受験に向けての強化の為、そして、それぞれに学力アップの為、更には、宿題を片付ける為に俺達は、大人数での勉強会を敢行する。
勉強会前日にこなた達がやってくるという一幕もあったものの、俺達はなんだかんだで無事に初日を乗り切ったのだった。
その日の夜にそれぞれの勉強の進め方を言い合い、2日目はそれを目標に進めて行くこととなったのだった。
日付が変わって2日目の朝、俺は何やら自分の隣に柔らかな感触を感じて目を覚ます。
「・・・ん?ふああ・・・なんだ、この感触は・・・って!みゆき!!」
寝ぼけ眼で隣を見ると、そこには、またしても俺のベットで眠っているみゆきの姿を見つけたのだった。
一瞬慌てた俺だが、以前にもあったことなので、俺はすぐに冷静さを取り戻すと、とりあえず、みゆきを起こさないようにベットから出て軽くため息をつく。
俺は幸せそうに眠るみゆきを見ながら
「ふう・・・みゆきの部屋までは俺の部屋も通り道になるからなあ・・・少し部屋割りを考え直した方がいいかも、だな。」
と、そう呟きつつ、考え込んでいる俺だったが、そこに、俺の一瞬出した声に気付いたかがみとやまとが俺の部屋に飛び込んできて
「今の声は何!?慶一くん、何かあったの?」
「先輩、驚くような声が聞こえたけど、どうしたの?」
と聞いてくる2人だったが、俺のベットですやすやと眠るみゆきを見つけると
「みゆき?慶一くん、あんたまさか・・・って、それはないか・・・。みゆき、また寝ぼけたのね・・・。」
「高良先輩は相変わらず、みたいね。ともあれ、心配するほどの事ではなかったわね。」
と言う2人に俺はおそるおそる
「えと・・・怒らないのか?2人とも。」
と、聞いてみると、2人とも軽いため息をついて
「前にもあった事だしね。それに、あんたが引っ張り込んだんじゃない、ってのが分かってるからね。私も皆と一緒に慶一くんの家なんかに泊まったりするうちに、みゆきの行動が何となくだけど分かるようになってきたのもあるかしらね。」
「高良先輩は結構天然な所ある、って先輩も言ってたものね。それに、文化祭の準備する際にお世話になった時にも高良先輩の時折垣間見せた突拍子もない行動も見ているしね。それに関しては慶一先輩を責められる事でもないもの。」
と言う2人に俺は内心、ほっとしつつも
「とはいえ、この状況に慣れ始めてる俺達も俺達か・・・。」
と呟くと、その言葉に2人もまた、苦笑を浮かべていたのだった。
「とにかく、起きたのなら準備して朝御飯にしましょ?今日は確か当番はつかさと峰岸と八坂さんだったわよね?」
「今朝も料理の得意な人が当番なら、安心はできるわね。こうもあれで意外と料理は出来るし。」
と言うやまとにかがみは驚きの表情を向けつつ
「え?八坂さんも結構できたりするの?知らなかったわ。」
やまとにそう尋ねると、やまとはその言葉に頷きつつ
「そうよ?あれで、いつかは1人暮らししても大丈夫なようにするんだ、って言って鍛えてるらしいわ。」
そのやまとの言葉に俺は、中学時代を思い出しながら
「そういや中学生の頃には俺はあいつの料理の試食は結構やらされたっけな。でも、その甲斐もあって大分腕はあげたようだけどな。」
その言葉にやまとは苦笑しつつ
「最初の頃は先輩が気の毒だったわね。ほとんどあの時は毒見のようなものだったし。あの時の先輩には今だから言うけどかなり同情したものよ?」
その言葉に俺はため息をつきながら
「そう思うのなら、何であの時に見て見ぬふりしてたんだよ・・・。まあ、今更言っても仕方ないけどな・・・。」
俺の言葉にやまとはしれっと
「それはまあ、先輩よりもこうと友達やってる長さの違いがあったから、かしらね。先輩が毒見させられてるあの頃より前に、私も食べさせられた事があった、と言う事よ。」
そう言うやまとに俺は、再び軽いため息を1つついた。
そんな俺達のやり取りを見ていたかがみは
「ふうん?慶一くんの中学校時代って色々あったのね。でも、ちょっとだけ羨ましいかな?永森さんや八坂さんや慶一くんのその関係がさ。話を聞いていると私もその頃から慶一くん達と一緒に過ごしてみたかったかも、って思うしね。」
そう言うかがみに俺は軽く笑いながら
「はは、まあ確かにそれも面白かったかもしれないな。でも、俺はあの頃以上に今が凄く楽しいし、幸せだ。かがみ達とは高校で出会ったけど、そのおかげで凄く楽しい学園生活を過ごさせてもらってるからな。それはそれですごくいい時間の中にいるって思ってるよ。」
その言葉にやまとも頷くと
「そうね、先輩の言うとおりだわ。あの時は私達は3人だけで進んでいくのかもしれない、って思ってたけど、高校に入ってからは、本当の意味で信頼できる先輩や後輩達ができたものね。あの時には想像もしなかった事だけど、それが凄く楽しいと思えるわ。」
やまとのその言葉にかがみは、嬉しそうな顔をしながら
「そ、そう?そう思ってくれてるならよかったかな?でも、結局お互いに・・・。」
かがみの最後の台詞を補足するようにやまとが
「今が楽しいって思えているのなら、この出会いは意味のあるものだったという事よね?」
と言う2人の言葉に俺は頷いて
「ああ。そうだな、俺もそう思うよ。」
そう言って、笑顔を向けるかがみとやまとに俺も、笑顔を向けたのだった。
そして、そんな話をしている時にみゆきがようやく目を覚ました。
「ん・・・んん・・・ふあ・・・ここは・・・。」
そう言いながら寝ぼけ眼で部屋の中を見回すみゆきだったが、俺達の姿に気付いたみゆきは
「・・・あ、慶一さん、かがみさん、永森さん。おはようございます。ええっと、何故皆さんが私の部屋に集合しているのでしょうか?」
と言うみゆきの言葉にかがみは呆れながら
「はあ・・・みゆき?よーく部屋の中を見てみなさいよ。ここってあんたの部屋じゃないでしょ?」
そう言うかがみに俺とやまとも苦笑していたが、その事を指摘されて再度部屋の中を見回したみゆきは
「えー・・・っと・・・あ、ああああ!?こ、ここは・・・まさか慶一さんの・・・部屋、ですか?」
と、おそるおそる聞いてくるみゆきに俺達は重々しくうなずくと、みゆきはさーっと顔を青くすると
「す、すすすすみませーん!わ、私ったらまた・・・。」
狼狽するみゆきに俺は苦笑しつつも
「慌てるなって、すでにやらかした後だったんだしな。まあ、それよりもそろそろ自分の部屋に戻って着替えて来いよ。もうすぐ朝食だぞ?」
と言うと、みゆきは恐縮しつつも慌てながら
「は、はい。とりあえず着替えて来ますね?本当にすみませんでした。」
そう俺達に告げて俺の部屋を出て行き、自分の部屋へと大慌てで戻って行くのを俺達は見送っていたが、それと入れ替わりでこなたとみさおが俺の部屋へやってきて
「慶一君、もうすぐ御飯できるよ?って、あれ?かがみと永森さんがどうして慶一君の部屋にいるの?」
「慶一ー!ちびっ子と呼びに来たゼー?って、あれ?ほんとだ。」
と、俺を迎えに来た2人の姿に驚きつつも俺達は事の顛末を2人に説明すると、2人とも苦笑しつつ
「みゆきさんも相変わらずの天然行動は萌えだねえ。」
「普段の高良からは想像できねえよなー。」
と言っている2人に俺達は再度苦笑するしかなかった。
そんな朝の一幕もあったが、とりあえず朝食を済ませ、俺達は、早速今日の分の勉強と宿題を始めるのだった。
全員で今までやってきた勉強のやり方で宿題やそれぞれの勉強を進めて行く。
そして、早々に自分の宿題とその日の分の勉強をあらかた片付けた俺とかがみ、みゆき、あやのの4人は、まだ宿題や勉強の済んでいない人や後輩達の勉強を見る為にあちこち声をかけられる方へと行ってはわからない所等のアドバイスをするのだった。
「慶一先輩、ここなんですけど・・・。」
「慶一先輩、私もここがよくわからなくて・・・。」
と聞いてくるゆたかといずみに俺は
「ここは、こうやって、こうだ。前の計算式を参考にしながらだな・・・と言う感じだ。いずみ、ここはこの文章をだな・・・と言う感じだ。」
と2人に説明しながら教えていく。
「かがみ先輩、ここはどうやるっスか?」
と言うひよりにかがみは
「ああ、ここはね?こっちの文法がこうだから・・・となるのよ?」
そう言いつつ説明をしながらわかりやすく教える。
「・・・みゆきさん、ここはどうやったら・・・。」
と言うみなみにみゆきは
「ここはですね、教科書のこのページに意味が載っていますよ?」
と教科書を見せながらみなみに説明していた。
「アヤノ、ここはどういうイミになるデスカ?」
と尋ねるパティにあやのは
「ええっと、ここはね?この部分が・・・と言う感じよ?ちゃんと伝わったかしら?」
と言うあやのにパティはビシッと親指を立てて
「バッチリデス!サスガアヤノですネ。とても分かりやすいデス。」
と言うパティの答えにあやのもほっとしていたようだった。
2年生組もお互いに教えあいながらやっていたようで
「やさこー。ここはこれでいいの?」
「ぶっさん、これはこうだよ。」
「永森さん、こっちはあってる?」
「たまきさん、それで正解よ?こう、この部分だけど・・・。」
と、さいごにやまとがこうに問題の事を尋ねると、こうは少し困ったような顔で
「ああ、それは私もちょっと悩んでた所だね、丁度先輩達も小早川さん達の指導が終わったみたいだし、今度は私達も先輩達に教わろうよ?」
そう言い、皆もそれに同意したようで、こうが皆を代表して俺達に声をかけてきたのだった。
「慶一先輩達、私達の方も勉強見てもらえませんか?」
と言って来たので、俺達は頷いて
「いいとも。今ゆたか達の方も終わった事だしな。かがみ、みゆき、あやの、いけるよな?」
と聞くと、3人共頷いて
「こっちはいつでもいけるわよ?」
「お任せください。」
「今度は八坂ちゃん達の方ね?わかったわ。」
と言い、俺達は2年生組みの面倒を見に行くのだった。
そんな折、一生懸命宿題を写していたこなた達が
「ねえねえ慶一君ー。私達の方は見てくれないの?」
「ゆたかちゃん達や八坂さん達は見に行ってるけど、わたし達の方は見てくれてないよね?」
「そーだぞー?そいつ等ばっか見てやってずるいじゃんかー。」
と言って来るのを聞いて、俺は軽くため息をつくと、3人に
「お前らは今宿題を写してるところだろう?まだ勉強の方へ移っていないんだから、教えるも何もないだろう?」
そう言うと、3人は”しまった!”というような表情でバツの悪そうな顔をしているのを見て、かがみ達も呆れたような顔をしつつ、3人を見ていた。
俺は、そんなこなた達を見て苦笑してから、改めてこう達の勉強を見てやりに行った。
そして、その後宿題を終えたこなた達も勉強に移った頃、そっちの様子も見てやり、今日の分は終了となったのだった。
そして、その日の夕食後、それぞれに思い思いに時間を過ごしていたのだが、俺もまた、久々に部屋の中を少し整理しようと思い、軽く押し入れにしまってある実家から持ってきていた私物の整理をしていたのだが、その時に俺は、その中からある1枚の写真入りの手紙を発見する。
そして、その手紙の封筒にある名前を見た時俺は、今まで忘れていたある事を思い出すこととなった。
それは、俺が小学校6年生の頃に出会ったある人に関する記憶だった。
その封筒に書かれていた名前は”篠原しおん”
俺が、小学生の頃に経験した、俺の実らなかった初恋の人だった。
俺は震える手で、当時読めなかった”しおん”からもらった手紙の封を開いて手紙を取り出し、そこに書かれている文章に目を落とす。
そこにはこう書かれていた。
『慶一君へ。
君と過ごした小学校を転校して1ヵ月が経ったけど、慶一君、元気にやってる?
私は新しい学校に通っているけれど、今の私は慶一君と会った時のような周りに壁を作っていた頃の自分じゃなくなっているわ。
これも慶一君が私を変えてくれたからだな、って思ってる。
凄く感謝してるのよ?でもね、やっぱりここに慶一君がいない事がとても寂しい。
慶一君は私に3年待ってくれ、お前につりあうような完璧な男になってみせるから、って言ってくれたわよね?私も慶一君の言葉を信じて3年間を待とうって思った。
最初はそう思ったんだけどね、でもやっぱり、慶一君が今私の側にいない事が凄く寂しくて、何度も慶一君に会いたいって思ってしまうの。
あの時は強がってみたけど、結局自分のそんな寂しい気持ちに負けかけてる。
我ながら情けないなって思ったわ。
でもね、慶一君と離れてみて、私は本当に慶一君が好きなんだって、改めて思った。
だから、今度会う時には、慶一君の事、もっと好きになってそして、あの時よりももっと強い気持を慶一君に伝えるから、だから、待っててね?
誰よりも慶一君を好きな、しおんより。』
俺はその手紙を何度も読み返し、そして、忘れていた気持を思い出すと、気付けばその当時の自分を思い出して涙をこぼしていた。
そんな俺の背後にかがみとやまとの2人がいる事にも気付かずに、俺は少しの間、泣いていたのだった。
かがみside
今日の勉強も無事に終わり、私はこの自由時間を満喫しつつ、また慶一くんの部屋に行って一緒にラノベでも読もうと部屋へと足を運んだ。
その途中で同じように慶一くんの部屋へと向かおうとする永森さんに会った。
「あら?永森さんはどこへ行こうとしてるの?」
そう声をかけると、その声に気付いた永森さんは私の方へと向き直って
「あ、かがみ先輩。私は慶一先輩の部屋へと行ってみようと思ってて、その・・・これを読もうかなって思ってたのよ。」
そう言って私に手に持っていたラノベを見せると、私はそれに苦笑しながら
「あはは、永森さんもだったんだ。実は私も、なのよね。」
そう答える私に永森さんも苦笑して
「ふふ。目的は一緒、という訳ね?なら一緒に行かない?かがみ先輩。」
と言う永森さんの提案に私も頷いて
「そうね、それじゃ行こっか。」
そう言うと、永森さんもそれに頷いて、私達は一緒に慶一くんの部屋へと向かった。
そして、一応部屋のドアをノックしてみたものの、慶一くんからの返答もなかったので、私達は顔を見合わせつつ、不審に思いながらも、少しドアを開いて慶一くんの部屋の中の様子を伺ってみた。
すると、部屋の中央で箱のような物を整理してる最中っぽい慶一くんが何かに食い入るように見入っている姿を見つけて、私と永森さんは再度お互いに顔を見合わせると、慶一くんを脅かそうとこっそりと2人して部屋へと進入した。
私達が部屋に入って来たこともそうだけど、わたし達の侵入にすら気付かない慶一くんの背後にまわり、そっと慶一くんの見入っている物を背後から覗きこむと、どうやら手紙らしかった。
と同時に、私はその隣に落ちている写真に目を移す。
どうやら慶一くんが見入っている手紙に、その写真は入っていたようだった。
私は、慶一くんが見ている手紙の内容も気にはなったが、写真に写っている女の子の事も気になっていた。
そうこうしているうちに、慶一くんが手紙を読みながら涙をこぼし始めたのを見た私は、今だ私達に気付かない慶一くんに声をかけてみる事にしたのだった。
「・・・えっと、その・・・慶一くん?」
そんな風に慶一くんに声をかける私を、永森さんもじっと見つめていた。
慶一side
私物の整理をしていて、偶然にも発見した手紙は、俺が激しすぎる悲しさと共に無意識に封印してしまっていた記憶を呼び覚ます物だった。
俺はその記憶を取り戻し、今までこんなにも大事な事を忘れていたという事に情けなさと悲しさと申し訳なさで泣いていたのだった。
そんな時に何時の間にか俺の部屋に侵入し、俺の背後にいたかがみから声をかけられる事となった。
「・・・えっと、その・・・慶一くん?」
その言葉に”はっ”と我に帰ると、涙目の顔のままかがみの方へと振り向いて
「か、かがみ?それにやまとも、お前らいつからここに?」
と少し驚きつつも尋ねると、2人ともバツの悪そうな顔になって
「えっと、その・・・一応声はかけたんだけどね、何か慶一くん、何かに見入っていて私達の気配にも気付かないみたいだったからさ・・・。」
「それで、ちょっと先輩を驚かせようと思って、私達は先輩の背後にそっと近づいた、って訳。」
そんな2人の言葉に俺はとりあえず涙を拭きつつ
「そっか。おまえ等の事に気付かなかったと言うのなら、よっぽど俺はこの手紙に意識を集中させてしまっていたんだな。で?どうしておまえ等がここに?ってまあ、何となく察しはつくけど、この手紙とその写真の子について聞きたい、って言う所かな?」
その言葉に2人は困惑しつつ
「その、最初は慶一くんの部屋でラノベを読もうって思って来たって言うのが本当の目的だったのよ。でも、部屋に入ってみたら慶一くんが手紙に見入っているのが見えたから・・・。」
「手紙を読みながら泣いている先輩を見て、私達は先輩にその事を尋ねてみたくなったのよ。でも、先輩が泣くなんてよっぽどの事よね?だから、その、先輩が話したくない、話せないという事なら、無理には聞かないつもりよ?」
と言う2人に俺は自嘲の笑みを浮かべつつ
「そうやって強がってるけど、結局は気になってるんだろ?いいさ。話すよ。というか、この事は皆にも話したい。だから、2人とも、皆をあの大きい勉強部屋へ集めてくれないか?」
という俺の言葉に、かがみとやまとは少し驚いたような顔をしていたが、俺の言葉に頷くと
「・・・わかったわ。とにかく皆に声をかけてあの部屋へと集まってもらうわね?それじゃ行こう、永森さん。」
「そうね、行きましょう。じゃあ、先輩、後でまた。」
そう言って、部屋を出て行く2人に俺は「よろしく頼む。」と短く言うと、2人が出て行ったその後で勉強専用の大部屋へと足を運んだのだった。
勉強部屋に辿り着いた俺は、皆が集まるのを待っていたが、そうこうしているうちにかがみとやまとが皆を引き連れて部屋へとやってきた。
「慶一くん。言われた通り、皆を連れてきたわよ?」
と言うかがみに俺も頷きを返すと
「ありがとう、かがみ、やまと。皆、突然集まってもらってすまないな。皆に集まってもらったのは、皆に話しておきたい事があるからなんだ。」
と、集まった皆を見渡しながらそう言うと、こなたが俺に
「話しておきたい事、って一体なんなの?」
と聞いて来たので、俺はまず、持っていた手紙をテーブルに置いて
「うん。皆、まずはこれを見て欲しい。」
と、皆に手紙を見るように促すと、みんなは手紙を広げてその文章に見入っていた。
そして、手紙を読み終えたみゆきが黒いオーラを発しながら
「これは・・・慶一さん宛てのラブレターみたいですね・・・。私達にこのようなものを見せて、慶一さんはどうしたい、というのでしょうか?」
と言う、みゆきの言葉を皮切りに、他の数人もまた不機嫌そうな顔を向けていたのを見たが、俺はあえてその視線を受け止めつつ
「・・・まあ、内容的にはそういう事なんだ。そして、聞いてもらいたい事っていうのは、その手紙の主、”しおん”の事、そして、俺が無意識的に封じ込めた記憶、そして、俺の罪を皆に話してここにいる全員から、その事に対する裁きを受けたいと思ったからだ。」
俺のその言葉にやまとが
「裁き?先輩が裁かれるような事をしでかしたとでもいうの?」
そう言い、俺はその言葉に頷いて
「ある意味、俺の罪でもある、と思ってるからな・・・この話をした後の皆からの批判等は甘んじて受けるつもりだ。そうでもしないと・・・俺の気がすまないんだ・・・。」
俺のその言葉にゆたかが
「・・・わかりました。何があったのかは先輩からお話を聞かせてもらわないとわかりませんけど、それで先輩の気が少しでも済むと言うのなら私達は話を聞きますよ。」
ゆたかの言葉に頷くみなみ達、それにこう達やつかさ達。
それを見て俺は1つ頷くと
「ありがとうな。それじゃ早速話すよ。あれは、俺が小学校6年生の頃だった・・・・・・。」
そう言って俺は、当時の事を皆に話し始めた。