らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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訪れる旋律達〜増える家族と自宅訪問

四重奏を絡めたアニ研の立ち上げからしばらくは俺達も日々を忙しく過ごしていた。

 

そんな中でこうの部員勧誘が上手く行き、こなたと俺とやまと以外の3人は新たにアニ研に入った部員と入れ替えで出て行くことになるのだった。

 

<それでも俺たちが顔を出しに行く日には付き合って来てくれていた。>

 

その中で多少の変化もあった。

 

こうが桜庭先生をいつのまにか先生とは呼ばずに”ひかるちゃん”と言うようになった事。

 

何時の間にかに生徒会会計の役職についていた事。

 

こうの好きなイベントで来年陵桜を受験する予定の漫画を書ける期待のアニ研の新人を見つけたと言う報告があった事等。

 

<ちなみにこなたもその子の書く作品は知っているようだったのでこなたも喜んでいたようだ。>

 

そして、俺の方も少し生活に変化があった。

 

一人暮らしの家に思いがけない家族がやってきたのだった。

 

学校の帰り道俺は、みんなと別れて一人自宅へと向かって歩いていた。

 

家の近くのゴミ置き場の辺りに差し掛かった時ゴミ置き場の方から子猫の鳴き声が聞こえてきた。

 

俺は鳴き声のする方へと足を向けて歩み寄ってみる。

 

すると、そこには二匹の子猫がダンボール箱に入れられて捨てられていたのだった。

 

俺は子猫達を見ながら

 

「お前らも親がいないのか・・・俺と一緒だな。よし、今日から俺の家に来るか?」

 

そう子猫達に語りかけると子猫の入ったダンボール箱を抱えて家へと連れ帰った。

 

一匹は真っ白の子猫でもう一匹は白と茶色の良くそこら辺でも見かける模様の猫だった。

 

俺は白い方をモモ、白と茶色の方をミィと名付けた。

 

そんな事があってから2.3日後の事いつものように皆で昼食を摂っているとこなたが突然俺に

 

「ねえねえ、慶一君の家ってどこにあるの?」

 

そう言って興味深そうな目で聞いてくる。

 

その言葉にかがみも俺のほうへと視線を向けつつ

 

「そうね、そういえば慶一くんがどこに住んでいるのかって聞いた事なかったわよね?」

 

そう言うかがみも興味があるようだ。

 

さらにつかさもそれを知りたいと思ったのか

 

「わたしも知りたいな。けいちゃんどこに住んでるの?」

 

そう、つかさが聞いて来た時、みゆきは俺がみゆきを助けた時の事を思い出したのか俺に

 

「実家は都内にあるんでしたよね?でも家は埼玉にあると言っていたのを覚えていますよ?」

 

と、みゆきがそう言うと、俺はそういえばそんな話をみゆきにしたな、と思って

 

「ああ、実家は確かに都内なんだが俺が実際に住んでいる家は埼玉県の久鬼市にある。」

 

そう俺が3人の質問に答えるとこなたは

 

「へえー?久鬼市か、意外と近いね。」

 

と、こなたが呟くように言いかがみも

 

「へえ、私の使ってる電車の沿線なのね。なら結構近いかも。」

 

顎に手をあてつつそう言うとつかさは

 

「近いのなら遊びに行ってみたいね、おねえちゃん。」

 

とかがみに言うとかがみは少し悩んだ後俺に

 

「うーん、そうねえ・・・ねえ、慶一くん、今度遊びに行ってもいいかしら?」

 

そう聞いて来た時、こなたが突然何か閃いたらしく、かがみを指差して

 

「かがみ、それだ!ねえ慶一君、今日は暇?」

 

そう言った後、俺のほうへと向き直ってこなたは俺の予定を聞いてきた。

 

そんなこなたの言葉を聞きつつ俺は、一応今日の予定がどうなっていたかを確認して

 

「いや、今日は部活もないし特にこれといった予定はないな。」

 

俺がそう言うとこなたはキラリと目を光らせて

 

「じゃあ、今日の帰りに慶一君の家に遊びに行ってもいい?」

 

と言うこなたの言葉に気圧されながら

 

「別に構わないが、あまり遅くならないようにしとけよ?」

 

そう言って俺がオーケーを出すと、かがみとつかさ、みゆきもそれに食いついてきた。

 

「ね、ねえ、慶一くん、私も一緒に行ってもいいかな?」

「わたしも行きたいな。けいちゃん、いい?」

「私も一度お邪魔させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

と言う3人の勢いに押された俺は思わず

 

「わ、わかった、わかった。遊びに来ていいからとりあえず落ち着いてくれ3人共。」

 

そう言って皆をなだめるのだった。

 

そして、放課後になり皆とともに校門に差し掛かった時、後ろから俺たちは知っている声の持ち主に声をかけられた。

 

「あ、慶一先輩と泉先輩達も、みんなおそろいでどこへ行くんですか?」

 

こうはそう俺たちに声をかけながら側までやって来た。

 

そしてその傍らにはやまとも居てやまとも俺達に声をかけてきた。

 

「ぞろぞろとみんな揃ってどこかへ遊びにでも行くのかしら?」

 

そんなふうに言う2人にこなたが俺に代わって返事を返していた。

 

「うん。これから慶一君の家に皆で遊びに行く所だったんだよ。八坂さんと永森さんも来る?」

 

そう言って、こなたはさらに2人の人間を仲間に加えるべく声をかけた。

 

こなたにそう提案を持ちかけられたこうは、やまとと顔を見合わせて考えていたようだったが

 

「いいですね、久しぶりに遊びにいってみようかな?」

 

と、こうは乗り気でそう言う。

 

それを見てたやまともちょっと考える仕草をした後

 

「私も行ってみようかしら・・・。」

 

そう言って来たので俺はもうどうにでもなれ、と言う感じで

 

「来るのなら好きにしろ、今更1人増えても2人増えてもあまり変わらないしな。」

 

俺がそう言うと2人とも笑顔になって

 

「「それじゃ、よろしく。」」

 

と、何だか嬉しそうに言うのを見てやれやれと軽いため息を心の中でつく俺だった。

 

その後、俺たち7人は一緒に駅まで談笑しながら向かっていた。

 

そしてしばらくして駅に着くと俺は皆を引き連れて下りのホームへと向かって行った。

 

俺がそっちに向かう事が変に思ったのか、こうが俺に声をかけてきた。

 

「あれ?先輩、先輩の家に向かうなら乗る電車のホームが違うんじゃ?」

 

と、こうがそう言うとやまともそれはおかしいと感じたのか

 

「先輩の家は確か都内じゃなかったの?私達の家にも近かったはずよね?」

 

そんな2人の言葉に他の4人も困惑顔で

 

「え?だって慶一君は自分の家は埼玉県の久鬼市にあるっていってたよ?」

 

こなたがそう言うとかがみとつかさ、みゆきも

 

「確かに慶一くんは久鬼市にあるっていってたわよね?」

「わたしもそうきいてるよ~?」

「私は都内にある慶一さんの実家の事はうかがっていましたが、やはり埼玉に家があるという事を慶一さん自身の口から聞いています。」

 

と、そう口々に言う4人と2人のやり取りを見ていた俺は心の中で(ああ、しまった!)と思いながらもこの場を治めるために皆に説明することにした。

 

「みんな、その事について説明するからちょっと聞いてくれ。中学時代までは俺は確かにこうとやまとの家の近くの実家で暮らしていた。だから、こうとやまとが俺の家が都内にあると思ったのは間違いじゃない。そして、こなたたちに言った久鬼市に家があるというのも本当だ。ただしその家は俺の本当の両親と住んでいた家なんだ、って事なんだけどな。」

 

そう俺が説明するとこうとやまとはかなり驚いたらしく俺に詰めよって

 

「え?どういう事ですか?先輩。本当の両親って・・・だって先輩は龍神(たつかみ)さんの家で育ったって聞いてましたよ?」

 

と、こうがそう言うとやまとも困惑の表情で俺を見ながら

 

「私もそう聞いていたわ。先輩の本当の両親の事なんて私たちは知らなかったわよ・・・?」

 

そう言って俺に詰め寄るこうとやまとの様子を見ていたこなたは腕組みをしながら

 

「ねえ、慶一君。私達にもわかるように説明してくれないかな?」

 

と、そう言うこなたの言葉に他の3人も頷いて俺に説明を求めた。

 

俺は今話すべき事なのだろうと判断し、自分の隠していた事をこなた達に話す事にした。

 

「わかった・・・。俺は確かに龍神(たつかみ)さんの所で育ったが、龍神さんは俺の本当の両親ではなく俺の育ての親、つまり俺はあの人達とは血のつながりを持たないただの他人さ。そして俺の本当の両親は俺が物心つく前に俺を親戚の下へ預けて2人きりで旅行にでたが、そこで不幸にも事故に巻き込まれて亡くなった。」

 

俺はここで一旦言葉を切る。

 

俺の説明を受けて6人は驚きの表情を見せていた。

 

とりあえずい俺は、そんな6人を見つつも話の続きをし始める。

 

「両親は亡くなったが、俺たち家族が住んでいた家だけはそのまま久鬼市に残り、俺はその後親戚中をたらいまわしにされ、最終的に龍神さんの所へと辿りついた。そんな俺を不憫に思ってくれたのか、龍神さんは俺を本当の息子のように可愛がってくれ、なおかつ俺が強くあるようにと武術も叩き込んでくれた。高校に入ってから俺は龍神さんへの負担を減らしたいと思い、まだ残されている俺の家族の住んでいた家に入り、一人暮らしをするようになった、という訳だ。」

 

俺が説明を終えるとこうとやまとは俺に怒りとも悲しみとも取れる瞳を向けて

 

「知りませんでした・・・先輩。どうして今まで黙っていたんですか?」

 

本当の事を話してもらえなかった事がショックだったのかその事を抗議してくるこう。

 

そしてやまとも瞳を伏せながら

 

「私達には話す意味もない、と思っていたの?酷いわよ、私達は先輩の親友と思っていたのに・・・。」

 

悲しそうな瞳を俺に向けてくるやまと俺は今の今までこの2人に事情を話してなかった事を後悔しながら

 

「・・・すまない2人とも。言い訳にしかならないかもしれないが、いつかは話そうと思っていたんだ。けれどここの所そういうのも忘れるほどに楽しい日々が続いていて話すことを忘れてしまっていた。だがこれだけは信じて欲しい。俺は2人に真実を話したくなかった訳じゃないんだという事を・・・。」

 

そう説明する俺だったが、それでも結局2人を傷つける結果になったなと心の中で思い、2人に頭を下げると

 

「俺はそんなつもりはなかったが俺を親友と言ってくれたお前らを裏切る事になったな、すまない、本当に。」

 

俺は心から2人に謝罪すると2人はうつむきながら考え込んでいたがやがて顔を上げてこちらを向くと

 

「話してくれなかった事は悲しかったですが、今事情を明かしてくれましたしもういいですよ。私は先輩を許します。先輩は私達に事情を説明する気があった、という事がわかりましたから。」

 

と、こうがまだ複雑そうな表情をしながらもそう言うと、やまともじっと俺を見据えて

 

「先輩が私達に話そうと思っていたと言う事が分かったし、もういいわ。私も先輩を許すわ。先輩が私達をないがしろにしようとした訳じゃないみたいだしね。」

 

そう言うやまとの言葉を聞いて事情を知ったこなたたちも声を上げた。

 

「そういう事だったんだね?慶一君も結構苦労してきたんだね。」

 

と、こなたが俺の方を見てそう言ってくる。

 

そしてかがみは少し考え込むような仕草をしつつ

 

「私達にはちゃんと両親がいる分、幸せなのかもしれないわね・・・。」

 

そう言って、自身の境遇が幸せなのかもしれないとしみじみと感じているらしかった。

 

つかさは俺の事情を知って涙目になって

 

「うう・・・けいちゃん、かわいそう・・・。」

 

と、今にも泣きそうになりながら言い、みゆきも目を伏せて

 

「そういう・・・事情でしたか。お話を聞いて何となく察しましたが嫌なものですね・・・そういう予想が当たってしまうというのは・・・。」

 

と、少し辛そうな顔でそう言っていた。

 

皆の言葉を聞きながら俺は今までの自分の境遇を思い返し一人だったあの頃を思い出しながらも、自分は今幸せなのだと自分自身に言い聞かせながら

 

「確かに、あの頃はな・・・だけど、俺には皆がいる。だから今は寂しくなんかないさ。こんな俺だけどさ、これからも皆と一緒に居たいと思ってるよ。」

 

俺がそう言うとみんなも俺の方をみて黙って頷いてくれた。

 

俺はそんな皆の気持ちが嬉しくて思わず涙ぐみそうになったが涙を見られるのが恥ずかしかったので少し上を向いて涙が零れ落ちるのをじっと耐えていた。

 

そうやっているうちに電車が来たので俺は皆につとめて明るい声で

 

「皆、電車来たぞ?乗り込もう。」

 

そう促すと皆も俺に笑顔を向けながら各々返事を返して電車に乗り込んでいった。

 

そうして電車に揺られ俺たちは久鬼市に到着した。

 

家へと向かう途中も皆と談笑をしながら歩いた。

 

さっきの嫌な空気を吹き飛ばす勢いで皆と話しながら・・・・・・

 

そしてしばらくして家に辿り着いた。

 

俺は皆に自宅を指差して

 

「俺が住んでる家はここだよ。」

 

と言うと皆は物珍しそうに俺の家を見ていた。

 

そして口々に自分の思ったことを口に出していた

 

「結構大きいねーちょっとびっくりだよ。」

「ずいぶん立派よね?それにこれだけ目立つなら場所も分かりやすいかも。」

「これならわたしも迷わずに来れるよ~?」

「かなり立派な家ですね。部屋も多そうです。」

「ここが先輩の本当の家なんだね?大分時間も経っているはずだけどずいぶんと綺麗だなあ。」

「ここが先輩の生まれた場所なのね?何だか不思議な感じね。」

 

そんな感想をこぼす皆に俺も頷きながら

 

「まあ俺も最初見たときは驚いたけどな。以外に部屋も広いしな。」

 

とりあえずみんなの言葉に軽い説明をしてから俺はとりあえず皆を家に上げるために声をかけた

 

「さあ、入った入った。」

 

そう言って家へ上がるように促すと皆も「お邪魔しまーす。」と言って上がってきた。

 

皆を居間へと連れて行く間こなたは家の中をきょろきょろと見回しながら俺に色々と質問をしてきていた。

 

「へえ、中も広くて綺麗だね。でも一人でこれ掃除するの大変じゃない?」

 

俺はこなたに背を向けたまま

 

「一応自分の部屋以外はそんなに汚れる事はないからな。まず自分の部屋をみて後は他の部屋をチェックしてちょっとひどい所だけ入念に掃除する、って感じでやってるよ。」

 

そう答えると、かがみも俺に質問してきた

 

「でも、それだけじゃ掃除できてない場所とか出るんじゃない?」

 

と言うかがみに俺は苦笑しながらも質問の答えを返して

 

「俺が行く部屋の範囲は広くないからな。そういう所以外はあまり汚れない。とはいえ、ホコリを落としたりはやってるよ?」

 

俺がそう言うとつかさも俺の言葉に感心しつつ

 

「へえー、意外となんとかなっちゃうものなんだねー。」

 

そう言うのを聞いて俺は頭をかきつつ

 

「まあ、なんとかね。とはいっても一人で暮らすにちょっと広すぎるかもな、この家は・・・。」

 

と、俺が少し遠い目で家の中を見ていると

 

「確かに今までは一人だったかもしれません。でもこれからは私達もここに来る事ができますよ。私達はお友達なのですから。」

 

そう言って俺を励ますような言葉をかけつつにっこりと笑うみゆきに俺も笑顔になって

 

「ああ、そうだな。皆に感謝ってとこか。」

 

俺がそういうと、こうとやまとも

 

「そうですよ?先輩。私達もいつでも遊びに来てあげますからね?寂しんぼの先輩。」

「一人が寂しいなんて先輩もまだまだ子供、なのかしらね?」

 

と、言う2人の言葉に顔を赤くする俺。

 

俺はそんなやまとこうに照れ隠しも兼ねてのデコピンの制裁をくらわせた。

 

「誰が寂しんぼだ!やまと!お前も何を言ってる!」

 

と、俺が強い口調で言うと、2人は額を押さえながら

 

「痛いです・・・すいませんまた調子に乗りました。」

「痛い・・・ごめんなさい、先輩。」

 

そう言いながら涙目のこうとやまとは俺に怯えていた。

 

それを見ながら笑う四重奏。

 

そんな折、こなたがふいに2階を見上げて

 

「慶一君の部屋って2階にあるの?」

 

と聞いてきたこなたに少し嫌な予感を覚えたが、とりあえず質問に答える事にした。

 

「まあな、一応釘さしておくが、2階には行くなよ?」

 

俺がそう忠告するが、こなたは目をキラリと輝かせ2階にダッシュしようとしたので俺は慌ててこなたを止めて追撃のデコピンを食らわせた。

 

こなたは額を押さえて涙目になり

 

「すんませんした・・・。」

 

と謝った。

 

その後、さらにかがみにも説教を食らっていたこなたを尻目に居間へと辿り付くと、2匹の子猫が俺達を出迎えた。

 

こなたはその2匹を見て瞳を輝かせて

 

「わあー、かわいいね。なんて名前?」

 

そう、こなたが俺に聞いてきたので俺は猫の名前を教える。

 

「白いのがモモで、白と茶色の奴がミィだ」

 

かがみも子猫達を見てニコニコとしながら

 

「うーん、子猫の可愛さは反則よね。慶一くん、抱いてみてもいい?」

 

そう言いながらすごくいい笑顔なかがみに俺は頷くと

 

「ああ、構わないぞ?」

 

と、かがみに言うと、つかさも子猫の可愛さに興奮しながら

 

「とってもかわいいよ~。もふもふしたいな~。わたしにもだっこさせて~?」

 

そう言ってきたので、つかさにも

 

「構わないけど、まだ子猫だから無茶はさせないようにな?」

 

そう言って俺は、つかさの願いを聞き入れる事にした。

 

みゆきも子猫達を見つめながら柔らかな笑顔で

 

「家では動物は飼っていませんが、こういうのを見ると飼いたくなってしまいますね。」

 

こちらも子猫の可愛さにやられたようだ。

 

こうとやまともにこにことしながら

 

「可愛いですねー。拾ったんですか?この子達。」

 

こうが聞いてきたので俺はこうに

 

「ああ、近くのゴミ捨て場に捨てられていたのを拾ってきたんだ。」

 

そう応える俺。

 

やまとも目を細めて

 

「私も猫飼いたいかも・・・。」

 

と普段のやまとからは考えられない程に目を輝かせているのが見て取れた。

 

俺はそんな2人に

 

「お前らのとこじゃ飼えないのか?」

 

と聞いてみると、こうは苦笑しながら

 

「親がアレルギー持ちでして・・・。」

 

と残念そうな顔をするこう。

 

やまとも表情を曇らせて

 

「うちも父が苦手なのよね・・・。」

 

と悲しそうにそう言った。

 

そんな2人に俺も苦笑しながら

 

「ああ、それは確かに厳しいな・・・」

 

と2人を憐れむように言う。

 

俺は皆にリビングでくつろいで居てくれと言った後

 

「お茶の用意してくるから待っててくれ。」

 

と伝えてキッチンへ向かおうとした時つかさが俺に

 

「けいちゃん、わたしも手伝うよ。」

 

と言って来たので

 

「いいのか?お客なんだしわざわざそんな事しなくてもいいんだぞ?」

 

と俺が言うとつかさは首を左右にフルフルと振り

 

「わたしがやりたいからいいの。だから手伝わせて?」

 

と言ってきたつかさの頼みを無下に出来なかった俺は、つかさに手伝いを頼む事にした。

 

「じゃあ、他の皆はちょっと猫の遊び相手になってやってくれ。」

 

俺がそう言うとみんなは「オッケー」と返事をして猫と戯れはじめた。

 

それを見届けてその間に俺とつかさはお茶の準備を始めた。

 

「つかさ、そこにお茶菓子入っているから、そこの棚に入ってる皿に入れて持って行ってくれ。」

 

俺がつかさに促すとつかさもなれない手つきではあったが皿を取り出して

 

「わかったよ~。これでよしっと。それじゃ先に運ぶね~?」

 

そう言ってお茶菓子を持って居間へ向かおうとするつかさに

 

「つかさ、くれぐれも転ぶなよー?」

 

と、俺が忠告の為に声をかけるとつかさは困ったような声で

 

「大丈夫だよ~。というか、けいちゃんわたしがどこでも転ぶ人だと思ってない~?」

 

と少し不機嫌そうに言うつかさに俺は苦笑しつつ

 

「思ってないけど心配はしてるぞ?」

 

と返事するとつかさは落ち込みつつ

 

「ううう、どんだけ~・・・。」

 

と言いながらキッチンを後にした。

 

俺も入れたての紅茶を持ってキッチンをでて居間へ戻っていく。

 

「皆お待たせ。紅茶だけど飲んでくれ。」

 

と、みなの前に紅茶を並べていく。

 

皆にそれぞれ行き渡ると、皆はタイミングを見計らいつついただきますと言い、紅茶とお茶菓子に手をつけ始めた。

 

「このクッキーも美味しいね、つかさの作ったのも最高だけどさ。」

 

と言うこなたの言葉に俺は

 

「つかさのクッキーか、俺も食べてみたいかも。」

 

と、そう言うとつかさは顔を赤くして

 

「今度作ってきてあげようか?」

 

と、そう言って来たのを受けて俺は少し遠慮がちに

 

「いいのか?なら頼むよ。」

 

と、言うと、つかさはますます顔を赤くして小さく「うん」と頷いた。

 

その様子をみていたこなたは少し不機嫌になりながらも

 

「むう、ならば慶一くんのお弁当を私が作ってしんぜよう。お菓子作りではつかさには敵わないしね。」

 

と、何やらこなたのつかさに対しての対抗意識らしきものを感じつつも突然の爆弾発言に戸惑う俺は、そこまでしてもらうのは流石に悪いと思って

 

「こ、こなた?流石にそこまでしてもらうのは気が引けるんだが・・・。」

 

と、俺がそういうとこなたはニマニマとした笑顔を向けながら

 

「遠慮しなくていいよー?それに私の料理の腕前を見せられるチャンスだしね。」

 

と、言うこなたの言葉に俺は、数日前の昼休みにこなたが料理できるという事に半信半疑だった事を思い出し

 

「その証明の為、っていうのならこなたの腕を見せてもらうのもいいか。」

 

俺がそう答えると、こなたも何故か少し顔を赤くして

 

「ま、まあ、期待しててよ。」

 

と、どこか余裕のなくなった顔で言った。

 

かがみside

 

慶一くんの家へとお邪魔して猫と戯れたり、お茶をご馳走になったりと色々やっていた私達だったが、こなたのつかさのクッキー発言をきっかけにつかさは慶一くんに今度クッキーを焼いてきてあげると言い、こなたもまた、つかさに対抗意識を燃やしたのか、慶一くんにお弁当を作ってあげると言っていた。

 

つかさやこなたの提案を受けて2人の料理を楽しみにさせてもらうと言った慶一くんを見て、私はなんとなくそんな2人を羨ましく思ったのだった。

 

私は自分の料理の腕というものを知っていたから、2人に対抗できない自分に悔しい思いを感じ

 

「私はそういうの難しいもんな・・・こなたやつかさが少しうらやましい・・・。」

 

慶一くんにも聞こえないようにそう呟きつつ、落胆するのだった。

 

そして、何気にみゆきの方へと視線を向けると、みゆきもまた私と同じように家事が苦手と言っていた事を思い出す。

 

そんなみゆきもまた、やはり少し落ち込んだような表情で

 

「私ももっとがんばりませんと・・・。」

 

とそう呟くのが聞こえたのだった。

 

そうしているうちに慶一くんがこちらへと困惑したような表情で視線を向けているのに気付いたが、そんな慶一くんを見て私とみゆきはつい、大きな溜息をつくのだった。

 

やまとside

 

先輩の本当の家へとやってきて私達は猫と遊んだりお茶を飲んだりと色々やっていた。

 

そして、お茶の席で泉先輩とつかさ先輩が慶一先輩にそれぞれに料理の腕を披露するという話になり、それを聞いていた私は自身の料理の腕がそれ程でもない事を改めて思うと、その事にいくらか落ち込む気持になるのだった。

 

私は慶一先輩を見ながら

 

「何か他の事でがんばってみるべきかしら・・・?」

 

つい呟いたその言葉にはっとなって密かに顔を赤くしていた。

 

そんな自分の状態を誤魔化す為にふと、こうの方へ視線を向けると、こうもまた先輩達の会話に羨ましさを感じたのか

 

「私も先輩に何か作ってみようかな?」

 

そう呟くのを聞いたのだった。

 

慶一先輩はそんな私達の気持に気付かずにただ、困惑の表情を私達にも向けていたが、何故かその表情は私を少しだけいらつかせたのだった。

 

慶一side

 

お茶を飲んでいる時にこなたやつかさの提案を受けた俺だったが、なんとなく照れくさくなった俺はかがみ達の方へと視線を巡らせる。

 

すると、かがみ達は俺の方を見つつも何やら大きな溜息をついているのが目に入り、俺はそんなかがみ達に困惑の表情を向ける事しかできなかった。

 

その時俺は、こなたとつかさ以外の声を聞き取れなかったが、何故かかがみ達が雰囲気的に落ち込んでるっぽいな、という事だけはなんとなく分かったものの、他にどうしたらいいかわからず、俺もまた大きく溜息をついたのだった。

 

そんな一幕もあったが、その後も皆と楽しく談笑したり、騒いだり、ゲームで盛り上がったりして今回の俺の自宅への訪問は終わったのだった。

 

皆もそれなりに楽しんでくれたらしく、また遊びに来たいと俺に伝えてその日は解散となった。

 

その時の俺は、この家にまた、皆がやって来てくれるかもしれないという予感を覚える。

 

何故か俺は、その予感は現実になるかもしれないという確信を持った。

 

俺はその事に期待を感じつつ、その日の夜には良い夢を見てぐっすり眠る事が出来たのだった。

 

少しずつ変化していく日常、そして新たに増えた家族と、俺の周りで楽しげな音楽を奏でる旋律、俺の日常は、この旋律と共にあるのだと改めて思う、そんなきっかけの日だった。

 

 

 


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