らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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楽しげな旋律~みさお達との約束、思いがけない幸運の招待状、2日目第4話、混沌のお化け屋敷編、前編~

松嶋プレイワールドに来て2日目、俺達は絶叫マシンを楽しむ。

 

乗る回数等で少々疲れつつも、とりあえずは3種のマシンに乗り終えた俺達だったが、その3種目のマシンに於いて、こなたが俺を盾にして水を防ぐという作戦を敢行した。

 

マシンを降りた俺は、そんなこなたに軽くお仕置きを宣言<そう言いつつ、冗談で済ましたのだが>その後、必死に謝るこなたにお仕置き宣言の種明かしをしつつ、かつ、ここに来る前に交わした約束の実行で勘弁してもらおうと持ちかける俺に、こなたは何やら怪しげな笑みを浮かべつつ、俺の手を引いて次のアトラクションへ向けて走り出したのだった。

 

こなたと俺が動き出したのを見て、慌てて俺達を追いかけて動き出す皆をちらりと見ながらも俺は、こなたに

 

「なあ、こなた。これからどこへ俺を連れて行くつもりなんだ?」

 

と、そう尋ねると、こなたは軽くウインクをしながら

 

「ふふふ。こういう場所では定番とも言えるような場所だよ。ほら、見えてきた。」

 

そう言って、前方を指差すこなたの先に視線を移すと、そこに見えたのは『ゴーストマンション』という大きな看板が掲げられているアトラクションだった。

 

それを確認して、そのすぐ後に俺達は建物の前で足を止めて、皆が追いついて来るのを待ちながら俺はこなたに

 

「・・・なるほど、遊園地のある意味定番ね・・・。」

 

そう言って俺は、ドヤ顔で俺に視線を向けているこなたに軽いため息をつきながらそう言うと、こなたはそんな俺の言葉に頷きながら

 

「そうそう。カップルとかで楽しんだりもするある意味胸ワクワクするような、そして、背筋がゾクゾクするようなそんなアトラクションなのだよ。遊園地に来たなら一度は必ず立ち寄る場所と言っても過言ではないと思うよー?」

 

と、得意げに説明するこなたに俺は、再度軽いため息をついていたのだった。

 

そして、そんな俺達にかがみ達もようやく追いついて来たようで、少々息を切らせながら

 

「はあ・・・はあ・・・ようやく追いついたわよ。まったく・・・動くつもりなら、こっちにもちゃんと動くって声かけなさいよね。」

「はあ・・・はあ・・・はうう・・・ようやく追いついたよ~・・・」

「・・・ふう、急に走り出されたので、慌てて追いかけましたが、何とか追いつけたのでほっとしました。」

「ふふ、突然の行動力はみさちゃんにもひけはとっていないわね。なんだかみさちゃんが2人になったみたいね。」

「えー?そっかなー・・・とはいえ、体使う事なら私だってちびっこには負けねえぞ?ところで、ここはなんなんだ?」

 

と、最後に言ったみさおの言葉にこなたは、ニヤリと不敵な笑みを見せると

 

「みさきち、ここはいわゆるお化け屋敷だよ。遊園地に来たら一度は入ってみたくなるアトラクションってやつだよー。」

 

と言うこなたの説明に、みさお以外の4人は少々怯えたような表情を見せていた。

 

そして、さらに追いついてきた2年生組みや1年生組も

 

「ふう、ようやく追いついた・・・お?ここってもしかして・・・」

「突然走り出すからこっちも慌てたわよ・・・ってこれってまさか・・・」

「泉先輩って以外と体力あるみたいだね・・・あ、ここは確か・・・」

「確かにあの行動力は見習うべき所はありそうだよね・・・ん?こう、ぶっさん、ここってパンフレット見て、行ってみようって相談してた所だよね?」

 

と口々に話していたが、最後にそう言うたまきにこうは頷いて

 

「そうそう。ここがあの時に相談してた場所だよ。って、どうしたのさ、やまと。」

 

と、建物を凝視しつつ、怯えたような表情を見せるやまとにこうは、不思議そうな顔をしつつそう尋ねると、そんなこうの言葉にびくりと反応しつつ

 

「え!?あ、いや、その・・・ベ、別に、な、なんでもないわよ!」

 

と言うやまとのリアクションを見て、こうはニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべると

 

「・・・そういえばやまとはこういうのって結構苦手だったよねえ?という事は・・・怖いのかなー?」

 

と、まさにやまとの反発を誘導するかのような物言いに、案の定やまとは引っかかり

 

「な!?何を言ってるのよ!!こ、怖いなんてそんな事ある訳ないじゃない!!だ、大体こんなものは作り物なんだから、別に怖くなんてないわよ!!」

 

と、反論するやまとにこうはしてやったりな表情で

 

「ふーん?それじゃやまともここに入るって事でいいんだよね?だって怖くないって言ってたしねー。」

 

と言うこうの言葉に途端にやまとは慌てつつ

 

「え!?あ、えっと・・・わ、わかったわよ!!入ればいいんでしょ!?入ればっ!!」

 

と、半ばやけくそ気味にキレているやまととこうのそんな様子を見ながら俺は、溜息を1つつきながら心の中で

 

(あーあ・・・またこうに乗せられてるてるな・・・まったく、やまとはよくこうに引っ掛けられるよな・・・やまとも変なプライドあるから、今更後には引けないだろうし・・・まったく、しょうがないなあ・・・)

 

と、過去の2人のやりとりを思い出しつつ俺は、そう考えながら思案にふけっていたが、そこに少し遅れて1年生組も到着したらしく、俺はひとまず思考を切ると、ゆたか達の方へと視線を巡らせたのだった。

 

ゆたか達の方へと視線を巡らせると、5人は俺の側までやってきて乱れた息を整えながら

 

「はあ・・・はあ・・・な、何とか追いつけました・・・急に走り出されたからあわてちゃいましたよ。」

「・・・大丈夫?ゆたか・・・。」

「うん。ちょっと息切れしたけど大丈夫だよ、みなみちゃん。」

「ふう・・・泉先輩の目的地に何とか着けたみたいっスね・・・って、ここってもしかして・・・。」

「ダラシナイデスよ?ヒヨリン。エーット・・・オウ!ここはゴーストハウスではアリマセンか!ここはワタシもパンフレットでチェックしたトキキョウミをモッタバショですネ!コナタ、なかなかワカッテルじゃないデスか!」

「えー・・・パーさんこういうの怖くないの?私は結構苦手なんだけどなあ・・・。」

 

と言う5人の会話を聞きながら俺は

 

「ゆたか達もようやくたどり着いたみたいだな。パティはこういうのって平気なのか?」

 

そう尋ねると、パティは満面の笑顔を俺に向けつつ

 

「サスガにホンモノはニガテデスが、ツクリモノであるアトラクションならタノしめますネ!」

 

と、親指をビシッと立てながら俺にそう言うパティに俺は苦笑しつつ

 

「なるほどな。なら、精々楽しんで行きますかね。とはいえ、こういうのが苦手、って言う奴もいるようだけど・・・。」

 

とパティに答えながら、俺は軽く回りを見回して見てみたが、以外とこのアトラクションに怯えの表情を見せている連中の姿も見えたので、さて、どうなるやら、と心の中で考えている俺だった。

 

そうこうしているうちにこなたが俺達に

 

「とりあえずみんなも、これからここに入るって事は理解してくれたと思うけどさ、私はここで慶一君とした約束を使わせてもらおうって思ってるよ。」

 

そんなこなたの言葉にかがみは首を傾げながら

 

「約束はわかったけど、どうするつもりなのよ?」

 

と、こなたに尋ねると、こなたはいつものような細い目をしながら

 

「もちろん!2人っきり、ペアで周ってもらうつもりだよ!!」

 

と力強く宣言したのを受けて、他の皆も一様に驚いていた。

 

かく言う俺もこなたのその言葉に驚きつつ

 

「お、おい、待て!そんな話は聞いてないぞ!?」

 

と言うと、こなたはチッチッチと指を振って

 

「そりゃーね。今話をした訳だしね。でもさ、私達の言う事を聞いてくれるって慶一君が言ってくれたんだし、別に問題はないでしょー?」

 

と言うこなたに俺は困惑を隠せないままに

 

「そ、それはそうだけど・・・でも、いいのか?そんな事で。」

 

そうこなたに尋ねると、こなたは頷きながら

 

「うん。それに、私だけじゃないからね。私以外にも希望者がいるなら、その希望者とも一緒に周れば問題なしだよ?」

 

その言葉にすかさず反応するかがみ達から声があがる。

 

「そういう事なら私もお願いしてもいいわよね?<慶一くんと2人きり、これはチャンスね・・・>」

「わたしもいいかな?<けいちゃんと一緒なら大丈夫かもしれないし・・・>」

「私もいいですか?慶一さん<慶一さんと2人・・・憧れのシチュエーションですね・・・>」

「なら、私もだ!あやのと一緒だけどいいよな?慶一<あの時慶一を元気づけたのと一緒のメンバーだけど、いいよな?あんときにした約束でもあるんだしな。それに、あやのだけ留守番ってのもなあ・・・それに、なんか慶一と2人きりってのも照れくせえし・・・>」

「え?いいの?みさちゃん。私も一緒でも?」

「おう。このままあやのだけ留守番ってのもなんだしな。楽しむなら一緒に楽しみてえし。」

「わかったわ。慶ちゃん、そういう事なんだけど、それでもいいかな?」

 

と、3年生組から声がかかる。

 

俺は軽いため息をつきつつも

 

「了解だ。男が一度口にした事だし、今更曲げられないしな。それと、あやの。みさおがそう願うって言うならそれで構わないさ。楽しめるかどうかは分からないが、楽しむとしようぜ?」

 

その言葉にこなた達も満足そうに頷き、みさおとあやのも嬉しそうな顔をして頷いてくれたのだった。

 

そんな中、2年生組や1年生組からも声があがる。

 

「先輩、その・・・私もいいかしら。<折角のチャンスなら、怖いけど乗ってみるべきよね・・・>」

 

と言うやまとの言葉を聞いたこうとみくとたまきの3人は、やまとに気付かれないように何やら3人で軽く話し合いをしてから俺に

 

「なら、やまとは先輩にお願いしつつ、私達も先輩とは行かせてもらいますけど、その時には私と山さんとぶっさんの3人でお願いしますね。」

 

と、そう言ってきた。

 

それを聞いたやまとは、途端に顔を赤くして慌てながら

 

「ちょ、ちょっと、こう。その組み合わせってどういう事なのよ?ベ、別に私は・・・」

 

と、しどろもどろに答えるやまとに3人は更にニヤニヤとやまとに視線を向けつつ

 

「いいっていいって。私達はやまとの邪魔はしないから楽しんできなよー。」

「そうそう。折角のチャンスなんだし。」

「後で結果報告だけしてくれればいいよー?」

 

と言う3人にやまとは、更に顔を真っ赤にして黙り込んでしまったのだった。

 

俺は、そんな4人のやりとりを見ながら、こういう時にどんな顔をすればいいのだろうな?と心の中で考えながら軽く溜息をついていたのだった。

 

そして、1年生組も俺に声をかけてきた。

 

「あの、先輩。私達もちょっと怖いので、私たち5人と一緒に行ってもらってもいいですか?」

「・・・できれば、お願いしたいです・・・私も少し苦手で・・・先輩がいてくれれば心強いですし・・・。」

「私からもお願いしたいっス。こういう中に男の人がいてくれれば心強いっスから。」

「ワタシはケイイチとフタリきりでもよかったのデスが、ユタカタチのコエもムシはデキないデスからネ。」

「あはは・・・私はただ単に苦手だからと言うのが理由なんですけど、いいですよね?先輩。」

 

と言う5人に俺は頷きながら

 

「わかった。ゆたか達にも俺が付き合おう。ところでこなた。周る順番ってのは決まってるのか?」

 

と、俺達のやりとりを横目に何やらかがみ達と話し合いをしているこなたに声をかけてみると、こなたは俺の方に顔を向けながら

 

「かがみ達との話し合いは済んだ所だよ。後はゆーちゃん達とも話し合うからもうちょっと待っててくれるかな?」

 

と言うこなたに俺は頷いて

 

「わかった。それじゃ話し合いが済んだら声をかけてくれ。」

 

そう言うと、こなたも頷いた後、他の2年生組や1年生組を呼んで何やら話し合いを始めたのだった。

 

俺は、そんなこなた達を横目に、今一度自分が持ってきていたランドのパンフレットを開いて、このアトラクションについての予習をするのだった。

 

一通りの予習が済んだ頃、ようやく話し合いを終えたこなたが俺に声をかけてきた。

 

「お待たせー慶一くん。話し合いが終わったよ。それじゃ今からその結果を教えるね。」

 

その言葉に俺は頷きで答え、その俺にこなたも頷きで返しつつ、俺に話し合いの結果を話しはじめた。

 

「うん。それじゃ、まず最初はゆーちゃん達1年生組について周るのが1番最初ね?そして、次は永森さん以外の2年生メンバーと周ってもらって、その後にみさきちと峰岸さんで、その後は永森さん、かがみ、つかさ、みゆきさん、そして最後に私、という事でよろしくー。」

 

そう言って結果を告げるこなたに俺は頷きつつも、少し疑問に思った事があったので、それを尋ねてみた。

 

「ふむ。順番はわかった、はいいんだが、こなたが1番最後ってのも珍しいよな?何か理由でもあるのか?」

 

そう尋ねると、こなたは俺の疑問に少し苦笑しつつ

 

「特に意味があるって訳じゃないけどね。まあ、私たちの話し合いの結果、そうなっただけの事だから。まさかここまで徹底的にじゃんけんに負ける事になるとは思わなかったけどね・・・。」

 

と、話し合いの結果そうなっただけ、と言った後の部分が声が小さすぎて聞き取れなかったけれど、とりあえずは事情を理解した俺だった。

 

そんな訳で、早速第一陣のスタートと相成るのだった。

 

「先輩、よろしくお願いしますね。」

「・・・よろしくお願いします・・・」

「先輩、頼りにしてるっスよ?」

「ケイイチ!サッソクイキマショウ!!」

「こ、怖いけど頑張ります。」

 

と言う5人に俺は頷きつつ

 

「了解だ。それじゃ早速スタートと行くか。」

 

俺の言葉にコクリと頷き、おそるおそるアトラクションへと入って行く俺達。

 

ここでもかなりのドタバタが巻き起こる、そんな予感を密かに感じる俺だったが、とにかく動く事にした。

 

このアトラクションは歩いて周って行くタイプで、ちょっと変わっているな、と思った所は、コース上にあるいくつかの部屋を周り、その部屋に入ると一時的に部屋に鍵がかけられるのだが、その部屋に設置してあるスタンプをチェックポイント票に押印する事でそれを確認したスタッフが部屋の開錠をしてくれ、次のチェックポイントへと向かうことができるというものだった。

 

そうして、ゴールまでに必要なスタンプを集め、最終的に最後の扉を開く為にはそのスタンプが全部埋まっているチェックシートを最後の部屋のスタッフに提示する事がこのお化け屋敷から出る方法となっている所だった。

 

ただ、怖くて無理、と思った場合、部屋にいるスタッフにリタイアの声をかけることで、途中で出てくる事も可能なので、最終的にお化け屋敷から出る方法は2通りになる。

 

どっちを選ぶににしても、そこは俺達次第となるようだった。

 

俺は、入り口に入ってすぐの所でゆたか達にこの事を簡単に説明し、お化け屋敷を出る最後の鍵となりうるスタンプシートを入り口のスタッフから受け取って、ゆたか達に出発の声をかけるのだった。

 

「ゆたか、みんなも。とりあえずスタンプシートはもらったからそろそろ動くぞ?ここのお化け屋敷がどの程度かはわからないけど、なるべくリタイアせずに行ければいいけどな。」

 

そう声をかけたのだが、ゆたか達は緊張に顔をこわばらせつつも、スタッフからスタンプシートを受け取って

 

「そ、そうですね。私も折角なので、このスタンプシートを全部埋めて帰りたいです。皆でここに来た記念にもなりますよね?これも。」

「・・・私も怖いですが、頑張ります・・・先輩が居てくれるならリタイアせずにいけそうですから・・・」

「わ、私もがんばるっス。み、皆と一緒だから怖くないっスよ?ええ、怖くないっス・・・」

「ヒヨリ?セットクリョクないですヨ?さあて、二ポンのゴーストハウスのレベルというものをミセテモライマショウ!」

「パ、パーさんは凄いテンションだね・・・私はそこまでテンションあげれないよ・・・はあ・・・」

 

最後にそう言ういずみに、他の3人もうんうんと頷いていたが、当のパティは得意げに胸を張って不敵な笑みを見せていた。

 

俺はそんなパティに苦笑しつつ、改めて皆に出発しようと声をかけ、俺達は早速動き出したのだった。

 

ゆっくりと歩を進める俺達。

 

だが、すぐさまパティ以外の4人は俺にぴったりと寄り添って動く事となった。

 

そして、順路を通って最初の部屋へと足を踏み入れる俺達。

 

部屋の中を見回してみると、不気味な小物や調度品、絵画などが飾られ、いかにも部屋の中で惨劇がありましたよ、と言わんばかりの内装となっていた。

 

何かしら仕掛けがありそうだと思っていた俺だったが、案の定、絵画や調度品、家具などに来た人を驚かせる仕掛けがあった。

 

それは、音声による無気味な言葉だったり、絵が変わって見える仕掛けだったり、家具から人型の人形が飛び出して来たり等だった。

 

それらに俺とパティ以外の4人は揃って悲鳴を上げる。

 

「きゃああああ!!」

「・・・ひぃっ・・・!!」

「あわわわっ!」

「いやああああー!」

 

と、それぞれに悲鳴をあげながら俺にしがみついてくる4人。

 

俺は、そんな4人を受け止めるだけで精一杯になっていた。

 

そんな俺の様子を見ながらパティは、俺の横でニヤニヤと人をからかうような笑みを浮かべているのを見て、俺は心の中で<やれやれ・・・>と思っていたのだった。

 

とりあえず、しがみつく4人をなだめつつ、その部屋のスタンプをゲットして、俺達は次の部屋を目指して行動を再開させた。

 

各部屋もまた、こういうものになれていない人間を驚かせるには充分なほどの仕掛けがなされていて、部屋に入るなり悲鳴を上げて俺にしがみつく4人を事あるごとに受け止める事となった。

 

だが、そのうちにパティがどさくさ紛れにその4人に加わっている事に何部屋か移動してる時に気付いた俺は、次の部屋に入った時に再びどさくさ紛れに俺にしがみつくパティをじと目で見ながら

 

「・・・おい、パティ。お前、こういうのはあまり苦手そうじゃなかったはずじゃないのか?ここに来る何部屋前かあたりからどさくさまぎれに抱きついてるよな?お前。少し前からそういう事をし出した理由ってやつを教えてもらおうじゃないか。」

 

とパティに少し前からの行動について問いただすと、パティはしれっと

 

「コウイウトキのコウイウコウドウはこのシチュエーションならオヤクソクですからネ!だからワタシはそのオヤクソクをジッコウしたまでデスよ!ケイイチはこういうのはウレシクなかったデスか?」

 

と親指をビシッとたてながら力説するパティに俺は、軽く溜息をついて苦笑しつつ

 

「そりゃ、まあ、男としては嬉しくない訳じゃないが・・・って何を言わせる!」

 

と、パティの口車につい乗ってしまった俺は、思わず自分の言った事に顔を赤らめつつもパティにツッコミをいれたのだった。

 

パティは、そんな俺の言葉に何やら企むような悪い笑みを浮かべつつ、この部屋のスタンプを押しに行ったのを俺は、恐怖で俺にひっついている4人を伴いつつ見送っていた。

 

そして、俺達もスタンプをゲットして、最後の部屋へと向かうのだった。

 

しかし、この最後の部屋で1つだけ問題が起きてしまった。

 

今まで恐怖に耐えながら頑張って歩いて来たゆたかが、ついに恐怖と疲労で気を失ってしまったのだ。

 

「お、おい!ゆたか、大丈夫か!?」

「・・・ゆたか!ゆたか・・・しっかり・・・」

「ゆーちゃん!?大丈夫っスか?しっかりするっス!」

「小早川さん!小早川さん!!どうしよう・・・」

「ユタカ!シッカリするデス!」

 

と、俺達は気を失ってしまったゆたかに声をかけたが、ゆたかが目を覚ます気配がない。

 

俺は少し考えてから

 

「・・・仕方ないな。ゆたかは俺が連れて行く。いずみ、ゆたかのチェックシートを持って最後の部屋のスタンプを押してやってくれ。みなみ、アトラクションから出たら、ゆたかの介抱は任せるからよろしくな。日より、パティ。それじゃ最後の部屋を出て出口へと向かうぞ?」

 

そう声をかけると、少し心配そうなみなみや他の皆もとりあえず頷いて、俺達は最後の部屋を出たのだった。

 

そして、俺はゆたかをお姫様抱っこで抱き抱えて、アトラクションを後にした。

 

出口で俺達を待っていたこなた達は、俺達が出口から出てくるの見て、そして、俺の腕に抱えられているゆたかの姿を見て驚いて俺達の側に来て

 

「ゆーちゃん!?ねえ、慶一君。ゆーちゃんどうしたの!?」

 

と心配そうに聞いて来るこなたに俺は頷きながら

 

「アトラクションに入ってからゆたかはずっと恐怖と緊張と戦っていたんだろう。最後の部屋辺りでそのせめぎ合いがピークに達したんだだと思う。とりあえず近くのベンチに寝かせて休ませてやれば大丈夫だと思うよ。介抱はみなみに任せるし、心配ないと思うぞ?」

 

と言う俺の言葉にこなたや皆はほっとしたような表情を見せ、ゆたかの状態に安心したこなたはにニヤニヤと嫌な笑みを浮かべつつ

 

「そっかー。それならよかったよ。とはいえ、慶一君、ゆーちゃんをお姫様抱っこなんてずいぶんやるもんだねえ?」

 

と言うこなたに俺は顔を赤くしつつ慌てながら

 

「い、いや、だって仕方ないだろう?おんぶしてやるにしてもゆたかが気を失ったままじゃ俺の体につかまれないから危ないだろうし、みなみだって女の子だから任せる訳にもいかないだろ?それにこんな事したのも初めてって訳でも・・・いや、なんでもない・・・。」

 

と、最後の方でうっかりテンパって、言わなくてもいい事を口にした事に気付いて慌てて言葉を切ったが、俺の最後の言葉はしっかりと他の皆にも聞こえていたらしく

 

「へえー?ゆーちゃんにこんな事したのは今回が初めてじゃないんだー?ふーん?」

 

と、途端に不機嫌になるこなたの言葉に、その背後で俺達の話を聞いていた皆の中からも数人、黒いオーラを気配を感じて、俺は心持ちビクビクと怯えるのだった。

 

そんな様子を苦笑交じりに見ていた次の3人のうち、こうが俺に

 

「とりあえずは1回目終了ですね。次は私達の番ですので、先輩、よろしくお願いしますね。あ、それと、アトラクションのネタばらしはしない方向でお願いしますね。それだと面白くなくなりますし。」

 

そう言って来たので、俺はそれに頷くと

 

「わかったよ。それじゃ次はこう、みく、たまき。行ってみようか。」

 

そう声をかけると、3人は俺の言葉に頷いて早速チェックシートをもらってアトラクションへ入る準備をするのだった。

 

俺はその様子を見ながら更に続くこの後の事を考えつつ、盛大な溜息を1つついていたのだった。

 


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