ゴールデンウィークの残りの日をみさおとあやのとした約束を果たす為に当てようと俺は、その時までに自分自身に起きている問題に決着(ケリ)をつけてその日に望む。
そして、その日に偶然にも俺に用事があってやってきた龍兄に幸運のチケットを渡された俺達は、残りの日数をこれに費やす為に遊園地へと赴いた。
そして、初日にすべき遊びの事を色々と決め、とりあえず、部屋割を決めて水着を借りた俺達は、プールへと集合する事となった。
そして、そこで俺が昔にバイトでボディガードをやっていた、アイドルの小神あきらと再会を果たす。
あきらのファンでもあるこなた達との交流もしてもらい、さらに思い出を刻んだこなた達に俺は、あきらと知り合いの理由を話す。
一通りの説明を皆にした後、俺達は改めてプールでの遊びから満喫する事となったのだった。
各々プールへと入る為に軽く準備運動をしていたのだが、その時にみさおが俺に声をかけてきた。
「なあ、慶一。私と泳ぎで勝負しねえか?海じゃ泳ぎでの勝負は出来なかったし、私もそれなりに泳ぎにも自信もあるかんなー。」
そう言いつつ不敵に笑うみさおに俺もまた、不敵な笑みを浮かべながら
「ほう?走る方だけじゃなくそっちも自信あり、って事か?面白い。今度こそ海での雪辱を晴らしてやるさ。その勝負、乗ったぞ!?」
去年の夏休みの時の事を思い出しながら、俺はみさおにそう言い放ったのだった。
みさおもまた、俺の返答に満足げに頷くと
「じゃあ、この25メートルプールを1往復にしようゼ!」
と、勝負の方法を提案してきたので、俺もそれに頷いて
「よし、いいとも。じゃあ、準備できたら早速スタートだな。」
と、両手足の関節をほぐしながら言う俺にみさおも頷いて
「おっけー。んじゃ早速準備すっぞー。私の実力を見て驚け、慶一!」
と言う自信たっぷりな言葉に俺も不敵な笑みを返して、俺とみさおはお互いに火花を散らした。
「なら、私がスターターをやってあげるよ。」
そんな俺達にそう声をかけてきたのはこなただった。
「ん?ちびっこがスターターやるんか?てっきり私はおまえも挑んで来るものとばかり思ってたぞ?」
そう言うみさおに、こなたはいつものように目を細めつつ
「んー?面白そうではあるけどさ、私のこの長い髪は水の抵抗相当受けちゃって早く泳ぐのには向いてないんだよねえ。」
そう説明するこなたに、俺とみさおもなるほど、と頷くと
「なら、こなた。スターターはよろしく頼む。みさお、こっちはいつでもいいぞ?」
そう言って2人に声をかけると、みさおも頷きながら
「おう。私もいつでもいいゼ?んじゃ、ちびっこ。合図は任せるかんな?」
そう言うと、こなたもそれに頷いて
「おっけー。それじゃ準備できたらこのスタートラインに立ってねー。」
と言うこなたの指示で、俺達はスタートラインへと立つ。
そんな俺達を他の皆も見つめながら
「慶一くん、頑張れー!」
「けいちゃん、日下部さん、どっちもふぁいと~。」
「お2人とも、頑張って下さい。」
「みさちゃん、慶一君。どっちも頑張ってねー。」
と、3年生組も声をかけてきた。
「お2人ともファイトです!いいレース期待してますよー!!」
「こう、あんまりあおるんじゃないわよ。ほんと、先輩達も子供よね・・・。」
「まあまあ、やまとさん。折角のイベントなんですし、応援しましょうよ。」
「そうそう。やまとさんもここは楽しむのが正解だよー?」
と俺達をあおるこうと呆れるやまと、そして、ふって沸いたイベントを楽しもうとするみくとたまき達も、楽しそうに俺達を見ていた。
「慶一先輩、日下部先輩、どっちもがんばれー!」
「・・・お2人とも、あまりご無理はしませんように・・・。」
「おおー!水泳だけど、バトルネタきたっス!これは燃えるっス!!」
「フタリとも、モエツキルまでバーニング!!」
「運動得意同士の2人の対決かー・・・。どうなるんだろう?」
そして、純粋に俺達を応援してくれるゆたかとみなみ、何やら妄想に走り出したひより、この展開に何故だがテンションの高いパティと、俺達の対決の行方を興味津々で見守るいずみ。
俺は、そんな皆の声に苦笑しつつも意識をコースへと集中していくが、その時、かがみに自分を応援してもらえなかった事に少々テンションの下がったみさおが
「・・・ひでえよ、柊・・・たまには私の事も応援してくれたっていいじゃん・・・やっぱり私は柊にとっては背景なんか・・・?」
と呟いているのを聞いて、再度苦笑をする俺だった。
「それじゃ、行くよー?位置についてー。」
と言うこなたの言葉に、少し落ち込むみさおの方に意識を向けていた俺は、はっと我に帰ると、気を取り直しつつコースを見据えてスタート体制に入る。
そんな俺にならうようにみさおもまた気を取り直し、スタート位置についてコースを見据えるのを見て、俺も再度気合を入れなおし、集中する。
「よーい、ドン!!」
と言う合図と同時に俺達はプールへと飛び込み、早速レースの開始となった。
2人はクロールで泳いでいくが、徐々に俺とみさおとの距離に開きが出始めた。
慶一side
ペースを維持しつつ、体力の配分を考えて泳いで行く俺。
ちらりとみさおの方を見ると、徐々にみさおとの距離が広がり始めているのが見て取れた。
(みさおも言うだけあって中々やるみたいだが、それでもペース配分には少々難があるようだな・・・徐々にだが遅れはじめているようだ・・・このままならいけるかも・・・。)
そう考えつつ、少しずつペースを上げていく俺だった。
そして、ターンを決めてさあ、ここで勝負をつけようと力を入れようとした瞬間、俺の右足が何かに掴まれるようなそんな感覚を感じた瞬間、俺の右足が突然つったので、俺はその状況にしばしパニックに陥った。
「!?ゴボッ!?ゴババッ!?な、何が!?」
と、手足をばたつかせて俺は水中へと沈み込んだのだった。
みさおside
慶一に水泳勝負を挑んだ私だったが、水泳に関しても慶一はかなりやるようで、私も必至に慶一に喰らい付いて行っているものの、その差が徐々に開き始めているのを感じていた。
(嘘だろ?慶一の奴こっちもここまでなんて意外だった・・・。私も運動部所属だから体力には自信あっけど、それでもこれだけ・・・まずい・・・このままじゃまずいぞ・・・どうする?私・・・。)
前を泳ぐ慶一をちらちらと見つつ、私はこのままではまずいと感じていた。
そして、慶一が折り返しのターンを決めた直後、焦った私は、思わず無意識に慶一の足を掴む、という行動に出たのだった。
そして、その行為が慶一にとってやばい状況を作り出す結果になったようで、体に異変の起きたらしい慶一は、半分パニくりながら水中へと沈んでいくのが私もターンを決めた時に見えて、その状況に私も慌てた。
「!?慶一!!どうした!?おい!慶一ってヴァ!!」
そう言いながら沈んだ慶一を追って、私も潜って慶一を追いかけたのだった。
こなたside
夏休みの雪辱を果たそうと慶一君は、みさきちの水泳勝負の申し出を受けた。
そして、私がスターターとなって皆が応援するなかで、2人の勝負が始まった。
慶一君は意外と泳ぎもいけるようで、レースの展開的に余力を残しながらみさきちを引き離していたようだった。
そして、そんなデットヒートに声援を送る皆。
「どっちもがんばれー!!」
「日下部ー!万が一勝てたらあんたの言う事1つ聞いてあげてもいいわよ!?」
「けいちゃん~!日下部さん~!がんばれ~!!」
「日下部さん!まだ挽回はできますよ!?諦めないで下さい!!」
「みさちゃん、ファイトー!!」
と声援を送る私たち3年生組。
「おー!2人ともかなり早いなー・・・。ねえ、やまと。あんたはこのレースどう見る?」
「・・・そうね・・・体力的には日下部先輩も負けてなさそうだけど、慶一先輩の地力は更にその上を行っている、と言う風に見えるかしら。その分、日下部先輩には厳しいかもね・・・。」
「うーん・・・それは無理もないかも。何しろ慶一先輩が男って事もあるけど、先輩って格闘技で鍛えた筋力なんかもあるだろうし。」
「そうだね。何かハプニングがあったりすると日下部先輩でもひょっとするかもねえ・・・。」
と状況を分析する八坂さん達2年生組の面々。
「頑張れー!!・・・2人とも凄いね、みなみちゃん。」
「・・・うん・・・。流石に運動系の2人、ってところだね・・・ゆたか・・・。」
「先輩方ー!!両方ともファイトっス!!<水泳バトル!これもまたいいネタっス!!私にとってはこっちのネタも集められるのも幸運っスね!!>」
「スバラシイデットヒートデス!!バーニング!バーニングですヨ!?フタリトモ!!」
「頑張って下さい!先輩達ー!!」
と、片や声援を送りつつ、片やその影で妄想しているっぽいと感じつつ2人を応援する1年生組。
けれど、そんな折、慶一君が折り返しでターンを決めた頃、かがみが何やら異変に気付いたようで、ふいに声をあげた。
「ん?ねえ、こなた。何か様子、おかしくない?慶一くんが何か慌てているみたい・・・って、慶一くんが沈んだ!!」
最後のかがみの台詞に思わず驚いてそっちを見る私。
「・・・あ・・・みさきちが慶一君を追っかけて潜った・・・。って、大変だー!!」
そう叫んだ瞬間、皆もはっと我に帰り、私達は折り返し地点に向かって走り出したのだった。
慶一side
突然の足の異常が回復しないままに俺は、プールの底へと沈んでいく。
なんとかしようともがいてみるものの、結局どうする事も出来ず、俺は徐々に意識を失いつつあった。
そして、完全に意識が途切れる前に俺の視界に飛び込んで来たのは、俺を追いかけて潜ってくるみさおの顔だった。
みさおside
慶一に差をつけられ、このままじゃまずいと思った私は、慶一に負けたくないという思いから、無意識に慶一の足を掴んでいた。
それがきっかけとなり、慶一は私が掴んだ方の足に異常をきたしたみたいで、慶一の体が一瞬硬直したように見えた瞬間、慶一はもがきながら水中へと沈んで行くのが見えた。
私は、それを見た瞬間、大慌てで慶一を追って水中へと潜って行く。
そして、慶一を追う私の顔を見た慶一の意識が失われそうになっているのを感じた私は、とにかく慶一に追いついて、その体を抱きとめて水面を目指した。
そして、慶一と一緒に浮上した時、私達の異常事態に気付いたちびっこ達が、私達の近くまで来ていたので、私はちびっこに
「ちびっこ!慶一を引き上げるのを手伝ってくれ!!慶一の奴、意識を失ってる!私1人じゃプールサイドへ上げれない!だから早く!!」
そう声を張り上げると、ちびっこ達は慌ててこちらまでやって来て、柊と高良がプールへと飛び込み、水中から慶一の体を私と一緒に押して、ちびっこと八坂、永森、岩崎らが慶一の両腕を引っ張り、慶一をプールから引き上げた。
そして、プールサイドに慶一を横たわらせると、すぐさま救命処置にかかったのだが・・・・・・。
「やあ、これは大変だ。慶一君、溺れちゃって意識を失ってるし、呼吸も止まっちゃってるね。ここは1つ私が人工呼吸をしないとー。」
と、ちびっこはしらじらしくそう言い訳するように宣言すると、慶一に人工呼吸を施そうと慶一の側に行く。
そして、いざ、人工呼吸開始、と言う所で柊達が物凄い速さで慶一の側へと行き、人工呼吸を施そうとするちびっこを邪魔しに行った。
「ちょっと待ちなさい、こなた!あんたどさくさ紛れに何しようとしてんのよ!!」
と、柊がちびっこをはがいじめにしつつ、慶一に人工呼吸をするのを阻止する。
「は、はなせー!かがみん!!ここは一番最初に慶一君の救命措置をしに来た私に権利がー!!」
と、叫んで暴れるちびっこに柊が更に
「うるさい、黙れ!あんたみたいな下心ありありの奴に任せられるか!」
そう突っ込みを入れると、さらにそこに高良が
「そうです!医学の知識がないままに素人の民間療法を行うのは危険です!ここは医者志望である私が代わりに・・・。」
そう言って、慶一の救命処置を施そうとする高良だったが、それを更に永森が
「そんなふうに言いつつ、前回は慶一先輩に人工呼吸を施してるわよね?先輩は以前にやっているのだから、こ、今回は私が代わりにやらせてもらうわ。わ、私もこういう事を経験して、やり方を知っておきたいしね・・・今後高良先輩が居ない時にこういう事が起きた時の為にも・・・。」
そう顔を赤らめつつそっぽを向いて言う永森に、高良は黒いオーラを立ち上らせつつ
「それはそれは・・・よい心がけですね。でしたら、私のやり方ををもう一度ご覧になって学習されてはいかがでしょう?」
そう言うと、永森もまた黒いオーラを立ち上らせながら
「悪いけど、今回は実戦で覚えようと思ってるから、先輩の気遣いは無用よ。」
そう言ってにらみ合う2人。
そして、ちびっこ達の方にもう一度目をやると、ちびっこと柊がまだ言い合いをしていた。
「むう、かがみ、どうして邪魔するのさ?ひょっとしてかがみがしたいの?救命措置をさ?」
そうニヤニヤしながら言うちびっこに柊も慌てながら
「な!何言ってんのよ!!ベ、別に私がしたい、って訳じゃ・・・それに、実際のやり方はよくわからないし・・・。」
と、顔を赤らめつつそう言う柊に、ちびっこは追い討ちをかけるように
「ふーん?なら、やり方がわかればかがみもやりたいんだね?」
その言葉に柊は更に顔を真っ赤にしながら
「え!?いや、その・・・わ、私は・・・別に・・・。」
と言う柊に、ちびっこは軽いため息をつきつつ
「はいはい、なら、私がやるよ。それでいいよね?かがみはやりたくない、って事みたいだし。」
そう言って慶一の方へ向かおうとするちびっこを、再び柊が止める。
「まてい!だから、何であんたが行くのよ!?」
そう言って再び堂々巡りになっていた。
永森と高良も2人して牽制しあっていて、結局慶一が放置される状況になった。
そんな折、柊妹が顔を赤くしつつ
「な、なら、わたしがやろうかな・・・早くけいちゃん助けないと・・・。」
そう言って慶一に近づこうとした時、それに気付いた4人が柊妹を一斉に睨みつけた。
その迫力に思わず後ずさりする柊妹。
「つかさー?抜け駆けはゆるさないよ?」
「あんたもどさくさ紛れに何をしようとしてる訳?」
「つかささん。これは立派な医療行為ですので、私に任せて下がっていて下さい。」
「つかさ先輩?手出しは無用よ?」
そう4人に言葉で脅され、涙目になりながら引っ込む柊妹。
そんな状況を見かねた八坂が
「先輩達!今はそんな事を言い争ってる時じゃないですよ!早くしないと先輩が・・・。」
そして、そんな風に言う八坂にも睨みを効かせる4人。
「みさちゃん、このままじゃ慶ちゃんが危険だわ・・・。」
焦りつつそう言うあやのの声に、慶一の顔を見てみると、どんどんその顔から血の気が失せてきているのが見て取れた。
それを見た瞬間、慶一がやばい!と感じて、私は、喧々轟々と言い争いを続けている5人の事などわき目も振らずに慶一の側に行って、あの日高良がやっていた人工呼吸のやり方を思い出しながら即座に実践に移した。
(やばい、ほんとにやばいぞ、慶一、今私が助けっから・・・早くしねえと・・・えと、確か・・・こうやって顎を上げさせて、そんで・・・こうやって息を吹き込んで・・・)
そう心の中で呟きつつ、私はとにかく急いで慶一に救命処置を施した。
その突然の事に驚くちびっこ達。
「み、みさきち?」
「く、日下部、あんた・・・。」
「く、日下部さん・・・いえ、今はそんな場合ではありませんね・・・日下部さん、そうです。そして、その後は、息を3回吹き込んでください。心臓マッサージの方は私がやりますから。」
「あ・・・私は、何を・・・日下部先輩、慶一先輩をお願い!」
「日下部先輩、慶一先輩を助けて下さい!」
そんな風に言うちびっこ達の声を聞きつつ、高良の指示ももらって、慶一の蘇生に努めた。
そして・・・・・・。
「げほっ、ごほっごほ・・・はあ・・・はあ・・・。」
と言う声とともに水を吐き出し、そして、慶一は呼吸を取り戻し、意識も戻ったようだった。
「・・・う・・・俺は・・・一体・・・?」
まだ苦しげにそう呟く慶一に、ちびっこ達も慶一の側へと慌ててやってきたのだった。
慶一side
水泳バトル中の突然のアクシデントで思わず溺れてしまった俺だったが、俺を追いかけて来たみさおの顔を見た時に俺は意識を失ったようだった。
そして、再び意識を取り戻した時には俺はプールサイドに寝かされていて、そこには俺のすぐ側で涙目になっているみさおと、安堵の表情を浮かべるみゆきが居た。
そして、俺が「・・・う・・・俺は・・・一体・・・?」と呟くと、その声に気付いたこなた達も一斉に俺の側へとやってきて口々に
「大丈夫?慶一君。とりあえず無事でよかったよ。」
「気分はどう?他に変な所はない?」
「けいちゃん、大丈夫?生きてるよね?」
「ご無事で何よりでした・・・。それと、申し訳ありません・・・。」
「良かった・・・慶ちゃん・・・。」
「慶一・・・わりい・・・私・・・私は・・・。」
すまなそうな表情と安堵の表情を見せる3年生組。
「はあ・・・よかった・・・手遅れにならなくて・・・。」
「私・・・とんでもない事をする所だったわ・・・。」
「とりあえず無事のようで、ほっとしたね。」
「まあ、永森さんは要反省だね。」
「う・・・。」
と、俺の無事に安堵しつつも、何かあったようで、落ち込むやまと。
「よかった・・・本当によかったよ・・・慶一先輩、どうなっちゃうのかと思った・・・。」
「・・・私は・・・何もできなかった・・・やっぱりみゆきさんは凄いな・・・。」
「一時はどうなる事かと思ったっスね・・・。いやはや、とにかく無事で何よりっスよ。」
「まさにデッドオアアライブネ・・・。ナンにしても、ヨカッタデス。」
「よかったー・・・本当によかった・・・。」
と、こちらも俺の無事に安堵している1年生組。
俺はゆっくりと体を起こすと、皆を見回しつつ
「あー・・・その、なんだ・・・皆、心配かけてすまなかった。皆の様子を見るにつけ、今回も結構やばかったのか?」
そう尋ねると、その場にいる全員が重々しく頷いた。
そして、俺の目の前で涙目になっているみさおが
「・・・ごめん、慶一。私がお前の足を掴んだりしなかったら・・・こんな事になってなかったかもしんねえ・・・本当にごめんな?慶一・・・。」
そう言って謝ってくるみさおに俺は、その時の事を思い出して
「あー・・・あの時俺の足が掴まれたような感じがしたのは気のせいじゃなかったって事か・・・みさおー?」
と、みさおを軽く睨みつけると、みさおは涙目のままビクリと一瞬震えた後、俯いた。
それを見ていたあやのが俺に
「慶ちゃん。みさちゃんには私からも後でよーく言っておくから、あまり怒らないであげて?みさちゃんもきっと自分のしでかした事の重大さはわかってると思うから。それに、今回はみさちゃんも慶ちゃんを助ける為に必死に頑張ってたから。みさちゃん無我夢中で慶ちゃんに人工呼吸を施してたしね。」
みさおをかばい、そう言って来るあやのの最後の部分に俺は、思い切り驚きつつ顔を赤くし、更に軽いため息を1つついて
「・・・え?そ、それってつまり・・・はあ・・・わかったよ。お説教はあやのに任せるとして、みさお、顔あげろ。」
そうみさおに言うと、みさおはおどおどしつつ顔をあげたのを見て、俺はみさおのおでこに照準を定めてデコピンを一閃させた。
「あうっ!い、いてえよ、慶一ー・・・。」
おでこを抑えて更に涙目な顔のみさおに俺は
「まあ、これで勘弁してやるよ。お前も俺を救う為に必死になってくれたみたいだしな。俺はもう怒ってないから、いつまでも落ち込んでるんじゃないぞ?みさお。お前にも楽しんでもらわなきゃ、ここに皆で来た意味がないんだからな?」
そう言ってやると、みさおは俺の言葉に思わず笑顔を浮かべると
「さんきゅー慶一。そう言ってもらえると、気が楽になるゼ。それに今の言葉も嬉しかったしな。でも、本当にごめんな?」
喜びつつもなおも謝ってくるみさおに俺は苦笑しつつ
「いいって、もう気にするな。俺はそう言ったぞ?さて、俺はもう少しだけ休ませてもらうよ。みさお達はもう少し楽しんで来いよ。俺ももう少し回復したら行くからさ。」
そう言うと、みさおは笑顔で頷き、事の成り行きを見守っていたこなた達もまた、その状況に安堵しつつも肝心な時に言い争いをして、俺を危険に晒しかけた事を詫びると、皆で一緒に改めてプールに向かって走って行くのを俺はまた少し横になりつつ見送っていたのだった。
そして、この後はウォータースライダーでも遊ぶ事となるのだけど、ここでもまた、ちょっとしたハプニングが起きる事をその時の俺には気付きもしなかった。
かくて、命の危険に脅かされた初日だが、まだまだ俺達の初日は続いて行く。
その様子は、また次回に話して行きたいと思う。