・・・そ、その・・・早く元気になりますね?」

 

そう言って笑うみゆきに俺は、再度照れつつも頷いて

 

「あ、ああ。そ、それじゃ俺はもう行くからな?ゆっくり休むんだぞ?」

 

そう言うと、みゆきも頷いて

 

「はい。慶一さんの言う通りにしますね。それじゃ、泉さんの方もよろしくお願いします。」

 

そう言うみゆきに俺も頷くと、みゆきが再度布団に入った事を確認してから部屋を出た。

 

こなたside

 

今朝からのいきなりの風邪で、思いがけず学校を休む事になってしまった私。

 

ベットの中で苦しみつつも暇と戦っていた私だったが、そうこうしているうちに薬が効いたのか、気付いたら眠り込んでしまっていたようだった。

 

どのくらいの時間がたったのか、なんだか部屋の中で話し声が聞こえてきたのがきっかけで私は目を覚ます。

 

すると、そこには、いつものメンバーが私の部屋に集合しているのが見て取れたのだった。

 

目を覚ました私に気付いたかがみが私に声をかけてきた。

 

「お?目が覚めたみたいね。少し騒がしかった?」

 

そう聞いてくるかがみに私はとりあえず

 

「んー、騒がしいって事はなかったけど、なんだが話し声が聞こえたからね。目が覚めちゃったよ。所で、みんなここにいるって事は、お見舞いにでも来てくれたのかな?」

 

そう言う私にかがみは頷いて

 

「まあね。私もあんたには一度、しょうがない理由ではあったけどお見舞いには来てもらってたからね。とりあえずは様子を見に来たって所よ。」

 

そう言うかがみに私は苦笑する。

 

そして、つかさ達も

 

「わたし達も来たよ。こなちゃん、早く元気になってね?」

「思ったよりは元気そうで安心したわ。無理はしないでね?」

「へえ?ちびっこは風邪にはあまり縁がないと思ってたけど、やっぱそうでもなかったんかなー?」

 

とそう言うのを聞いて、私は3人に

 

「あはは、ありがとう、つかさ、峰岸さん、みさきち。んー、ちょっと油断しちゃったみたいだね。」

 

そう答えると、私たちの話を聞いていた八坂さん達も

 

「日下部先輩の言うように、私も泉先輩は風邪には強そうだと思っていましたしね。ちょっとびっくりです。」

「確かに元気よね。だから、この目で確認するまでは信じられなかったわ。」

「夜更かしや深夜までネトゲなんかもしてるって聞いてますしね。意外と体力ある人だとは思いましたけど。」

「そうだね。なんだかんだでパワフルな所もあって、風邪で倒れてる所はイメージはしにくいよね。」

 

そう言うのを聞いて、私は再度苦笑しつつ

 

「うーん。いつもはこうじゃないんだけどねー・・・一体何がいけなかったのやら・・・」

 

そう答える私。

 

ゆーちゃん達も私を心配そうに見ながら

 

「こなたおねーちゃんは私とは違っていつも元気そうだったし、だから今朝もびっくりしたんだよ?」

「・・・確かに、意外な感じはしますね・・・でも、油断は禁物ですよ・・・?」

「うーん・・・こりゃあ、私も気をつけなきゃ、っスね。油断してたら風邪に襲われる事になりそうですし、そうしたら締め切りが・・・ああ、考えただけでも恐ろしいっス!」

「コンカイのコトはいいキョウクンだとオモって、スコシカラダをヤスめるといいデスよ!?」

「パーさんの言うとおりですよ?泉先輩。過信は禁物です。」

 

というゆーちゃん達の言葉に更に苦笑しつつ

 

「あはは、ゆーちゃんを驚かしちゃったよね。ごめんごめん。それに、みんなの言うように確かに過信はよくないよね。はいいんだけど、慶一君とみゆきさんだけがこの場にいないね?」

 

そう答えつつも、2人の姿が見えなかった事に疑問を抱いた私は皆にそう尋ねてみた。

 

私の質問にかがみが

 

「ああ、慶一くんは家に忘れ物があるって言って取りに帰ったわ。それと、みゆきもあんたと同じように風邪引いちゃったらしいのよね。だから、今日はみゆきも学校を珍しく休んでたわよ。」

 

と説明してくれたのを聞いて、私はみゆきさんが風邪に倒れた事に驚きつつも、慶一君がこの場に居ない事に少し寂しさを感じつつも

 

「そ、そうだったんだ。みゆきさんが風邪なんて珍しいよね。みゆきさんもあまり病気とかはしたのは見たことなかったし。」

 

そんな風に言う私に皆も、特にかがみ達は強く頷いていた。

 

そして、それぞれに私を元気づけてくれた皆も私の体調を気遣って、あまり長居はせずに引き上げて行った。

 

ゆーちゃんも一端部屋に戻り、着替えた後はみゆきさんのお見舞いへと出かけていったらしい。

 

おとーさんも編集者さんとの打ち合わせもあって外に出かけていたので、実質私は部屋に1人ぼっちとなっていた。

 

病気は心細くなる、という言葉があったが、あの喧騒がなくなってみると、私もそれを顕著に感じていた。

 

そんな状況に溜息をついていた私だったが、家にどうやらおとーさんが帰って来たようで、下で玄関が開く音とおとーさんの話し声が聞こえた。

 

けど、そこにもう1人の声が聞こえてきたのを、私は聞き逃さなかった。

 

その声は、私のお見舞いに遅れてやってきた慶一君だったのだ。

 

下でおとーさんといくつか言葉を交わし、慶一君が私の居る部屋へと上がってくるのを感じながら、私はお見舞いに来てくれた事を喜んでいた。

 

そして、部屋のドアをノックする音が聞こえ、その後に

 

「こなた、俺だ。入っていいか?」

 

という言葉が聞こえ、私はすぐさま

 

「うん。大丈夫だよ?遠慮しないで入って。」

 

そう返すと、慶一君は部屋へと入って来て、私の側まで来たのだった。

 

慶一side

 

みゆきに龍神家秘伝の丸薬を飲ませて、俺はこれをこなたにも持っていってやろうと思い、家を出てこなたの家までやって来た。

 

そして、家に着く所でそうじろうさんと出会い声をかけられた。

 

「やあ、森村君。ここで会うなんて思わなかったよ。今日はこなたに用事かい?」

 

と言うそうじろうさんに俺は頷くと

 

「はい。ゆたかから聞いたんですが、こなたも風邪を引いて倒れたとの事でしたのでお見舞いに、と思いまして。」

 

そう言うと、そうじろうさんは俺の言葉に難しい顔をしつつ

 

「お見舞いか・・・むう・・・まあ、いいだろう。少々納得が行かない所もあるが、こなたを気にかけてはくれたみたいだしな。」

 

そう言うそうじろうさんに俺は苦笑しつつ

 

「はは・・・まあ、こなたには俺も世話になってますからね。とりあえずお邪魔しても構いませんか?」

 

そう言う俺にそうじろうさんは俺に疑惑の視線を向けつつも

 

「・・・とりあえず入りなさい。ただし、おかしな真似だけは許さんからそのつもりでな。」

 

渋々、本当に渋々とそう言いながら、俺を家に迎え入れてくれるそうじろうさんに俺は、軽いため息をつきつつ

 

「わかっていますよ。それじゃ、お邪魔しますね。」

 

そう言って俺は家に上がらせてもらい、こなたの部屋へと上がって行った。

 

そして、部屋の前まで来た俺は部屋をノックしてこなたに入室の許可を取ると、俺はこなたに促されるままに部屋へと足を踏み入れたのだった。

 

俺は部屋を少し見回すと

 

「こなた。皆がお見舞いに来てなかったか?俺も一緒に行く予定だったけど忘れ物を思い出してな。皆には先に行ってもらっていたんだが、誰もいないみたいだな。」

 

そう言いつつこなたに皆の事を尋ねると、こなたは俺に

 

「さっきまでは確かにいたんだけどね。私に気を使ってくれたみたいで、すぐさま引き上げちゃったみたいなんだよ。慶一君、こっちに来る時に会わなかった?かがみたちが帰ってからそんなには経ってないんだけどさ。それはそうとみゆきさんも風邪引いちゃったんだって?かがみから聞いたよ。」

 

質問の答えを伝えつつも、そう聞いて来たこなたに俺も頷いて

 

「そうだったのか。どこかで行き違いになったっぽいなあ・・・まあ、みゆきに関しては俺も驚きだったが、とりあえずは学校も休ませたよ。」

 

そう答えると、こなたも少し困惑顔で

 

「うーん。私はともかく、みゆきさんも健康面では結構気を使ってて、風邪とか引いてるとこも見た事はなかったけどね。そう言えばさっきかがみから聞いたんだけど、何か忘れ物したって事みたいだよね?それってなんだったの?」

 

と、俺のした忘れ物の事について尋ねて来たので、俺はこなたの質問に頷いて

 

「ああ、それはこいつの事さ。」

 

そう言って俺は懐から、小瓶を取り出してこなたに見せる。

 

こなたは俺が見せた瓶をまじまじと見つめつつ

 

「これがそうなの?なんなの?これって。」

 

小瓶から目を離さずにそう聞いてくるこなたに、俺は頷きつつ

 

「これは龍神家に伝わる滋養強壮薬って奴さ。名を龍真丹(りゅうしんたん)というんだが、これは風邪にもかなりいいんでな。お前に飲ませてやろうと思って持って来たのさ。」

 

と、軽く説明をすると、こなたは感心したような顔で

 

「へー。龍神家って色々な物があるんだねー。でも、慶一君が私の事を気遣ってくれたのは嬉しいかなー。」

 

と、俺を見ながら嬉しそうな顔でそう言うこなたに俺は、照れて顔を赤くしつつ

 

「俺もお前には世話になった事もあるんだし、お前が元気になる手助けができるなら、って思ったからな。それに、こなたは元気な方がこなたらしいからな。」

 

と、そっぽを向きつつそう言うと、こなたもまた、そんな俺の言葉に照れているのか少し慌てながら

 

「あ、あはは。そう言ってくれるのは嬉しいかな?まあ、風邪に伏せるのも私らしくないっていうのは同意だね。それじゃ、早速それちょうだい?」

 

と、俺に龍真丹をねだってくるこなたに俺は頷きつつ、小瓶から薬を取り出してこなたに手渡しつつ、部屋にあった水差しをこなたに渡した。

 

こなたは俺から薬を受け取ると、俺が差し出した水差しで薬を飲み込んだ。

 

こなたが薬を飲んだ事を確認すると、俺はこなたに

 

「ん。それでいい。後はそのまま安静にしてれば明日には熱も引くはずだ。風邪なんてさっさと治してまた元気な顔を見せてくれよな。そうすりゃ俺も安心だしな。」

 

そう言うと、こなたは再び顔を赤らめて

 

「あ、あはは。そうだね。慶一君にそう頼まれたらさっさと風邪を治すしかないねー。でも、ありがとう、慶一君。お見舞いに来てくれて嬉しかったよ。」

 

そう言って御礼を言って来るこなたに、俺も照れつつ

 

「いいさ。この程度の事ならおやすい御用さ。ともあれ、長居してもあまりよくないからな。俺はそろそろ行くよ。こなた、くれぐれも今日は無茶はするんじゃないぞ?それじゃあな。」

 

そう言いおきつつ、俺が部屋を出ようとした時、こなたは俺に

 

「わ、わかってるよ。慶一君も気をつけて帰ってね。」

 

そう声をかけてくるこなたに俺は、片手を上げて応えつつ部屋を後にしたのだった。

 

こなたside

 

皆がお見舞いに来てくれたが、慶一君だけはこの場に居ず、皆が帰った後にやってきた。

 

そして、慶一君は私に風邪を治す為の特別な薬を持ってきてくれたので、早速私はそれを試させてもらったのだった。

 

慶一君が私を気にかけてくれた事が嬉しかったので、その事を感謝しつつ、慶一君を見送った後、ゆーちゃんが部屋へとやってきた。

 

「こなたおねーちゃん。具合はどう?」

 

と言うゆーちゃんの言葉をきっかけに、軽いやり取りが始まった。

 

「うん。慶一君が後から来てくれたんだけど、風邪薬を持ってきてくれてね。今飲んだとこだよ。」

「え?先輩、そんなものを持ってたんだ?」

「うん。なんか、丸薬みたいな感じだったけどさ、でも、これ結構効くっぽいね。飲んでから何か、元気が沸いてくる感じなんだよね。」

「へー。でも、風邪、これでよくなるといいねー。」

「そうだねー。ゆーちゃんも私からもらわないように気をつけなよー?前より元気になってきたとはいえ、まだまだゆーちゃんも油断できない事には変わりないんだからね?」

「わ、わかってるよー。とりあえず、お粥作ってくるから、こなたおねーちゃんはゆっくり休んでてね。それじゃ、行くねー・・・・は、は・・・はっくしゅん!」

「ゆ、ゆーちゃん?大丈夫?」

「あ、あはは。くしゃみがでちゃったよ。でも大丈夫だよ、こなたおねーちゃん。たまたまだからさ。」

「そ、それならいいんだけどさ・・・とにかく気をつけてねー。」

「うん。わかってるよ、おねーちゃん。それじゃ後でねー。」

 

そう言って部屋を出て行くゆーちゃんを見送る私だったけど、何やら前途に一抹の不安が残った私だった。

 

そして、次の日にこの不安が現実のものとなるなどと、今の私には考えも及ばなかったのだった。

 

かがみside

 

こなたのお見舞いに来てから、慶一くんが来るのを待とうと思ってはいたのだけど、こなたの風邪の状態が思った以上に悪そうだったので、慶一くんが来る前に私達はこなたの家から退散する事に決めた。

 

そして、とりあえずこなたのお見舞いを済ませて家に戻って来たのだった。

 

部屋で私はつかさと軽くやりとりをした。

 

「結局慶一くんが来る前に帰る事になっちゃったわね。」

「そうだね~。でも仕方ないよおねえちゃん。こなちゃんの具合、あまり良さそうじゃなかったしね~。」

「そうね。以前にもずる休みとかした事はあったけど、あの時は仮病もあったりしたから心配する程の酷さじゃなかったしね。今回のは流石に酷いのが見て取れたから長居しちゃ悪いな、って思ったしね。」

「結局けいちゃんと行き違いになったっぽいよね~?けいちゃん、ちゃんとこなちゃんのお見舞いに行ったかな?」

「まあ、大丈夫でしょ?慶一くんの事だからね。なんにしても、私達も注意しなきゃだめよ?つかさ。」

「わかってるよ~。わたしも風邪を引いた事なんてほとんどないし、だいじょうぶ・・・は・・・くしょん!!」

「・・・つかさ?」

「だ、だいじょうぶだよ~。たまたまくしゃみがでただけだもん。おねえちゃんも風邪引く事も結構あったんだからおねえちゃんも注意しなきゃ、だよ~?」

「そうね。とりあえず、お互いに注意はしましょ。」

 

そう言ってその場は終わったのだけど、次の日、私達の方は意外な展開を見せたのだった。

 

あやのside

 

泉ちゃんのお見舞いを済ませた私達は、軽いやりとりをしながら家へと帰っていた。

 

「それにしても泉ちゃんが風邪なんて驚きよね?」

「だよなー。あいつはなんだかんだで体力もありそうに見えたしなー。」

「体力といえばみさちゃんも運動部だものね。あまり風邪を引いてる姿は見た事はないけれど。」

「まあなー。一応は選手だし、体調管理には気を使ってるゼ?」

「それでもいつ今回の泉ちゃんのようになるかは分からないんだし、私たちも油断しないようにしましょ?」

「そうだなー。風邪引いてダウンして、やりたい事も出来ないなんてなんだかやだしなー・・・っくしゅん!!」

「み、みさちゃん?大丈夫?」

「ずず・・・だいじょうぶだって。ちょっとくしゃみが出ただけだしなー。あやのも心配しすぎだゼ?」

「そう?それならいいんだけど・・・」

 

そうみさちゃんに返しつつも、なんだか不吉な予感が拭えない私だったけど、この予感が当たる事になるなんて今の私には思いもしなかったのだった。

 

こうside

 

泉先輩のお見舞いを早々に切り上げて、私達は家を目指していたが、そんな中で私達は今回の件について軽いやりとりをしていた。

 

「とりあえず泉先輩の容態はあまりよくなさそうだったね。」

「そうね。あそこまで弱ってる先輩は珍しいんじゃないかしら?」

「・・・泉先輩の事も心配ですが、私達も注意しなきゃいけませんね・・・」

「そうデスね。コナタのコトもシンパイデスが、ワタシタチもチュウイしなくてはイケマセン!まあ、ワタシはカゼなどエンのないカラダですからネ!シンパイムヨウデス・・・クシュン!!」

「パティ、大丈夫なの?今くしゃみしてたけど。」

「風邪に縁がないとか豪語しておいてダウン、は勘弁よ?」

「・・・注意はするに越した事はないから、パトリシアさんも過信しすぎないように・・・」

「ワカッテマス!このテイド、ナンテコトないデスから!!」

 

そういって胸をドンと叩いて大きな自信を見せるパティだったが、次の日にはその自信も崩壊するなどと、本人をはじめ、私たちすらも予想が出来なかったのだった。

 

みくside

 

泉先輩のお見舞いを済ませて私たちはそれぞれの帰路へとついていた。

 

そんな中で、私とたまきといずみさんは帰る方向が同じだった事もあり、先程の事について軽くやりとりをしていたのだった。

 

「とりあえず泉先輩の様子を見てきたけど、結構具合悪そうだったね。私達も注意しないといけないかも。」

「そうだね。泉先輩の辛そうな顔を見ていたら、風邪にはかかりたくないな、って思ったしね。」

「風邪にやられたら原稿も書けなくなるし、こうちゃん先輩にもどやされるっスね・・・それはきついっス。」

「そうならない為にも、普段からの予防は心がけましょうよ。」

「それがいいかもだね。手洗いやうがいは徹底しなきゃだね。」

「後は、ちゃんと体を休ませたりして無理しすぎないようにとかね。」

「う、耳が痛いっスね。でも、先輩達の言う通り気をつけなきゃっスね。」

「田村さんは特に注意しないと危険かもよ・・・は・・・は・・・くしゅん!」

「い、いずみさん?大丈夫?」

「言ってる側からくしゃみしてるけど、風邪引いたとかじゃないよね?」

「委員長、私に忠告しておきながら風邪引いたとかじゃ本末転倒っスよ?」

「大丈夫ですよ。ちょっと鼻がむずむずしただけですから。帰ったらちゃんとうがいとかしてケアしますから問題なしですよ。それと、田村さん。わかってるから大丈夫。」

「そう?それならいいけど・・・」

「私も注意はした方が良さそうだね。」

「まあ、それはお互いに、って事で。」

「ですね。それじゃ、私はここで。」

 

そう言って笑い合いつつ、それぞれの家に向かって別れた私達だったのだけど、この時すでに、泉先輩から風邪をもらってしまっている人が居た事に後から気付くのだった。

 

慶一side

 

突然のみゆきとこなたの風邪騒動だったが、ひとまずは薬を飲ませて回復させるきっかけを作る事で収束するだろうと思っていた。

 

しかし、風邪の猛威はすでに他へと飛び火している事を、今の時点では気付く事すら出来ない俺だった。

 

翌日を堺に更に大事へと発展して行く事など知らないままに、俺は今回の2人の無事回復を祈っていたのだった。

 


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