初日のドタバタをなんとか乗り切り、体にダメージを残しつつも、何とかその日を終えた俺だった。
そして、翌日の早朝に俺は、前日に話題に出ていたこのホテルの展望ラウンジの事を思い出す。
夜景は見れなかったが、せめて朝日だけでも拝もうと俺は、まだ薄暗い時間に起きだして展望ラウンジへのエレベーターを待っていたのだが、そこに俺と同じように展望ラウンジへ向かおうとしているこなたたちと鉢合わせた。
目的地は一緒だったので、俺達は連れ立って展望ラウンジへと上がる。
そして、結局全員が同じ場所へと集合する事となり、皆で朝日の昇るランドの様子を眺めて記念の写真を撮る俺達だった。
その後は朝食を済ませ、集合場所にて皆を待ち、全員が集まった所で早速、最終日を楽しむ為に俺達は園内へと繰り出して行くのだった。
手始めに俺達がやってきたのは、このランドの目玉の1つでもある絶叫マシンの”セブントルネードスター”と呼ばれる連続弾丸7回転が特徴の結構大きいジェットコースターだった。
俺はジェットコースターを見上げながら
「おー・・・これはかなり凄そうだな。こいつは中々のスリルが期待できそうだ。」
そう呟く俺にかがみがニヤニヤとしながら
「ずいぶんと余裕そうだけど、ほんとにこういうの平気なんでしょうね?日下部から話を聞いた限りじゃ、慶一くん結構慌ててた、とか聞いてるんだけどさ。」
と言うかがみに俺は苦笑しつつ
「いや、だからそれは不意打ちだったからそうだった、ってだけだよ。心の準備が出来てればこんなのなんでもないさ。」
そう答える俺に、かがみはニヤつきながらもなおも疑惑の目を俺に向けていたが、その後ろでこなたとみさおとこうの3人が、何かを企む表情を見せている事に気付かない俺だった。
そして、そんな最中、コースターを見つめながら何かを決意する表情を見せるゆたかと、そんなゆたかに心配そうな表情を見せつつそんなゆたかを見ているみなみの姿が目に入ったので、俺はかがみの追及をかわしつつ、そちらへと足を向けた。
そして、俺はそんな2人に声をかけてみたのだった。
「ゆたか、どうしたんだ?なんだかずいぶんと思いつめたような表情をしてるが。みなみもなんか心配そうな顔しているし、ちょっと気になってな。」
そう声をかけると、ゆたかは少し思いつめた表情のまま、みなみも心配そうな表情のまま俺の方を見ながら
「あ、先輩。実はですね、先輩も私の体の事は知ってますよね?それに、私自身も自分の体の事は良く分かっているんです。そんな私ですが、折角この場所へとやって来れる機会を得た訳ですし、どうせならこの絶叫マシンに挑戦してみたい、って思ったんです。その事をみなみちゃんに話したんですが・・・みなみちゃんはそんな私が心配みたいで・・・。」
「・・・私は、そんなゆたかが心配で、それで、止めようと思ったんですが・・・今回のゆたかの決意はかなり固いみたいで・・・それでどうしよう、って思っていたんです・・・。」
そう答える2人に俺は、腕組みしつつ
「そっか・・・。ゆたか、今回のこれは結構ハードだぞ?それでも挑戦したいと思ってるのか?」
そうゆたかに尋ねると、ゆたかは強い決意を込めた瞳で俺を見つつ力強く頷くと
「はい!いつも体が弱いから、って理由もあって私は、今までこの手の乗り物を敬遠させられてきたんです。私自身もその事は分かっていたので仕方ない、って今まで諦めて来ました。でも、これからもそのまま、っていうのは嫌なんです。私は、先輩やこなたおねーちゃんやみなみちゃん達とこれまで過ごして来ました。みんなには私も元気をもらって来ましたし、最近では自分の体も少しづつですけど、前よりもずっと丈夫になって来たって感じています。だから、こういうのにも挑戦して、私はもっともっと慣れて、そして、元気になるための力に変えたいって思ってるんです。だから、その為に私はこれに乗りたい、ってみなみちゃんにも言ったんですよ。」
そう、今回の決意の理由についてゆたかは俺に話してくれた。
「ふむ・・・なるほど、ゆたかはゆたかなりに考えていたって事か。みなみは、ひょっとしてその表情はそんなゆたかが心配で、って所か?」
そう言う俺に、みなみは頷きつつ
「・・・私は出来るなら、ゆたかの気持を尊重してあげたいと思っています・・・ですが・・・それでも、今回乗るコースターは他の遊園地で見るものよりも凄そうに思えて・・・だから、私はゆたかの事が余計に心配で・・・・・・先輩、私はどうするべきでしょうか・・・?」
そう言って俺に、困惑顔を向けるみなみの言葉に顔を伏せてしばし考え込んでいた俺だったが、考えを纏めてから俺は顔を上げてみなみに
「みなみ、お前がゆたかの気持を尊重しようって言うのなら、ゆたかの意見、受け入れてやれ。その上でゆたかを見守りながら、お前の出来る事をやればいいさ。なあに、確かに凄いコースターだけど、ゆたかは日頃成美さんの運転を体験してるんだから、それに比べたらこっちのコースターの方が可愛いものかもしれないぞ?」
そう言葉をかけると、みなみは俺の言葉に少し考え込む表情を見せたが、みなみもまた何かを決意したような表情を俺に向けると
「・・・わかりました。ゆたかの意見を尊重しつつ、ゆたかを見守ります・・・先輩のご意見も心にとどめつつ私はゆたかの為に出来る事をします・・・。」
そう言葉を返すみなみに俺も頷いて
「ああ。ゆたかの事、頼んだぞ?みなみ。それと、ゆたか。少しづつでも強くなって来ているお前の姿が見れたのは嬉しい事だった。でも、決して慌てるなよ?ゆっくり確実に体を慣らして行くようにな。」
そう2人に答えると、2人は力強く頷いて
「わかってます!先輩の忠告、ちゃんと心に刻んでおきますから。」
「・・・ゆたかは、私が見守りますから・・・。」
そう答える2人に俺は満足げに頷くと、そんな俺達のやりとりを見守っていたひよりとパティ、いずみも俺達の側へとやって来て
「先輩、みなみちゃん。私達も忘れてもらっちゃこまるっス!私だって2人の友達なんスから!」
「ワタシだってそーデス!ワタシもフタリをタスけマス!」
「私達も友達ですからね。友達として2人の手助けをするつもりです。」
そう主張する3人に俺は圧倒されつつも頷いて
「わ、わかったわかった。皆もよろしく頼む。それじゃそろそろ行くとしよう。皆も待ってるだろうしな。」
そう言う俺に、皆も頷くと、俺達は、こなた達の待つコースターの入り口へと戻って行くのだった。
俺を出迎えたこなたは俺に
「慶一君、ゆーちゃん達と何か話し込んでいたみたいだけど、何かあったの?」
そう聞いて来たので、俺はこなたに先程のゆたかたちとのやりとりを話す。
こなたは事情を聞くと、顎に手を当てつつ
「・・・なるほどねー。ゆーちゃんも頑張ろうとしてる、って事みたいだね。だったら私も義姉としてゆーちゃんの決意を見守るのみ、かな?」
そう言うこなたにかがみはこなたに少々不信感を思わせる視線を向けつつ
「もっともらしい事言ってるけど、それって本心なんでしょうね?あんたもゆたかちゃんの義姉さんなら、みなみちゃんにだけゆたかちゃんの事任せっきりにしないでちゃんと見てやりなさいよ?ゆたかちゃん、あんたの事は信頼してるみたいなんだしさ。」
そう言うかがみにこなたは視線を泳がせつつ
「わ、わかってるよー。私がゆーちゃんの事ほおっておくわけないじゃん。私はゆーちゃんの義姉さんなんだしさー。」
と、少々説得力に欠ける態度を見せるこなたにかがみは、少々呆れたような表情を浮かべ、俺は俺で軽いため息をついていた。
そして、周りを見ると、他の皆もまた苦笑しながら俺達のやりとりをみていたのだった。
「ま、なんにしても、そろそろ行こうゼ?係員さんも待っててくれてるしなー。」
と言うみさおに俺達も”はっ”と我に帰ると、俺は皆に
「そうだな。よし、皆、早速乗り込むとしよう。」
俺がそう声をかけると同時に、皆も頷きつつコースターへと乗り込んでいく。
だが、この時、俺がゆたか達と話している間に、こなた達の方ではすでに座る場所についての話し合いが行われていたらしかった。
なので、俺は1番前から2番目の列の席中央付近に座る事となったようだった。
コースターの座席は1列4人が座れる仕様で、俺はその席の右側から2番目番に座る事となり、俺の両隣にはみゆきとかがみ。
そして、1番左外につかさが、俺の前の列にはみくとたまきとこうとパティが、俺の後ろの席にはこなた、やまと、みさお、あやのが、その後ろの席にはゆたかを右側から2番目に据えて、その左側にひよりといずみが、右にはみなみがそれぞれに座る事となった。
俺は全員が席に着いたことを確かめつつ、俺はみゆきに
「なあ、みゆき。今回のこの席順はまた話し合いで決定した、って奴か?」
と聞いてみると、みゆきは俺の言葉ににっこりと微笑みながら
「ええ。慶一さんが小早川さんやみなみちゃん達と話している時に決めたんですよ。今回も恨みっこなしの勝負の結果ですね。」
そう答えるみゆきに俺は苦笑しつつ
「そうか・・・(何の勝負の結果かは深く考えずにおくか・・・)皆!安全バーがきっちりかかっているかもう一度確認しとけよ!?それが済んだらいよいよ出発だからなー!?」
と皆にもそう声をかけると、皆も安全装置をもう一度確かめて、自分の安全確認を係員の人と共に行っていた。
そして、それが済んだのを見届けた係員さんが俺達に
「それでは、これから出発します。存分に楽しんで下さいね?それでは、スタート!!」
という係員さんの声と共に、ゆっくりとコースターは動き始めた。
「う、動いたわね・・・ちょっと緊張するかも・・・。」
「どんなスリルが味わえるのか楽しみですね。」
「うう・・・皆が乗るから勇気だして一緒に乗ってみたけどやっぱりちょっと怖いよ~・・・。」
「7回転か、迫力ありそうだな。」
と、俺達はそれぞれに思う事を口に出す。
そして、俺の前の席では
「こういうので1番前ってのもいいねー。」
「同感、ここが1番迫力あるかもね。」
「ある意味1番いい席にいるかもだね、私たち。」
「エキサイティング!アンド、スリリング!とてもワクワクしますネ!!」
と言う前列4人の言葉が聞こえていた。
俺達の後ろの席でも
「うーん、わくわくするねー。絶叫マシンはロマンだねー。」
「泉先輩も楽しそうよね。私もこういうのは嫌いじゃないけど。」
「ふふ。泉ちゃんらしいわね。私もこういうのは好きよ。」
「おー!楽しみだなー!!お?そうだ。ちびっ子、さっきの話、覚えてるよな?」
「んー?ああ、あれね?ばっちりオッケーだよ?それで、いつ実行するー?」
「仕掛けるポイントは、コースターの・・・・・・」
と言う会話が聞こえていたが、俺はみさおの言葉に何か不審な物を少し感じつつも、肝心な部分が聞こえなかったので、その事を少々気にしつつ、更に後ろの列から聞こえる会話にも耳を傾けていた。
「乗ったはいいっスけど、結構凄そうだよね、これ・・・。」
「田村さん、今更言ってももうスタートしてるんだし、覚悟決めなきゃ。」
「そ、それはわかってるっスよ。委員長もきっついよねえ・・・。」
「あはは。ひよりちゃん、どんまい。それにしても、ドキドキするなあ・・・ねえ?みなみちゃん。」
「・・・そうだね・・・でも、具合が悪くなったらちゃんと言う事・・・。」
「わかってるよ、みなみちゃん。でも、心配してくれてありがとう。」
「・・・私はゆたかの友達だから・・・。」
「ネタキター!ネタ帳ネタ帳っと・・・ってしまったー!ホテル内に置き忘れて来たっスー!って自重しろ、自重しろ私ー!!」
「・・・小早川さん、岩崎さん。友達は選んだ方がいいと思うよ・・・はあ・・・。」
最後に溜息でしめくくる後列の会話を聞いて俺は、再度苦笑していたが、その時にこっそりと俺を撮影しようと写メの準備をしているかがみ達の動きに、他の皆の会話を聞く事に集中していた俺には気付く事が出来なかった。
そうこうしているうちに、加速のスタート地点へとコースターは近づいていく。
一応俺は、先程のこなたとみさおの会話から、あの2人が何かを企んでそうな感じがしたので、その事を警戒しつつ、加速地点へ向けて緊張を高めていた。
そして、いよいよ加速地点までもう少しの所に来た時、みさおから声がかけられた。
「なあ、慶一ー。あっちの方、大分景色がいい感じだぞー?ちょっと見てみなってー。」
そう言ってくるみさおの言葉に俺は、あの時の遊園地での出来事を思い出しながら
「・・・みさお、また罠にはめたいと考えているみたいだが、その手には乗らないぞ。お前の方こそ心の準備しとかないとあの時の俺の二の舞になっても知らないからな。」
と冷静にみさおの企みを潰しにかかる俺。
みさおは自分の企みが読まれた事に動揺しつつ
「な、何の事だか。わ、私は別に、ただ、いい景色が見えたから慶一にも見せたいなーって思っただけだしー。」
と、明らかな挙動不審を見せるみさおに俺は、心の中でやれやれと考えていたが、そこに更にこなたが俺に声をかけて来る。
「慶一君ー。ちょっと見せたいものあるんだけど、こっち向いてくれるー?」
そのあからさまに怪しい物言いに俺は呆れつつ
「こなたー?そうやって俺の注意をひきつけたいみたいだが、その手には乗らんからなー?まったくいたずらの好きな奴等だよ。」
と言う俺にこなたもまた”うぐっ”と小さなうめき声をあげると、みさおとなにやら相談を始めたようだった。
こなたside
みさきちから以前みさきちが慶一君を元気付ける為に遊園地に誘った話を聞いていた私は、その時あったジェットコースターでの慶一君の面白かった所を話して貰っていた事もあり、今回のこの絶叫マシンにおいても私とみさきちはいたずらを企てていたのだが、どうやらみさきちとの軽い打ち合わせの話の一部を聞かれていたらしく、最初のアタックは失敗に終わったのだった。
焦った私とみさきちは、何とか慶一君をいたずらにはめる手立てがないかを残り僅かな時間でみさきちと相談する事にした。
「むう、慶一君にはしっかり警戒されちゃってるね・・・どうする?みさきち。」
みさきちにそう話を振ると、みさきちも困惑顔で
「むー・・・どうすっかなー・・・なあ、ちびっこ。他に何か手はねえか?」
そう返してくるみさきちの言葉に私は、腕組みをしながら他の手を探してみた。
私は脳内で今の状況、そして、いるメンバーを考慮して何か手がないかを探ってみた。
そして、1つ妙案を思いついた私は、早速その手を実行に移す事にしたのだった。
「みさきち、1つだけ手があったよ。これで失敗したら今回はあきらめよう。今からすぐにやるからちょっと見ててよ。」
その言葉にみさきちも頷いて
「わ、わかった。頼むゼ?ちびっこ。」
そう返してくるみさきちに私も力強く頷いて返すと、後数秒で加速開始のタイミングで最後の手をしかけるのだった。
慶一side
こなたとみさおの企みを退けた俺だったが、それでもまだ何かをしかけようと2人して何かを話している様子が軽く後ろに目をやった時に見えた。
もうすぐ加速地点だし、何かをしかけるにはタイミング的にももう無理だろう、俺はこの時はそう思っていたのだけど、すぐさま俺は、こなたのいたずらにかける執念の凄さを思い知る事となった。
再び視線を前に戻した俺だったが、ふいにこなたが発した言葉に俺は、はからずも引っかかる事となったのだった。
「!?ゆーちゃん?どうしたの?気分悪いの?大丈夫!?」
その言葉に俺は”はっ”となって思わず後ろを振り向いて「ゆたか!!大丈夫か!?」と声をかけたのだが、後ろを見た俺に目に飛び込んで来たのは、突然そんな言葉を発したこなたに頭にハテナマークを飛ばしながら困惑の表情で「私は大丈夫だよ?こなたお姉ちゃん。」と言うゆたかと、まんまといたずらを成功させて、これ以上ないほどのいい笑顔で俺を見ているこなたとみさおの2人の顔が目に入り、その瞬間、俺は心の中で”やられた!!”そう思ったと同時に一気にコースターが加速を始めた。
俺は、まんまとこなたにしてやられ、そして、突然始まった加速に対応しきれずに再び俺は、無様な姿を晒す事になったのだった。
「うぉあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
心の準備を外された俺にはもはや、これに対処する手立てもなく、みっともない姿を見せる俺。
そんな中、俺の両隣にいたみゆきは俺の腕に抱きついていて、かがみは大笑いしながら俺の無様な姿を写メに何枚も撮っているのが見てとれたが、もはや冷静さを失っている俺にはそれに対応すら出来ず、まさにされるがままとなっていたのだった。
結局その後の7回転でも絶叫し、コースターを降りる頃にはもうボロボロの状況だった。
コースターを降りるといまだ笑いが止まらないかがみ達に
「あははは!!慶一くん、どんまい、あはははは!!」
「お、お姉ちゃん、そんなに笑っちゃけいちゃんがかわいそうだよ~。」
「くすくす。普段はあまり見られない慶一さんの姿が見られて新鮮ですね。」
そんな風に言われ、更にはみゆきすらも俺は笑われていた。
つかさが俺に同情してかがみをなだめてくれているが、そんな様子を見て俺は大きな溜息をつきながら
「・・・悪かったな、かがみ、お前笑いすぎだぞ?流石に凹むって・・・。」
疲れた声でそう言うのだった。
そして、こうたちも俺の側にやってきて
「大丈夫でしたか?先輩。先輩って確かこういう乗り物にも強かったはずですよね?だから、今回の事は結構驚きだったんですが。」
「くすくすくす。ま、まあ、確かにそうよね。ぷぷっ!流石に先輩も不意打ちで崩されたらだめ、って事みたいね。」
「へえ?先輩ってこういうのは本当は得意だったんですか。意外ですね。」
「不意打ちされたらどんな人でも駄目になりそうな気はするけどねえ・・・先輩に限らず。」
そう言うこう達2年生組に俺は落ち込みながら
「そういや、こうとやまとは俺と一緒にここ以外にも出かけた事があったっけな・・・はいいが、やまと、お前も笑いすぎだ!まったく・・・あ、みく、たまき、勘違いしないでくれな?不意打ちされなけりゃこんなの何てことないんだから。」
と、笑うやまとにツッコミを入れつつ、みく達にもそう説明をする。
そんな最中、今回のコースターを乗り切ったゆたか達も俺の所へとやって来た。
「先輩。大丈夫でしたか?私は今回はちゃんと乗り切れましたよ?気分も悪くなっていないので平気です。」
「・・・すみません、先輩。先輩の慌てる姿を見て、悪いとは思いましたが思わず笑ってしまいました・・・。」
「めったに見れないものを見せてもらいましたっス。私も思わず笑ってしまいましたが、不可抗力って事で勘弁してもらえると嬉しいんですが・・・。」
「ケイイチのオモシロイカオはアトでカガミにミせてもらいマス!ちょっとタノしみですネ!」
「せ、先輩、元気出して下さいね。」
と、ゆかたかは今回自分に課した試練を乗り切った事を報告してくれ、みなみとひよりは俺を不覚にも笑ってしまった事を詫びて、パティはかがみの撮った写メを後で手にいれようと意気込み、いずみはそんな俺に同情の言葉を送ってくれた。
「ゆたか、とりあえず乗り切れたようだな、おめでとう。みなみ、ひより、今回のは不可抗力だからもういいよ。パティ、後でよーくお話しような?いずみ、気をつかってくれてありがとうな。俺はもう大丈夫だから。」
と4人にそう言った後俺は、あやのに怒られているみさおと、その横であやのをなだめようとしているこなたの側へと歩いて行く。
こなたside
執念が実り、私とみさきちのしかけたいたずらは上手くいった。
けど、コースターを降りた後、慶一君に仕掛けたいたずらの事で峰岸さんは、みさきちに説教を始めたのだった。
私も共犯者でもあるので、とりあえず峰岸さんをなだめつつ、みさきちと一緒に説教を聞く事となった。
「みさちゃん!?だめじゃないの!慶ちゃん、大分落ち込んでたわよ!?昨日だって慶ちゃんに命に係わるような迷惑かけたばかりじゃない!?わかってるの?そんな事ばっかりしてたら慶ちゃんにも愛想つかされちゃうかもしれないわよ!?」
そうまくし立てる峰岸さんにみさきちもかなり凹みつつ
「ごめんよー、あやのー・・・つい出来心だったんだってヴァ・・・この通り反省してるからさー・・・だからもう勘弁してくれよー・・・。」
そう言うみさきちに私も、ちょっと気の毒になって
「ま、まあまあ。軽いいたずらなんだし、みさきちも反省してるみたいだしさ、とりあえずその辺に・・・。」
そう言う私に峰岸さんはきっと睨みつけながら
「泉ちゃんも泉ちゃんよ?慶ちゃんの注意を引くためとはいえ、あんな事言えば慶ちゃんは絶対心配するのわかってるでしょ?泉ちゃんが今回やった事は、そんな慶ちゃんの優しさを弄ぶ行為なんだからちゃんと反省しなきゃだめよ?」
と言う峰岸さんの言葉に私は、胸に何かが突き刺さるような感覚を受けて落ち込みつつ
「う・・・そ、そうだね・・・言われてみればそうだよね・・・私、後で慶一君に謝ってくるよ・・・。」
と、ここに来て自分のやった事の罪深さを知った私は、今回のいたずらに反省するのだった。
慶一side
何やらあやのに2人して怒られているというちょっと珍しい光景を目にしつつ、俺は3人の元に歩いていった。
そして、いまだ怒っているっぽいあやのと落ち込むこなた、みさおの姿を見て俺は3人に声をかけた。
「あやの、こなた、みさお、ここに居たか。こなたとみさおが結構落ち込んでるみたいだが、2人共あやのにでも怒られたか?」
そう言うと、あやのは俺に
「ごめんね?慶ちゃん。みさちゃんや泉ちゃんが今回した事はちょっと行き過ぎだと思ったから、私が2人にお説教してたのよ。慶ちゃんも今回の事で思う事もあるかもしれないけど、私がよく言っておいたから、あまり怒らないであげてくれるかな?」
そう言うと、こなたとみさおも俺の所に来て、俺にすまなそうな表情を向けながら
「慶一君、ごめんね?ちょっと調子に乗りすぎちゃったよ。本当にごめん。」
「慶一ー、ごめんなー。昨日の事もあったのに私も調子に乗ってったってヴァ・・・このとおりだ慶一、謝るから許して・・・。」
そう言って反省の色を滲ませる2人を見て俺は、軽く溜息をつくと
「2人共、本当に心から悪い、って思ってるんだな?」
2人をじろりと睨みつけながらそう言うと、2人共首を激しく縦に振りながら
「うん、思ってるよ。この通り反省してる。」
「私もだ。反省してる。この通り!」
そう言って頭を下げる2人を見て俺は
「そうか。なら、顔を上げろ、2人共。」
そう俺が言うと、2人共おずおずと顔を上げた。
俺はそのタイミングを見計らって2人に軽くデコピンをかます。
ビシッ、ビシッ
「あうっ!」「痛えっ!」と声をあげ、涙目になる2人をみながら
「これで勘弁してやる。とにかく、俺達はここには楽しむ為に来たんだから、つまらないいざこざはなしだ。なんにしてもいたずらは程ほどにしてくれよ?でないと俺が持たないし。」
俺のその言葉に、許しが得られた事を悟った2人はもう一度頷くと
「わかったよー。できるだけ努力するー。とりあえず、次に行こうか。まだまだ乗るものあるんだしね。」
「極力気をつけるようにするってヴァ。ちびっこの言う通りまだまだやる事あるんだし、時間も限られてるんだからどんどんいかねえとな。それじゃ次に行こうゼ?慶一、あやの、ちびっこー。」
そうやって、再び笑顔になる2人に俺とあやのも苦笑しつつ
「そうだな、それじゃ皆と合流して次に行くかー。」
「ふふ。そうね、行きましょう。もっともっと思い出を作りたいものね。」
そう言うあやのに俺も頷きで応えて、俺達は俺達を待つ皆の元へと向かったのだった。
ハプニングのあったコースターを終えて、俺達は次の場所を目指す。
そこでも波乱を予感する俺だったが、何があっても皆と楽しんでいこうと改めて思う俺だった。