らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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始まりの六重奏~不安と苦悩とささやかな幸せの始まり~

瞬の一件で、俺は事件の犯人を知る事となったが、その犯人もまた、この世の人ではないという事実を受けて、心に少し複雑なものを感じつつも、この一件はこれで終わりだと思い、俺は事件の事を割り切る事にした。

 

そして、改めて瞬の仏前で報告すべき事を伝え、これからは瞬の分まで皆と共に前に進んで行く事を決意したのだった。

 

そして、その中で俺は、今度こそは仲間達を傷つけさせない、と心に改めて誓い、龍兄の提案もあってみゆき達を俺の家で預かる事にしたのだった。

 

そして、そんな事のあった次の日の朝・・・・・・。

 

俺は、自分が何か、柔らかい物を抱きしめているような感覚を感じていた。

 

それと同時に、俺を呼ぶ誰かの声が聞こえて来て、俺は意識を覚醒させる。

 

すると、そこには俺を真っ赤な顔で見上げるやまとの顔が近くにあったので、俺は驚いて思わず

 

「・・・え?は?えっと・・・ええええええ!?」

 

と、思わず大きな叫び声を上げて、やまとから慌てて離れたのだった。

 

そして、顔を赤くしながら慌てつつ俺はやまとに

 

「や、やまと。俺はお前に何をしたんだ?というか、何でお前が俺の部屋にいたんだ?」

 

そう聞くと、やまとは今だ赤い顔のままではあったけど、俺に

 

「・・・先輩は、その・・・先輩を起こしに来た私を・・・寝ぼけて抱きしめていたのよ。いきなりであまりの事に私もパニックになっちゃって、それで、先輩に必死に呼びかけていたら、先輩が目を覚まして、って事なのよ。」

 

と、そう事情を説明してくれた。

 

俺は、以前にも同じ過ちを犯した事があったのを思い出して、頭を抱えて自己嫌悪しながら

 

「・・・そうか、事情はよくわかった。ごめんな?やまと。寝ぼけていたとはいえ、お前に抱きつく、なんて事しちやってさ・・・。」

 

と、自分の行動に凹みつつもそうやまとに謝る俺だったが、やまとはそんな俺の言葉に首をふるふると振って

 

「別にいいわよ・・・。こうなったのも先輩の所為だけじゃないし、私にも油断があったんだろうし・・・。でも、謝らないでよ、先輩。私は別に・・・その・・・抱きしめられた事は嫌じゃなかったから・・・。」

 

と、最後の方はかなり小声になってしまっていた所為で俺もよく聞き取れなかったが、とりあえずやまとが怒っている、という訳じゃなさそうだ、と言う事だけはわかった。

 

俺は自分の行為に1つため息をついた後

 

「とにかく、起こしてくれてありがとな、やまと。着替えたりとかして準備していくから、皆と下で待っていてくれ。」

 

そう言うと、やまとは苦笑しつつも頷いて

 

「わかったわ。それと、起こした事に対するお礼はいいわよ。これから先輩の家でしばらくはお世話になるんだからこれくらいの手伝いくらいはしないと、だしね。」

 

そう言って笑うやまとに俺も照れながら

 

「そっか。なら、これからもお前等の自主性に任せる事にするかな。あ、それと、あまり気負いすぎないでくれよ?俺達はいつもの俺達で行けばいい。ここでも自然体でやってくれればいいしな。」

 

と言う俺の言葉にやまともクスッと笑うと

 

「言われなくてもわかってるわよ。それじゃ私は先に下に行くわ。先輩、また後でね?」

 

そう言って、部屋を出て行くやまとを見送リつつ、軽いため息を1つついてから、俺は学校へ行く準備を始めるのだった。

 

やまとside

 

先輩の部屋から下へと戻りながら、私は今朝の顛末について再び思い出していた。

 

昨日から慶一先輩の家でお世話になることになり、私達は、明日から少しでも先輩の負担にならないように、今日から当番制で朝食を作ろう、と言う事になり、慶一先輩が起きる時間よりも早起きをして4人で朝食の準備をした。

 

そして、あらかた出来上がる頃には、そろそろ先輩の起きる時間も近づいて来ていたので、高良先輩が私に

 

「永森さん。申し訳ないのですが、そろそろ慶一さんを起こしに行って来ていただけませんか?後の準備は私達でやっておきますから。」

 

そう言って来たので、私は先輩の言葉に頷いて

 

「わかったわ。それじゃこっちの方はお願いね?こう、岩崎さん。こっちは任せるわ。」

 

そう言うと、こうと岩崎さんも頷いて

 

「りょうかーい。こっちは任せといて。先輩起こしに行って来なよ。」

「・・・後はもう大した事はありませんから大丈夫です・・・。永森先輩は慶一先輩の事、よろしくお願いします・・・。」

 

と言う2人に頷くと、私は、踵を返して慶一先輩の部屋へと向かった。

 

先輩の部屋の前に来て、一応ドアをノックしてみたが、先輩からの返答はなく、私は小声で「入るわよ?先輩。」と言いながら先輩の部屋へと入って行き、先輩が寝ているベットへと歩いていった。

 

そして、気持よさそうに寝ている先輩を見て私は少しの間、そんな先輩の寝顔を眺めていたけど、自分の頼まれた事を済ませてしまおうと思い、先輩を起こす事にしたのだった。

 

最初は軽く呼びかけてみたけれど、反応なし。

 

次は、先輩の体を揺すって声をかけて起こそうと試みてみたのだが、その時に私にとっても思いがけない事がおきたのだった。

 

先輩の体を揺すっている時、寝ぼけた先輩が私を突然抱きしめたのだ。

 

私は、そんな先輩の突然の行為に赤面してパニックになった。

 

そして、私は慌てた声で先輩に

 

「せ、せせせ先輩!?いきなり何を?ちょっと先輩!先輩ってば!」

 

と言いながらも混乱しまくっている私は、先輩を振りほどきもせずにその状態で少しの間いたのだけど、やっと先輩を振りほどかないと、と思った時、私の脳裏に以前、泉先輩が言っていた事が浮かび上がってきた。

 

(・・・・・・でも、パティが慶一君に気を使って家をしばらく留守にする事になっちゃっててさ、それがさらに慶一君の寂しさをあおる事になっちゃったみたいでねー・・・。帰ろうとしたけど、慶一君に抱きしめられて、今晩だけで良いから一緒に居てくれ、って言われちゃったんだよねー。)

 

あの時泉先輩が、慶一先輩が寂しがっていた、だから、泉先輩を抱きしめたのだという事だったのだ、と言っていた事を思いだした。

 

だから私は、そんな先輩のために少しの間だけ先輩の抱きしめるがままにされていよう、と思い、ほんの数分だったけれど、先輩の好きにさせておいた。

 

でも、流石にそろそろ起こさなければと思った私は、先輩に再び声をかけると、先輩はようやく起きたみたいだったのだが、私の顔が近くにある事に驚いたらしく、傍目でみたら笑ってしまうほどにびっくりしていた。

 

そして、慌てる先輩に、私は先程まで私と先輩の間に起きていたことを話したのだった。

 

自分のした事に軽く落ち込む先輩だったが、私も嫌だったという訳ではなかったので、その事を先輩に話して安心させると、先輩に学校へ行く用意をして降りてきて?と声をかけたのだった。

 

慶一side

 

いくら寝ぼけていたとはいえ、俺は、やまとに対して物凄く恥ずかしい真似をしてしまった。

 

俺は、その事に落ちこんでやまとに謝ったのだけど、やまとは気にはしていない、と言ってくれたので、俺はその事に少しだけほっとしていた。

 

とりあえず、いつまでもこうしていても仕方がないと思ったので、俺は着替えを済ませて学校へ行く準備を済ませると、皆のいるキッチンへと降りていったのだった。

 

だが、俺はこの時失念していた。

 

この家には小悪魔的存在の奴が居たという事に。

 

そして、その小悪魔は俺の後にキッチンに姿を現すと同時にやってくれた。

 

「おはよう、皆。朝御飯等の準備を任せちゃってすまないな。」

 

と、皆に朝の挨拶をしつつ、自分の席へとつく俺に、皆も

 

「おはようございます、慶一さん。お気になさらずともいいですよ?今回の事は私達の意思でやった事なんですから。」

「・・・これからしばらくお世話になるんです・・・。このくらいの事はしないと、って思ったので・・・。」

 

と、みゆきとみなみが俺に言い、こうとやまとも

 

「高良先輩の言う通りですよ。しばらくお世話になる以上は家事も協力しないと、って話です。」

「だから、先輩もさっき私に言ってくれた通り、自然体でやってくれればいいわ。」

 

と言ってくれたので、俺は

 

「そっか。なら、これからも家事は分担でやったりとかしていくか。でも、皆、俺にも遠慮はするなよ?お前等が俺に気を使うかもって事は何となくわかるから、その所為で自分が、自分がって言う風にはならないように気をつけなきゃな。」

 

そう言うと、みゆきがいつもの微笑みを浮かべながら

 

「わかりました。慶一さんのおっしゃる通りにしますね?ですから、慶一さんも、慶一さんがおっしゃられたように自然体でやってくださいね?」

 

と、そう言うと、俺も笑って頷きながら

 

「わかってるさ。なら、今日、学校が終わって家に戻ったら、改めて家事の分担なんかを決めようぜ?」

 

そう、俺が言うと、皆もコクリと頷いてくれたのを確認してから俺は、朝食を摂る為にコーヒーを入れて、皆にも配りつつ、自分も席に落ち着いたのだった。

 

そして、席に着いてすぐにパティもやってきて「グッモーニン!!」と皆に元気よく挨拶をしながら自分の席に着くのを見届けてから俺は、早速コーヒーを一口飲んだ。

 

俺が一口コーヒーを飲み終わる頃には、パティも皆との挨拶を終えて朝食を食べ始めたのだが、その時にパティはふいに俺の方を見てニヤニヤと笑みを浮かべながら

 

「グッモーニン、ケイイチ!サキホドはオタノシミでしたネ?」

 

そう言って、この場に大きな爆弾を投下したのだった。

 

その言葉にやまとは真っ赤になり、俺はもう一口含んだコーヒーを「ぶーーーーっ!!」と思いっきり噴出し、むせ返った。

 

「ゲホ、ゴホッ、パ、パティ、お前一体・・・。」

 

俺は、むせ返る状況を必死にもとに戻しつつ、尋ねると、パティは更にニヤニヤしながら

 

「サキホドケイイチのヘヤからケイイチのサケビゴエがキコエました。ワタシもビックリしたのでヨウスをミにイキましたが、こっそりケイイチのヘヤをノゾいてみると、ケイイチとヤマトがダキあっていたのをミましたヨ?」

 

物凄くいい笑顔でそう言うのだった。

 

その言葉に俺は、額に手をあてながらため息をつき

 

「あ、いや、あれはだな・・・っ!!」

 

事情を説明しようと言葉を発しようとした瞬間、突然にこの場の空気が張り詰める感覚に、思わず俺は言葉を失った。

 

この冷たく、そして威圧的はオーラを纏った空気の出所を探るべく、おそるおそる周りを見渡してみると、俺の視線の先に、物凄い良い笑顔で笑っているみゆきが目に入った。

 

だが、その笑顔とは裏腹に、恐るべき圧力のオーラを俺にぶつけてくるみゆきに、俺は顔を引きつらせながら

 

「あ、あの・・・み、みゆき、さん?」

 

と、おずおずと声をかけてみると、みゆきはその笑顔のままで

 

「どうかしましたか?慶一さん。何だかお顔が引きつっていらっしゃるみたいですが?」

 

その言葉に俺は、背筋に冷たいものが走るのを感じて、そんなみゆきに恐れを感じつつ

 

「い、いや、えっと、その・・・もしかして怒っていらっしゃる?」

 

と、つい丁寧語で聞き返す俺に、みゆきは更にオーラを膨らませながら

 

「怒る?何の事でしょう?慶一さんは私に怒られるようなやましい事でもおありでしたか?」

 

その言葉に更にしどろもどろになりつつ俺は

 

「い、いや、ベ、別にそんな事はないんだけどさ・・・。」

 

そうみゆきに言うと、みゆきは笑顔を崩さぬままに

 

「そうですよねえ・・・。永森さんと抱き合った事なんて、慶一さんにとってはやましい事ではないですよね?そうですよねえ?」

 

その言葉に俺は、胸に何かが大きく突き刺さる感覚を覚えながら

 

「み、みゆき?あのな?それは事故、事故だから。俺自身にはやましい気持ちなんてないんだから、だから、誤解しないでくれよ。」

 

と、必死にみゆきの指摘した部分に対する弁解をしたのだが、今のみゆきには結局、俺の言葉は届かないようだった。

 

そんな状況を、居たたまれなくなりつつも冷や汗をかいている他の皆だったが、あまりの恐怖に他の皆もみゆきには何も言えないようだった。

 

俺もまた、これ以上の弁解も無駄かもと思い、もはやみゆきを説得する事を諦めたのだった。

 

しかし、そんな時やまとが

 

「高良先輩。慶一先輩は悪くはないわ。今回はたまたま先輩が寝ぼけていてやった事だもの。それに、高良先輩、瞬一先輩が亡くなってからの慶一先輩の状況と、初めに慶一先輩の様子を見に行ってその結果を私達に教えてくれた泉先輩の言葉を思い出して?今の先輩がそう言う行動をとってしまう事は仕方のない事よ?あの事件からまだそれ程に時間も経っていないのだもの。普通の人なら下手をすればまだ立ち直れてはいない程度の時間しか経っていないのだから、先輩の心にまだ寂しさを感じる心が残っていてもおかしくはないのよ?」

 

そう言って俺をフォローしてくれた。

 

そして、その言葉を聞いたみゆきは、ふっと、オーラを収めて

 

「・・・そうでしたね。ちょっと大人気なかったかもしれません。でも、慶一さん?今回の事は色々な事があったがゆえの行動と思って咎めはしませんが、それでも節度のある共同生活を送る為にも、軽率な行動はなさらないよう、注意してくださいね?」

 

と言うみゆきの言葉に俺も頷いて

 

「わ、わかってる。元よりそのつもりだしな。とりあえず、朝食済ませて学校いかないとな。」

 

その言葉に他の皆も、やっと緊張が解けたみたいで、再び俺達は朝食を再開させて食事を済ませた。

 

朝食の後片付けをしてる時、こうとみなみは先程のみゆきの状態を振り返り、小声で話していた。

 

『いやー、さっきは怖かったねー・・・。岩崎さん、高良先輩ってあんなに怖い人なんだ?』

『・・・いえ、あんなみゆきさんは初めて見る気がします・・・。凄く怖かったです・・・。』

 

そして、そんな2人にパティも

 

『ウーン・・・これからはミユキをヘタにオコらせないホウがいいようですネ・・・。ワタシもキをつけマス・・・。』

 

そう言っているのが俺にも聞こえたので、俺はパティの側に行って

 

『パティ、頼むからあまり変な事言わないでおいてくれよ。お前も怖かったろうけど、俺も寿命が縮む思いだったよ・・・。』

 

そう言うと、パティもぺロリと舌を出して

 

『ソーリィ、ケイイチ。コンゴはジチョウします。タブン・・・。』

 

その言葉に俺は思わず

 

『たぶん、ってなんだよ、たぶんって。はあ・・まったく勘弁してくれ・・・。』

 

そうツッコムと、パティも苦笑していた。

 

そして、朝食の片付けを終えてお茶の準備をしている頃、いつものようにあやのがやってきた。

 

そして、あやのは、予定日よりも早くに皆が来ていた事を驚いていたが、事の経緯を説明すると、納得してくれたようだった。

 

俺は皆を先に玄関の外に待たせて、最後の戸締りをしていたが、やまともまた、お手洗いに行っていた為に、皆より少し遅れて出てきたが、その際に玄関で俺と鉢合わせる事となった。

 

そして、俺が靴を履いているときに、不意にやまとが俺に声をかけてきた。

 

「先輩、待って?はい、これ。」

 

そう言って俺に、何かの包みを差し出してきたので、俺は首を傾げつつそれを受け取って

 

「ん?やまと、これは何だ?」

 

そう尋ねると、やまとは顔を赤くしながら

 

「今日からお世話になるんだし、私も先輩にお弁当くらいは作ってあげようかな?ってね。今朝は高良先輩達よりも早めに起きて準備したのよ。その・・・食べてもらえるかしら?」

 

その言葉に俺も少し顔を赤くしつつも

 

「そ、そうか。気を使わせちゃって悪いな。でも、ありがとう。これ、ありがたく食べさせてもらうよ。」

 

そうお礼を言うと、やまとも赤い顔のままだったが、嬉しそうに笑ってくれた。

 

「後で感想は聞かせてもらうわね?それじゃ、皆を待たせているから行きましょ?」

 

その言葉に俺も頷いて「ああ、それじゃ行くか。」と言って、家を出ようとしたが、その前にやまとにもう一言言っておく事があったので、やまとに

 

「やまと。さっきはありがとな?俺の事フォローしてくれて。それに、気遣ってくれた事も嬉しかったよ。」

 

そう言うと、やまとは照れながら

 

「ベ、別にいいわよ。今の先輩の状況を考えた上での事なんだし。でも、高良先輩も言っていた通り、今後の行動には気をつけてよ?先輩。次はちゃんとフォローできるかどうかはわからないから。」

 

そう言うやまとに俺も頷いて

 

「わかってるさ。とりあえず行こう。皆待ってる。」

 

そうやまとに促すと、やまとも頷いた。

 

それを見てから俺は玄関を出る。

 

外では、俺達が遅かった事に対する抗議がなされたが、何とか謝って事無きを得たのだった。

 

俺達は連れ立って電車へと乗り込む。

 

その後、かがみ達と合流したが、やっぱりかがみ達も、みゆき達がすでに一緒にいる事に驚いていたのだった。

 

そして、その日の昼休み。

 

俺達はいつものようにアニ研の部室へと集まり、お昼を摂ろうとしていた。

 

皆もそれぞれに、弁当や購買で買ってきたパン等を取り出して準備をする中、俺もまた、朝にやまとから受け取った弁当を出して昼食の準備をした。

 

「よーし、それじゃ早速食べよっかー。」

 

と言うこなたの言葉で皆も一斉に御飯を食べ始める。

 

そんな中、いつもの俺の弁当と少し違うのを感じたつかさが俺に

 

「あれ?けいちゃん、今日のお弁当はいつもと違うね?今日は何だかいつもよりおかずも充実してるみたい。」

 

そう言うと、皆も俺の弁当に注目しだした。

 

俺はそんな皆に

 

「あー・・・実はこれ、やまとが作ってくれたんだよ。これからしばらくは共同生活だから何か自分にも出来る事をしたい、って言ってな。」

 

そう説明すると、やまとは途端に顔を真っ赤にし、それを見たこなたは

 

「へえ?永森さんも料理出来るんだね?これは意外だったよ。」

 

と、少々不機嫌気味にそう言い、かがみもやはり不機嫌そうな顔で

 

「ちょっと悔しいわね・・・。私ももう少し料理が出来たらなあ・・・。」

 

と悔しさを滲ませつつ言う。

 

つかさはのん気な顔で

 

「うん。彩りなんかもバランスいいと思うよ~?ここまで作れるなら大丈夫だね。」

 

とやまとの弁当を評価していた。

 

みゆきは何故かしてやられた、というような表情で

 

「永森さんがそんな事をされていたなんて気付きませんでした。いつそんな事をなされたんですか?(・・・次こそは、私が・・・。)」

 

と、やまとにその事を聞きつつ、何かを決意したような顔をしていた。

 

そして、みさおはニヤニヤしながら

 

「おい、慶一、女の子からの手作り弁当もらって嬉しいか?なあ、嬉しいか?」

 

と俺をからかい、俺がその言葉に顔を赤くしながら困った顔をしているとあやのが

 

「もう、みさちゃん。あんまりからかわないの。でも、よかったわね、慶ちゃん。」

 

俺をフォローしつつ、そう言うもんだから更に困惑し、そしてこうは

 

「いやー私もびっくりですよ。やまと、思い切った事したねー。」

 

その言葉にやまとは、赤い顔のままみゆきとこうに

 

「えっと、その・・・高良先輩達が眠った後に仕込みだけは済ませておいたのよ。それと、こう、あんまりからかわないでよ・・・。」

 

そう言って困ったような表情を浮かべていた。

 

「私も、もうちょっと練習してみようかな?慶一先輩、こなたおねーちゃんにはよく試食はしてもらってますけど、今度は先輩にも試食をお願いしてもいいですか?」

 

と、こちらは純粋に自分のスキルアップをしたいと思っているゆたかの言葉に俺は頷きつつ

 

「ああ。いいよ?とはいえ、俺の評価が参考になるかはわからないけど。」

 

そう答えると、ゆたかは笑いながら

 

「色々感想とか聞いてみたいですから、その時にはおねがいしますね?」

 

と言うゆたかに俺も頷いて「ん。わかったよ。」と答えると、ゆたかは再び笑顔になった。

 

「・・・今度は私も先輩のお弁当を作ってみようと思います・・・。私もゆたかと同じで、料理のスキルアップをしたい、と思っていますから・・・。」

 

そう言ってくるみなみに俺は

 

「それはいいけど、朝にも言ったが、あまり気をつかいすぎないようにな?あくまでも自然体、って事でよろしく。」

 

そう言うと、みなみもコクリと頷いて

 

「・・・大丈夫です。これも私の意思で、ですから、無理はしてませんよ・・・?」

 

その言葉に俺は頷いて

 

「わかったよ。それならいいんだ。とりあえず、楽しみにはさせてもらうかな?」

 

そう言うと、みなみは顔を赤くしながらも、コクリと頷いたのだった。

 

「先輩、まさにハーレム状態になってますねー。とはいえ、私もそろそろ家事とかこなせるようになった方がいいかもしれないっスね・・・今後一人暮らしとかありえない事でもないですし。」

 

その言葉には俺からではなく、こうからツッコミが入った。

 

「ひよりんもそういう事考えているんなら、今からでも少しはやっときなよー?経験積むだけでもかなり違うんだからね?」

 

そう言うこうに、ひよりは苦笑しつつ

 

「わ、わかってるっスよ。私はともかく、こうちゃん先輩はどうなんスか?」

 

という切り返しにこうは豪快に笑って

 

「ふははは!甘いよ?ひよりん。私も必要最低限の事くらいは出来るからね。突然一人暮らしになっても大丈夫だよ。」

 

その言葉に”ガーン”という擬音が聞こえそうなほどにショックを受けて落ち込みつつ

 

「そ、そんな・・・こうちゃん先輩はそういうのあまり得意じゃなさそうだってイメージあったのに・・・。」

 

そう言うひよりのその言葉に少しだけむっと来たらしいこうは、ひよりを睨みつけながら

 

「ひよりんー?人の事を普段、どんな目で見てるのさ?まったく・・・。」

 

そう言って、ひよりに説教モードを展開しはじめたのだった。

 

そんな2人を尻目にパティは

 

「まあ、ワタシも二ポンにクルトキにはホームスティデキなかったトキにはヒトリグラシもソウテイはしていましたからネ。ワタシもヒトナミにはデキますヨ?こうミえてもケイイチにディナーナドをツクってあげたコトもありますカラ。」

 

そう得意げに言うパティに、いずみも感心しながら

 

「へえ?パーさんも出来るんだ?うらやましいな。私ももう少し頑張ろうかな?」

 

と言うと、パティはそんないずみに

 

「イズミもオカシヅクリはウマイじゃないですカ?ワタシはむしろ、そっちをイズミからナライたいですヨ?」

 

そう言うと、いずみは笑顔になって

 

「それなら、今度パーさんにも教えてあげるね?」

 

その言葉にパティも満面の笑顔で頷いて喜んでいた。

 

「まあ、私も弟の面倒見てるからそれなりには出来ますが・・・。」

「そういえばそうだよね?みくはこれで中々家庭的だったりするしね。」

 

みくとたまきの言葉を聞いた俺は2人に

 

「ん?みくは弟さんいたんだ?知らなかったよ。そっか、面倒見てやってるんじゃ良いお姉さんなんだな。たまきはどうなんだ?」

 

そう尋ねると、みくは照れながら

 

「いやあ、恐縮ですね。まあ、うちは共働きですからね。自分でやれる事は協力しよう、って事でやってるんですよ。だから、弟に御飯作ってあげる事もありますし。」

 

そう言い、たまきは苦笑しながら

 

「私は苦手ですねー。でも、これから覚えたいなあって思ってますよ。」

 

その言葉に俺も苦笑しながら

 

「そっか、これからも頑張れ、みく。それと、たまきも覚えてみたい、と言うならこのメンバーの中で家事得意な奴に教わってみればいいと思うぞ?」

 

そう言うと、みくは照れつつも頷いて、たまきは

 

「そうですね。相談のってくれる人がいれば相談してみます。」

 

そう言ったので、俺も頷いて「がんばれ。」と声をかけたのだった。

 

その後も、この手の話題で盛り上がった俺達は、昼休み一杯まで話しつづけていたのだった。

 

そして、放課後、家に帰る途中でみゆきが俺に

 

「慶一さん、明日は私がお弁当を作りますから、明日はお任せください。」

 

そう言って来たので、俺はその言葉に驚きつつ

 

「え?でも、無理しなくていいんだぞ?俺も頼んだわけじゃないし。」

 

そう言うと、みゆきはそんな俺に

 

「いえ、無理をしている訳ではありません。皆さんと話し合った結果、ですから。」

 

そう言うみゆきに俺は驚きつつ

 

「え?話し合った?それってどういう・・・。」

 

そう尋ねると、みゆきは微笑みながら

 

「実はあの後、日替わりで慶一さんにお弁当を作ろう、という事になったんです。今回は永森さんが作りましたから、次は私の番、そして、その後はみなみちゃん、八坂さん、泉さん、かがみさん、つかささん、ゆたかちゃん、という感じで。その他の方は自信と経験がないという理由からご辞退されていたみたいですが、概ねこんな感じになりました。そうすれば、争う事もないだろうという泉さんの提案でもありましたので。」

 

その言葉に俺は苦笑しながら

 

「やれやれ、そういう事になったのか。でも、皆がそうしたいって言うのなら、俺はその意思を尊重してやるしかないよな・・・。」

 

と、困惑顔をしつつ言うと、みゆきは笑顔で

 

「そうですね。慶一さんには私達の意思を汲んでいただく、と言う事でお願いできたらと、思います。」

 

そう言うみゆきに俺は頷いて

 

「わかったよ。それじゃ明日からしばらくよろしくな。それと、帰ってから改めて家事分担を話し合おう。」

 

そう言うと、みゆき達も頷いて

 

「そうですね。無理のない程度に頑張りますから。」

「・・・お手伝いできる事は、させてもらいますから・・・。」

「共同生活していくからには、お互いに協力しあっていきましょう。」

「私も皆と協力していくわ。だから、よろしくね?先輩。」

 

そう言うみゆき達に俺も頷いて

 

「そうだな。それじゃ夕食の買い物にでも寄って行くか。皆にも付き合ってもらうからな?」

 

そう言うと、皆も頷いて俺について来てくれたのだった。

 

朝からのトラブルもあって、この先どうなるのか、俺にも予想がつかない状況ではあったけど、これから先も頑張っていかないとな、と思いながらもこの先大丈夫かな?という不安も脳裏をよぎる俺だった。

 

その一方でこんな騒動の毎日も悪くないな、とも思うのだった。

 

旋律達との共同生活、これから先に不安と期待とそして、ささやかな幸せを俺は感じていた。

 


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